「姉さん私すごく緊張してきた、どうしよう…」
「大丈夫、しのぶは下弦の鬼を一人で倒したんだもん。絶対にみんな認めてくれる」
お館様から柱として力を貸してほしいという手紙が届いた、鬼の首が斬れない私にこんな日が来るとは誰も思ってもいなかっただろう。
それを一人だけずっと馬鹿みたいに信じていた人がいた、夜去の為に私は今日柱になる。
「しのぶさんは僕の憧れです」
私の方こそ夜去に憧れている、どちらも憧れているのを少し可笑しく思う。
「ありがとう、夜去のおかげ。あの日、貴方がいなかったら私は…」
毒を飲む事をやめていなかったら、私は今こんな風に笑えていただろうか、生きていられただろうか。
あの時から夜去が私の特別な存在になった、これから先もずっとこの気持ちは変わらない。
「しのぶさんが立ち上がったからだよ、貴方はどんなに苦しくても諦めずに戦ったんですよ」
「そんな事ない」
夜去は少し大袈裟に言い過ぎだと思う、なんでそんなに言えるの?
私は姉さんのようには戦えないし、他の柱の皆さんのようにも戦えない。
姉さんには大丈夫よと言われたが、柱の役割を果たせるか心配だ。
「しのぶさんならどんな壁でも乗り越えられるよ」
「だって、ずっと僕が憧れている蟲柱・胡蝶しのぶなんだから」
「もう、わかったわよ!本当に蟲柱になったらどうするの!?」
「私は別にいいけど…」
夜去はいつだって私の背中を押してくれる、いつか私も押してあげる側になりたい。
貴方を守れる柱になるから、待っててね。
お館様の屋敷に着くと、他の柱の方もいた。
迫力が凄すぎて押しつぶされそうだ、横にいる姉さんでさえいつもと違く感じる。今にも消えてしまいそうな夜去と柱は正反対だ。
鬼の首が斬れない隊士という事もあり、柱の方からはよく見られる。
でも負けない、私は明月夜去の憧れだから。
「しのぶちゃん!おめでとう、柱としてこれから一緒に頑張ろうね!」
「蜜璃さん、まだ早いと思いますけど……」
「でも、ありがとうございます」
蜜璃さんとは前の任務で一緒になった時から文通をしていた。
私の恋の話、夜去の話もたくさん聞いてもらっている…
今日は私ともう二人柱になるみたいだ、一人じゃなくて少しほっとした。
「みんなよく来てくれたね」
心に直接響く声が聞こえた、お館様の声は相手を心地よくさせる、目を閉じていると宙に浮いているような感覚がする。
お館様が現れた瞬間にその場にいた全員が膝をついた。
新しく柱になる私たち三人だけ少し遅れてしまい、私は慌てて横の姉さんの真似をした。
「しのぶに有一郎に無一郎、十二鬼月の討伐おめでとう」
「しのぶは新しい鬼の倒し方を見つけ、下弦の鬼を倒した。有一郎と無一郎は鬼殺隊に入って二ヶ月で下弦の鬼を倒した。三人は本当にすごい、私の自慢の子供たちだよ」
「お褒めに預かり光栄です……」
声が震えているのがわかる、上手に言えたか心配だ。
「緊張しなくていいよ、私は鬼殺隊の皆を我が子のように思っているからね」
「しのぶ、有一郎、無一郎、柱になりどうか力を貸して欲しい」
お館様が微笑むのを見て、体の震えが収まった。お館様にも認められていることを私は嬉しく思う。
私たちは柱となり鬼殺隊にこれまで以上に力を貸すことを親方様に誓った。
「霞柱・時透有一郎、時透無一郎」
「蟲柱・胡蝶しのぶ」
「これから鬼殺隊を柱として支えてね、みんな三人に色々教えてあげてほしい」
私と姉さんは驚きを隠せなかった、夜去の言っていたように蟲柱となったからだ。
夜去は未来がわかるの?そんな人いるだろうか、私は信じられない。でも信じられなかった魔法は存在した、絶対にない話ではないと思う。
柱就任が終わると柱合会議がそのまま始まった、私と姉さんは夜去のことが気になりすぎて会議の内容が頭に入ってこない。
「カナエ、しのぶどこか上の空だけど、どうかしたのかな?」
「すみませんお館様、私が蟲柱になると前から言っていた人がいるんです…」
親方様は少し驚いた顔をして、先程の顔に戻った。
