雲居の空   作:くじぃらぁす

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明日も明後日も

「カナエ姉さん、しのぶ姉さん。私を最終選別に行かせてください」

生きて戻れる保証はない、みんなが待っている蝶屋敷に生きて帰ってこれないかもしれない。

でも私が何よりも怖いのは夜去を失うこと。

ずっと笑顔でいてほしい、幸せになってもらいたい。

私は姉として、夜去の幸せを何よりも願っている。

 

「カナヲ………まだ行かせられない」

姉さんたちには反対されると思っていた、それは二人が私のことを心配してくれているからだ。

いくら二人から反対されても私の意思は変わらない。

もう夜去には傷ついてもらいたくない、前みたいな姿を見るのはもう嫌だ。

夜去は一人で背負ってしまうから、今でも私たちには想像もつかない事を一人で抱え苦しんでいる。

夜去は無理をしてでも自分を犠牲にしてでも助けを求めている人、仲間を守る。だから誰かが夜去のことを守ってあげないといけない。

その誰かが私でありたいんだ。

 

「お願いします」

その後も姉さんたちには反対されてしまった、私がまだ花の呼吸を完璧には使えないから。

カナエ姉さん、しのぶ姉さん本当にごめんなさい。

私は二人には内緒で最終選別に行くことを決めた、明日の朝早く蝶屋敷を出よう。

 

 

「夜去、今日は私と一緒の部屋で寝ない?」

考えたくないが頭をよぎる、もう夜去の顔を見れないかもしれない、手を繋げないかもしれないと。

だから今日だけはずっと一緒にいたい。

 

「カナヲさん……」

上手く笑えているかな、不安な気持ちにさせていないかな。

夜去にも最終戦別に行くことを伝える気はない、いや反対されるのが怖くて言えない。

いつもなら顔を紅くして、今度ねと誤魔化されるのに…今日は一緒に寝ますと言われ嬉しかった。

まだ自分から姉さんとは呼んでくれない、いつか自分から呼んでくれるかな、それを聞く事はできるかな。

 

二人で布団を敷き、床に就く準備をした。

本当の事を言えば、たくさんお話をしたい。もしかするとこれが最後になるかもしれないから。

夜去はこういう事には感が鋭いから気付かれてしまいそうで言えない。姉さんたちの好意には全く気付いてないのにね。

少し前に部屋から出て行ったっきり戻ってこなかった。何してるんだろう、早く帰ってきてよ…

 

「カナヲさん、少しお話ししない?暖かいお茶持ってきたから」

二人でもう少しお話しできると思うと心が躍る。

もしかして気付かれてしまっているのかな、それなら夜去は何でもわかってしまうんだね。

 

「カナヲさん、今日はお月様が綺麗だね」

本当だ、今日は満月でお月様がとても綺麗だ。こんなにも明るく暗い夜を照らしてくれているのに気付けなかった。

 

「カナヲさん僕に話してくれない?」

不安と恐怖に包まれていた私の心をお月様のように照らしてくれる。

私だけではない、姉さんたち、柱の皆さんも夜去に救われた。

話すつもりはなかったのに、でも夜去に言われたら私は断れない。

 

「私ね……」

反対されたらどうしよう、そんな事を考えてしまい怖くて聞けない。

夜去にだけは反対してほしくない、夜去が私の背中を押してくれたらどんな事だって乗り越えられる。

でも今の私を信用はできないと思う、安心させられるほどの力があるわけではないから。

 

「カナヲさんゆっくりでいいから」

夜去は私の手を握ってきた、いつもなら恥ずかしがるのにこういう時だけ…

いつもなら細くて小さく少し頼りない手だけど、今はすごく安心する手だった。

 

「明日から最終選別に行くの」

言ってしまった、怖くて顔を見れない。

姉さんたちと同じように、不安と恐怖が顔には浮かんでいるのかな。

 

「カナヲさんが自分で決めたの?」

すぐに反対されると思っていた私にとっては意外な返答だった。

 

「そう、私が自分で決めた。姉さんたちにも内緒で行くつもり」

姉さんたちに反対されても諦められなかった。

命を懸けて夜去を守ると決めた、だった私の大切な大切な弟だから。

 

