雲居の空   作:くじぃらぁす

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月下に咲く涙花

「アオイ、カナヲ、蝶屋敷をお願いね。姉さんは見廻りに行ってくるから」

早く帰ってきてあげなくては、しのぶも今日は任務に行っている。

夜の見廻りはとても大変だ、鬼に会うことだって頻繁にある。

私としのぶのような思いをする人がでないようにするために鬼殺の道に進んだ。どれほど大変でも、街の人を守れていると思うと頑張ることができる。

いつか、仲良くできる鬼がいると信じて今日も暗い街に向かう。

 

今日は珍しくも鬼に全く遭遇しない。

いいことなのだが、それが嵐の前触れのようで私は気持ちが悪かった。

こんな時こそ、楽しいことを考えよう。

 

「そういえば、しのぶは今日の任務が終わると、階級が上がるわね」

帰ったら、みんなでお祝いしてあげなくちゃ。

しのぶの好きな生姜の佃煮も作ってあげよう。私はあまり料理が得意ではないから、アオイに教えてもらいながらだけど…

喜んでいる顔が想像つく、あなたの笑った顔が姉さんは一番好きよ。

何をあげたら、喜んでくれるかな。しのぶは少し難しい所があるから、ものすごく悩む。

それにしても蝶屋敷はとても賑やかになった。今では、蝶屋敷のみんなが私の大切な家族。

あなた達からたくさん元気と勇気をもらっている。笑顔でいられるのもみんなのおかげ、本当にありがとう。

 

 

今日もお月様がとても綺麗だ、そう思いつつ空を見上げていると体に寒気が走った。

今まで、沢山の鬼と会ってきた。それなりに実力もあると思っている、だから柱にまでなることができた。

こんな感じは初めてだ。体の震えが止まらない、今すぐにでも逃げてしまいたい。

前を向くと底には、血がかぶったような模様をした白橡色の長髪に、虹色の瞳をしており左目に「上限」右目に「弐」の文字が刻まれた男が立っていた。

この男は見なくとも鬼とわかってしまう、血の匂いが嫌というほどしたからだ。見たことはないがその鬼は閻魔様を彷彿とさせる。

 

「今日はとてもいい日だ。綺麗な月が出ているし、こんなに美人な女性にも会えた。君の名前を聞かせてくれない?」

 

「私は、花柱 胡蝶カナエ」

 

「カナエちゃん、いい名前だね。久しぶりだなあ柱は。俺の名前は童磨」

「友達になれると思わない?」

鬼と仲良くなりたいという夢がある私でも、この鬼のことを拒絶している。

沢山の人を殺している、この鬼からはなんの感情も読み取ることができない。

 

「あなたとは友達になりたくありません」

 

「んー、そっか。なら君も救済してあげる」

「怖がることはないよ。俺が君を喰べることで、君は俺の中で永遠に生き続ける。とても幸せなことじゃない?」

幸せ?何を言ってるんだ、こいつは。それは人を殺すということに他ならない。

それを救済と呼んでいるのか、この鬼は。怒りを通り越して、呆れてしまった。

 

「私はあなたの救済など求めていません」

「あなたの言葉はとても軽い。幸せを本当に感じたことがありますか?誰かと一緒にいたい、笑顔を見たい。そんなことを考えたことはありますか?」

この鬼はしあわせというものをわかっていない。永遠に生き続けることが幸せなんかじゃない。

大切な人がいない永遠など欲しくない、それなら大切な人といられる一秒を私は選ぶ。

 

「考えたことないな、そんなこと。生まれた時からずっと」

この鬼は可哀想なんだ。大切なものがない、命を懸けてでも守りたいものがないんだ。

私は、その鬼を憐れむような目で見つめる。

 

「あなたはとても可哀想ですね」

鬼は私を笑顔のまま見つめている、その笑顔の下には狂気が込められていることを感じる。

けど私は臆しない、鬼の心に響く言葉を放つ。

 

「あなたは感情がないんですよ、幸せを感じれない。本当に気の毒です。あなたに生きている意味なんてありません、私が斬ってあげます」

けど私の体が言っている、この鬼には勝てないということを。上弦の鬼それは柱3人分に匹敵する、その中の上から弐番目。

それでも、私は逃げない。

花柱、胡蝶カナエがここで死んだとしても、この鬼の特徴をみんなに伝えてもらう。負け戦でも、戦うことに意味があるんだ。

 

