「夜去、ちょっと相談いい?」
上弦の弍との戦いから、一ヶ月が過ぎようとしている。未だにカナエさんとこうしてお話をできることが夢なのではないかと思うことがある。
まだ体が完全には治ってない僕は蝶屋敷お世話になっており、真菰さんも一緒に泊まらせてもらっている。
錆兎さんや、義勇さんもたまに来て一緒にご飯を食べている。とても賑やかで毎日が幸せだ。
「どうしたんですか??」
「しのぶの昇給祝いに何をしてあげたら喜ぶかなと思って。色々落ち着いたから、何かしてあげたくて」
前のしのぶさんは今頃何をしていたんだろうか。
僕はあの日から、変わってしまったしのぶさんに会うのが怖くて逃げてしまっていた。
でも今はカナエさんがいる、幸せな時間をみんなで過ごして欲しい。
「しのぶさんの欲しいものはカナエさんと同じだと思いますよ」
「私と同じ??私、あまり欲しい物はないわよ?」
「お願い夜去、教えてよ」
「まだ、教えません。もう少し考えてよ、カナエさん」
でもどうしたらいいかな………あ、いいこと考えた。
「しのぶさん、僕に怪我の手当てとか色々教えてくれませんか?」
しのぶさんには、昼食後に薬を塗ってもらい、診察もしてもらっている。
たくさんの医学、薬学の本がある、それは努力をした何よりの証拠だ。
「どうしたのよ、いきなり。別に私はいいけど」
「内緒です。今日からお願いできますか?」
しのぶさんは、勘付いてしまいそうだから下手に喋れない。
「私に隠し事?まあ、いいけど」
よかった早く覚えよう、蝶屋敷の皆さんが笑っている光景が浮かぶ。
これはしのぶさんだけではなく、カナエさんや蝶屋敷のみんなへの贈り物でもある。喜んでくれるといいな。
「何、ニヤニヤしてるのよ。また変な事考えてるの??」
本当のしのぶさんが目の前にいる、これもまた信じれない時が未だにあるんだ。
「朝、手紙書いたからお館様にお願い」
首が斬れないことを真菰さんと伝えに行った時は隠の人に言って伝えてもらった。
僕たちはお館様にまだ会えない、柱と数人の隠の方しか会えないからだ。
その後お館様から手紙が届いた、カナエを助けてくれたお礼がしたい、欲しいものが見つかったら伝えてと。
今日もしのぶさんの仕事を見に行こう、部屋を出ると真菰さんとカナエさんがいた。
「夜去、最近しのぶちゃんの部屋ばかり行って何してるの?」
「真菰さんにカナエさん、びっくりさせないでください」
「夜去、何してるか教えてよ」
「真菰さんは少し来てください」
カナエさんには教えられない、しのぶさんに似てカナエさんも鋭い。
二人に見つからないようにしたい、蝶屋敷みんなへの贈り物だから。
「私には教えてくれないの??夜去の意地悪」
「……………で過ごしてほしいんです。だから僕は、しのぶさんに怪我の手当てなどを習ってます」
「夜去は本当に優しいんだね。わかった、私も手伝うよ」
僕じゃない、優しいのは真菰さんだよ。いつも手伝ってくれ、支えてくれる、何かお礼をしたい。
「ありがとうございます」
「このぐらいと思う。多分もう一応のことは大丈夫よ」
少しは治療できるようになった、蝶屋敷の仕事内容は一通り教えてもらった。
あとは親方様からの許しは出るかどうかだけどやっぱり僕なんかじゃ頼りないかな。
「夜去、お館様から手紙だよ」
「朝!ありがとう」
──
夜去へ
大丈夫だよ。明日、一日君に蝶屋敷を任せるよ
夜去はカナエの夜の見廻りもすると書いてあったけど、傷が治ってないよね
義勇が、受け持つって言ってくれたからそれは義勇に任すね。
カナエと、しのぶには、私から伝えておくから
本当に優しいんだね、早く私も夜去に会いたいよ
──
「ありがとうございます、義勇さん。お館様」
許してもらえてよかった、お館様に少しは信頼されているのかな、だったら嬉しいな。
僕も早くお館様に会いたい、会わないといけない病気の進行を遅らすためにも。
家族みんなで、鬼のいない世界で過ごしてほしい。幸せになってほしいんだ。
ご飯の時間になった、お館様から二人は聞いたのかな?見る感じまだ聞いてないと思う。
「胡蝶カナエ、胡蝶しのぶ。お館様からの伝言だ」
二人の顔に緊張が走った。何を言われるんだろう、そう思っているんだと思う。
身構える必要なんてない、大丈夫だから。
