雲居の空   作:くじぃらぁす

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親友へ

炭治郎さんたちよりも先に機能回復訓練を終え、任務もまだない僕はしのぶさんのお手伝いをして毎日を過ごしている。

でも今日はお休みをくれた、少し嬉しい反面何をしようか悩んでいる。

 

「夜去は今日何するの?」

今日の予定が決まっていない僕はカナエさんへの返事に困っていた。

そんな時、朝と真菰さんの鎹鴉が親方様からの伝令を伝えに来てくれた。

 

「夜去

一週間後、真菰さんと炎柱様と合同の任務

場所は無限列車」

朝からの報告を聞き、目を瞑ると二人との思い出が鮮明に思い出される。

三人で稽古をした苦しくとも楽しかった毎日、そして大好きな兄を失い涙する親友の姿。

 

一緒に任務に行けるようになってよかった、これで同行したいと自分から言う必要もなくなった。

 

「夜去が任務……」

蝶屋敷の皆さんから僕は笑顔を奪ってしまった。

いつも大怪我をして帰ってくる、皆さんにはいつも辛い思いばかりさせてしまうからだ。

 

今度は自分の足で戻ろう、元気よくただいまと言えたらいいな。

 

「大丈夫です

真菰さんも杏寿郎さんもいます

必ず戻ります」

 

「夜去の言う通り

きっと大丈夫」

真菰さんも一緒に言ってくれたおかげで、笑顔が少しだけ戻った気がする。

もっと明るい話をしたい、暗い空気でご飯を食べても美味しくない。

何よりこの楽しい時間と皆さんの笑顔を奪いたくない。

 

「夜去!!!!!!!」

名前を呼ぶ大きな声が玄関から聞こえる。

あまりにも大きすがる声に皆が驚いた。

 

「誰こんな朝早くからから!」

しのぶさんは額に青筋を浮かべ、何故か僕の手を握り玄関へと向かった。

 

手を繋ぐのが自然になってない?

恥ずかしがる仕草もないし、僕は普通に恥ずかしいのに。

カナエさんと真菰さんは頬を膨らませていたし、カナヲ姉さんとアオイさんには溜息を吐かれるし、キヨちゃんたちは黄色い声をあげるし。

 

でもよかった、いつもと変わらない蝶屋敷の日常が戻って。

 

 

玄関に着くと杏寿郎さんが立っていた。

しのぶさんに繋いだ手を離してと言っても離してくれない、逆に強く握られた。

見られて顔を紅くしているなら、恥ずかしいなら離してくれてもいいのに…

 

「胡蝶、夜去と話をいいか!?」

内容は合同の任務があるから親睦を深めようということだった。

それなら真菰さんとも一緒に行きたい、杏寿朗さんにそのことを伝えると勿論だと言ってくれた。

 

「夜去なんて?煉獄さんは」

 

「しのぶさん…

杏寿郎さんと今日はお出掛けしてもいいですか?」

3度目くらいに渋々了承してくれた、今日は僕にお休みくれたはずなのに…

また手を握る力が強くなるのを感じたが触れないことにした。

 

「あら、煉獄君!どうしたの?」

 

「少し夜去に用事があってな」

 

「カナエさん…

今日は杏寿郎さんとお出掛けしてもいいですか?」

 

「いいよ?でも戻ったらしっかりお話は聞かせてね?」

少しだけ鳥肌が立ったのは内緒にしておこう、カナエさんはしのぶさんよりも怖いと感じる時が多々ある。

僕にも皆さんのように優しくしてほしい、でもそれを言ってもいつも夜去だけは特別と言われるだけだ。

 

「真菰さんも一緒に行きましょう」

 

「真菰ちゃんも一緒に!?」

「真菰さんも一緒なの!?それは聞いてない!」

そこまで驚かなくても…合同任務には真菰さんも一緒に行く、だから真菰さんも一緒がいい。

本当は炭治郎さんたちとも一緒に行きたかったけど、今はまだ機能回復訓練を頑張っている最中だから誘えない。

それに炭治郎さんたちも任務に参加する未来を知っているのは僕だけだ。

 

「嬉しい

行こ夜去!」

とても嬉しそうな真菰さんを見ると、僕も笑顔が溢れた。

 

「わかってるね夜去?

