雲居の空   作:くじぃらぁす

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かぐや姫

「夜去帰ろう蝶屋敷に」

カナヲさんが薬を持ってきてくれたおかげで二日もすれば歩けるほどに回復した。

まだ体は痛む、傷も完全には治りきってはいない。

でもこれ以上三人を待たせてはいけない。それに僕も蝶屋敷の皆さんに早く会いたい。

 

「水柱様にちゃんとお礼を言った?二人も夜去のことををすごくお世話してくれたんだよ」

二人は自分を責めるな悪いのは俺たちだと言っていたがそんなことはない。

二人は約束を守ってくれたんだ、だから悪いのは約束を守れなかった僕の方。

僕は一生自分を責めると思う、あの日の選択を悔いると思う。

でも蹲るのはやめる、前に進むんだ。そして強くなるんだ、柱の皆さんのように。

二人にその事を伝えると何故か抱きしめられた。そして今度はゆっくり泊まりに来いと言われた、真菰さんも連れて来たいな、きっと二人も喜ぶはずだ。

 

「言いましたよ、それよりカナヲさん何か変わりました?なんか姉さんみたい」

カナヲさんが姉さんのようになっている、今は僕の方が歳上なのに。

寝ている間に何かあったのかな、隠していることを話してないといいけど…

頭にあるのは恥ずかしいことを言った記憶、手を繋いでとかなんとか。いや夢だと信じよう、言ってないよ絶対に言ってない。

 

「私は夜去のお姉さんだよ。蝶屋敷まで手繋いであげるから手を出して?歩くの辛かったらおんぶしてあげるから」

隠していることは話してないみたいで一安心した。

姉さんになったの?いつ?僕が寝ている間かな。でも恥ずかしくてカナヲ姉さんとは呼べない、いつか呼べるといいな。

未来ではよく手を繋いでもらっていたし、それにおんぶもしてもらってたな…懐かしい。

 

「大丈夫だから!手を繋ぐのは恥ずかしいし、それに一人で歩けますから。早く帰りましょ」

 

 

「夜去、助けが必要だったら私に言って。姉さんが助けてあげる」

蝶屋敷に着いたが中に入れない、なんて言ったらいいのかな。水屋敷にお世話になっていたでいいのかな…

蝶屋敷に入れないのは何度目だろうか、これからも何度もこんな事がある気がする。

でも今回は一人じゃない、カナヲさんも一緒にいるとても心強い。

 

「ただいま戻りました」

カナヲさんの着物を掴み、背中に隠れながら一緒に玄関に入った。

一週間帰らないだけでとても懐かしく感じる、やっと戻れたんだ。

 

「カナヲ一昨日はごめんね、私たちが落ち着いていなかった…夜去が戻ってこないから冷静じゃなかった」

どんな顔をしたらいいのかな、カナヲさんの着物を掴む手が強くなった。

僕のせいで何かあったんだ、謝りたいでも怖くてカナヲさんの背中から出る事ができない。

 

「夜去、ただいまを言わないといけないよ」

「私に隠れてないで、三人は目の前にいるよ?姉さんの助けがいる?」

 

「カナエさん、しのぶさん、真菰さん。ただいま……」

三人の目の前に出て行くと、三人は状況を理解できていなかった。

 

「…………………………!」

 

「夜去!!怪我してるんでしょ?早く私に診せて!」

しのぶさんはわかるんだね、痛むけどもう大丈夫なんだ。

傷を診せるとすぐに手当てをしてくれた、しのぶさんはやっぱりすごいな。沢山の人を助けられる、とてもかっこいい。

 

「一人で夜寝れた?夜去は私が手を繋いであげないと寝れないから。今日から私がまた一緒に寝てあげるから安心して」

真菰さん寝れたよ!カナヲさんも錆兎さんも義勇さんもいてくれたから。でもやっぱり一人では寝れないのか僕は。

今日どうしよう、少し気まずいなぁ…恥ずかしいけど真菰さんがまたそう言ってくれた事が嬉しい。

 

「どこ行ってたの…心配した。もう帰って来てくれないかと思った。もう一人でどこへも行かないで」

「夜去、ごめんなさい。あんな事を言ってしまった、本当は思ってないの。ずっと一緒にいて欲しいの」

気にしなくてもいいのに、カナエさんのせいじゃないから。僕の方こそごめんなさい、たくさん待たせてしまって。

三人には泣きながら抱きしめられた。僕も男子だから女性に抱きしめられたら恥ずかしいよ。

どこで何をしていたのかを何度も聞かれた、やっぱり言わないといけないよね。

 

「鬼と戦った後、水屋敷の大好きな二人にお世話になっていました。それに少し戻りにくかったんです、心配をかけてごめんなさい」

二人からは蝶屋敷に少し戻りたくなかったから、水屋敷の大好きな二人にお世話になっていたと言えと言われた。

錆兎さんと義勇さんの言った事を言うと怒られる事がよくあるから少し心配だけど。

 

