「やっと今日も終わったぁあぁぁあ!」
道場に善逸さんの叫び声が、奇声が轟く。
今日の機能回復訓練は終わった、僕も喜びのあまり叫びたいが声を出す気がおきない。
「お疲れ様です
明日と明後日は訓練をお休みしたいと思います、ゆっくり休んでください」
機能回復訓練が始まって以来、初めての休みだ。
炭治郎さんと伊之助さんと善逸さんは涙を流しながら喜んでいる。
明日と明後日はゆっくり休んでほしい。
「夜去ちゃん!!!
明日は何をするの?俺と一緒に何処かに行かない?」
「善逸俺も一緒に…」
「夜去とお出掛け?
どういうことなのかな???」
カナエさんとしのぶさんと真菰さんから狂気のようなものを感じる。
早く帰ろう、この場から逃げたい。
「何でもないです…」
「そう!よかった」
「早く夜去帰ろ?」
カナヲ姉さんとアオイさんと一緒に道場を出る、いや逃げ出した。
何故か炭治郎さんと善逸さんの二人が怒られているのが聞こえる。
明日と明後日は休みなのか。
僕には会ってお話をしたい人がいる。二日もあればどちらか一日は会えるかな…
その人は善逸さんの兄弟子の獪岳さんだ。
──
「俺の前では泣いてもいいんだよ?
咲夜さんい辛い想いをさせないために、笑ってる違う?」
「善逸さん…
僕が泣いたら咲夜姉さんは悲しむと思います……辛い想いをさせたくありません……」
「夜去は優しいね
大丈夫だよ、大丈夫
俺が落ち着くまでずっと側にいるからさ」
「夜去がね輝夜さんと咲夜さんのことを大好きなようにさ
二人も夜去のことが本当に大好きで、世界で一番夜去のことを思ってるんだよ
夜去が側にいてくれたから二人は頑張れたんだと思う、決して遠くになんて行かないよ
いつも見守ってくれてる、いつも側にいてくれるはずだよ
俺みたいにさ!!」
「俺にもさ…兄弟子がいたんだ…
兄弟子が大好きだったんだ、俺のことは大嫌いだったと思うけど
一緒に肩を並べて戦いたかった…爺ちゃんの元へ二人で帰りたかった…」
「それはもう叶わないんだ……
兄弟子とさ爺ちゃんともっと一緒に過ごしたかった、三人でもっと笑っていたかった
だからね夜去には輝夜さんと咲夜さんと過ごせた楽しい時間を
これから咲夜さんといられる一日一日をたいせつにしてほしいんだ。
その想い出は三人の中では永遠なんだよ、決して消えない。
わかった??」
「わかりました
善逸さん」
「夜去今日は具合がいいから私がお昼ご飯を作るね…
あれ善逸君、久しぶりだね…
美味しくお昼ご飯作るから食べて行って」
「あ……あ………咲夜さんお久しぶりです!!!
食べます、食べます、食べさせてください」
「おいおいおいおい夜去、夜去、夜去
咲夜さん綺麗すぎない!?綺麗すぎるよ、あんなの誰でも惚れちゃうよ……
輝夜さんも同じくらい綺麗だったんでしょ?会ってお話ししたかったな…
ああ羨ましいな!それに夜去は綺麗な人にたくさん好かれてるしさ、俺はどうなるのお??
カナヲちゃんとアオイちゃんも夜去のことばっかだよ?
まぁ俺もだけどさ」
「僕は幸せ者です、ありがとうございます」
「あぁぁぁ!可愛い、大好き
もう少ししたら輝夜さんや咲夜さんのように綺麗になるんだろうな…
いいこと考えた
その時はさ俺と結婚しよ!?約束ね?」
「姉さんのお手伝いをしてきます」
「俺から逃げてる?何もしないよ夜去ちゃん!