「そんなこと言われたの初めてだよ。なんでそんな酷いことをいうのかな」

日輪刀に手を添え、ゆっくりと鞘から抜く。

 

 

「花の呼吸・弐ノ型 御影梅」

童磨は扇子で私の攻撃を弾いてみせた。

 

「カナエちゃんは俺と戦うの?君じゃ勝てないよ。柱なんだろうけど、今まで、喰べた柱より弱いもの」

私は柱の中で一番弱いかもしれない、だけどこの鬼には言われたくない。

私達の今までの努力を馬鹿にされているようだ。刀を振り続けた、どんなに苦しくても。もう誰も私達のような思いをしなくて済むようにと。

 

「君は美人なんだから。普通に生きてたらよかったのに。鬼殺隊とかいうイかれた集団に入らなくてもよかったのに」

鬼殺隊を馬鹿にするな。悪鬼からたくさんの人を守っている、自分の命を懸けてでも守りたいもののために戦っている。

私も、そんな鬼殺隊の一員であれることに誇りを持っている。

普通に生きれたらどれほど良かっただろう。お母さん、お父さん、しのぶとで毎日いられたらそれで良かった。

あの日普通の人生を歩む事を諦めた、私は大切な人のために戦う。

 

「もう喋らないでほしい。声も聞きたくない」

 

「ひどいなぁ。決めた、君を喰べてあげる」

童磨は扇を構えた、やっと戦う準備をしたか。

 

 

目を一瞬閉じた瞬間、目の前に童磨が迫っていた。

少し遅かったら致命傷だった、冷や汗が止まらない、戦いに集中しないと。

柱の中でも速さになら自信がある、でも童磨も速い、さっきの攻撃は瞬間移動したみたいだった。

 

「カナエちゃん、速い、すごいよ。弱いなんて言ってごめん」

ものすごく馬鹿にされている感じがする。あまり怒らない私でも怒りを覚えた。

童磨は再び、血鬼術を使うことなく、扇で斬りかかってくる。

さっきの攻撃で、こいつの速さはもうわかっている。地面を蹴り、攻撃を避けて反撃にでる。

 

「花の呼吸・伍ノ型 徒の芍薬」

九連撃の攻撃を放つ型。童磨はこれを知らない。

童磨の体を日輪刀が切り裂いた、斬った部位からたくさん血が出たそれでも満面の笑みを崩さない。

即座に傷は塞がった、その速さに驚きを隠せない、下弦の鬼とは次元の違う速さだ。

私の感がここで攻撃を続けないといけないと告げる。

 

「花の呼吸 陸ノ型 渦桃」

花の呼吸、最大威力の型。これで、童磨の首を斬る。

ここを逃せばもう私に勝ち目はないと肌で感じる。

それほど上弦の鬼が甘くないということは分かっている、でも私の鎹鴉が鬼殺隊に「上弦の弐」のことを伝えてくれたら誰かが倒してくれる。

柱として後輩のために、たとえ私がここで死んだとしても。

しのぶ、カナヲ、アオイ、きよ、すみ、なほ、ごめんね。あなた達と過ごせた時間はとても幸せだった。

 

「血鬼術 蓮葉氷」

首にあと少しで届いた、でも鬼の血鬼術により片脚が凍らせされ目の前に跪いた。

呼吸をすると肺が痛い、眼球も凍らされて目の前が暗闇に包まれる。

私はここで死ぬんだ。死ぬのはやはり怖い、死ぬことというよりお別れが怖い。

ここにいるのがしのぶじゃなくてよかった。昇級を祝えなくてごめんね、一緒にいてあげられなくてごめんね。

 

「よく頑張ったよ、カナエちゃん。あまり強くないのに、ここまで。痛くないように君を救済してあげるからね」

 

「幸せになってね、しのぶ」

願ったのはしのぶの幸せ、蝶屋敷にいる私の大切な家族の明るい未来。

 

 

「血鬼術 蓮葉氷」

先程、肺と脚と眼球を凍らされた血鬼術が聞こえる。

そんな時私は浮遊感を感じた、息をするだけで辛かった肺が辛く感じない、動かなかった足が動く。

少し先を予知したのだろうか。

目を開けると少年にお姫様抱っこをされていて、童磨から遠ざけたところでゆっくりと降ろされた。

私の夢を初めて受け入れてくれた人、背中を押してくれた人。私と身長がそれほど変わらない、手足も細い、背中だって大きくなかった。

それでも今はとても大きく見える、私に童磨を見させないように立っている。

私が守らないといけない、鬼殺隊の後輩。

 