「明日、二人は一日休みにする。蝶屋敷は夜去に任せる」
「どういうこと夜去?」
カナエさんとしのぶさんが同時に驚いた顔で聞いてきた。
「カナエさんがしのぶさんにお祝いしてあげたい、何が欲しいんだろうって言ってましたよね?」
「それは蝶屋敷のみんなと一緒にいる時間だと思います。違うしのぶさん?」
蝶屋敷のみんなが思っていることだと思う。カナエさんも言ってた、みんなと一緒にいたいと。
「欲しい物なんてない。みんながいてくれればそれでいい」
しのぶさんは顔を赤くしながらも言っていた、それに他のみんなも答えているカナヲ姉さんだけ伝えれず下を向いていた。
「カナヲさん、今伝えられなくてもいい。いつか伝えてあげて」
「大丈夫、誰も失わせないから。ゆっくりでいいんです」
僕も伝えられなかった、でも姉さん達が勇気をくれたから言うことができた。
カナヲ姉さんに何をしてあげれるだろう、僕はたくさんの事をしてもらい、たくさん教えてもらった。
「カナヲさんにこれを預けるね」
これはあなたが僕の背中に羽織らせてくれた羽織、僕の宝物です。
「これは?」
「これはね、とても勇気を与えてくれる羽織。大切な姉さんがくれた物、その人は本当に優しい人だったんだよ」
僕の大切な人、戻ると約束した人、それは未来の貴方だ。
「そんな大切なものを私がいいの?」
「カナヲさんに預かっててほしい。どう、勇気が湧いてこない?」
手を握りしめカナエさん達の方を向き、深呼吸をしている。
頑張って伝えようとしているようだったけどなかなか言えないみたいだ。
「無理しなくてもいいよ。みんな待ってくれてるから」
絶対に二人を守るから、カナヲ姉さん達の元に連れて帰るから。
「明日はみんなで一緒にゆっくり過ごしてください」
「みんなで着物を着て、街に行くのもいいんじゃないですか?」
着物を着て、普通の女の子のように過ごしてほしい、明日だけは鬼殺のことを忘れて。
二人は普通の女の子の生活は諦めたと言っていた、でも諦めなくていいんだ。
鬼に恐怖する事なく笑いあえる日は必ず来るんだから。
「私達に着物なんて似合うかな?それに着ていくようないい物持ってない」
「似合いますよ、似合わないはずがないよ。街の人達なんてびっくりしますよ」
「まだ間に合います。ご飯食べてみんなで行きましょうよ」
ご飯を食べ終わっても、カナエさんとしのぶさん以外は立たなかった。
「行こ、みんなで。僕はみんなにたくさん助けてもらった、だから贈り物させてよ」
みんなにはたくさん助けてもらった、このくらいさせてほしい。
僕はあまりお金を使っていないからみんなに贈れると思う。
「いいんですか?私達まで」
「明日、着物姿見せてください」
みんなの手を取り日が沈み始めた街に出て行く。
まだ開いているお店がなかなかない、やっぱり遅かったかな。
「夜去、もう帰ろう。もういいよ」
「しのぶさん……」
「夜去、あったよ。開いているお店」
「本当ですか?真菰さん」
────
「お兄ちゃん、幸せそうだね。あのお嬢ちゃん達、綺麗な笑顔だ」
お店に行くと、みんな着物に夢中になっていた。うん、やっぱり普通の女の子だよ。
お店の主人からも、そう見えているなら安心だ。本当に綺麗な笑顔だ。
「それは良かったです。普通の女の子に見えますよね?」
「見えるよ」
────
「これにする、夜去」
みんな似合うんだろうな、それにしても選んだのが似てる、姉妹のようだ
お金は………着物って結構高いんだ、ぜんぜん払えるんだけども。
お金になんて変えられない、貴方達の笑顔を見れたんだ。お金を払ったのにそれ以上の物が帰ってきてしまった。
「真菰さん、いつもありがとうございます」
「僕が選びました、よかったら使ってください。安物ですけど」
いつも髪を留めずに任務に行ってるから、カナエさん達みたいに髪を留めたらいいかなと思った。
「安物なんて関係ない。夜去がくれた物だもん、すごく嬉しい」
「ありがとう、夜去。一生大切にするね」
喜んでくれてよかった。
これは僕の皆さんへの感謝の気持ちだ、いつもありがとう、これからもよろしくお願いします。
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