「その子の名前はなんて言うのかな?」
「明月夜去と言います」
その場にいた全員が驚いていた、お館様も今度は驚きを隠せていない。
夜去の事を知らない柱もいるのに、何故か全員知っているようだった。
沈黙が訪れた空間に、水柱の声が響く。
「俺と義勇と真菰は最終戦別の時、夜去に助けられたんだ。夜去がいなかったら俺たち三人は生きていない」
「義勇と錆兎と真菰が最終戦別に行った時は誰一人として死者が出なかった年だね」
最終戦別で死者が出ていない、あの選別でみんな生きて帰れた年があったのか…そこに夜去もいた…
次に話を始めたのは姉さんだった、姉さんが助けられた事は私も知っている、私も夜去に助けられた。
「私も夜去に助けられた。夜去は私を守るために上弦の弐と朝まで戦ってくれた。肺を凍らされても、腕を凍らされても立ち上がった、私と真菰ちゃんのために」
「私の夢を初めて応援してくれた人で背中を押してくれた人なの」
「そして私のあい…」
姉さんそれ言ってたら恥ずかしさで死んでたよ?私も同じだから……言いたくなるのもわかるけど、今は我慢しよう。
「逆じゃないのか!?胡蝶が夜去少年を守ったんじゃないのか!?他の隊士から言われているのに、その少年は何故否定しない!」
炎柱さんと音柱さんが声を荒げて姉さんに聞いている、ずっと周りから思われている首を斬れない隊士が花柱に守られたと。
それでも夜去は何も言わなかった。何で言い返さないのかと聞いた事がある。
夜去はカナエさんとしのぶさんがその笑顔を見せてくれるなら、そんな事どうでもいいと言ったんだ。
その笑顔というのが胸にずっと引っかかっていた、けどそれは聞いてはいけない気がしてずっと聞けていない。
「夜去が言ってたの、私としのぶがその笑顔を見せてくれるなら別にどうでもいいと…」
蜜璃さんが泣いている、本当にお人好しすぎるよね、馬鹿がつく程。
そんな部分も含め、夜去の全部が私は大好きなんだ。
「私がね夜去にカナエを助けてくれたお礼がしたいと言ったら、夜去は何を要求したと思う?」
「カナエとしのぶが蝶屋敷のみんなと過ごせる時間を一日でいいからくださいと言ったんだよ」
だからあの日、いきなり私と姉さんが休みになり夜去が蝶屋敷の仕事を任されたんだ。
夜去のおかげで蝶屋敷のみんなの想いを聞くことができた。
どうしてそこまでしてくれるの?私たち何か夜去にしてあげられた?何もしてないよね…
人の前で泣く恥ずかしさも忘れて、私と姉さんは泣いてしまった。
いつの間にか姉さんも涙を見せてくれるようになった、夜去が姉さんを取り戻してくれたんだ。
私たちはよく夜去に泣かされるから、帰ったら何か仕返しすることを姉さんと約束した。
「俺と無一郎も夜去さんに助けてもらいました。そして俺たち二人をまた繋いでくれた、夜去さんのおかげで進む道が見つけられたんです」
「あの人のようになりたいと思っていたら、柱にまでなった。柱になってもこの想いは変わらない夜去さんは俺と無一郎の憧れです」
柱と偶然にもこれほど繋がる事があるんだろうか…
「有一郎と無一郎のことも助けていたんだね。夜去はすごい子だね、私も会ってみたい」
「夜去はずっと心を閉ざしていた鎹鴉の心も照らした、誰もその鎹鴉の心を照らせなかったのに…あの子は簡単にそれをした、本当にすごい子です」
親方様の鎹鴉が舞い降りてきて話を始めた。
夜去と朝は深い絆で結ばれているとずっと思っていた、そんな過去があったんだ。
いつも一緒にいるしあれほど鎹鴉と隊士が仲睦まじくお話をしたり、遊んでいるのを私は見た事がない。
「私も夜去の事をとても大切に思ってしまう!それは伊黒さんも同じなの。前三人でご飯を食べに行った時もないはずの記憶が頭の中に浮かぶの!」
夜去と会った人は全員が同じ現象にあっていたんだ、私だけではなかった。
前三人で食べに行ったと言っていた、やっぱり蜜璃さんの事だったんだね。
それより女性とご飯を食べに行ったことを何故私に言わないの?今日詳しくお話を聞かないといけない。
