今夜から那田蜘蛛山掃討作戦が始まる。
しのぶさんと義勇さん二人の柱が参加する事からも十二鬼月の鬼との戦いになるとわかる。
僕と真菰さんカナヲ姉さんもしのぶさんと一緒に行く予定だ。
那田蜘蛛山では大勢の犠牲者が出た。
僕は全員を助けたい、無謀な事を言ってるのは自分でもわかっている、でも諦めたくない。
「夜去、準備できた?そろそろ出ようと思う」
しのぶさんにとっては柱になり初めての大きな任務だ。
緊張していると思う、不安なはずだ。だから心配させないようにする、迷惑をかけないようにしよう、出来れば支えてあげたい。
「わかりました」
姉さんたちの羽織と日輪刀を抱きしめ、立ち上がり玄関の方へと向かう。
三人の手に背中を優しく押された気がした、それは輝夜姉さん、咲夜姉さん、入夜さんだとすぐにわかる。
頑張ってきなさい、僕にならできると言ってくれている気がした。
「ありがとうございます。輝夜姉さん、咲夜姉さん、入夜さん」
「いってきます」
救える命がたくさんある、守りたい命がたくさんあるんだ。
誰にも泣いてほしくない、辛い思いをしてほしくない。
絶対に諦めない、そして誰も死なせない。
「夜去絶対に戻って来てね。私待ってるから」
カナエさんにはまた不安な思いをさせてしまう気がする。
でも前とは違いカナエさんは僕を送り出してくれた。カナエさんに認められた気がして嬉しかった。
「はい!みんなで絶対に戻ってきます」
「絶対だよ?私は夜去に言いたいことがあるんだからね!?」
お話を聞くためにもカナエさんの元に戻ってきます。
「夜去、私も言いたい事あるんだから…姉さんだけじゃない」
「私もあるの。まだ言える気はしないけど…」
カナヲ姉さんは何故か呆れている、そして優しく頭を叩かれた。
叩かれた理由はわからないけど、みんなが笑っていた。それが嬉しくて理由を聞くのは忘れていた。
「いってきます」
那田蜘蛛山に着くと、刺激臭のある匂いが周辺に漂っていた。
血の匂いが嫌というほどしてくる、沢山の人がここで亡くなっている。
ここで命を失ったのは、人々の幸せな生活を守るために戦った鬼殺隊士または平穏に暮らしていただけの人たちだ。
鬼殺隊士の皆さんの想いは僕が受け継ぎます、だからどうかゆっくりしてください。もう誰も貴方たちのような辛い想いをさせません。
僕にできる事なんてこのくらいだ。
どうか安らかに眠ってくださいと心から祈った。
「夜去は優しすぎる、それが私はとても心配」
「大丈夫です、しのぶさん」
僕と真菰さん、しのぶさんとカナヲ姉さんの二手に分かれて行動することになった。
一緒に行動する鬼殺隊士の皆さんは最終選別で一緒に戦った人たちばかりだった。
懐かしい全員に生きて会えた事が嬉しい。皆さんが助けに来てくれて、一緒に乗り越えたあの日の出来事は一生忘れられない。
任務が始まって、一時間が経つが犠牲者はまだいない。それはあの時のように助け合ってきたからだ。
別の場所にいる人たちの事を心配していると皆さんに言われた。
僕なら沢山の人を助けられると、俺たち私たちなら問題ない大丈夫だからと行け。何より次に言われた言葉が何よりも嬉しかった。
「夜去が危ない時はまた全員で助けに行くから」
真菰さんともここで少しのお別れだ、真菰さんはこの班を任せられているから離れられない。
「無理は絶対にしないで夜去。絶対に生きて会おうね。また手を繋いで一緒に寝ようね」
「言わないで…言わないでよ!」
最終選別を一緒に乗り越えた人たちにも笑われ、頭を撫でられた。今までで一番恥ずかしいかもしれない。
その後も真菰さんには意地悪をされた、抱きしめられたり頭を撫でられたりと散々だった。
