雲居の空   作:くじぃらぁす

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柱とは

「お見送りはできませんが

これからも頑張ってくださいね」

最後の診察を終え、しのぶさんから任務に出てもいいという許可をもらえた。

本当に蝶屋敷の皆さんにはお世話になった。

 

「はい!

ありがとうございました」

診察の間もいつもと変わらない笑顔を浮かべていた。

でもいつもの笑顔とはどこか違う、心の底から笑えてはいない。

 

夜去さんが任務に出てからの、しのぶさんは帰るべき花を失った蝶のようで、カナエさんは太陽を失った花のように思えてしまう。

蝶屋敷の皆さんからも不安と恐怖が感じとれた。

 

「無理をしていませんか…?

夜去さんのことですよね…」

少しの驚きを見せた後、またいつもの表情に戻った。

 

「炭治郎君はすごいですね…」

 

「怖いんです……

夜去は笑顔で大丈夫です、必ず戻りますと約束してくれたけど

この笑顔をもう見れないかもしれない、もう私の元へ帰ってきてくれないかもしれないと思うと」

大切な人を、助けを求めている人を守るためなら夜去さんは自分がどれだけ傷ついても戦い続けるだろう。

それをしのぶさんも知っているから怖いんだ。

 

鬼殺隊の皆が夜去さんは強いと知っている。

でも不安なんだ、どこか危うげなところがある、目を離してしまえばいなくなってしまうような気がしてしまう。

こんな風に思ってしまうのは俺だけではないはずだ、気のせいであってくれと心の底から思っている。

 

「俺たちはまだ弱いです

でもいつか隣で戦いたい、支えられる存在になりたい

しのぶさんも同じ気持ちですよね?」

 

「……私もまだまだですね…

強くならないと、夜去に何か言われてしまいますね」

先程までとは表情も変わり、その目からは強い意志が伝わってくる。

きっと夜去さんと最後まで一緒に戦い抜く、側で支え一緒にいると心に改めて誓ったんだと思う。

 

しのぶさんもカナエさんも夜去さんに心を奪われた一人なんだ、誰もが美しく優しい夜去さんに心惹かれる。

 

「しのぶさん一つ聞きたいことが…

ヒノカミ神楽って聞いたことありますか!?」

俺は詳しく事情を話したが、あまり力になれないかもしれないと言われた。

でも詳しくはわからないが、炎柱の煉獄さんなら何か知っているかもしれないらしい。

しのぶさんが煉獄さんに鎹鴉を飛ばしてくれた、色々としてもらってばかりだ。

 

「夜去に会えたら伝えておいてください

生きていてと

生きてさえいてくれれば、私が夜去を必ず助けると」

 

「はい!

俺が責任を持って伝えておきます」

任務に行く時には言葉にして伝えれなかったんだ、俺が責任を持って伝えよう。

 

善逸と伊之助にも旅立ちの準備をさせないといけない。

もう一度お礼をして診察室を後にした。

 

 

別れは悲しかった、長い時間を共に過ごしたからその分だけ寂しさもあった。

ここで多くのことを学んだ、全集中の呼吸も取得することができた。

訓練した日々を一生忘れないだろう、どれこれも俺の大切な思い出だ。

 

蝶屋敷の皆さんを少しは安心させてあげることができただろうか。

俺たちが守り支えますと、自信を持って言えるように強くなりたい。

 

まだ俺には雲の上のような存在の人だけど、いつか共で一緒に戦いたい。

 

 

「えーーっ!

まだ司令来てなかったのかよ!!

居て良かったじゃん、カナエさんやしのぶさんの元に!!」

 

「あんな悲しい別れをしなくてもよかっただろう!」

 

「いや司令が来た時……

それに炎柱の…

夜…」

俺が何度話そうとしても善逸に遮られた、話をさせてくれないみたいだ。

夜去さんの名前を聞けば落ち着いてくれると思ったが、名前すら言わせてもらえない。

煉獄さんと夜去さんと真菰さんは一緒の任務だとしのぶさんが言っていたから、会えるかもしれないと思うと心が躍る。

最近お別れをしたばかりなのにもう会いたい。

 

「なんだあの生き物はー!!」

俺と伊之助は列車というものを知らなかったこともあり度肝を抜かれた、善逸は都会育ちだから驚きはしなかった。

無限列車っていうのに乗れば煉獄さんに会えるはずだけど…この列車であっているのかな…

 

「この列車でいいのか?

