私が所属する組織、『イ・ウー』の建物は既に壊滅していた。
周囲を見渡せば彼方此方で火災や爆発が頻繁に起きている。
その陣中で私はこの騒動の発端人物、『綾乃未海』と対峙していた。
未海の掌中には私の愛娘、凪颯が人質に取られていた。
「み、う……私の……娘を……解放しろ」
「へぇ……そこまで満身創痍な身体でまだ立ち上がるんだ」
「当たり前だろうが。私はこんな所で終わらない」
私は能力も使えない程に衰弱しきった身体にムチを打ってたちあがる。
「へぇ……成る程、成る程。では、喜劇を見せようかしら」
そう言って未海は
「猶予あげる。母娘の最期の会話だもの。せいぜい楽しんだら?」
「ママぁ!!」
「凪颯! 待ってて、今助けるから」
「うんっ!」
私は凪颯に安心して貰う様に宣言し、凪颯は私が助ける事を信じている様で、満面の笑顔で答えた。
「良い母娘の絆とでも言うべきか……。それを引き裂き、無に帰させるのは些か心が痛む」
ばちぃっ
未海の行動は発言と裏腹で残酷だった。抵抗できない凪颯の身体に雷撃を流し込んだ。
凪颯はそのまま物言わぬ屍となった。
「な、凪颯ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
目の前で愛娘を殺された私は慟哭した。
「無力なものね、お前も。守るべきもの守れないで」
「わ……た……しは」
「その
「チカラ……」
絶望し、空虚になりつつある私に未海のコトバが突き刺さる。
「《っ!? 凪優、アイツのコトバに耳を貸すな!! 気をしっかり持て!!》」
相棒である瑠璃神がこの後起こりうる事を危惧して私に呼びかける。
「お前の持つ能力は化物。 護る者も護れやしないわ」
「……バケモノ……ダレモ、マモレナイ……」
「《おい、凪優!? 正気に戻れ!!》」
「凪優、このアタシが憎い?」
「ミウ、憎イ。 私ノ娘、凪颯ヲ殺シタ!!」
私の理性は段々と薄れていく。
「だったら、その能力、解き放ちなさいよ」
未海のコトバに従う様に私の意識は深淵に沈み、本能の赴くまま、瑠璃神の能力を解放した。
その反動によるものか、空間に亀裂が走る。
「素晴らしい。コレがアタシの望んだ光景だ。さぁ、世界よ。今こそが終焉の時d」
未海は両手を天に掲げ宣言し終わる前に暴走した瑠璃神に消された。
未海を抹殺した瑠璃神は天空に昇り、咆哮する。
咆哮に呼応する様に発生する緋色、藤色、萌黄色の光の柱。
同時に世界全体が歪み、亀裂は発生し、崩壊していく。
世界の崩壊が雑に始まった。
これを止める術は既に……存在しない。
夢を見た。
あたし、間宮あかりが間宮あかりとして生を受ける前の記憶。
そう、水無瀬凪優としての最期の記憶。
「どうして、この夢なの!? 巫山戯ないでよ」
あたしは目覚め、悪態をついた。
瑠璃神との心結びとの影響?
とんでもない夢を見せてくれたもんだ。
このあたしにとっては忌まわしき負の記憶。
愛する娘が死んだあの日の記憶。
忘れる事のできない記憶。
あたしの……いや、私の不甲斐なさを痛感してしまう。
気分は当然最悪だ。
こんなのでもう一度寝ることなんて……出来る訳がない。
あたしは起きてから隣で寝ている妹、ののかとつばさを起こさないようにして部屋を後にした。
向かう先は無論決まっている。
あたしは家のテラスのベンチに座っていた。
今は外の風にあたっている。
5月といえど、まだ夜は肌寒い。
でも逆にこの寒さがあたしの心を少しでも癒してくれる気がする。
「凪颯……」
あたしは前世で死んだ愛娘の名前を呟いていた。
あんな夢を見たんだ。思い出さない方が可笑しい。
その度にあたしは後悔する。
『どうして助けられなかった。あれだけの実力を持ちながら。護る者も護れなかった……』
そんな思考があたしの脳内を駆け巡る。
無意識にテラスのガラスを殴りつけていた。
ガラスは防弾仕様であったらしく無傷だった。
「お姉ちゃん、どうかしたの?」
その言葉と共に現れたのは茶髪のセミロングでサイドポニーで瞳の色は瑠璃色の少女である。
彼女の名前は間宮つばさ。あたしの双子の妹である。
そして彼女はあたしと同じく転生者であり、彼女の転生前は間宮あかりで今の私の転生先であったりする。
「あぁ……つばさ、ゴメン。起こしちゃった?」
「ううん。大丈夫だよ、私もなんか目が覚めちゃったし」
あたしはつばさを起こしてしまった事に罪悪感を覚え、謝罪する。
しかし、つばさは「構わない」とあたしの謝罪を否定した。
「……で、お姉ちゃんさ、思い出しちゃったの?」
「──っ、どうして……そう思うの?」
「だって……泣いてるんだもん」
「え?」
つばさの指摘に虚を突かれるあたし。
「お姉ちゃん、泣いてた……ううん、泣いてるんだもん」
そう言ってつばさはあたしの隣に座った。
「……え、うそっ……」
あたしは止めなく流れる涙を拭う。
けど追いつかない。
「……お姉ちゃん。 泣きたい時は泣いてもいいんだよ?」
「え……でも……」
「今は誰も居ないしさ、それに……私に少しくらい頼って欲しいんだよ」
「で、でも……」
「『迷惑』……? そんな訳無いじゃん」
つばさはあたしを抱きしめた。
「お姉ちゃんはいっつもそうなんだよね……一人で悩みを抱えてさ。少しくらいは私達に相談してよ……」
「…………うん」
「どれだけ私やののかがお姉ちゃんの力になれるかは解んないけどさ」
「………………」
あたしはつばさの言葉に押し黙った。
「……お姉ちゃん?」
つばさはあたしが押し黙った事を尋ねた。
「あのさ……つばさ」
「? ……どうしたの、お姉ちゃん」
「しばらくさ……このままこうしてて欲しいの」
「……良いよ、お姉ちゃん」
あたしはこの後、つばさの胸の中で暫く泣いていた。
つづく。
もうすでに難産なのですが()
そんな感じで不定期感バリバリっす。
つばさちゃんのイメージCVですが『あみた』こと、前島亜美さんです。
それではまた次回お会いしませう。