私は親方様の伝言を伝える鎹鴉だ。
毎年、選別の結果を親方様に伝えてもいる、その時、私はとても辛い。
顔には絶対に見せない、涙も絶対に見せない。親方様も私から、その報告を聞くのは辛いと思う。
選別で亡くなった子供達のお見舞いも欠かさずにいっている。その時、ごめんね、ごめんねと謝っている。
それを見て、私はとても苦しかった。
私は今年の結果を、早く親方様に伝えたい。今年は子供達が全員、生きて戻ったと。
「今年ノ選別デハ、誰モ死ヌコトナクナク、全員ガ生キテ戻ッテ来テクレマシタ」
「それは、本当かい?」
親方様はまだ、信じられない様子だ。今まで、一度もなかった。全員が生きて戻ってきてくれることなんて。
その逆で、誰も帰ってこなかった年は沢山ある。
今年あったことを伝えよう。
四人の子供達が命を懸けて、他の子供達をたくさん助けたこと。
その四人が危ない時、助けられた子供達も、また命を懸けて四人を守ったこと。
「…」
親方様が珍しく何も言わない。声を出さずに涙を流していた。
「ごめんね、涙は流さないと決めていたけど。あまりにも嬉しくて」
「鬼殺隊、当主でもある私がみっともない姿を見せてしまったね」
「親方様、今ハ誰モ見テイマセン。涙ヲ流サナイト親方様ガ壊レテシマイマス」
親方様が涙を流したところを初めて見た。
今は素直に涙を流してほしい。
「少しだけ、少しだけいいかな」
親方様はそのあと、本当に少しの時間泣いて言った。
「その四人の子供達、そして生きて戻った子供達のこれからがとても楽しみだよ」
「四人はどんな子達だったのかな?」
「三人ハ水ノ呼吸ヲ使ッテイマシタ」
「モウ一人ノ子ハ、私モヨクワカリマセンデシタ」
それでも、あの子からはとても優しい感じがして。また、遠くの未来を見ている気がした。
そして、あの子の相棒の鎹鴉は、とても心に傷を負っている。大丈夫だろうか、私はそれがとても気がかりだ。
あの子なら、その鎹鴉の心でも変えてしまいそうだ。私はなぜかそう思ってしまった。
「水の呼吸、一門が三人も。とても楽しみだね」
「もう、一人の子もすごく気になるね。その四人、そして今年入った子供達は鬼殺隊にいい風を与えてくれると思う」
「早く、私も会いたいよ」
あの子達は、絶対に柱まで登ってくる。そして、この先の見えない世を照らす灯になると思う。
「今年も、選別が終わった。次の私の相棒はあの子か」
他の鎹鴉達はすぐに、新しい相棒の鬼殺隊士のところに降りていった。
私は、それができない。相棒が今まで、何回も鬼との戦いで死んで変わった。あの子もどうせ、鬼に殺される、そんなことを考えるとあの子の元に行けなかった。
もう、この仕事をしたくない。相棒が鬼との戦いで死ぬのは耐えられない。
だから、最近は仲良くならないようにした。伝言だけ伝えて、あとは離れることにしていた。
けど、今年の選別は誰も死んでいない。今年は少し違うのかなと思った、けど私はそんな希望持たないことにした。
あの子は三人について行った。明日会いに行こう。
あの子は、朝起きて四人で稽古をしていた。今まで、相棒になった人も毎日稽古をしていた、鬼の首を斬るためだけに。
あの子が、一人になった時、挨拶だけ行こうと思った。
そして、あの子、以外の三人がお昼ご飯を作りに行った。
「はじめまして、私が今日からあなたの相棒です。あなたに親方様や、他の隊士からの伝言を伝えます。あなたの伝言も私が、皆さんに伝えます」
「これからよろしくお願いします。それでは私はこれで」
前までは、夢はありますか?とも聞いていた。でも全員、答えは一緒だった。それは鬼の首を斬ること。
鬼を斬ることだけを考えているのもわかる。大切な人を殺されて、復讐だけを考えているのはわかる。
でも、私は鬼を滅ぼした後、何をしたいのかを聞きたかった。