「逃げて、夜去君。そいつは上弦の弐。あなたじゃ勝てない」

「柱の私が時間を稼ぐから、だから逃げて」

私は彼を心配させないように、いつものように笑った。

お母さんと、お父さんが鬼に殺された日以来、しのぶに心配をかけさせないように笑顔でずっといる、いつしかそれが普通になった。

人前で涙を流したことはない、でもたまに辛い時は一人で泣いている、誰にも見つからないように。

今だってそうだ。みんなと会えなくなることを想像してしまい、今すぐにでも泣き出してしまいそう。

でも泣いてはいけない、しのぶの姉として、花柱として。

 

「逃げれるわけありません、そんなに苦しそうに笑うカナエさんを置いて」

「笑わなくてもいい、涙を見せてもいい、苦しいことは全部吐き出していい、僕が全部受け止めます」

「柱でも助けを求めてもいい、泣いていい。あなたの助けを求める声が聞こえたら、どんなに離れていても、どんなに強い相手のところへでも行きます」

「今日勝てなくていいんです、何度負けてもいいんです。いつか倒しましょう、みんなで」

後輩に言われるなんて思ってもいなかった。笑わなくてもいいんだろうか、涙を見せてもいいんだろうか。

受け止めてくれる、その一言が心に響く。

柱なら、後輩のために命を懸けるのは当然のことだ。後輩に助けを求めるなんて、あってはいけないことだと思う。

それでも本当にこの子なら来てくれそうだ、どんなに絶望に満ち溢れている場所へでも。

でも、夜去君には逃げてもらわないといけない。

 

「私のことはいいから、逃げて」

 

「そんなに、泣きながら言われたら尚更逃げれませんよ」

「違うでしょ、カナエさん。他に伝えたい言葉はないですか?僕は待ちますよ、とても意地悪ですからね」

私は今泣いているのだろうか、泣くという感覚を忘れていた。

この少年は、悪意に満ちた笑みを浮かべて言ってくる。でもその笑顔は太陽のように暖かく、先程までの冷たい周辺の空気を暖めてくれる。

童磨の笑顔とは全く違う。

私の伝えたい言葉、柱になってからは言ったことがない言葉。

 

「私は、また蝶屋敷のみんなに会いたい、蝶屋敷に帰りたい。だから、だから……………私を助けて………夜去」

子供のように泣きながら、しのぶと同じ歳の少年に抱きついていた。

私は頭を撫でられたいる後輩に。今とても恥ずかしい姿を晒している、それでも涙がとめどなく溢れ出す。

 

「はい、帰りましょう」

私に自分の羽織を被せて、夜去は童磨に近づいていった。

 

 

「君は、誰なのかな。俺が折角カナエちゃんを救済してあげようとしてたのに、邪魔しないでくれる?」

「あと少しで幸せになれてたんだよ?」

 

「カナエさんを幸せにできるのは、貴方じゃない」

 

「それじゃあ、君とでも言うのかな?」

 

「そんなこと言いません。カナエさんを幸せにできるのは、蝶屋敷のみんなだから」

 

「ふーん。まぁ、どうでもいいけど。君じゃ俺に勝てないよ」

 

「勝てないかもしれない。でも僕は倒れません、後ろに守る人がいる限り」

守る人と言われことは柱になってから一度もない。柱は常に守らないといけない存在だから。

 

「カナエちゃんは柱でしょ。柱は君みたいな弱い後輩を守るんじゃないの?」

 

「十分守ってもらった、何度も、何度も。

柱の人達、鬼殺隊の皆さんには数え切れないほど。そこにはカナエさんも含まれているんです」

 

「僕がなります。柱を守る柱に」

やはり私は夜去とどこかで会っているのだろうか。どれほど考えてもこの少年との記憶はない。

でもそれはとても懐かしく、暖かい記憶だと思う。忘れられない、でも忘れてしまった記憶。

私は夜去を本当に守れたのかはわからない、でもそれが本当ならどれほど嬉しいことか。

だんだんと瞼が下がっていく。また会いたい、夜去の笑顔を………また見たい。

 

 

 




D磨さんと夜去の戦闘、難しいなぁ。
少し時間空くかもしれません、よろしくお願いします。

日常回を少し書いてもいいですか?三人との日常もあります

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