あ!俺も咲夜さんを手伝うよ、一緒に行こう〜」
──
あの時善逸さんが泣いていたのを僕は知っている、不安にさせないために必死に笑顔を作っていた。
僕は何もしてあげることができなかった、善逸さんは僕にたくさん声をかけてくれたのに。
善逸さんの願いを叶えたい、今度は二人で肩を並べて戦ってほしい、ただいまとお爺さんの元へ二人で帰ってほしい。
「善逸さん?」
「なになに!?明日一緒に出掛ける!?」
善逸さんの顔に元気が戻る、カナエさんたちに怒られていたから落ち込んでいたんだろう。
「また今度出掛けませんか??」
無理矢理小指を掴まれ指切りをさせられた。
その時は炭治郎さんと伊之助さん禰 豆子さんも一緒に行きたい
「それで夜去ちゃん
何か俺に用事があったの?」
「はい…少しお話をしませんか?
お聞きしたいことがあるんです」
────
夜去ちゃんから俺に話があるなんて!何の話かな…もしかして告白だったらどうしようか!
いい匂いするな夜去ちゃん、とっても綺麗だし。横顔だけで白飯を食べられる気がする。
多分、炭治郎は俺に嘘を言っている。夜去ちゃんは絶対女の子だよ、こんなに綺麗な男の人がいたら怖い。
あと炭治郎も夜去ちゃんのことが好きなんだ、それよりすごいのはカナエさんたちだ。
あの人たちは夜去ちゃんのことが大好きで大好きでたまらないんだ、俺も負けないぞ。
「夜去ちゃん俺に聞きたいことって?」
「それは…」
どうしたんだろう夜去ちゃん、聞きにくいことなのかな?
遠慮しなくてもいいのに、俺にぶつかって来てよ、受け止めるからさ!
「善逸さんの……
兄弟子さんのことがお聞きしたいんです……」
何で……夜去ちゃんが獪岳のことを知ってるの!?
獪岳のことは炭治郎と伊之助にも話してないのに。
俺の閉じ込めている想いを夜去ちゃんには話してしまいそうだ、でもこれを言ったら俺は楽になるのかな…
それから俺は夜去ちゃんに獪岳の話を色々とした、夜去ちゃんは俺の話を静かに頷きながら聞いてくれていた。
獪岳の心の中の幸せを入れる箱には穴が開いている。だからどんどん幸せが溢れていく、俺では塞いであげることができなかった。
ごめん、本当にごめん。
俺は壱ノ型しか使えない、獪岳は壱ノ型が使えない。だから爺ちゃんは俺たち二人が協力して、肩を並べ戦うことを望んでいると思う。
ごめん爺ちゃん、それはできないんだ。俺は獪岳に嫌われている、俺がどれほど好きであろうと、獪岳は俺のことが大嫌いなんだ。
爺ちゃんじゃないか、そう呼んだらいけないんだよね獪岳。
ごめんなさい先生、ダメな弟子で。
できることなら二人でただいまと笑顔で戻りたい、一生叶わない夢だとわかっていても望んでしまう。
「こんな感じだよ、夜去ちゃん
他に聞きたいことは?」
「最後に…
善逸さんは獪岳さんのことをどう想っていますか?
それと善逸さんの夢を聞かせてください」
「俺は…………
獪岳のことがとっても大好きで、心の底から尊敬しています
一緒に肩を並べ戦いたい、爺ちゃんの元へ二人で一緒に帰りご飯を食べたい!」
誰にも話す気はなかった、でも夜去ちゃんには自分を曝け出してしまう。
炭治郎からは泣きたくなるような優しい音が聞こえる。
夜去ちゃんの音も似ている、それにとても懐かしく、暖かいんだ。
そして俺にとってとても大切な人だと音が俺に伝えるんだ。
本当に不思議な人だ、もしかして女神様なのかな…
「その言葉を僕は聞きたかったんです
大丈夫です善逸さん!」
俺の手を夜去ちゃんは握ってくれた。
夜去ちゃんの指は細かった、女の子より細いんじゃないかな。
俺も強く握り返そうとしたが、折れてしまいそうだったのでそれはやめた。
「鼻血が出てますよ?大丈夫ですか!?」
「え?大好きです……
大丈夫、大丈夫!気にしないで!