「水屋敷…?大好きな二人??」

「夜去、ちょっとお話を聞かないといけないかもしれない」

三人の雰囲気が変わった気がしたけど、何か悪い事言ったかな。

この感じはすごく嫌です、聞かれたくありません。やっぱり二人の言った事を話すとこうなってしまうんだ、誰か助けて。

カナヲさんさっき助けてくれると言いましたよね、助けを求めよう。

 

「カナヲさん助けてください…」

 

「カナヲさんなの?あっちで呼んでくれないと助けてあげないよ」

前と全然違うじゃん、自分に正直すぎるよ。

でもカナヲさんが自分の感情を正直に表に出す事ができ、自分のしたいようにしている事が僕は嬉しかった。

本当は表情豊かで優しい人なんだ、辛い過去のせいで自分の心に蓋をしてしまっていた。あなたにはもっと自分に素直になって、自分の思うままに生きてほしい。

未来ではカナヲ姉さんより歳下の僕がこんな事を言うのは生意気かもしれない。僕はカナヲ姉さんに大切な人たちと幸せになってほしい。

 

「カナヲ姉さん、助けてよ」

 

「わかった」

そんなに嬉しかったの?僕はすごく恥ずかしいけど。

カナエさんたちも驚いているし、これでまた変なことにならないといいけど。

 

「どういうこと??夜去にカナヲ、二人はそんなに親しかった?」

やっぱり変なことになった、どうするんですかカナヲ姉さん。

でも三人は何を心配しているのかな、錆兎さんと義勇さんのところでお世話になっただけなのに、迷惑もあまりかけてないと思うけど。

 

「夜去は私の大切な弟です、あまりいじめないであげてください」

 

「でも弟とは結婚できないから。夜去は誰と恋をしたい?誰と結婚したい?」

カナエさんとしのぶさんと真菰さんから聞かれた。

三人は結婚願望があるのかな?三人にはいつか素敵な恋をして、鬼のいない世界で結婚をして幸せな家庭を築いてほしいな。

僕には恋も結婚も許されないよ、まず未来まで待たせてしまう年齢だって離れてしまうんだ。

それに寿命を使っているから相手の方を置いて逝ってしまう、相手の方に辛い思いをさせてばかりだから。

置いていかれるのは辛いからそんな思いをさせたくない。

 

「僕には恋も結婚も許されません…相手の人をたくさん待たせてしまって、置いていってしまうかもしれない」

三人は少し暗い顔をした後、笑顔で僕に言った。

 

「それでもいいと言ったら?」

いいんだろうか、僕が好きな人を見つけてその人と幸せになりたいと思っても…

僕だけ幸せな思いをして相手の方には辛い思いをさせるのに。そんな事を考えていると、ある日大好きな二人に言われた事を思い出した。

──

「俺は好きな人と結ばれる事、幸せになる事を許されないが夜去は違う」

「夜去はいつか好きな人を見つけて幸せになってほしい。俺はそれを心の底から願っている」

 

「私も願ってる!夜去の好きな人か、どんな人なんだろう。私が見てあげなくちゃね!」

 

「好きな人ならたくさんいます。小芭内さんも蜜璃さんも大好きです」

 

「子供にはまだわからないか…俺も夜去のことが大好きだ、甘露寺のことも……」

 

「照れちゃう、私も夜去のこと大好き。可愛いすぎるよ夜去、伊黒さん何て言ったの??」

 

「二人とも子供扱いしないでよ!」

 

「子供だろう、甘露寺と俺に手を繋いでもらって喜んでるじゃないか」

 

「私は嬉しいよ、夜去と手を繋げて」

 

「……嬉しいけど…子供じゃないから」

──

小芭内さんが何故好きな人と幸せになってはいけないと言ったのかあの時はわからなかった。

それが今なら少しだけわかる気がする、相手の方に辛い思いをさせてしまうからだと思う。

でもそんな事ないよ、小芭内さんは幸せになってもいいんだ、なってほしい。

相手を僕は誰か知っている、二人はとてもお似合いだった結ばれてほしい。

もう二人から未来を奪わせない、僕は二人からたくさんの物をもらった。

だからお返しをさせてほしい、二人からたくさん与えてもらった僕にできることはこれぐらいしかないから。

 

「許されるなら、恋をしたいです…」

それは二人が心の底から願ってくれた事だから。

許されるなら恋をして二人に好きな人ができましたと伝えに行きたい、喜んでくれるかな。

早く会いたいよ、またご飯を一緒に食べに行きたい。

 

「よかった、私たち恋も結婚も諦めないといけないかと思った」

 

「三人は諦めなくてもいいですよ、好きな人を見つけてその人と…」

三人から口を塞がれた、カナエさんもしのぶさんも真菰さんも顔を紅くしている。

 

「心に決めた人がいるの、その人以外は考えられない」

「その人が大好きなの、愛してるの。夜去の馬鹿、鈍感」

何で僕がそんなに言われるの、三人をそれほどまで言わせてしまう人がいるのか会ってみたいと思った。

 

「もういいよ、ご飯食べましょう。みんなで」

よかった三人の機嫌が治ったみたい、それに仲直りできた。

 