「夜去は私たち全員の希望。貴方なら絶対に大丈夫、私たちは知ってるから」
今度は沢山の人に背中を押してもらった。
多くの人が僕のことを信じてくれている、少しは姉さんたちに近づけたのかな…
「夜去自分を信じて進んで」
後ろを向かない事、下を向かない事、そして自分を信じて進む事を真菰さんと指切りをして誓った。
「夜去……大……き」
真菰さんは顔を紅くしている、声が小さくて聞こえなかった。
なんて言ったんだろうか、今度聞くことにしよう。
悲鳴が聞こえる方向へと急ぐ、日輪刀に手を添えていつでも戦える態勢に入る。
悲鳴の聞こえる場所で見た光景は、鬼殺隊士が他の鬼殺隊士を攻撃する光景だった。攻撃している人たちは蜘蛛の糸のような物で繋がれ操られていた。
その人たちは僕に言った、仲間を殺してしまう、傷つけてしまう。だから自分たちを殺してくれと。
絶対にできない、僕にできる事は貴方たちを助けることだけだから。
「時の呼吸・一ノ型 朝明の風」
蜘蛛の糸を斬り、操られていた人を僕の後ろに座らせた。他の人からすればほんの刹那。
驚くのも無理はない、瞬間移動を体験したようなものだから。
「殺すことなんてできません、僕にできる事は貴方たちを助ける事です」
「もう少しの辛抱です。みんなで乗り越えましょう」
時の呼吸を使い何度も繋がれそうになる蜘蛛の糸を斬った、このままだといつまで経っても状況は変わらない。
何かこちらから動かないといけない、そんな時二人の隊士が来た。
一人は僕のせいでまた鬼殺の道に歩ませてしまった心優しい人、もう一人は僕の事を子分として可愛がってくれた親分だった。
「夜去さん…!?」
「なんだあのひょろひょろの女は!」
二人が来てくれたんだ、二人なら絶対に倒してくれるここは任せるしかない。
「炭治郎さん!伊之助さん!どこかにこの蜘蛛の糸を操っている鬼がいるはずです、二人にお願いをしてもいいですか?」
「わかりました夜去さん!俺と伊之助に任せてください!」
炭治郎さんと伊之助さんなら絶対に果たしてくれる、それまで絶対にここは守り抜く。
二人が去ってからしばらくが経つと蜘蛛の糸は来なくなった。それは自分たちは無事です、勝ちましたという知らせでもある。
まだまだ他で戦っている人たちがいる、でもこの人たちを置いてはいけない。
「夜去なのか!?」
僕の名前を呼んでくれたのは村田さんだった、最終選別以来の久しぶりの再会だ。
村田さんともお話をしたいが今は時間がない。
「村田さん!この人たちを任せてもいいですか?僕は他の人の元へ向かいます」
「手の届く範囲に助けられる人が沢山いるんです」
「俺を覚えて……」
「ああ大丈夫だ。ここは俺に任せて行け」
二人で約束をした手の届く範囲にいる人を助けると、僕はその約束を今でも忘れていない。
村田さんも僕の背中をばしっと叩き送り出してくれた、今日は送り出してもらってばかりだな…
時の呼吸をたくさん使っているから体は限界のはずなのに体はいつもより軽い。
一度決めたら最後までやり通す、途中で折れてしまえば姉さんたちに怒られる。
僕は二人のようになりたい、そのためにも前へと進む。
次会う事が出来たら、頭を撫でて褒めてくれるだろうか、よく頑張ったねと言ってくれるだろうか。
僕は輝夜姉さんと咲夜姉さんの誇りでずっとありたいんだ。
────
ずっと気になっていた夜去は今何をしているのだろうと、変わってしまってはいないだろうかと。
きっと俺より遥か上に行ってしまう存在、あの時の約束も俺の事もきっと忘れている。でもそれでもいいと思っている、俺だけは絶対に忘れないから。
今日の那田蜘蛛山掃討作戦でもしかすると会えるかもしれないと思った。