「そうですか??
お話を聞かせてくれてありがとうございました」
夜去ちゃんは俺の大好きと言う言葉を聞き、逃げるように俺から離れた。
俺は何もしないのに…それとも何か嫌な気配を漂わせていたのかな…
て俺は鬼じゃないからね!
────
「稲玉獪岳さんですか?
明月夜去の伝言を伝えに来ました」
俺の名前を呼ぶ声が聞こえる、後ろを向くととても綺麗な白色の鎹鴉がいた。
明月夜去…人の名前をあまり覚えない俺でもその名を覚えている。
鬼の首が斬れない隊士なのに今一番柱に近い隊士と言われているからだ、だから名前を覚えていたし気になっていた。
そんな人が俺なんかに何のようだ、鎹柄の伝言を聞くと会って話がしたいというものだった。
いつもなら断っていただろう、でも俺は了承していた。
まぁ明日は何も用事がないし暇だったし…本当は話の内容が気になって仕方ない。
俺は集合場所の団子屋に向かっている、集合時間よりだいぶ早く着くと思う。
失礼があってはいけない、俺より階級が上の人だから。先に着いて待っているのは当たり前だ。
団子屋に着くと大空のような羽織を着た綺麗な人がいた、その人の近くの席に座って明月さんが来るのを待つことにした。
集合の時間になっても明月さんは来ない、呼んでおいて来ないのかよ。
流石に遅すぎるので帰ることにした時だった、先程の綺麗な女性とぶつかってしまった。
「すいません、俺が余所見していたせいで」
「大丈夫です、こちらこそごめんなさい」
「誰かを待っているんですか?」
「はい、今日会う約束をしたんですが…
初めて会う人で顔がわからなくて…」
俺と同じような状況の人だな、手を差し伸べてやりたいと思った。
この店は人が一杯いるから一人で探すのは大変だろう、俺も手伝ってあげよう。
「名前は何て言う人ですか?」
「…… 稲玉獪岳さんという人なんです」
その人が言ったのは俺の名前だった。
待て待て…
もしこの人が明月さんなら俺より早く来て、階級が下の俺のことを待っていたのか?
「獪岳それは俺です」
「え……
ごめんなさい、僕の方から呼んで待たせてしまって
顔がわからなくて、それにここのお店人が多くて…」
意外と天然な人なのだろうか、それにしても綺麗な人だな…
「確かに人が多いですね、店を変えましょうか」
それから俺と明月さんは人があまりいない店を探すことにした。
店を見つけ注文をして、挨拶を終わらせた。階級はもちろん、柱と同じ甲だった。
「明月さん
俺に何の話があるんですか?」
「はい……
獪岳さんは善逸さんのことをどう想っていますか?」
善逸は俺の弟分だ、昔からつらくあたっていた。
それは俺のようになってほしくなかったからだ、それとあいつに嫌われるために。
「あんな出来損ない大嫌いですよ
毎度毎度、修業から逃げだすあんな弱虫
見ているだけで不愉快でした」
大嫌いなんかじゃない、本当は逆なんだ。
でも俺はあいつを好きになってはいけない、側にいたらいけない存在なんだ。
確かにあいつは毎日のように先生から逃げていた、でも諦めなかった弱虫なんかじゃない。
「俺はあいつとは違う!
あんなやつと一緒にしないでください
先生は何で俺とあいつを一緒にしたんだ
大嫌いだ、あんな奴!本当に大嫌いなんだ」
俺の目を見て静かに聞いてくれる明月さんを見ると、心の中を覗かれている気がした。
明月さんに隠していることがバレないように言葉を見繕い、大声で発していた。
俺と善逸は違う、一緒にしないでほしい。
俺は自分が助かるためにしてはいけないことをした、でも善逸は違う多くの人を助けるために刃を振るうことのできる存在なんだ。
だから一緒にしないでほしいんだ。
「それは本心ですか?」
「本心です」
この想いは俺が墓場まで持っていく、誰にも知られてはいけないんだ。
「嘘ですよね?