帰ったら…」

今日は戻りたくなくなった、また怒られるんだともうわかるようになってきた。

二人に何かいいことが起きて、戻った時には機嫌が直ってますようにと心の中で祈った。

 

「大変だな夜去も色々と」

 

「はい…」

 

「夜去の馬鹿

早く帰ってきて」

そんなに言わなくても…

少しだけ傷ついた、出来るだけ早く戻るようにしよう。

 

準備を整え杏寿郎さんの待っている玄関へと急ぐ、真菰さんはもう少し時間がかかるみたいだ。

玄関へ行くとカナヲ姉さんが待っていた。

 

「忘れ物はない?気をつけて行ってね?

それと夜去、楽しんできて」

 

「わかりました」

本当は僕の方が歳上なのに、今ではすっかりカナヲ姉さんが歳上みたいになっている。

僕も一度でいいからお兄さんのように接してみたい。

外に出掛けるときはよくこんな風に言われていたな…懐かしい

 

「それなら私も安心」

頭を撫でながら言われるのはすごく恥ずかしかった、それと同じくらい嬉しかった。

 

「カナヲちゃん安心して

私も一緒にいる、煉獄さんも一緒だから」

 

「はい、私の大切な夜去をどうかよろしくお願いします」

僕のことを本当に大切に想ってくれている。

いくら感謝をしても足りないけど、心の中で何度も感謝した。

 

「うむ!」

 

 

「杏寿郎さん何処へ行くんですか?」

 

「皆でご飯へ行こうかと思う!!

俺の家に少し寄ってもいいか?

弟も連れて行きたいんだ、それに夜去にも会ってもらいたい」

胸が熱くなるのを感じる、僕は千寿郎に再開して涙せずにはいられないと思う。

 

千寿郎は真っ暗闇の僕の世界に、明かりを灯してくれた。

時屋敷に閉じこもっていた僕の手を握り外へと連れ出してくれた。

 

恥ずかしくてずっと言えなかった、いつか伝えたいことがある。

千寿郎は僕にとって太陽なんだ、ずっと憧れの存在で道標なんだ。

 

「弟さんがいらしたんですか…

僕も会いたいです」

大切な親友を知らないわけがない。

知らないことにするのは本当はとても苦しい、でも疑問に思われないために今は知らないふりをしないといけない。

 

二人で杏寿郎さんのように強くなろうと約束をし、毎日一緒に稽古をした。

あの稽古をした君との日々は僕の掛け替えのない思い出なんだ。

あの日々があったから僕は戦えている。

 

千寿郎が待っている煉獄家が近づいて来た。

どんな顔をして会えばいいのだろうか、笑顔で初めましてと言えるだろうか。

 

「あ!煉獄さん…それに夜去と真菰ちゃんもいる!

会いたかったよ!!」

機能回復訓練で会っていたけど終わってからは暫く会えていなかった。

僕も蜜璃さんと同じ気持ちです、真菰さんもきっと同じはず。

 

「むむ!甘露寺もいたのか!

それならば今日は五人で昼食を食べに行こうか!」

杏寿郎さんも蜜璃さんも沢山食べるからな…美味しそうに食べる二人の姿が僕は好きだけど。

お金は大丈夫かな、僕も少し多く持って来たから多分大丈夫だと思う。

 

「やった!!」

 

 

「初めまして

煉獄千寿郎と言います」

この声をよく知っている、前を向き顔を見ることができない。

二人でたくさん笑った、二人で悔しくて涙した日も数多くあった。

 

絶対に泣かないと決めていたのに涙が止まらない、強くなると約束したのにこれじゃあ格好がつかないな…

僕はまだまだだね千寿郎。

 

「どうしたんですか!?」

 

「ごめんね千寿郎君…

夜去は泣き虫なんだ」

 