「はい!」

 

──

夜去の側から離れたくなかかった、でも見廻りには行かないといけない。

今日はみんなで一緒の部屋で寝ることになったから早く帰りたいけど、そんな事はできない。

しのぶと真菰ちゃんが羨ましい、今もずっと一緒にいるんだ。

 

「胡蝶、夜去はどうしてる?」

富岡君がどうしてここにいるの?私の担当区域なのに…

 

「多分今は寝てるかな、しのぶたちと一緒に」

富岡君や錆兎君に夜去を取られるわけにはいかない、私たちはいつからか夜去のことを取り合っていた。

 

「そうか………今日は俺が見廻りをする、夜去の元へ戻ってやれ」

何でそんな事をしてくれるかわからない、私も夜去を狙っている一人なのに…

とても嬉しい、ありがとう富岡君。

 

「寂しがり屋だからな、俺は胡蝶たちの知らない夜去の寝顔を知ってるからいい」

私も寂しがり屋ってことぐらい知ってるよ!

自慢してくる富岡君に少し腹が立った、私の知らない夜去の顔を知ってることが嫌だ。

 

「本当に代わってもらっていいの?」

富岡君の返事が返ってくるのを聞いた瞬間、蝶屋敷に急いで帰った。

 

 

「ただいま」

みんなが起きないように静かに玄関の扉を開けた。もうみんな寝てるよね、お風呂に入って私も寝よう。

寝室の部屋を開けると、しのぶと真菰ちゃんとカナヲがまだ起きていた。いつもなら寝ているはずなのに、やっぱり寝れなんだね。

 

「起こしちゃった?夜去は」

 

「私たち寝れないの、夜去をずっと見ていたくて」

 

「姉さんが戻るまで起きてるって言ってたけど寝ちゃった。夜去と手を繋ぎたいから、負けないよ真菰さん」

そんな事を言ってくれてたの可愛い。しのぶもそんな事を言うようになったんだ、前まで男の子が苦手みたいに言ってたのに。

カナヲが夜去と手を繋いで頭を撫でている、本当にカナヲなの?すごく変わった、貴方も夜去に変えてもらったのね。

 

「今からしのぶちゃんと夜去のもう片方の手を誰が繋ぐか決めようとしてたの、カナエちゃんもする?」

絶対にする、カナヲが羨ましい。手も繋いで頭も撫でている。

 

「私もする。カナヲは何でもう繋いでるの?」

 

「私はお姉さんだから」

お姉さんなら手を繋げるの?それは少しずるくないかな。でも姉になったら結婚できない、それはそれで嫌だ。

じゃんけんで決める事になったが運が良かったのか私は二人に勝つことができた。

二人は手を繋げなかったからか夜去の頭を撫でている、カナヲは手を繋いだまま寝てしまった。

みんなに好かれすぎではないだろうか、いやこれからも増える気がする。

男性も夜去のことを好きになってしまうから、少し頭が痛くなった。

 

「姉さん、真菰さん夜去の体を見て。深い傷がたくさんある、また無理したんだと思う」

「それに男性でこんなに手足、体が細いのも異常だと思う。体重もすごく軽いし…」

しのぶの言う通りだ、何かを隠している。

私たちに知られないようにずっと、でもそれがどんな事かは想像もつかない。

 

「夜去は何か隠してるよ、会った時から気付いてた。でも私は夜去が話してくれるのを待ちたい」

真菰ちゃんは私たちより前から知ってるもんね。そして信じてるんだ、私も信じたい。

三人で指切りをした、絶対に夜去を死なせない事を守り抜く事を。

 

「どんな人を好きになるのかな?」

 

「誰か一人を好きになるのかな。二人に言っておきたいの、私は夜去のことが好きで好きでたまらない」

言ってしまった、二人も同じ気持ちだと思う。

二人のために身を引こうかと思った時もある、でもそんな事はできなかった、できるわけがなかった。

 

「私も姉さんと同じ、夜去の事を…あ…いしてるの。夜去が最初で最後の好きな人なの」

しのぶもそうなんだ私たちやっぱり似てるね、姉妹なんだね。

 

「私も同じだよ、大好きで離れたくない。夜去がいなくなったら恋という感情はいらない」

三人の女性がこんなにも横で言ってるのにぐっすり眠ってるなんて馬鹿と言いたい。

でもその顔を見ると愛おしいという感情で埋め尽くされてしまう。

 

「夜去はかぐや姫みたいじゃない?」

しのぶの言う通りだ。みんなから好かれるし、消えてしまいそうだし、違うのは性別くらいだ。

私たちはかぐや姫に恋した貴公子だ、物語では誰とも結ばれなかった私たちはどうなるのかな。

結ばれなくても夜去とずっと一緒にいられたらそれでいい、やっぱりできることなら結婚をしたいな……

私たちは死ぬまで貴方の事を想ってます、いや死んでも想ってると思う。

 

 

 

日常回を少し書いてもいいですか?三人との日常もあります

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