じゃあ切符買ってくるから静かに待ってるんだぞ」

今日はいつもの俺の役割を善逸が担ってくれている。

いつもは少し頼りない善逸だけど、今日はとても心強く頼もしい。

ありがとうな善逸。

 

「柱だっけ?その煉獄さん」

顔とかはちゃんとわかるのか??」

 

「うん

派手な髪の人だったし、匂いもちゃんと覚えてる」

話をしていると煉獄さんの匂いが近くなってきた、それと同時にあと二人の匂いも近くなった。

やはりこの列車に乗っているんだ。

 

「うまい!うまい!うまい!うまい!」

弁当を一口食べてはうまいと叫けぶ煉獄さんの姿が視界に入る。

一つ目の弁当かと思えば、横には大量の空き箱が積まれている。

大丈夫かな……

 

「うん、美味しいけど…

煉獄さん食べすぎ、夜去は食べなさすぎ!」

 

「真菰はもう少し食べないといけない

身長が伸びないぞ?」

 

「それは言わないでよ!」

煉獄さんと真菰さんの会話はこちらまで聞こえてきた、二人のそんな姿を見て微笑む夜去さんから俺は目を離せなくなっていた。

列車に乗っている人なんて夜去さんに釘付けだ、善逸が気付ば変な目で見るなと怒る気がする。

まぁ善逸の方が変な目で見ていると俺は思うけど…

惹かれてしまうんだから仕方ないよな。

 

「ちょっと待て待て

夜去ちゃんの音がするぞ!

まさかこの列車に乗ってるの!?なあ炭治郎もしかして知ってるのか」

暴走寸前の友を落ち着かせないといけない、乗客の迷惑になってしまう。

善逸は耳がいいから音でわかるんだな、どんな音がするのか今度聞いてみたい。

 

「善逸落ち着いてくれ会えるから」

珍しく善逸は首を縦に振り、俺の言う通り静かになってくれた。

 

 

「煉獄さん、夜去さん、真菰さん

こんばんは」

 

「三人も一緒の任務だったんだ!

よろしくね」

 

「こちらこそよろしくお願いします」

炎柱の煉獄さん、柱と同じ階級の夜去さんと真菰さんの呼ばれる任務。

それは十二鬼月もしくはそれ以上の力を持つ鬼が潜んでいることを意味している。

この前の那田蜘蛛山の任務を思い出すと弱気になってしまう。

今度の鬼はもっと強いかもしれないと思うと、体の震えが止まらない。

 

弱気になんてなるな、俺たちは鍛えてもらったじゃないか。

全集中の呼吸もできるようになった、前とは違うんだ。

もっと自分に自信を持て、一緒に戦い支えると決めたのなら。

 

「僕は四人の仲間が来てくれてとても心強いです」

夜去さんは禰 豆子のことも鬼殺隊の仲間として数えてくれていた。

あの日の手紙が脳裏を過り、俺は目頭が熱くなった。

 

「ありがとうございます」

夜去さんに伝えないといけない言葉がある。

 

「しのぶさんから伝えてくださいと言われました」

 

「生きていて

生きてさえいてくれれば、私が必ず夜去を助けると」

夜去さんは少し悲しそうな笑顔を見せた、先程のしのぶさんの笑顔にどことなく似ている。

感情を読み取ろうとしても何故か読み取れない。

 

「今度は自分の足で蝶屋敷へ戻ります

笑顔でただいま戻りましたと言い玄関を開けたいです」

 

「夜去それはいい!

元気なことが一番だ」

 

「カナエちゃんもしのぶちゃんもカナヲちゃんも皆が喜んでくれるよ

私もすごく嬉しいんだよ?夜去がそう言ってくれて!」

真菰さんは目に涙を浮かべている、しのぶさんとカナエさんと同じように夜去さんに惹かれているんだ。

多くの人に愛されている、思いは皆同じ生きていて欲しいんです、ずっと一緒にいたいんです。

 

 

「煉獄さん少しお話を聞いてもらえますか??」

俺は煉獄さんにもしのぶさんの時と同じように詳しく事情を話した。

ヒノカミ神楽のこと、父さんがやっていた神楽のことを事細かく説明した。

 

「うむ!そういうことか

だが知らん!ヒノカミ神楽というのも初耳だ!