だって獪岳さん泣いてます、本当の想いを聞かせてください」
気付かなかった、俺の握った拳の上には涙が溢れ落ちていた。
「俺はどうしたらいいんですか?貴方には絶対にわかりません
俺は決して許されないことをした、自分が助かるために八人を犠牲にしたんです
そんな人間が善逸とあいつと肩を並べていてもいいわけがない」
貴方も俺に幻滅してください、俺に手なんか差し伸べなくていいんです。
他の人に手を差し伸べてあげてください、俺は一人でいいんです。
「僕と一緒に考えませんか?
確かに獪岳さんのしたことは許されないことだと思います
でももし僕が同じ立場だったら貴方と同じ選択をしていたかもしれない」
何で俺に幻滅してくれないんですか、俺は手を差し伸べられるべき人間じゃない。
「一人で抱え込まないでください、貴方には善逸さんもお師匠さんもいます
今日会ったばかりですけど、頼りないかもしれませんが僕もいます」
俺に優しい言葉をかけてくれる、この人は本当に優しい人だな、心配になるくらいお人好しな人だ。
自分が傷つきながらも助けを求める人を救う人だとわかる。
貴方なら俺と同じ立場でも自分を犠牲にして守っていたとはずです。
「俺が殺した八人は絶対に俺を許しません、ずっと憎んでいます
それでいいんです、そうじゃなくてはいけないんです
俺は贖罪で鬼殺隊に入りました、俺が殺した人に償えることは鬼の首を斬ることしかありません
それも償いにはなっていませんけど」
「獪岳さんならわかるんじゃないんですか?
その人たちは今の獪岳さんを見ても、まだ許しませんか?憎んでいるんですか?
しっかり向き合ってあげないと
会いに行ってあげましたか?想いを聞いてあげてください!」
墓参りなど一度も行っていない、いくべきではないと思ったから。
行くのが怖かったんだ、どう想われているのかわかっていたとしても聞くのが怖かった。
「謝りにいきましょう
獪岳さんの想いを伝えにいきましょう」
団子が届く前に明月さんは俺の手を握り店を飛び出していた。
俺の手を握ってくれる明月さんの手はとても細い、女性の手はこんなにも細いのか…
俺は握ろうとした手をゆっくりと緩めた
俺と夜去さんは岩柱の悲鳴嶼さんの屋敷に着いた。
お墓の場所を知っているのは悲鳴嶼さんだけだろう、聞かないといけない。
でも怖くて一歩を踏み出すことができないでいると、明月さんが一緒に行こうとしてくれた。
「一人で行きます、俺だけで行かなくてはいけません」
「はい
ここで待っています」
玄関で名前を呼ぶと、大きい足音がどんどんと近づいてくる。
俺を見た瞬間に殴り飛ばしてほしい、そうしてくれた方が楽だ。
「獪岳なのか…?」
「はい…」
俺は頭を地面につけて土下座をした、こんなことで許されることではない。
「獪岳頭を上げろ、謝るのは俺にじゃないだろう?
みんな待っているぞ、しっかり謝ってこい。
そうしたら俺たちとまた一緒にご飯を食べよう」
俺の頭を大きな手で撫でてくれた、溢れ出す涙が止まらない。
悲鳴嶼さんのこの大きな手に撫でられるのがみんな好きだったんだ、そんなことも忘れていた。
お墓の場所を聞き、全速力で向かう。
「本当にごめんなさい、ごめんなさい」
一人一人の前で長い土下座をした、こんなことで許されないけど土下座以外に何をすればいいのかわからなかった。
俺の周りに誰かがいる気がする、それは俺が殺した人たちだとすぐにわかる。
土下座をしている今は顔を上げられなくわからないが。
「俺を責めてくれ、一生許さないでくれ、ずっとずっと憎んでくれ」
「何言ってるの?ふざけないでよ」
「責めてないよ獪岳のこと!
