2話目が投稿できて良かったと思う今日この頃。
それではどうぞ。
あたしがサイアクな夢見をしてから早くも1年が経過しようとしていた。
今、あたしは中学校1年生で里の校区内にある一般中学に通っている。
選択肢としては武偵附属中に通っても良かったのだが、そうは出来ない出来事がある。
そう、イ・ウーメンバーによる間宮の里への襲撃だ。
アレは間宮の里に伝わる技を狙った主に主戦派の奴等が起こした出来事。
前の世界だとアキなり、反対派が居たけれどこの世界に存在していない。
私が秘密裏に集めた情報なのだから確実ではあるだろう。
そして……気になることがある。
突如として、幹部が変わっているのだ。
砂礫の魔女、パトラの存在である。
あたしが知る限りではこの世界のパトラは正直雑魚だった。
だけど、半年前の闘いでそれまで幹部のアルシノエを消滅させ、その座についた。
アルシノエはシャーロック・ホームズに並ぶ実力者。
彼女がタダの雑魚に敗れるはずがない。
と、なれば何らかの介入があったとして間違い無い。
考えられるのは――というか、ほぼほぼ確実な線だろう。
「未海……、か……」
あたしは転生前の仇とも言うべき存在の名前を口にしてから先程まで使用していたスマートブックを閉じた。
その時、部屋のドアを誰かがノックした。
「……お姉ちゃん、ちょっと良い?」
声の主はののかだった。
「良いけど、どうしたの、ののか」
「つばさお姉ちゃんが呼んでるよ」
「……つばさが?」
「うん。 お姉ちゃんじゃないと対処出来ないからって」
「あたしじゃないと……? 解った。 今行くよ」
あたしはスマートブックを机に置いてののかの後に続くように部屋を後にした。
「つばさお姉ちゃん? お姉ちゃん連れてきたよ」
「ありがとう。 入ってきて」
ののかに続くようにつばさの自室に入る。
あたしが入ると同時にののかはつばさとアイコンタクトを交わして直後に自分の部屋へと戻っていった。
そこであたしが見たのはつばさのベッドで横たわるアッシュベージュのセミロングゆるふわウェーブで碧眼の女性だった。
年齢は……18歳位かな?大人びて見えるけれどそれくらいだろう。
でも、何処かで見た事あるんだよなぁ……この人。
「お姉ちゃん……?」
「えっ……な、何?」
「どうかしたの?」
「えっ……あ、ううん。 何でもないよ」
「………………そっか」
あたしの挙動を不審に思ったつばさが怪訝そうな顔であたしを覗き込んだ。
その視線に気付いたあたしは咄嗟に誤魔化し、つばさは引き下がってくれた。
……ゴメン、つばさ。 バッリバリにあるんだわ。心当たり。
さっきまでその人に関する情報を見てたからね。
あたしは、情報関連の事は頭の片隅に追いやって女性の治療に当たることにした。
最初に傷や怪我の箇所や具合を確かめるべく、彼女の状態を把握せねばなるまい。
あたしは彼女の額に指を置いて精神を集中させ、
この時に彼女の記憶や個人情報等も把握しちゃうんだけど、仕方無い――訳が無いのでそこはしっかりと取捨選択をしておく。
さて、治癒を始めよう。 今回は気合を入れねばならないだろう。
把握したところ、彼女の損傷は激しい。
肉体の外傷は問題の眼中にもなく治療は容易だ。それはもうあたしが出張る程じゃない。
でも、内面――
正確には第Ⅱ種や第Ⅲ種の
『物質的あるいはエネルギー的な物、外の物を契機として発動する』
『体内・体外問わず空間的に存在する未知の力を契機として発現する』
……この二つの機構が相当な損傷具合で機能していない。
故に彼女は今、
こうなってしまうと、非常にマズイのだ。
何がかと言うと大抵の
そうする事によって治癒と負ったダメージ量の軽減が図れる。
彼女も普段はそうしているのだろう……が、今の彼女は
詰まる所、彼女自身で治療する手立てはない。その証拠に彼女の生命機能は着々と衰弱している。これでは完全枯渇も時間の問題だろう。