多分犠牲者がたくさん出る、その中に俺が入る確率はとても高い。そう考えると山になかなか入れなかった。
それでも夜去に会えるかもしれないと思えば一歩踏み出す勇気が湧いたんだ。
弱いながらも手の届く範囲の人を守るために、臭いがきつくなる方向へと足が勝手に動く。夜去と会うまでの俺なら考えれなかった事だろう。
「夜去なのか!?」
青空のような羽織を見た瞬間すぐにわかった。
俺のことは覚えてないと思う、それでも声をかけてしまった。それほどずっと会いたかったんだ俺は夜去に。
「村田さん!この人たちを任せてもいいですか?僕は他の人の元へ向かいます」
「手の届く範囲に助けられる人が沢山いるんです」
夜去は何も変わっていなかった。いつも人の心配ばかりをして、自分の事は後回しにする心優しいままだった。
そして俺の名前を今でも覚えてくれていた、約束までも覚えてくれていたんだ。
人生で初めて涙を流した、これは嬉し涙だ。
俺に今できるのは夜去が守ったこの人たちを守る事、そして夜去を送り出してあげる事。
「俺を覚えて……」
「ああ大丈夫だ。ここは俺に任せていけ」
やっぱり夜去は先を行ってしまう。
でもいいんだ。俺は夜去を追いかけたい、そしていつか横に並びまた一緒に戦いたい。
だから行け、そして守り抜いてくれ。
「あの女性は誰なんですか?」
「女性……夜去は男だぞ?」
確かにそう言えば綺麗になっていたな…いやいや夜去は男だ、かっこいいの方がいいのか?まあ可愛いにしておくか。
「夜去って…あの鬼の首が斬れない隊士!?」
俺もそれを聞いた時は驚いた、でも俺の想いは変わらない。
一度だけ夜去を悪く言う奴を殴った、全く後悔はしていない。
誰にも夜去のことを馬鹿にはさせない。
「そうだ。それでも誰よりも仲間のために戦っている、馬鹿にする奴は俺が許さない」
「お前たちもわかっただろ?」
「はい、何度も何度も私たちを助けてくれました」
夜去はそうなんだ、本当にすごいんだよ。
多くの鬼殺隊士は柱に憧れているのかもしれない、でも俺は違うんだ。
誰が何と言おうと、いつになっても変わらない。
俺の憧れは明月夜去なんだ。
────
とても酷い臭いがする方から嫌な感じがする。
あまりに臭いが酷いから行きたくない、でもここで行かなければ一緒後悔する。
助けを求めている人がいるんだ、行く以外の選択肢を僕は選ばない。
そこには蜘蛛の鬼と戦っている何人かの鬼殺隊士がいた。
「逃げて!この鬼には勝てない、私たちは毒に侵されているけど貴方はまだ大丈夫だから」
この人たちはもう救えないのだろうか、時の呼吸を使えば毒の進行を遅らす事ができる。
もしかしたらしのぶさんなら治す事ができるかもしれない。
この人たちは無理だと諦め逃げるか、しのぶさんを信じて待つか選ばないといけない。
でも僕の答えはすでに決まっている、しのぶさんを信じて待つ方だ。
「僕は逃げません、絶対に諦めない。皆さんを助けたい、僕も一緒に戦わせてください」
「時の呼吸・四ノ型 可惜夜」
周りにいる人の時間経過は遅くした、自分の体への負担は計り知れない。
とても苦しくて辛い心臓が張り裂けそうだ、時の呼吸の使いすぎだと思う。こんなに苦しいのは上弦の弐そして鬼舞辻無惨と戦った時以来だ。
姉さんたちは僕のためにいつもこれに耐えていたんだ。
輝夜姉さん、昨夜姉さんのことを思えばここで折れてなんていられない。
二人は何度も僕の見えないところで助けてくれていた、また会って感謝を伝えたい。
ずっと四ノ型を使えるわけではない、限界も近いと自分でわかる。
「何なんだお前は!なぜ俺の攻撃が当たらない、俺より速いっていうのか?」