仕方なかったんだよ、私たちでもそうしていたと思う!
ずっと前から許してる、憎んでなんかない
獪岳が鬼殺隊に入ると決めた、あの日からね」
「なんで…」
今日は泣いてばかりだ、ごめん俺なんかがみんなの前で涙なんか流して。
「何泣いてるのよ?だらしないよ
私たちに聞かせて?」
「俺は……
鬼に苦しめられている人を助けたい、人々を鬼から守れるような人になりたい
もう一度あの時のような場面になった時、戦い守る選択肢を選べる人間になりたい!」
「獪岳なら大丈夫
私たちみんな信じてるから」
俺の頭を撫でてくれている、色々な手が頭の上に乗せられている。
そこにはこれからという小さな手もある、全部俺が奪った人の手だ。
「ごめん、本当にごめん」
ありきたりの謝罪の言葉しか出てこない。
「もう!怒るよ!
それより私たちが獪岳を憎んでるって思ってたんだ!
そこにみんな一番怒ってるんだからね」
なんで俺に優しくしてくれるんだ、俺はみんなの命を奪った人間だ。
「なんで俺に優しくしてくれるのかと思った?
わかるでしょ??」
「大切な家族だからよ
だから獪岳の幸せを願っているんだよ、私たち全員」
「ごめ……」
今言わないといけない言葉はこれではない、俺が今言うべき言葉は…
「ありがとう」
「うん!
悲鳴嶼さんのところに帰ろう、私たちもお腹空いた!」
みんなで一緒に悲鳴嶼さんの元へ戻った、こんな日が来るとは思っていなかった。
俺にできることをしないといけない、俺が下を向き止まっているなんてことは許されない。
「ただいま悲鳴嶼さん」
「おかえり
ご飯をみんなで食べよう」
「明月さんも呼んできてもいいですか?」
「夜去も来ているのか!?」
悲鳴嶼さんと俺は、屋敷の前で待つと言っていた明月さんの元へと走った。
するとそこには誰もいなかった、下を見ると地面に何か文字が書かれている。
──
皆さんならきっと大丈夫
今日は皆さんだけで、僕は帰ります
獪岳さん善逸さんにも会いに蝶屋敷に来てあげてください、お願いします
──
ありがとう夜去さん、貴方のおかげです。
貴方がいなかったら俺はみんなの想いを踏み躙っていた、気付くことができなかった。
「ありがとう夜去
夜去は私たちを繋いでくれたんだな」
「夜去さんって綺麗な人ですよね…」
蝶屋敷にいるんだろうか、善逸もいるし会いに行こうかな…
「夜去は美しいな、初めて見た時は私も驚いた」
「あんなに綺麗な女性初めて見ました…」
「何を言ってる、夜去は男だぞ
女性に間違えても無理はないが」
え………夜去さん男だったのか…
あんなに綺麗な男性いるのか?指なんて細すぎた、髪も少し長かったし。
会いに行こう善逸と夜去さんへ。
そのあとは皆でご飯を食べた、周りから見れば二人だったのかもしれない。
でも確かにそこに皆はいたんだ。
────
機能回復訓練がないと暇だな…
いやいやいや、あの日常に慣れている俺が怖い。
ああ暇っていいな、最高。
夜去ちゃん昨日はどこに行ってたんだろうか…
俺とは出掛けないと言ったのに、まさか誰か別の人と…嫌だ考えたくな、記憶を消してくれ。
夜も眠れそうにないよ、睡眠薬もほしい。
「善逸暴れるな!発狂もするなよ!
アオイさんに迷惑をかけるな!?
「善逸さん!」
病室の入り口から顔を少しだけ出して俺の名前を呼ぶ人がいる。
あ、俺の天使夜去ちゃんだ。いつにも増して笑顔だな、癒される。
「こっちに来てよ〜夜去ちゃん俺の横へ〜」
「善逸!夜去さんを困らすな、それと変な目で見るな!」
夜去ちゃんは早く早くと誰かを呼んでいる、その人と親しくない?
