雲居の空   作:くじぃらぁす

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平穏

俺は今療養のため蝶屋敷に運ばれている。

手紙を思い返すと涙が溢れ出す、俺と禰豆子を信じ命を懸けてくれている人が四人もいたんだ。

やはり夜去さんは俺と禰豆子を何度も救ってくれています、感謝を何度しても足りません。

 

柱の皆さんは夜去さんのことをとても大切に想っていて、大好きなんだと感じた。

夜去さんは多くの人から愛され、信じられている。俺もその内の一人だ。

蝶屋敷に行けばまた会えるのだろうか、憧れの人に心惹かれた人に。

とても綺麗になってたな…そう考えたら会うのが少し恥ずかしくなってきた。

 

着くとアオイさんという女性が俺と隠の人を病室まで案内をしてくれた。

蝶屋敷は柱合会議をしているせいかとても静かだと思ったのは病室に入るまでだった。

 

「五回!?五回飲むの!?一日に!!」

「ていうか薬飲むだけで俺の手と足は治るの!?」

病室に響く友のうるさい声、その声を聞けることが今は嬉しくてたまらない。

俺は反射的に声をかけていた。

 

「善逸!!山に入って来てくれたんだな…」

 

「た、炭治郎!!

聞いてくれよ、臭い蜘蛛に刺されるし、あの女の子にガミガミ言われるし。

いいことなんて何もないよ…!!そう言えばひとつだけ……俺に惚れて、俺のことが好きになったとても綺麗な人に会ったんだよ!」

今は善逸の妄想だろとは言わないでおいてあげよう、それだけが心の支えのようだから。

毒に刺されているせいか蜘蛛のようになっており、笑い方も少し気持ち悪くなっていた。

それでも善逸が俺の横にいてくれることがとても幸せだ。

 

善逸の隣の人を見ると…頭に猪の頭を被っていた、変わった人も…

 

「伊之助!!無事でよかった、助けに行けなくてごめんな!!」

二人で一緒に苦難を乗り越えた、伊之助がいたから立ち向かい勝てんたんだ。

一人では絶対に無理だった。

 

「イイヨ、キニシナイデ」

 

「…」

伊之助は喉を潰されているらしい、でも治ると聞き心がほっとする。

自身に満ち溢れていない伊之助は伊之助じゃなかった。

でもすぐに前を向くはずだ、伊之助が強いことを俺は知っているから。

 

病室を見渡すが俺が一番に会いたい人、感謝をしたい人はいなかった。

でもその人はいない、どこにいるんだろう…

 

「あの……アオイさん…」

 

「どうしたんですか?」

アオイさんはとても忙しそうだった、前の任務でたくさんの人が怪我をしたからだろう。

善逸にも手を焼いているみたいだ、申し訳なくなってきた…

 

「夜去さんも蝶屋敷にいますか?」

アオイさんは少し驚いていた、俺が夜去さんを知っていたからだと思う。

 

「夜去もいますよ、怪我が酷いので個室にいます」

怪我が酷いの俺を守ったせいだ…

 

「その人にだけ優しくない!?声が優しくなったし!俺と態度違くない!?アオイさんにとってどんな人なの!」

確かに善逸の時とは声が違う、善逸は耳がいいから俺よりも感じるだろうな…

先程まで怒っているような顔だったアオイさんは笑顔で言った。

 

「夜去は私とカナヲの大切な弟です」

二人はあまり似ていないと思う、本当の兄弟ではないのだろうか。

それでもアオイさんの今の笑った顔は夜去さんにとても似ていた。

 

お昼を過ぎると村田さんが会いに来てくれた。

今回の任務の報告のために柱合会議に召喚されたみたいだ。

柱が怖すぎる、地獄だったと愚痴ばかり言っていた。確かに柱の皆さんは少し怖かったし存在感が凄かった…

 

「でも寝ている夜去が見れた…綺麗だったな……俺が女だったら惚れてた」

村田さんは少し照れながら言った、村田さんもなんだ…

俺も見たいと思ってしまった、でも個室にいるのなら会いにはいけない。

 

「こんにちは、何か言いましたか?」

そこには満面の笑みを浮かべた蟲柱のしのぶさんがいた、何処か狂気を感じた。

笑っているのに笑っていない、村田さんはしのぶさんの笑顔に恐怖してそそくさと帰っていた。

 