私も一緒に行ったことないのに、今度二人で絶対に行こう。
「伊黒が甘露寺と一緒にその少年を連れて行くなんて、派手に珍しいな!というかありえないだろ…どんなやつなんだ」
「うるさいぞ宇髄。夜去は俺にとって甘露寺と同じくらい大切な存在だ、それにとても可愛い」
「俺と甘露寺は夜去に幸せになってほしいと思ってる」
「……!」
姉さんが言ってたのに、蛇柱の伊黒さんは蜜璃さんと男性が関わるのを嫌っていると。夜去だけは許される、これもまた異常な事だと思う。
「夜去は小芭内にそこまで言わせてしまうんだね」
柱合会議の殆どが夜去の話になってない?大丈夫なのかな?蝶屋敷で今何をしているのか気になる…
今、夜去と二人で過ごしている真菰さんが羨ましい、姉さんも同じことを考えている、顔からいつもの余裕が感じられない。
あまり話すことが多くなかった事もあり、柱合会議はその後すぐに終わった。
お館様が屋敷の中に入って行った後、柱だけの話し合いが始まった。何の話かと思えば今日の親睦会の話しだった。
私と姉さんは早く帰りたかった、冷めているのではなく夜去に早く会いたいからだ。
煉獄さんと宇髄さんと蜜璃さん以外あまり乗り気ではない気がする、二人が次に言った言葉で他の柱はみんな親睦会に参加すると言い始める。
「夜去という少年に会いたい、蝶屋敷で親睦会をしよう!」
「派手に賛成だな、誰が行く??」
「私も夜去に会いたい!伊黒さん、夜去いるのに行かないの?」
蜜璃さんは少し危ないな、夜去が惹かれて好きになってしまうかもしれない。
私に勝てる要素なんてない…けど夜去が言ってたな…
私は背が低くて可愛いと、それに美人とも言われた…他の人から言われれたら腹の立つ言葉だけど夜去に言われたらすごく嬉しい。
「なら俺も行く…」
夜去に会うためだけに?伊黒さんも夜去が好きなんだ…
「夜去がいるなら俺と義勇が行かないわけにはいかない」
いや別にそんな事はないと思いますけど、絶対にこの二人は会いたいだけだ。
私と姉さんが一番危険視している二人、隙があれば夜去を水屋敷に連れて帰り泊まらせている。
「俺と無一郎も行かせてください、久しぶりに会いたいです」
二人は絶対に同性だけど夜去の事が好きだ。私と姉さんにはわかる、水柱を知っているから。
「俺も参加してやるよぉ」
「なに物珍しく見てる、俺を見るな!!」
不死川さんが親睦会に参加するのが珍しかったのかみんな驚いていた。
夜去に会うために参加するのかな…本当にどれほど好かれるのよ、嫉妬で頭がおかしくなりそう…
「私も参加させてもらう」
悲鳴嶼さんまで!?悲鳴嶼さんは私と姉さんの恩人だ。悲鳴嶼さんと夜去が一緒にいるのは想像がつく。
正反対な二人。目を離すといなくなりそうな夜去と、いつでもその場所にいてくれそうな悲鳴嶼さん。
「蝶屋敷大丈夫かしら…壊れないといいけど…」
みんな来るの?絶対みんな夜去に惹かれてしまう…泊まるみたいな事にならないといいけど、頭が痛くなってきた。
姉さんも焦っている今でさえ二人の水柱と夜去を取り合ってるのに。もっと増えてしまえば一緒にいる時間が少なくなるからだ。
夜去もこんなに沢山の柱に会ったら恐怖を感じるはずだ、私も最初存在感だけで足が震えたから。
夜去の事をこんなに想ってくれてる人がいるんだよ、まだまだ沢山いる。
だから一人で抱えなくていい。貴方が消えてしまいそうなら私が抱きしめる、そして離さない。
夜去が私に手を差し伸べてくれたように今度は私がするから。私はどんなことでも受け入れる。
夜去がどんな風になっても、例えいなくなっても貴方だけを愛す。
すごく恥ずかしいな…でもいつか私の口から伝えるから待ってて。
日常回を少し書いてもいいですか?三人との日常もあります
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イーオ
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ヨロシクナイ