誰なのその人、早く出てこい!俺に顔を見せろ、羨ましい!
俺の目に入ったのは兄弟子だった、手紙をずっと送っているが返事は帰ってこなかった。
俺に会いに来たのかな…いやそんなはずはない、だって獪岳は俺が嫌いだから。
「二人とも黙らないでくださいよ
言葉にしないとわかりません」
二人の間に沈黙が訪れる、夜去ちゃんこれいじめ?何かの罰?
「善逸すまなかった
俺はお前に嫌われようとしていた、お前には俺のようになってほしくないから。
お前のそばに俺はいてはいけないと思っていたんだ
お前は弱虫なんかじゃない、絶対に諦めなかった。お前は強いよ善逸」
獪岳の過去の話も全部聞いた、そんな事想ってたのかよ。
話して欲しかった、だって俺たち家族だろ。
「俺のことは今までのように嫌っていてくれ
今日はお前に謝りに来たんだ、手紙もいつも読んでいる
ありがとうな善逸」
ふざけるな、逃げるな、絶対に許さないぞ。
「自分の言いたいことだけ言って帰ろうとするな!俺の話も聞け、馬鹿兄貴!
俺は兄貴のこと嫌ってなんかいない」
今日ほど嬉しいことはない、獪岳が俺のことをこんな風に想ってくれていたなんて。
俺も胸に閉じ込めていた想いを全て吐き出した、ぶつけてやった。
周りの目なんか気にしていられない、するとカナエさんたちが俺の大声を聞き駆けつけてきた。
それでも止められないんだ。
「俺は兄貴のことが大好きだ大切なんだ、会った日からずっとずっと!
俺の憧れなんだ、心の底から尊敬している
夢なんだよ、あんたと肩を並べ一緒に戦うことが!爺ちゃんの元へ二人で笑ってただいまって帰ることが
爺ちゃんは俺と兄貴に一緒に戦ってほしかったんだと思うんだ!」
「そうだったのか…
俺もだ善逸、お前が大好きで大切だった。だから突き放した、本当にごめん」
「これからは一緒だ落ちこぼれ同士
一緒に乗り越えよう」
これは夢なんじゃないかな、頬を引っ張っても目が覚めない。
おかしい、絶対におかしい。布団の上に大粒の涙が溢れ落ちる。
また迷惑をかけるな、アオイさんに…
「今度帰るか二人で爺ちゃんの元へ」
爺ちゃん……恥ずかしそうに爺ちゃんと言う兄貴を見ると嬉しさのあまり抱きついていた。
離せ離せと俺を引き剥がそうとするが絶対に離さない、離すもんか。
もう二度と離さないから、掴んだこの手を。
「うん!約束ね」
「あぁ、約束だ
おい馬鹿弟、お前の鼻水をつけるな
汚いだろ!離れろ」
「嫌だ兄貴!
兄貴兄貴……!」
「もうわかったから」
俺の家族は爺ちゃんと獪岳だ。
大切な大切な人たち、もう見失わない。
夜去ちゃんは抱きしめあっている俺と兄貴を見て嬉しそうに笑っていた。
もしかして昨日、兄貴に会いに行ってくれていたの?
ありがとう夜去ちゃん、俺の家族を繋いでくれて。
──
俺は家族の暖かさを忘れていた、こんなにも暖かく幸せなのに。
夜去さんのおかげで俺は寺のみんなと、善逸と、爺ちゃんと向き合えた。
このまま行けば、俺はまた大切な人を傷つけていたと思う
大切な爺ちゃんと馬鹿な弟を。
俺は…………
寺のみんなが、爺ちゃんと馬鹿な弟が、そして夜去さんのことが大切で
大好きなんだ。
雷の呼吸一門には幸せになってもらいたいです
絶対にこうじゃないけど
こんな風に想っていてほしかった
日常回を少し書いてもいいですか?三人との日常もあります
-
イーオ
-
ヨロシクナイ