「どうしたんでしょうか……

どうですか体の方は?」

 

「かなり良くなってきてます

ありがとうございます」

 

「では二、三日後には昨日回復訓練に入りましょうか」

昨日回復訓練…何か始まるみたいだ……

 

 

明日から機能回復訓練に入る、でも今日は何もする事がない。

俺も善逸も伊之助もとても暇をしている、夜去さんに会いに行ければいいんだけどな…

しのぶさんが看病しているから聞くといいですよとアオイさんに言われたが少しだけ怖くて聞けない。

善逸はしのぶさんを女神とか可愛いとずっと言っている。確かに美人だと思う、お姉さんもとても綺麗な人だった。

善逸が会えばどうなるんだろう少し心配だ。

 

「炭治郎さん」

俺の名前を呼ぶ声の方を向くと、俺の会いたかった人がいた。

病室にいた全員が目を奪われる、善逸は空いた口が塞がらない。

 

「夜去さん……会いたかったです…」

お日様に照らされた夜去さんの笑顔はあまりに眩しかった。

俺のベッドの横にゆっくりと座った、会いたかったのにいざとなれば何を話していいかわからずあたふたしてしまった。

俺がまず伝えないといけないのは感謝だ、何度も救われた。今も夜去さんは自分のせいだと思っている、それは絶対に違う。

 

「俺と禰豆子は何度も夜去さんに救われた……

夜去さんのせいじゃないです、もう自分のせいだと言わないでください。

そして……ありがとうございます、本当にありがとうございます」

 

「炭治郎さんに言ってもらったら僕も救われます

でもあの日の自分を僕は一生責めると思います、それでも守るために進みます絶対に挫けません」

 

「もう誰にも同じ想いはさせません、それが今からの僕に出来ることだと思います」

やっぱり夜去さんはかっこいい、俺も貴方のようになりたい。

今回の任務で誰一人として死なせなずに守り抜いたと聞いた。

強くなったつもりでいた、俺も一緒に戦える土俵に立ったつもりだった。

でも夜去さんや、柱の人たちは遥か上で戦っているんだ。

いつか横に並び一緒に戦いたい、だから俺も強くなります。

 

「炭治郎は美人さんと知り合いだったの?!?」

何を言っているんだ、美人さんって……善逸の言う綺麗な人って夜去さんのことだったのか!

確かに美人ではあるし、女性に間違っても仕方ないと思うけど…

善逸は夜去さんが自分に惚れて好きになったと言っていたがそれは違う、いや違っていてほしい!

というかあり得ないだろう。

 

「夜去ちゃん俺と結婚してください!お願いします、幸せにします」

何をいきなり言いだすかと思えば、夜去さんは男だぞ…

でも夜去さんは否定しなかった、何故かと思い顔を見ると真っ赤にして拳をぎゅっと握っていた。

え……照れてる夜去さん可愛い、可愛すぎる。

廊下の方から誰かが夜去さんを呼ぶ声が近づいてくる。

 

「炭治郎さん少しお布団の中に隠れさせてもらってもいいですか?」

すごく慌てている、どうしたんだろう?

 

「いいです……」

病室に入って来たのはしのぶさんとカナエさんと真菰さんだった。

善逸は美人が三人もいると興奮していたが俺にそんな余裕はない。

三人は夜去さんを探しているんだ、そして夜去さんは俺の布団の中に今隠れている。

言った方が絶対にいい、冷や汗が止まらない。

何とか誤魔化せたと思ったのはほんの束の間だった。

 

「隠れてていいんだ…

夜去はね夜寝る時に…」

三人が何かを言おうとした時、夜去さんは勢いよく布団の中から出て来た。

目に涙を浮かべながら三人を見ている姿は可愛かった、善逸はその姿に胸を撃ち抜かれたようだ。

 

「夜去部屋に帰るよ?おんぶしてあげよっか??」

 

「歩けます…皆さんの前では言わないで…」

夜去さんは部屋に連れて帰られた、もっとお話ししたかったな…

明日からは機能回復訓練だし、なかなか会えないだろうな。

 

「炭治郎さん明日から一緒に頑張りましょう」

夜去さんも明日から俺たちと一緒に機能回復訓練を受けるんだ。

嬉しい明日が早く来て欲しい、待ち遠しすぎる。

今日は早く寝ようと思った。

 

「蝶屋敷は美人が多くない。炭治郎と夜去ちゃんすごく仲良いし」

 