あたしは持参したカードホルダーからタロットカードを取り出し、
このタロットはあたしが水無瀬凪優だった時に編み出した技法であたしの代名詞とも言えるモノだ。
今回は治癒だから、このカードだ。
「
あたしの言葉に呼応してタロットは淡い蒼光を放つ。
そしてあたしはカードを彼女の胸に宛行う。
蒼光は彼女を包み込み、傷を癒していく。
機構の損傷は……当初よりマシかな。
十全に
機構の完全復元にはあたしの
そこであたしは持参したポーチから蒼い結晶体を取り出し、
結晶体の内部で光の奔流が発生する。これで上手く流し込めた。
この結晶体を彼女の心臓辺りに宛行い、体内へと溶け込ませる。
こうする事であたしが供給する事なく彼女の体内に治癒の
一連の彼女の治癒が終わったあたしは
「おっと……お姉ちゃん、大丈夫?」
あたしの身体が床と触れ合う寸前につばさが抱きとめてくれた。
「あ、ありがと……つばさ」
「ご苦労様。 お姉ちゃん」
「うん……」
あたしとつばさは暫く抱き合っていた。
「……あんまり無茶しないで。 無茶しちゃうお姉ちゃんの事が私……心配なんだよ?」
つばさがポツリと呟いた。
その声は震えていた。
「………………………………ごめん」
つばさの言葉に何も返す言葉が見つからなかったあたしは一言返すのが精一杯だった。
「…………お姉ちゃん」
「……どうしたの?」
「もうちょっとで良いからさ……このままで……居させて欲しいの。 ダメ……かな?」
そう言ったつばさは――泣いていた。
「良いよ」
あたしは暫くつばさが泣き止むまでつばさを抱き締めていた。
暫くするとつばさの方から規則正しい寝息が聴こえてくる。
……どうやら、泣き疲れてしまったようだ。
このままにしておいて、つばさに風邪をひいて貰っては困る。
あたしはつばさをお姫様抱っこして、つばさのベッドに眠る彼女をつばさと交換テレポートする。
無論、つばさを起こさずにそーっとである。
その後、彼女……多分アルシノエさんであろう人物をお姫様抱っこして音を立てずにあたしは自分の部屋へテレポートで戻る。
自分の部屋のベッドにアルシノエさん?を寝かせる。
その後、あたしは再びスマートブックを取り出し情報収集を再開するのだった。
ついでに先程、消耗した分も休息で補う事にする。
しっかし……前世のあたしが私であった頃に比べると威力とか精度は遜色無いんだけど、持続というか行使する時間が短くなってるんだよね。
一応、瑠璃神化は出来なくはないんだけど10分以上はムリだし、タロット補助あっても反動デカいし。
一度やったら一週間寝込んでいたし一つも動けずにつばさの介護受けるレベルだったもんなぁ……。
こればかりは鍛錬と慣れで伸ばすしかあるまいか……。
そう思うと
あたしは自分のことなのに苦笑いをせざるを得なかった。
「んっ……此処は一体……」
どうやらアルシノエさん?が目覚めたようで、ゆっくりと上体を起こした。
「此処はあたしの部屋ですよ」
あたしはアルシノエさん?の質問に答えた。
「…………な、
「え」
アルシノエさんの質問に固まるあたし。
なんでそこで
「え、えっと…………」
図星を突かれて口ごもるあたし。
「……っ。 ご、ごめんなさい。私となる前の記憶にあった雰囲気に似てたから……」
アルシノエさんは自分の口走った発言を訂正しようとする。
これを聞いたあたしはある確証が生まれた。
「えっと、貴女は転生者だったり……するの?」
あたしの質問に核心を突かれた表情をするアルシノエさん。
「……っ! そうよ。私は前世の記憶を持ってる転生者よ」
静かな口調で肯定した。
「それじゃあ、前世の貴女は一体……誰、なの……?」
あたしの質問に
「ふぅ……凪優、よもやこの妾の事を死んでから忘れてしまったのかの? 妾は何時たりともお主のことは覚えておったぞ?」
アルシノエさんはそう答えた。