「自分で決めたのなら僕は応援します」

「カナヲさんを信じて待っています」

私の事を信じてくれている事が嬉しく、夜去の胸に顔を埋めて泣いてしまった。

 

「なんで私を信じてくれるの??」

 

「ずっとずっと前から信じています。それにカナヲさんも僕を信じて今も待ってくれているから」

夜去は時々意味のわからない事を言う、わからないのには変わりないけど何故か私には分かる気がする。

自分でもあまり何が言いたいのかわからない。

 

「それに……僕の姉さんは弱くなんてない」

今のは私の事を姉さんと言ってくれたの?

夜去の顔を見ると顔を紅くし下を向いていた、とても可愛い、可愛すぎる。

もっともっと聞きたい、カナヲ姉さんと呼んでくれるのを聞くためにも絶対に戻る。

私は絶対に負けない、だって私は胡蝶カナエと胡蝶しのぶの妹であり、明月夜去の姉だから。

 

「カナヲさん、最終選別ではこれを使ってください」

私は夜去から日輪刀を渡された、私が受け取っていいものなんだろうか。

これも大切な人からもらった大切な日輪刀だと思う、手離さずにいつも持っているから分かる。

 

「大切な人のだよね?」

 

「はい。姉さんが使っていた日輪刀です」

夜去にはお姉さんが二人いると言っていた、だから二つの日輪刀を持ってたのかな…

いつも日輪刀と羽織を肌身離さず持っている、それほど大切な物なんだ。

よくこの日輪刀を使っているから最終選別を終えたら返そう。

そういえば、もう片方の日輪刀を使っているのを私は見たことがないな…

 

「一緒には行けないけどカナヲさんの事を想ってるから、一緒に戦いたい」

私もいつも夜去の事を思っている、それは一緒だね。

夜去が一緒にいてくれるなら、私はどんな困難も乗り越えられる。

 

「夜去、本当にありがとう」

私は気が付くと夜去を抱きしめていた、カナエ姉さんたちの気持ちがわかる。

抱きしめると細いのがよくわかる、蝶屋敷に来る私たちと同じ年頃の人を見るともっと筋肉がある。

自分が傷つきながらも、この細い体で沢山の人を助けてきた。

これからは私が夜去を守る。

 

「恥ずかしい!早く寝ようよ、明日早いんでしょ!」

 

「照れてるの?手も繋いで寝るんだよ、私の布団においで」

そう言ったら何も言わずに私の布団に少しだけ入ってきた、顔を覗くと見ないでと怒られてしまった。

これを見ると誰でも独り占めしたくなってしまう。本当に可愛すぎる、愛おしすぎて仕方ない。

夜去が寝たのを確認し、少しだけ寝顔を見たあと手を繋ぎ、私も目を閉じた。

 

 

夜明け前には目が覚めた、横では夜去が私の手を握り寝ている。

無意識の内に頭を撫でていた、起きていたら恥ずかしい!とか言うんだろうな。

もっと手を繋いでいたい、顔を見ていたい、頭を撫でていたい。でも行かないと、みんなが起きてしまう。

手を離すと夜去の顔は曇り、うなされていた。怖い夢を見ているんだと思う、なかなか夜去の側を離れられない。

 

「夜去、一人にさせてごめんね。帰ったらまた手を繋ご、その時はもう離さないから」

「行ってきます」

夜去の日輪刀と羽織を持ち、足音を立てずに玄関へと向かう。

履物を履き扉を開けると、寝ているはずの蝶屋敷のみんながいた。

 

「なんで……」

 

「夜去に言われたの。カナヲさんを信じて、応援してあげてほしいって」

「カナヲの事を私たちは信じていなかった……本当にごめんね」

寝たふりをして、私が寝た後で姉さんたちの元に行ってくれたんだ。

信じれなくて当然です、まだ姉さんたちのようには戦えないから。

 

「カナヲ一度決めたらどんな事があっても逃げ出さないで」

「頑張ってきなさい、応援してるから。信じて待ってるから」

私は絶対に逃げないよ、夜去の未来を守るって決めたから。

姉さんたちに黙って行く事がどこか心に引っ掛かっていた、今は清々しい気持ちだ。

絶対に生きて戻ろう、夜去の元に、姉さんたちの元に。

 

「これ夜去と私から」

「私も夜去と同じ。カナヲの事を信じてる、帰ってきて」

渡された物はおにぎりだった、私の為に二人で…

まだ暖かい、夜去はずっと起きてたの?もしかして今日寝ていないの?