鬼が滅んだ時、夢がないと生きる意味が亡くなってしまうのではないかと思ったからだ。
この子も同じだろう。そう思い帰ろうとしていた。でも、その子からは待ってと止められた。
「僕は明月夜去、夜去って呼んでよ。君の名前はなんて言うの?」
「私に名前などないですよ。お好きなように呼んでください」
名前などない。今まで相棒になった人からも、おい、お前などでしか呼ばれたことはない。
「僕がつけていいの。気にいるかはわからないけど、朝なんてどうかな?」
私が朝なんて呼ばれていいのだろうか。私は暗いところの方がお似合いで、朝なんて私と正反対だ。
「あの、何で朝なんですか?」
私は気になった。そしてこの子と少しお話をしてみたいとも思ってしまった。
深く関わりたくない。失う時に傷つきたくないから。
「僕が夜去。君が朝。僕と君の二人揃えば、暗い夜が明ける感じがしない?」
夜去という少年は少し顔を紅くして、嬉しそうに話した。
こんなこと言われたことは今までない、生まれてきて一番嬉しいかもしれない。
「私がそんな名前をつけてもらっていいのでしょうか?」
「私と相棒になった人は全員亡くなっています。だから私がそんな明るい名前など」
「いいに決まってるよ。僕は絶対、戻ってくる。君の元へ。みんなの元へ」
その言葉を私はずっと聞きたかったのかも知れない。私は泣いていた、涙などというものを忘れていた。
「何で朝は泣いてるの…朝も僕と一緒で泣き虫なの?」
「泣き虫だ、絶対!泣き虫二人組だね」
「私は泣いたことなど数えるほどしかありませんよ」
「えぇー、ならダメだね」
この子と一緒なら私も泣き虫でいいと思ってしまった。
この子なら、他の隊士と違う夢を持っているかも知れない。
「夜…あなたに夢はありますか?」
返事が怖い。この子も鬼の首を斬ることというかもしれない。
「夜去って呼んでよ。夢はね…」
「たくさんあるよ、全部聞いてくれる?」
夜去が言ったのは、今までの人とは全然違った。
誰も大切な人を失わずに、笑っている未来で自分も生きること。
誰もが、自分の夢を持てるようにすること。
そして、みんなでご飯を食べること。
鬼の首を斬るという、言葉はでてこなかった。
いい夢だ、夜去は未来を見ている。
「朝の夢は?」
私も聞くばかりで、自分の夢は持っていなかったのかもしれない。
でも、今できた。夜去とずっといっしょにいること。
「夜去とずっと一緒にいること」
私はとても小さな声で言った。
「照れるよ。僕も朝といたいな」
夜去は照れて、顔をまた紅くした。それがどうしようもなく愛おしい。
「それと、夜去とたくさん綺麗な景色を見たい。一緒にご飯も食べたい」
今まで、鬼殺隊の仕事ばかりで綺麗な景色など見に行ったことなどない。
ご飯も一人で食べてばかりだった。私は他の鎹鴉と違って真っ白で、他のもの達とは違う異物だと思ってしまい、なかなか話しかけることができずいつも一人だ。
「うん、わかった。二人の約束」
守れるかはわからない。でも私は夜去を守りたいと思った。
「最後に一ついいですか?」
「夜去は鬼が憎くないんですか?」
「憎いよ。大切な人をたくさん奪った」
「だからといって相手の気持ちに寄り添ってあげないのは違うと思う。相手の気持ちを考えないのは、弱い者がすることだと思うから」
「僕は強い人になると、大切な友達と約束したんだ」
夜去はどこまで優しいんだ、ずっと一緒にいたい。私はそんなことを考えながら夜去の肩に降りた。
日常回を少し書いてもいいですか?三人との日常もあります
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イーオ
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ヨロシクナイ