現代東京。時代が変わるに連れ、この街の明かりは光を増していった。
人々は幸福に生き、希望を持って進んで行っている。しかし、そんな人々が居るということは裏にそれと対になる者達が居る。
光があれば影が出来る。陰と陽、幸福な人が居れば不幸な奴が居る。どの時代も、相変わらずである。
「はぁ...!はぁ...!」
雨と暗い曇天の夜に一人の女性が路地裏を駆け抜けている。後ろにはカタギでは無さそうだろう男二人が彼女を追いかけていた。男の怒号が路地裏に響き渡る時、彼女の恐怖が高まっていった。
「待てやゴラァ!」
「はぁ...はぁ...!」
おそらく
「はぁ...はぁ...」
少しの安堵が彼女の涙を誘った。しかし彼女は泣きたい気持ちを押し殺し、気持ちの整理を始めた。次に彼女はまた走った。あてもなく、ただ逃げるのみである。
「あっ...!」
何かにぶつかり、尻餅をつき地面に溜まっていた水が飛び散る。恐る恐るぶつかった方向を彼女は見る。視線の先にはサングラスを付けた男が立っていた。
「ひ、ひぃ....」
見た目はカタギではないと、分かった。赤...まるで
「た...助けて....!殺さな...いでぇ...」
彼女は錯乱に似た様子で男に命乞いをする。堪えていた涙の粒が溢れる。
「.....」
後の沈黙の末に男は口を開けた。
「なんじゃぁ...えらい混乱しとるのぅ...初対面でぶつかった相手になんじゃぁ...殺さいないでだ...?訳ありじゃのぅ...」
「ふぇ...?」
男は彼女に掴みかかって来ないので、彼女は拍子の抜けた様に声を出す。
「立てるか嬢ちゃん。寒いじゃろぅ、うちの事務所こんかぁ?話はそっちで聞かせてもらおか。安心せい、わしゃぁお嬢さんの味方じゃ」
このように男が語りかけると手を差し伸べた。
彼女は今、目の前に蜘蛛の糸が見えている様に感じた。それが今でも切れそうな
「すぐそこじゃからのぅ。傘ぁ、やるわ」
彼女に傘を持たせたのであって、彼は傘の中に入っていない。彼の先導に従って彼女は歩いた。
ここは路地裏。光があまり当たらない、影の地。
「ここじゃぁ」
少し歩いた後に、その場所へ着く。裏には大きい倉庫があり、表には雑居ビルのような物がある。雑居ビルの裏口から中へと入る。中はテーブルと、ソファーが二つ。それとデスクと椅子があった。あとはコーヒーメーカーやハンガーラックなど。
「...ほら」
男が彼女にタオルを投げた。彼女はタオルを受け取り髪と体を拭く。
「....ありがとうございます」
彼女は下を向いたまま感謝を述べる。男はコーヒーマシンでコーヒーを淹れ、彼女の前に置いた。コーヒーの湯気は暖かく、雨で冷え切った体にはとてもありがたいものだった。
次に男はソファーに座り、タバコを吸い始める。
「....ふー」
白い煙は部屋を舞う。沈黙の中、先に男が話を切り出す。
「わしは、
彼、鬼島鬼灯は探偵という。しかし、見た目は紛れもなくカタギではない。
「それでぇ...何があったんじゃぁ」
タバコを吹かしながらも事情を聞く。
「...私は
月夕工業、その名に鬼灯は心当たりがあった。
「月夕工業...ああ、大企業じゃのぅ」
月夕工業は世界に名を
「しっかし...なんであんなところに居たんじゃぁ」
鬼灯はあまり月夕工業の噂は聞いたことが無かった。しかし、あれほど恐怖に染まっていた顔は何か裏があると感じた。次に鶴橋は落ち着いたように話始める。
「ええっと...よく、分からないんです」
「分からない...か」
どうやら何かやらかしたなどではなく、他の理由のようだ。
「私がいつも通り仕事を終わらせて...退勤するときでした。あの男の人達が突然追いかけて来て...それから走って...」
今に至る。
しかし、今のところで追われる理由がわからない。
「そうじゃのぅ...これからどうするんじゃぁ?」
その問いは鶴橋にはっとなった。無論男達に今だ狙われていると考えると、まず会社に行けないし家にも帰れない。だが、不幸中の幸いでここは探偵事務所。依頼をしてみるというのも一つの選択肢だろう。
「あ、あのっ...」
鶴橋が声を出す。その声に対して鬼灯は見守るように聞いていた。
「依頼を...お願いしたいです」
鬼灯はタバコを灰皿に置き、話を進める。
「調査ぁ...それと解決かぁ?」
鶴橋は明るい表情をした。
「は、はい...!」
そして鬼灯は、微笑みながら話す。
「ほんじゃぁ...契約じゃのぉ」
依頼内容について話し始めるところで、扉が開く。そして声が聞こえた。
「あぁ...?鬼ちゃんお客さんー?」
To be continued.