決して早くはないんです、ただ僕にしてみれば貴方は止まっているように感じる。
四ノ型が使えなくなったら、この鬼の速さに僕は付いていけない。そうなってしまえば僕はこの鬼に殺されるだろう、一番嫌なのは毒に侵されている人たちを助けれないという事だ。
そんな時また大きな悲鳴が聞こえた、他にも助けを求めている人が…でも今はいけない……
やっぱり僕は姉さんたちのようにはなれないんだ…
「へぐっ……!」
「何あのでかいの!俺お前とは絶対口聞かないから!!」
悲鳴の正体は僕のことを誇りだと言ってくれた人。
誰よりも速い善逸さんは光だ、暗い状況を変えれる力を貴方は持っている。
「あんなの無理無理無理無理無理!」
「善逸さん、僕と一緒に戦ってくれませんか?」
「えっ!?すっごい美人、顔だけで食べていけそう!何で俺の名前を美人さんが知ってるの!!!もしかして俺に惚れたの?」
「こんな綺麗な女性に言われたら俺あの気持ち悪いのとも戦えるかも!」
伊之助さんもひょろひょろ女って言ってた、あれは僕を言ってたの…?
善逸さんは何故か闘気に満ち溢れている、今は男性だと言ってはいけない気がした。
嘘をついて本当にごめんなさい、次会う時に謝らないと。
「お前はもう毒に侵されている」
「毒!?どうなるの、死ぬの!?」
「やっぱり無理無理」
善逸さんも毒に侵されていたのか…
お願いします、もう少し時の呼吸を使わせてください。
「雷の呼吸・壱ノ型 霹靂一閃」
その後は本の一瞬だった、蜘蛛の鬼の首を目に追えない速さで斬ってしまった。
絶望的な状況を変える姿がとてもかっこよく、憧れた。でもこれだけはどれだけ努力をしても僕には一生できないこと、憧れのままなんだ。
物語の主人公のように助けを求めている人の前に現れ、救いだす事は僕には一緒できない。
「どこに行くの!?」
「行かないと…守れないのはもう嫌だから」
僕が行ったところで時間稼ぎにしかならない。
でも自分にできる事をしたい。僕にできるのは命を繋ぐ事、仲間を信じて守り抜く事。
「最後にあの金髪の少年を庇って貴方も毒を…」
力が使える以上、僕は行きたい。
ここで諦めてしまうのはとても簡単なことだ、ここ乗り越えれば皆で生きて帰れる。
「あと少しなんです、僕なら大丈夫です」
「皆さんも絶対に大丈夫。しのぶさんが助けてくれる、僕はしのぶさんを信じてるから」
辛くても進め、進む以外の道はない。
────
真菰さんから夜去が他の人を助けに行ったと聞き、私とカナヲは必死に探した。
探している途中で隊士にあった、怪我をしている者はいたが死者はいなかった。
夜去どこにいるの、お願いだから私の前に現れて。夜去に会いたい、触れたい。
「もしもし、大丈夫ですか?」
金髪の少年と複数の隊士が倒れていた、おそらく鬼の毒に侵されているんだと思う。
でもこの人達は毒が体に入りあまり時間が経っていなかった事もあり進行が遅い。
解毒薬がある今、ここにいる全員を助けられる。
「私たちを守り戦ってくれた人がいたんです…」
「その人は今も毒で苦しみながらも仲間のために戦っています。お願いです助けてください」
私とカナヲは背筋が凍った、自分が苦しみながらも仲間のために戦う心優しい人をよく知っている。
まだ確定したわけではない、どんな人だったか聞かないといけない。
「どんな人でしたか?何か言っていましたか?」
青空のような羽織を着た綺麗な人、それを聞き夜去だと確信をした。
毒が体に入ってから、まだ時間は経っていない筈だ。早く解毒薬を飲ませないと手遅れになる。
夜去が私を信じ戦ってくれた事を聞いた。一人だけ馬鹿みたいに私を信じてくれている、ずっと私が柱になるとか沢山の人を救うとか言っていた。