「あのな善逸……夜去さんは男だぞ?間違うのも無理はないけど」

 

「え……嘘だよな、嘘だと言ってくれよ」

善逸は唯一の希望を失ったようだった、今は背中をさすることしかしてやれない。

でも善逸の立ち直りは意外にも早かった。

 

「男でも関係ない。俺は夜去ちゃんならいける、ありがとう炭治郎」

善逸がいけても夜去さんが無理だろう、それよりなにより三人が許さないと思う。

でも今は言わないであげよう…

 

 

──

カナエさんとしのぶさんと真菰さんが最近とても怖い、どこか機嫌も悪いし。

僕がまた何か気に触ることをしたのかな…

しのぶさんが診察をする部屋が僕の病室になっている。

皆さんと同じ病室でいいのに…

 

僕は三人がいない間に逃げ出した。炭治郎さん、善逸さん、伊之助さんに会うために。

炭治郎さんとゆっくりお話もしたかった、僕の想いは伝えられたと思う。

 

あの日の自分を一生責める、自分のせいではないとはどうしても思えない。

でもそれでいいんだ、忘れたくない。あの日の苦しみ、締め付けられるような胸の痛みを。

体の傷なんて痛くも辛くもなかった、それよりも大切な人たちが泣いていることが何よりも辛かった。

もう誰にも同じ想いはさせないと、あの日固く心に誓ったんだ。

 

「夜去なんで逃げたの?詳しく聞かせてくれる?」

しのぶさんは怒っている、笑顔なのが怖さを倍増させる。

今は同じ歳なのにいつも僕が怒られてばかりだ…

 

「夜去は怪我人なんだから。私の見える位置に、近くにいて…」

僕が怪我人だから、しのぶさんは診察部屋にいる時ずっと僕を見ているのか…

仕事に集中できないと思い申し訳なくなった。安静にしていよう…

 

「はい、しのぶさんの近くにいます」

 

「うん…」

 

 

僕としのぶさんの二人しか今は部屋にいない、とても静かだ。

何かお話しをしないと少し気まずいな…

 

「会った日のことを思い出しませんか?」

しのぶさんは書類の整理を終えると、僕の寝ているベッドに座った。

 

「僕たち二人、カナエさんと真菰さんに子供扱いされて、置いていかれましたよね…

あの日もしのぶさん怒っていた気がします」

時間の流れはとても早い、最近のことのように思う。

あの時は本当に嬉しかったな二人にまた会えたことが。

 

「そうだった、私たち二人は置いていかれたんだった…

夜去が私に老けるなんて言うからでしょ馬鹿」

確かに言ったと思うけど、言う前から絶対に怒ってましたよ?

 

「もう私は大人だけどね。夜去はよく泣くし、手を繋いでもらったら喜ぶ可愛い子供だけどね!」

誇らしげに言うあたり少しだけ腹が立った…しのぶさんもまだ子供だと思います。

 

「しのぶさんの方が僕より身長低いんですけど?可愛いですよしのぶさんも」

 

「夜去?私がなんだって!?」

しのぶさんは怒っている顔をしていたけど、どこか嬉しそうだった。

やっぱり笑顔がとても似合う人だ、前のではなく今の笑顔が。

よかった今も貴方が笑っていてくれて…

 

「夜去なに?恥ずかしい」

しばらくしのぶさんの笑顔を眺めてしまっていた。

恥ずかしいと言いながらも顔を紅くし僕の手を握ってくれた。

いつも揶揄っているけど僕と一緒だと思う。

 

「ねぇ?今帰って来てみたら二人とってもいい雰囲気じゃない?何かあったの?」

 

「しのぶ顔が紅いよ?どうかした??」

カナエさんと真菰さんの機嫌がまた悪くなった気がする。

明日からの機能回復訓練は大丈夫なのかな…心配になってきた。

今は何か楽しいお話をしないと、少しでも雰囲気を明るくしたい。

 

「さっきね…結婚してくださいって言われました…

すごく恥ずかしくて、すごく緊張しました。三人も絶対に僕みたいになりますよ?」

初めて結婚してくださいと言われた。多分冗談だと思う、それに言われたのは男性からだけど…

断らないといけないのに、恥ずかしくて何も言えなかった。

善逸さんには女性と嘘をついていたことを謝らないといけないのに忘れていた、次に会える時にはにしっかりと謝りたい。

 