「何でもないです、真菰さん言わないで…

初めまして千寿郎さん

明月夜去と言います」

初めましてなんて言いたくない、本当は前のように君の名を呼びたい。

でも今の僕には許されない。

僕は前から千寿郎に隠しごとができなかった、今も前と同じように何かに気がついてしまうかもしれない。

だって君は僕の親友だから。

 

過去に戻ったことを知れば自分を責めてしまうかもしれない。

なんで送り出してしまった、引き止めておけばと思わせてはいけない。

 

千寿郎はあの時無理矢理笑っていた、僕に苦しい思いをさせないためになんだよね。

君は僕の弱々しい背中を強く押してくれた、だから勇気を出せたんだ。

 

「早く行こ!

もう私お腹ぺこぺこ」

 

「もうお昼ですもんね…

行きましょう」

 

 

しばらく歩き蜜璃さんのおすすめする定食屋さんに来た、ここも量が極端に多いお店じゃないよね…

注文を終えてお料理が来るのを待っている間は他愛もないお話をした。

とても楽しく、幸せな時間だった。

千寿郎と杏寿朗さんが一緒に笑っている姿は僕の胸をいっぱいにさせた。

僕は二人のこんな未来を守りたい。

 

「夜去さんは少食なんですね」

 

「今日は胸がいっぱいで…

お腹までいっぱいになりました」

でも最近食べられる量がほんの少しだけ減った気がする、前からたくさん食べれる方ではなかったけど。

これも時の呼吸の影響だったりするのかな…

 

「夜去ほら私の言った通りに半分にしてよかったでしょ?

私が食べさせてあげよっか?」

蜜璃さんのを半分にしても千寿郎より多いです、僕は結局全部は食べられませんよ…

 

「夜去残すのは良くないぞ!

俺が食べさせる、口を開けるといい!」

ですよね残すのは良くないですよね、頑張って残さず食べよう。

 

「絶対にダメ!煉獄さんも蜜璃ちゃんも!

私が食べさせるから」

さっきから触れなかったけど、真菰さんまで…

僕は自分で食べられます。

三人とも千寿郎の前で恥ずかしいことを言わないでくださいと心の中で思った。

 

「僕も少しは手伝うよ夜去

………あ、ごめんなさい!呼び捨てにしてしまって」

あまりに自然過ぎたから僕まで前のように呼んでしまいそうになった。

笑って僕の名前を呼んでくれる千寿郎が大好きなんだと改めて思った。

 

「気にしないでください、そう呼んでほしいです

少しと言わないで半分くらい食べてくれても…」

 

「ダメです、夜去さんが食べてください」

元気が出ません、力もつきませんよ」

前と何も変わらない親友の姿がそこにはあった。

僕と違いしっかりとしている、自慢の親友だ。

 

「千寿郎君と夜去すごく仲良いね

今日が会ったの初めてでしょ?」

 

「はい

でも夜去さんと会うのが初めてだとは思えないんです」

その言葉を聞けるだけで僕は嬉しい。

でも言わないといけない、言うのはとても辛いけど。

 

「初めてですよ千寿郎さん

これからよろしくお願いします

多分、僕に似た人を見かけたんだと思います」

 

「夜去ほど綺麗な人はあまりいないぞ?

甘露寺と真菰も綺麗だがな!」

揶揄わないでください杏寿朗さん。

二人の方がずっとずっと綺麗です、鬼殺隊の多くの人が二人に心惹かれている。

それに僕は一人でいいからかっこいいと言ってもらいたいな…

 

「夜去は私たちから見ても綺麗だもん、羨ましいな!

いいこと思いついた、もう女の子になる?」

蜜璃さんが僕の頭を撫でながら言った。

何でそんな恥ずかしいことを言うの…何も言い返せない。

 

「私は女の子になった夜去でもいいよ?