夜去が信じてくれている事が私は何よりも嬉しかったんだ。
「あの人がいなくなってから結構時間が経ったんです、早くしないと…」
この人たちは何を言ってるの?毒が体に入り時間があまり経っていないから進行が遅いはず。
もしそれが違えば、辻褄が合わない。何が起きてるのかわからない、でも夜去が何か関わっているのは確かだ。
「カナヲ、夜去の元に行くよ」
カナヲは私が言う前に自分から行動をしていた、カナヲは夜去の事を何よりも大切に思っている。
どこか遥か遠くへ行ったとしても、例え夜去の事を忘れてしまったとしても、それでも見つけ会いに行くから。
私は夜去のためになら何でもできる、愛している夜去のためになら。
今行くから、待ってて。
────
体体中が痛く、呼吸も上手くできない、とても苦しい。時の呼吸はもう使えないと体が言っている。
今の僕に何ができるだろうか、行ったところで迷惑になるだけかもしれない。
今の僕は鬼殺隊士の中の誰よりも弱く力がないとわかる。
でも千寿郎と二人で特訓した日々を、カナヲ姉さん、義勇さん、実誠さん、天元さんに炭治郎さんと稽古の日々を信じたい。
何よりずっと努力をして来た自分を今は信じてみたい。
「カナヲ姉さん力を僕に貸してください、一緒に戦ってください」
カナヲ姉さんは何もできないと言っていたがそんな事は全くない。
今も僕を支えてくれている、勇気を与えてくれる、ありもしない力が湧いてくるんだ。
「だめだよせ!!君では…」
聞こえる炭治郎さんの焦った声、一人の鬼殺隊士に鬼の蜘蛛の糸が向かっている。
時の呼吸は使えない今あの人を守ることができないのかな…
いやカナヲ姉さんが教えてくれたじゃないか、速く動けるしのぶさんの突き技を。
突きで蜘蛛の糸を切ることができると、少しは傷を負うものの命は助けられる。
カナヲ姉さんと稽古した日を思い出す、コツは体の力を抜くだった。
「夜去さん!」
あと少し遅ければ僕もこの人もバラバラになっていた。
僕が助けた人は山を降りて行ってしまった、よかった助けられて。
カナヲ姉さんのおかげで助けることができました、ありがとうございます。
「炭治郎さん一緒に戦ってくれますか?」
僕も炭治郎さんも限界が近い、二人でここは乗り越えるしかない。
「夜去さん体から血が沢山出てます…休んでください俺が戦います」
「僕なら大丈夫ですよ、炭治郎さんが一緒に戦ってくれるなら」
「……わかりました!一緒に戦います、戦わせてください」
「ありがとうございます」
僕と炭治郎さんの前にいる鬼は十二鬼月だ。
二人とも手負いだ、長期戦になれば僕たちに勝ち目はない。
僕はその鬼の蜘蛛の糸から自分と炭治郎さんを守るので精一杯だった、炭治郎さんはまだこの鬼の糸の速さを目で追うことができていない。
時の呼吸を使っていない状態では全部の糸を斬れなかった、すると禰豆子さんが箱から出てきて炭治郎さんを守った。
鬼は妹が兄を守った兄弟の絆に感動していた、そして提案をしてきた。
妹を渡したら、僕たちは二人の命だけは見逃してやるという提案だった。
僕が守れなかったから、この道にまた進ませてしまったんだ。
炭治郎さんと禰豆子さんは何があっても引き裂かせない。
「ふざけるのも大概にしろ!!」
禰豆子さんが鬼の糸に捉えられてしまった、たくさん血が出ている。
糸を切ってあげたい、でも体が動かない。立ち上がらないといけないのに、立つことができない。
体への負担は自分の思っていた以上だった。
「夜去さん、もう大丈夫です。あとは俺に任せてください、今日も夜去さんに俺と禰豆子は助けてもらった」