朝横にいないと私が心配するから、私の横にいてくれたのかな。

私の為にここまでしてくれたんだ、ありがとう。

直接言いたいけど今はゆっくり寝て休んでほしい。

 

「ありがとう、アオイ」

もう大丈夫だ、私の事を待ってくれている人が沢山いる。

帰ってくる以外の選択肢は私にはない。

 

「行ってきます」

蝶屋敷がどんどん離れていく、手を振ってくれているみんなが小さくなっていく。

角を曲がれば蝶屋敷が見えなくなる、その前にもう一度手を振ろうとしたその時。蝶屋敷から空のような羽織を着た夜去が私を追いかけ来るのが見えた。

私は今歩いて来た道を、走って戻った。

 

「夜去どうしたの!?裸足だよ、すごく血が出てる」

 

「いってらっしゃいと言いたかった。起きてようと思ったんだけど…」

起きてなくてもいいんだよ、ゆっくり寝ててほしい。

 

「ありがと夜去。しのぶ姉さんに手当てしてもらわないとダメだよ?」

「それから…いってきます」

夜去はまだ何か言いたそうにしていたけど下を向いてしまった。

帰ってきたら聞いてあげよう、その為にも生きないと。

 

「カナヲ姉さんなら絶対に大丈夫です。絶対に戻ってきてください」

「いってらっしゃい」

夜去から姉さんと言ってくれた!?それがずっと言いたかったの!?夜去が自分から姉さんと言ってくれた今が一番幸せだ。

夜去は言った後で恥ずかしさが押し寄せたんだと思う、下を向き手を握り占めていた。

また私は無意識で抱きしめていた、やはり私は夜去の事が何よりも大切なんだ。

 

「戻ったらまた一緒のお布団で寝よ、たくさんお話もしようね」

 

「恥ずかしいよ……一緒のお布団は僕が眠れないです!」」

 

「夜去が約束してくれたら、姉さん頑張れる気がする」

私もカナエ姉さんたちと同じだ。夜去の反応が可愛いから、意地悪をしてしまう。

 

「なんでみんな僕に意地悪するの?」

「約束したら頑張れるの?それなら約束します…」

みんな夜去の事が大切なんだよ、私もその一人なんだ。

指切りまでしてくれるとは思わなかった、楽しみが一つできてしまった。

 

「夜去、夜は早く寝るんだよ?ご飯もしっかり食べてね、任務も無理はしないで」

「それから…」

 

「わかったよ…カナヲ姉さん。僕の方が年上なのに…」

 

「夜去は私の大切な弟だから。貴方のことが何よりも大切なの」

「そろそろ行くね」

ここで逃げることは許されない、夜去を守るということはもっとずっと険しい道のりになる。こんなところで挫けている暇は私にはない。

一週間後に笑顔で会おう、絶対に戻るから待っててね。

 

 

一週間はあっという間に経った。

私は最終選別を突破できたんだ、生き残った人は私を含め片手で数えられるくらいだった。

夜去が受けた年は誰も犠牲者がでていない、沢山の人を守る力を夜去は持っている。

でもその力を自分自身に使うのはいつも後回しだから心配で仕方ない。

体中が痛い、疲れていないわけではない。それでも蝶屋敷に走る足は止められない、早く会いたい、触れたい。

この日輪刀と羽織にたくさん助けられた、夜去が近くにいてくれると思ったら勇気が湧き一歩踏み出せた。

今何をしているんだろう、ご飯を作っているのかな?夜去に言わないと、おにぎり美味しかったって。

 

