頭の下に柔らかい感触がある、そして先程までは体中が痛く、呼吸も上手く出来なかったのに今はできる。
とても暖かい場所で、とても安心する場所、でもどこか悲しいような場所。入夜さんが一人でずっといる場所だ。
「夜去、起きた?」
頭の下の柔らかい感触は入夜さんの太腿だった、今僕は膝枕をしてもらっている状態だ。
顔を見られたくない、今僕はとても酷い顔をしていると思う。
炭治郎さんと禰豆子さんの家族を守れなかった、二人と守るって約束したのに。
「入夜さん、僕守れませんでした」
二人の間に沈黙が訪れる、声を上げずに顔を手で覆い泣いた。
入夜さんが頭を優しくずっと撫でていてくれたこともあり、溢れ出る感情を抑えることができなかった。
あの時もう一度、時の呼吸を使えていたら炭治郎さんの家族をを守れていた。
あのあとすぐに来てくれた錆兎さんと義勇さん、二人に繋ぐことができたのに。
僕のせいで二人にも辛い思いをさせてしまった、間に合わなかったという後悔を与えてしまった。
「あの時、もう一度時の呼吸を使ってたら死んでたよ?」
「夜去を心から待っている人たちがいる、それは絶対に忘れないで」
死んでいた…使っていたら助けられた、
でも使っていたらみんなとの約束を破っていたのか。
カナエさん、しのぶさん、真菰さん、待ってくれている人たちにどんな想いをさせていただろう。
じゃあ僕はあの時どうしたらよかったんだ、正解がわからない。
「僕はどうしたらよかったんですか?どちらも守ることはできなかったんですか?」
「正解なんて誰にもわからないよ。自分の選んだ道を正解にするしかない」
「どちらも守れるのは選ばれた人たち、力がないとどちらか選ばないといけない」
「悔しい、弱いままの自分が嫌いです」
「そんなことない、夜去は二人を守った」
守ったなんていえない。禰豆子さんは前と同じように鬼にされてしまったし、炭治郎さんにも前と同じように険しくて、苦しい道を歩ませてしまうんだから。
日の出まであと少しだったのに、僕があと少し鬼舞辻無惨と戦えていれば。
時間を巻き戻してもう一度やり直したい、でもあの日から一週間が経ったことを聞いた。
それほど経ってしまったら、もう戻ることはできない。
「助けれなかった人たちも、夜去の事を恨んだりしてない。感謝していたでしょ?」
──
「やめてください、お願いします、お願いします」
「鬼狩りが鬼に頭を下げるのか、本当に情けない」
「鬼狩りさん。私たちを守りながら戦ってくれてありがとうございます」
「貴方のおかげで炭治郎に会えた」
「鬼狩りさんのおかげだよ、兄ちゃんにもう一度会えたのは。ありがとう」
──
今から殺されるというのに笑ってありがとうといってくれた。
死ぬ前に笑顔で言ってくれたんだ、僕への感謝の気持ちを。
炭治郎さんのように暖かい人たちだった、だからあの家で幸せに暮らしていて欲しかった。
「夜去はここで蹲って泣いて、力がないからと諦め、逃げだしてしまうの?輝夜と咲夜と約束したこともあるんじゃない?」
──
「鬼狩りさん、炭治郎と禰豆子をよろしくお願いします」
「三人の幸せを私たちは願っています」
──
泣いてなんていられない、二人を守ると約束したんだ。
諦めれるはずがない、逃げだせるわけがないよ。
二人との大切な約束もある、それはどんなことがあっても諦めないこと。
今ここで逃げだして生きて戻っても、姉さん達からは怒られてしまう。
二人なら自分の決めた道を進む、二人の弟ならばここで道を曲げ逃げてしまう事は許されない。
「前へ進みます」
「もっと、もっと強くなりたいです。もう誰も大切な人を失わないでいいように」
「夜去なら大丈夫。だって輝夜と咲夜、二人の弟だもん」
「泣きながら言うのそれ??でも絶対に強くなれるよ」
「私も輝夜も咲夜も夜去と一緒に戦うから。時の呼吸の継承者はあなたの努力をいつも見てる、みんな夜去のことを誇りに思ってる」
姉さん達はいつも一緒にいると言っていた、今までもいてくれたのかな。
一緒に戦うその言葉に僕がどれほど勇気を貰っただろう。そこに存在を認識できなくても、いてくれると思うだけで力が湧いてくる。
ずっと見ていてくれたのかな、お母さん、お父さん、おばあちゃん僕ちゃんとできてるかな。
今まで時の呼吸を継承した人たちにも誇りに思われていることが嬉しかった。
「入夜さん、もう大丈夫です」
「顔が変わった。まぁ可愛いことに変わり無いけどね」
「みんな待ってるよ、早くいってあげて。また来ても膝枕はしてあげるし、慰めてあげるから」
「わかりました、みんなの元に戻ります。あまり揶揄わないでください」
──
夜去、失った時にどうするかが大事だよ。そこで諦めてしまうのか、もう同じような人をださないためにもう一度立ち上がり戦うか。
夜去は立ち上がったんだね、私は諦めた方だから。前は私と同じと言ったけど訂正する、貴方は私なんかよりずっと強い。
あの時、立ち上がっていれば絶望して諦めていなければ珠世姉さんを助けれていたのかな。
「夜去…いつか…私と…珠世姉…さんの…こと…も助けて…くれる?」
「どうしたんですか?入夜さん、悲しいことでもありましたか?」
声にだしてしまっていた、戻って行こうとする夜去を引き留めてしまった。
「何もないよ、またね」
「入夜さんいつか聞かせてください」
「入夜さんも入夜さんの大切な人も僕が絶対に助けます、貴方は僕にとってかけがえのない人なんです」
本当に助けてくれるんだね、夜去は私の英雄だ。
夜去に伝える時は、夜去が時の呼吸の事、未来から来た事を鬼殺隊のみんなに話した時にしよう。
そんな恥ずかしい事をよく普通に言えるね、朝屋敷で一緒に暮らしている三人も苦労するわけだ。
「夜去ちょっと来て!私貴方より、ずっと年上だけど」
「でも、ありがとう」
私は夜去のことを抱きしめた、手足や体がこんなに細いのも時の呼吸の影響だね。
恥ずかしいからやめてくださいと言っているけどやめない、ここには二人しかいないもの。
本当はここにいるのは私一人でいいんだ、夜去は来なくていい。
でも夜去は出ることができる、それはつまりそういうことだ。
「入夜さん、いつかここから連れ出します
外の世界を一緒に見ましょう、美味しい食べ物を沢山食べましょう、会わせたい人も沢山いるんです」
「それに、もう一度会いたい人もいるんですよね?」
外の世界を一緒に見て回って、美味しい物も一緒に食べることができればどれほど幸せだろうか。
輝夜と咲夜にも会いたいな、二人は無意識に私と会話をしてくれていたから。
もう一度会いたい人が私にはいる。今も苦しんでいるはずだ。会って謝りたい、一度でいいから話したい。
「いつの日か入夜さんに手を差し伸べます、その日まで待っていてください」
顔を紅くし、早口で言って帰っていった。私はその言葉を聞いて笑いが止まらない、それと同時に涙も溢れ出してくる。
いつ以来かな、こんなに笑ったのは涙を流したのは。それはもう千年ほど前になるのかな。
あんなの告白みたいなものだよ。私も夜去に惹かれてるんだね、可愛くて、愛おしくてしょうがない。
「私はここでずっと待ってる、夜去の手を」
日常回を少し書いてもいいですか?三人との日常もあります
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ヨロシクナイ