どんな夜去でも受け止めるから、私の胸においで夜去」

顔を紅くするなら言わないでよ、僕まで巻き込まないで。

恥ずかしさで体が熱くなってきた、そこに千寿郎が追い討ちをかけてくる。

 

「女性じゃないんですか?」

 

「え……

そんなに驚かないでください、女性じゃないです

僕を揶揄いすぎです」

前から千寿郎には揶揄われることがあった、何も変わってはいなかった。

たくさん笑った、そんな楽しい時間はすぐに終わってしまう。

 

杏寿郎さんと千寿郎に誘われたこともあり、僕と真菰さんは二人のお屋敷に泊まることになった。

でも蝶屋敷に着替えを取りに行かないといけない、カナエさんとしのぶさんは許してくれるかな…

 

「私が行ってくるから大丈夫だよ、先に行って待っててすぐに戻るから

カナエちゃんとしのぶちゃんにも言ってくるね」

 

「ありがとうございます

カナヲ姉さんにも心配しないでと伝えておいてください」

 

「うん、伝えてくる

夜去もカナヲちゃんが大好きで。大切なんだね」

僕は首を縦に振り、頷くことしかできなかった。

 

 

二人のお屋敷に着くとまず槇寿郎さんに挨拶をしに行くと、部屋の中でお酒を飲んで寝ていた。

本当は熱い人だと知っている。

杏寿朗さんがいなくなった後は僕と千寿郎にたくさん稽古をつけてくれた、やっぱり三人は親子でそっくりだと何度も思った。

 

槇寿郎さんは二人のことを誇りに思い、愛し大切に思っている。

それを前は伝えれなかった、でも今度は伝えてあげてほしい。

 

僕が絶対に守ります。

だからよくやったと頭をたくさん撫で、抱きしめてあげてください。

 

「昔はああじゃなかったんだがな…

俺がどれほど頑張っても父は喜んでくれない、どうでもいいとのことだ!

それでも俺の心の炎が消えることはない!挫けることはない!」

震えている声からすぐに杏寿郎さんの本当の想いは伝わる、でも強い人であるために無理をしているんだ。

力になりたい、頼りないけど貴方の拠り所になりたい。

 

きっと杏寿郎さんの頑張りを聞くと胸が高鳴っている、杏寿朗さんの日々の報告が何よりも嬉しいんだ。

でもそれを言葉にして伝えれない、恥ずかしくて本人の前では言えないんだ。

僕にもその気持ちがわかる。

 

「きっと大丈夫です、三人なら

想いはいつか届きます」

 

「夜去が言うのならきっと大丈夫なのだろう

よかった…」

 

 

挨拶を終えると杏寿朗さんと蜜璃さんは二人で柱のお仕事を始めた。

柱の人たちは本当に忙しい、姉さんたちも忙しいはずなのに僕と過ごす時間をたくさん作ってくれた。

輝夜姉さん、咲夜姉さん、少しでいいから会いたい。

お話をしたい、手を繋ぎたい、抱きしめてほしい。

今は叶わないけどいつの日か…

 

真菰さんもまだ来ていない今は一人だ。

千寿郎の姿が見えなかったので探していると、庭で竹刀を振っていた。

一人で稽古をしている、君はいつも僕の隣にいてくれたのに…

 

「千寿郎さん

一緒に稽古をしませんか?」

これは君が部屋に閉じこもっていた僕にかけてくれた大切な言葉。

君は太陽だそれは今も変わらない、あの日暗い部屋を千寿郎という太陽が暖かく照らしてくれた。

 

「いいんですか!?

迷惑でないなら、お願いします」

 

こうして毎日二人で稽古をしていたんだ。

辛かった、苦しかった、時に絶望した、二人で涙した日も数えきれない。

でも隣に君がいてくれた、何度折れても手を差し伸べてくれた。

だから前を向けた、立ち上がることができた。

ありがとう千寿郎。

 

「才能ないですよね…日輪刀の色もどれほど頑張っても変わらないんです、弱いままなんです

それでも僕は兄のように助けを求めている人を救いたい…

そんな叶わない夢をずっと見ているんです」

薄々気づいていた、千寿郎が今の自分を恥じていることには。

僕も日輪刀の色は変わらなかったから、二人で沢山泣いた。

でも今の千寿郎は一人で泣いていたんだ。

 