貴方になら任せてもいいかもしれない、薄れそうな意識の中で炭治郎さんと禰豆子さんが一緒に戦い鬼の首を跳ねるのを見た。
二人の兄弟の絆は誰にも引き裂くことはできないだろう、二人ならきっと大丈夫だと思った。
鬼の首は跳ねたはずなのに、鬼は立ち上がり動けない炭治郎さんに血気術を使おうとしている。
お願いします。あと少しだけ動いてください、もう後悔したくない。
輝夜姉さん、咲夜姉さん、カナヲ姉さん、入夜さん僕に力を貸してください。
「夜去にならできる、私たちはいつも一緒」
力の入らないなのに日輪刀を持てている、一緒に持ってくれているから。
今は動かない足なのに立ち上がっている、体を支えてくれているから。
前にはもう歩けないのに炭治郎さんの元に迎えている、背中を押してくれているから。
「血気術 殺目籠」
炭治郎さんの周りを包囲していた蜘蛛の糸を切ることができた。
「なにお前、一度防いだからなに?」
鬼はもう一度血気術を使おうとしている。もう本当に動けない、毒の進行も遅くはしているが体に回り始めた。
誰か二人を助けて。
「俺が来るまでよく堪えた。後は任せろ」
「よく頑張ったな夜去」
優しく頭を撫でてくれた、憧れの人に褒められたのがとても嬉しかった。
後は義勇さんに任せてもいいのかな、どうか二人をよろしくお願いします。
しのぶさんとカナヲ姉さんの声が聞こえる、僕の顔に沢山の雫が落ちてくる。
僕は大丈夫だよと伝えたい、でも声が出せない。僕にできた事は顔に置かれていた手を握る事だけだった。
二人に伝わったかな…少し疲れました、ちょっとだけ休んでもいいかな…
────
夜去もう少し待ってて、姉さんがすぐに行くから。
早く行かないと私の一番大切な人がこの世からいなくなってしまうかもしれない。
辺りに大きな音が鳴り響く、誰かが何処かで激しい戦闘をしているんだ。多分そこに夜去はいる。
姉さんは日輪刀に手を添えた、鬼の気配がしたからだ。
何人か人がいる、目の良い私にはわかる。水柱様と最終選別で一緒だった人、そして私の大切な夜去がいた。
「夜去!!」
しのぶ姉さんと私は倒れている夜去の元に走った、そして解毒薬をすぐに飲ませた。
夜去の顔にしのぶ姉さんと私の涙がたくさん落ちる。きっと夜去は泣かないでと言うんだろうけど無理だった。
夜去は私たちの手を弱々しく握った、私や姉さんよりも細い手だ。血がたくさんついている、今日どれだけの人を守ったんだろう。
「しのぶ姉さん!夜去大丈夫ですよね!?」
「気を失ってるだけだとは思う、夜去も毒の進行は遅かったから」
気を失っている夜去を私としのぶ姉さんは抱きしめた、少しは自分の心配をしてよ。
命に懸けてでも守ると誓ったのに、守れていない自分に腹が立った。
「富岡さん、なんで鬼を庇っているんですか…?
鬼を庇うのは隊律違反ですよね?」
さっきから鬼の気配がしていた、もしかして夜去を襲った鬼なの?
そうなら私は絶対に許さない、それを庇っている柱も同じだ。
「ああ隊律違反だ。でもこの二人は夜去が命を懸けてでも守った二人なんだ」
そんな時親方様から炭治郎と禰豆子の両名を本部に連れて帰れという伝令がきた。
私と姉さんは追求をしたい気持ちを抑えた。
「夜去終わったよ。帰ろう蝶屋敷に」
しのぶ姉さんが夜去を背中に担いで、私が手を握り蝶屋敷への帰路へとついた。
日常回を少し書いてもいいですか?三人との日常もあります
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イーオ
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ヨロシクナイ