君の父がやっていた神楽が戦いに応用できたのは実にめでたい

この話はコレでお終いだな」

煉獄さんも何も知らなかった、振り出しに戻された気分だ。

もう少しお話を聞かせてほしかった、でも継子になれ面倒を見てやると言い俺の声は届いていない。

面倒見がいい人だな…煉獄さんに鍛えてもらえればもっともっと強くなれる気がする。

この任務が終われば稽古してもらいたい、その時は伊之助も善逸も一緒に。

 

「溝口少年

君の刀は何色だ!」

 

「俺は竈門です!色は黒です」

 

「黒刀か!それはきついな!」

鱗滝さんと鋼鐵さんと同じ反応だ、やはり黒刀では色々と厳しいのだろうか…

いやいや落ち込むのは一瞬にしよう、俺に落ち込んでいられる暇なんてない。

煉獄さんと真菰さんの刀の色はなんとなくわかる、夜去さんは何色なんだろう…

 

「夜去さんの刀は何色なんだろう??」

心のどこかでずっと気になっていた、何故柄の部分しかない刀を使うのか。

だから二本日輪刀を持っているのかなと今は思っている、多分どちらも大切な人の使っていた物だと思う。

 

「俺も知らないんだ溝口少年」

そう言って夜去さんを見守る煉獄さんの目は優しく暖かかった。

何処を見ているのかわからない目だったけど、今は違い夜去さんの姿がしっかりと映しだされていた。

 

 

「夜去ちゃんずっと会いたかったよ

俺に会いたかった!?」

 

「何言ってるの!?

私、善逸君にも夜去を渡す気ないからね!」

真菰さん顔を紅くして言った、とても綺麗で可愛い人だなと改めて思う。

もうそれは告白しているようなものですよ、俺と善逸の顔が曇る。

でも夜去さんは真菰さんの想いに気付いていないと感じた、それがわかると俺たちは何故か安心した。

 

「うおおお!

俺をほわほわさせるな、お前を見るといつもこうなる!

俺と昔に会ったか!?思い出せねぇ!」

それは伊之助も夜去さんのことが大好きなんだよ、心に嘘をつけない隠せないんだ。

俺も伊之助と同じでずっと前にあったような気がするけど、俺たちの気のせいだろう。

あんなに綺麗な人を忘れるはずがないじゃないか。

 

「いつ鬼が出るかわからない!

気をつけておくように」

 

「え?嘘でしょ?

鬼出るんですか、この列車!?」

嫌だ嫌だ俺降りる、夜去ちゃんも一緒に降りよう」

短期間の内にこの汽車で四十人以上の人が行方不明になっている、数名の隊士を送ったが誰も帰ってこなかったと聞かされた。

だから柱である煉獄さんたちが来たんだ。

 

「僕は降りれません

大切な人を守りたいんです」

夜去さんの見つめる先にいたのは煉獄さんだった。

守りたい人とは煉獄さんのことなんじゃないかな…まさかここで命を落としたりしないよな…

そんなことを考えたのも本の僅かな時間だった。

きっと大丈夫だ、これからも鬼殺隊を支える柱としてずっと活躍する人だから。

 

「夜去にそれほど想われている者は幸せだな!」

 

 

車掌さんが切符の拝見に来た時だった。

鬼の嫌な匂いがした、辺りを見渡すが鬼は見当たらない。

 

「車掌さん!危険だから下がってくれ!

火急のこと故、帯刀は不問にしていただきたい!」

煉獄さんと同じく、夜去さんと真菰さんも日輪刀に手を添えた。

 

「夜去、真菰

大丈夫」

その言葉を聞き、二人は安心したように再び席に座った。

さっきまではそこにいなかった鬼が煉獄さんの前に姿を表した。

 

「炎の呼吸・壱ノ型 不知火」

鬼の首を斬るまで一瞬だった、俺たちは首を斬ったことにも気付けなかった。

改めて柱の人たちが戦っている場所の遠さを実感させられる、背負っているものが俺たちとは違う。

煉獄さんの一撃からは血反吐を吐くほどの努力をしたことが伝わってくる、人々を守るために来る日も来る日も稽古をしてきたんだ。

守るために刃を振るう煉獄さんの姿が俺たちの心に焼きついた、その姿を俺は一生忘れないだろう。

 

「立派な剣士にしてやろう!

みんなまとめて面倒みてやる!!」

あまりにも強い煉獄さんの姿を見た俺たちは弟子にしてくださいと叫んでいた。

すんなり了承してくれたのを聞き改めて面倒見のいい人だと思った。

 

 

「自分を見失わないでください

どんなに苦しくとも、どんなに辛くとも

自分を信じてください、大切な人たちを信じてください」

睡魔が突然訪れた、全然眠たくもなかったのに。

夜去さんの言葉を聞き、俺は煉獄さんの肩に頭を預け目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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