隣にいられなくてごめん。

 

────

夜去さんも僕の才能の無さがわかったと思う。

僕は煉獄家の落ちこぼれなんだ、どれほど努力をしても強くなれない。

ずっと弱いままなんだ、兄のように鬼殺隊士の皆さんのようにはなれない。

 

「千寿郎さん

約束しましょう」

夜去さんはただ指を出しただけだった、でも僕はこの約束を知っている気がする。

 

歳上の人にさん付けをしないのは失礼だとわかっていても、何故か夜去と呼びたい。

今日初めて会った人なのにずっと一緒にいたような感じがする、そしてこれからもずっと隣にいたいと思ってしまう。

夜去さんは本当に不思議な人だな。

 

「約束します…」

この約束は僕にとって何よりも大切な約束なんだと心が訴えかけてくる。

 

「それにね千寿郎さん

君はもう一人救ってるんだよ?

千寿郎さんが覚えてなくとも、相手はずっとずっと覚えています

ありがとうございます」

天を仰ぎ何かを思い出しながら言う夜去さんを見ると、本当に僕は誰かを救ったのかもしれないと思ってしまった。

そんな夜去さんの姿は儚く美しかった。

僕が助けた人は大切な人なのだろうか、少しだけ心がもやもやとした。

 

「お礼を言うのはこっちです、ありがとうございます」

屈託なく笑う夜去さんは今まで見た女性の中で一番綺麗だった。

女性じゃないんだ…今でも信じられない。

 

「綺麗ですね

夜去さんは」

恥ずかしがる姿を見るともっと言いたくなってしまった。

二人でたくさん笑った、こんなに笑ったのはいつぶりだろうか。

 

僕の隣にずっといてください夜去さん。

今は言えないけど、いつか言えたらいいな。

 

────

すぐ戻るって言ったのに遅くなったな…

カナエちゃんとしのぶちゃんを説得するのにとても時間がかかったからだ。

二人とも夜去のこと好きすぎだよ、私が言えることじゃないけど…

夜去ごめんね帰ったら二人に怒られるかも、その時は私も一緒に怒られるから安心して。

 

カナヲちゃんは夜去のことをとても心配していた。

夜去のことを一番に考え、何よりも大切に想っているんだ。

 

「真菰ちゃん!こっちこっち」

蜜璃ちゃんがとても嬉しそうに私を呼んでいる、煉獄さんも隣で微笑んでいる。

どうしたんだろう…

二人が見ていたのは…夜去と千寿郎君が笑っている姿だった。

二人は歳が離れているけど、全くそれを感じさせない。

 

「とっても嬉しそう

夜去が笑ってくれると私も嬉しい、ずっと私の隣で笑顔を見せて欲しい」

 

「うん!二人とも本当に嬉しそう

え…真菰ちゃんそれ告白!?

私困るよ!誰を応援したらいいの!」

蜜璃ちゃんには色々と相談に乗ってもらっているから、私の想いを知っている。

いつか言えるかな夜去に伝えられるのかな。

 

「千寿郎があんなに笑顔なのは久しぶりだ。千寿郎が笑ってくれると俺も嬉しい!

それに夜去の笑顔は綺麗だ!

俺は好きだ…」

 

「真菰ちゃん早く言わないとね!」

夜去のことを好きな人多すぎるよ、自信がなくなってくる…

 

「うん」

夜去は柱に今一番近いと言われている、どんどん遠い存在になっている。

柱になっても私と相棒でいてくれるかな?隣にいてくれるのかな?

最近はそんな心配ばかりしている。

 

────

「夜去そろそろ帰る?