「はい?誰から言われたの?」

三人の笑顔からは狂気が感じられ背筋が凍る。

少しは笑い話になり場が和むかなと思ったのに…何故か逆になってしまった。

今は逃げてもいいよね姉さん……

 

「忘れてください何もありません。歩きに行ってきます、体動かさないと…」

 

「何言ってるの夜去?私たちとお話しするのよ?私もしのぶもお仕事終わったから、真菰ちゃんも大丈夫よ?」

腕を力強く掴まれた、少し痛い。

今の三人とお話をするのは嫌だと体が抵抗している。

カナヲ姉さん、アオイさん助けてください。

 

 

お話と言う名の尋問が終わり、ご飯を食べてベッドで寝転がっている。

善逸さん本当にごめんなさい…三人に誰から言われたか言ってしまいました。

多分大丈夫だと思う、いやきっと大丈夫だよ…

 

しのぶさん今日はこの部屋に泊まるのかな、夜も医学、薬学の本を読んでいる、本当に努力家だと思う。

全部が終わったら僕も蝶屋敷の皆さんのように人の手助けをしたり、怪我を治療する仕事をしたいと思っている。

きっと僕に残される時間は長くはない…それでも残された時間でしたいと思っている。

 

「僕も全部が終わったら蝶屋敷の皆さんのように

人を支えたり、怪我を治療するお仕事がしたいです」

振り返ったしのぶさんはとても嬉しそうに微笑んでいた。

 

「夜去こっちに来て一緒に勉強する?

私が教えてあげる」

沢山のお話を聞かせてくれた前を思い出し胸が熱くなる。

あの時は膝の上に座ってお話を聞いていたけど今は絶対にできない、恥ずかしすぎて死んでしまう。

ベッドに横に置かれた椅子を持ちしのぶさんの元へと急ぐ、明日から機能回復訓練だからあまり夜更かしはできない。

 

「ここに来て

教えにくいでしょ」

膝を指さしている、明かりに照らされたしのぶさんの顔はとても紅い。

え……なんで覚えているの…

前の記憶は絶対にないはずなのに、たまに皆さんも覚えているかのように思う時がある。

 

「何恥ずかしがってるのよ!座って早く始めるよ」

恥ずかしい、普通は男女するのは逆なのに…

全く頭に入ってこない。絶対に顔は紅くなってる、それに体は熱い。

誰にも見られたくない、でも今は大丈夫だよね…

 

 

──

夜去が全部が終わったら私たちのようなお仕事をしたいと言ってくれた時は嬉しかった。

鬼殺隊が終わっても私たちと一緒にいてくれると言ってくれた気がしたから。

生きていられるかはわからない、でも何としてでも生きたいと思った。

 

勢いで一緒に勉強をしようと言い膝の上に座ってとまで言ってしまった。

恥ずかしさで死ぬかと思ったけど、座ってからは恥ずかしさよりも幸せの方が大きかったな…

これから一緒に勉強しようかな…一緒に居られる時間が増えるし…

 

「夜去?起きてる?」

私の膝の上に座ったまま寝てしまった。

今日は疲れたと思う、それは私たちのせいだけど。でも結婚してと言われたなんて言うからだから。

夜去は誰にも絶対に渡さない、そして私もいつか言うんだ。

 

それに明日からは機能回復訓練が始まるからゆっくり休まないとね。

 

膝にずっと座らせたままでも疲れない、体重が心配になるほど軽いから。

私より身長が高いのに、私よりも軽い気がする…

 

しばらく夜去の頭を撫でていると、私も眠たくなってきた。

今日はこのまま寝ようかな…夜去の背中に顔を埋めた。

夜去の匂い、心臓の鼓動、全てを感じる。ここに居ると感じとても安心する。

男性をここまで愛しく想うとは思いもしなかったな…

 

「おやすみ夜去…また明日ね……」

この平穏な日々がずっと続いたらいいと思うが、そんなに上手くはいかないとわかっている。

一人では駄目かもしれない。

でも皆となら乗り越えられるはず。

夜去とならきっと大丈夫。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでくれている方々ありがとうございます!!!
これからも頑張ります、一話一話を長くしたので少し投稿は遅れるかもしれません…

日常回を少し書いてもいいですか?三人との日常もあります

  • イーオ
  • ヨロシクナイ
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