角を曲がると蝶屋敷が見えた、暗くてよくは見えないけど蝶屋敷の前で誰かが立っていた。

見えなくても誰かわかる、私の世界で一番大切な人。

私を外で待ってくれていたの?寒いから外で待たなくてもいいのに、風邪を引いてしまう。

体の痛み、疲れなど忘れ夜去の元へ走った。

 

「夜去ただいま」

 

「カナヲ姉さん!おかえりなさい」

とても嬉しそうに綺麗に笑った。私はこの笑顔を守りたい、ずっと笑顔でいてほしい。

 

「なんで外で待ってたの!風邪引くよ?」

「手もこんなに冷たい…どのくらい外で待ってたの」

外で待ってくれていたことはとても嬉しい、でも少しだけ姉として言わないと。

 

「早く会いたかったから…」

「みんな待っています。暖かいご飯を作ったから、みんなで食べましょう」

夜去はずるい、早く会いたかったからと言われてしまったら私は何も言えない。

 

「カナヲおかえり」

姉さんたちからはよく頑張ったねとたくさん褒められた。少し恥ずかしかったけど、嬉しかった。

暖かいご飯をみんなで食べながら、他愛もない会話をした。

一週間の苦しかった事、辛かった事も全て吹き飛んだ。

私は本当に幸せだ。

 

 

蝶屋敷に戻り三日が過ぎた日だった。隊服が届き、刀鍛冶の里からは日輪刀を持ってきてくれた。

私よりも姉さんとアオイが興奮していた。夜去はどこかに行ってしまって今はいない。

鬼殺隊士になれた実感が湧いてくる。これで一緒に戦える、守ることができるんだ。

鬼殺隊士の持っている日輪刀は誰一人として同じ物はない。

 

「これが貴方だけの日輪刀です」

刀鍛冶さんが渡してくれた日輪刀は夜去の渡してくれたのと瓜二つだった。

同じ物はないはず、なのに何故まったく一緒なの?

体に悪寒が走る、夜去の隠している事が想像もつかない。

 

「カナヲどうして泣いてるの?」

 

「夜去………」

「全く同じ日輪刀は存在しますか?」

私たち一人一人に合った物を一からつくっているので、同じ日輪刀は存在しないと言われた。

でもこの日輪刀とまったく同じものを使っている人を私は知っている。

 

「カナヲどういうこと!?夜去がどうかしたの!」

姉さんたちからは不安と恐怖の感情が読み取れた、私も姉さんたたちと同じ気持ち。

 

「夜去の持っている日輪刀と全く同じなんです…」

「夜去何を隠してるの…」

夜去を失ったら私は二度と立ち直れない。

夕方になって蝶屋敷に戻ってきた、何をしていたかというと迷子になった子猫を家族の元に連れて行っていたみたいだ。

カナエ姉さん、しのぶ姉さん、真菰さんにどこか行くときには伝えて行ってと怒られていた。

誰も同じ日輪刀を使っている理由を聞けなかった、聞くのが怖かったんだと思う。

 

「姉さんたちにまた怒られたね。こっちにおいで」

「今日は私と一緒に寝よっか。話したい事もあるし」

半泣き状態の夜去を私はしばらく慰めた。三人が怒るのは、夜去の事が大好きで大切だからなんだよ。

同じ日輪刀を持っている理由、隠している事を怖くても聞かないといけない。

 

 

「私たちに隠している事ない?自分一人で抱えこんでない?」

繋いでいる手を握る力が強くなり、一緒に寝ている私のお布団に潜ってしまった。

疑心が確信に変わった、私たちに何かを隠している。

 

「今はまだ話せない?でもいつか話して、姉さんはいつでも夜去の味方だから」

無理矢理聞くことはできなかった。

絶対に自分から話してくれると私は信じている。

夜去の事を傷つける者を私は絶対に許さない。

 

「夜去は一人じゃない、一人で抱えている事も私が半分抱える」

「もう泣かないで?私がずっと一緒にいるから大丈夫」

絶対に一人にしない、一人にさせてはいけない。私がずっと一緒にいるんだ。

 

「おやすみ、私の大切な夜去」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




先の方まで考えてたら出すの忘れてました!

日常回を少し書いてもいいですか?三人との日常もあります

  • イーオ
  • ヨロシクナイ
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