カナエちゃんとしのぶちゃんには早く帰るからって行ってきたし…

カナヲちゃんは心配しすぎて昨日の夜は寝れてないかも、早く帰ってあげよ?」

 

「夜去、真菰、ありがとう

また五人で一緒に出掛けたいな!そのためにも任務を共に頑張ろう」

杏寿朗さんは嬉しそうに笑った、僕と千寿郎と稽古をする時もこの笑顔を見せてくれた。

守りたいこの先も笑っていて欲しい、貴方に生きて欲しい。

 

上弦の参がどれほど強くても、何が起ころうとも必ず守る。

杏寿朗さんの心の炎は絶対に消させやしない。

 

「真菰さん少し待っていてください」

今は槇寿郎さんの部屋の前にいる、貴方に伝えないといけない。

貴方がどれほど後悔したか僕は知っている、もう後悔して欲しくない。

 

「槇寿郎さんありがとうございました

このままでいいのでお話を聞いてくれませんか?」

 

「後悔をしないでください

想いを伝えられないということは本当に辛いことです

だから伝えてあげてください、二人はずっと待っていますよ?」

返事はないけど聞いてくれていると思う。

だって槇寿郎さんは、杏寿郎さんと千寿郎の竹刀を振る音と掛け声を耳を澄まして聞いているから。

その音と声を聞くのが大好きなんだ。

 

「夜去と言ったか?

………俺たちはまだやり直せるか?」

 

「はい

家族の絆は永遠です、絶対になくなりません」

 

「そうか…

ありがとう」

家族の絆はなくなるものじゃない、何度でもやり直せます。

勇気を出して向き合うことができたなら。

でも今の槇寿郎さんは向き合おうとしている。

 

杏寿郎さんが戻ったら沢山頭を撫でてあげてください、抱きしめてあげてください。

三人でご飯を食べて、稽古をして、そんな家族の時間を取り戻してほしい。

 

 

「どうしたんですか?

僕に聞かせてください、力にはなれないかもしれないけど隣にいます」

真菰さんの元へ戻ろうとした時、一人で泣いている千寿郎を見つけた。

さっき杏寿朗さんと蜜璃さんと稽古をするために道場に行ったはずだなのに、何か辛いことでもあったのかな…

 

「兄上が天国に行ってしまう夢をみたんです

暖かい兄上の手が冷たくなって帰ってくる夢だったんです

僕は兄上にずっと一緒にいてほしい、兄上のことが大好きなんです…」

千寿郎の言葉に胸を衝かれる、僕と会ってしまったことでそんな夢を見たのだろうか。

 

今の僕には泣いている千寿郎を抱きしめてあげることしかできない。

涙が止まるまでずっと抱きしめ、頭を撫でた。

 

「千寿郎さん、指を出してください」

 

「え……」

声には出さずに心の中で言った。

 

僕が杏寿朗さんを必ず守り抜くと約束する。

杏寿朗さんのように強くはなっていないけど、千寿郎を安心させてあげることはできないかもしれないけど。

 

帰ってきたら三人で稽古しよう、焼き芋を食べよう、できなかったことをたくさんしよう。

今度は杏寿郎さんにたくさん甘えて、たくさん困らせてあげて。

それから未来を歩くんだ、きっと沢山の幸せが待っている。

明るくて暖かい、いや煉獄家には暖かいじゃなくてちょっと熱そうな未来なのかもしれないね。

だから泣かないでよ千寿郎、笑ってお帰りなさいと迎えてあげてほしいんだ。

 

「大丈夫です

必ずここに杏寿朗さんは帰ってきてくれます

だから戻る日には、さつまいものお味噌汁を作って待っててあげてください」

 

首を縦に何度も振る千寿郎はとても可愛かった。

千寿郎の笑顔を見ると心が暖かくなる、君の笑顔は優しく暖かい。

僕は君のそんな笑顔を守りたいんだ。

 

 

 

 

こんなこと恥ずかしくて言えない、心にしまっておこう。

言ったら絶対に笑われるし、揶揄われる。

千寿郎はとっても優しけど、意外にも意地悪なところもあるからね。

それも親友だからわかることだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

──

親友へ

僕はいつも千寿郎の幸せを願っています

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日常回を少し書いてもいいですか?三人との日常もあります

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