「……! その独特な喋り方……パトラなの!?」
あたしは目の前の彼女の前世をハッキリと思い出した。
「前世は『砂礫の魔女』、クレオパトラご本人様なのぢゃ! 転生した現在は『アルシノエ』と名乗っておるがの」
アルシノエさん……基、パトラはサラッと告白していた。
「まさか、パトラまで転生してるとは思わなかった」
「酷い言い様ぢゃな。 凪優。まぁ、相変わらずといえばそうぢゃが」
「……ナニソレ。で、本題なんだけどさ」
「分かっておる。……その前に良いかの?」
「……何?」
「妾のこの喋り方、久しぶりぢゃから慣れなくての。 この私の喋り方に戻ってもいいかしら?」
「あぁ……うん。 それは構わないけど」
「それじゃあ、凪優……貴女、知りたいのは貴女の暴走後……よね?」
「……そうだよ、あの後どうなったのさ!?」
あたしはパトラに掴みかかった。
「落ち着いて、凪優。 ……結論を先に言うわ」
「うん」
パトラはあたしを引き剥がして動揺するあたしを落ち着かせた。
「……あの世界、私達が存在した世界は瑠璃神の暴走に呼応して緋緋神、瑠瑠神、璃璃神も暴走し雑に滅んだのよ」
「なっ……それじゃあ、まさか……」
あたしはその言葉に戦慄した。
アリアは、キンジは、結衣は、葵は、理子は、白雪……皆は
「無論、全員命を落としたわ。 理由は様々だけど」
「そんな…………あたしの、私のせいで皆が……」
あたしは自己嫌悪に陥りかける。
自覚はしてているのだけれども、暴走直前の出来事がどうもトラウマになっている。
「それは違うわ。 凪優、貴女のせいじゃない。 私達はあの時皆がそれぞれの為すべき事を全うして命を落としたのよ。 不満なんてないわ」
「で、でも……」
「じゃなきゃ、私達は転生して。この世の中に生きていないわ」
パトラはあたしを抱きしめながら言った。
「え、『私達』……??」
「ええ。 そうよ」
「どういう事、パトラ以外にも私みたいに転生者が居るの!?」
「当然じゃない。 私一人で貴女のサポートは荷が重すぎるもの」
「え、一体誰が……??」
「あかり、理子、葵、アリア、キンジ、白雪、ヒルダ、マキナ、カツェよ」
「そ、そんなに……??」
あたしは転生者の多さに驚愕した。
そんな驚愕するあたしを他所にパトラは続ける。
「あたりまえじゃない。だって貴女のサポートは私一人で荷が重すぎるもの」
「何か納得いかないけれど事実だし否定できない……」
「でしょう。それに貴女は既に転生者と一緒にいるじゃない」
「えっ……」
あたしはパトラの言葉に驚愕した。
既に転生者とあたしが一緒にいる……??
「一体、誰が……」
「気づいてなかったの? 貴女の双子の妹、間宮つばさよ。 彼女は間宮あかりが転生した姿よ」
「そうだったんだ……あかりが……」
道理でつばさが間宮一族の長子に相伝される技をカンペキに使えたわけだ。
それに、何故かつばさとは長い付き合いだった気がしたよ。
そりゃそーだ。道理で一緒にいると安心できると思った。
「それに、他の転生者も大体の目星は着いてるわ」
「他の……??」
「ええ。ヒルダ、マキナ、カツェよ。まぁ、その二人は少し厄介だけども」
「『厄介』……??」
あたしはパトラの言葉の歯切れの悪さが気になった。
「……そうよ。その3人は捕われの身だもの」
「え、『捕まってる』……?? 誰に!?」
「決まってるじゃない。遺伝子オタク吸血鬼よ」
「ブラドの事……?? スゴい言い様よね、パトラ」
「事実じゃない。それに……あのクズをどう呼んだっていいじゃない」
「…………どんだけ外道なのよ、ブラド」
あたしはあまりのこの世界のブラドのクズっぷりに呆れた。
どこまで堕ちてるんだよ……。気になる次第ではある。
「まさかとは思うけど……」
「ええ。この世界の理子も捕らわれてるわ」
「マジか……」
あたしは違う意味で戦慄した。
何かヤリそうで怖い。
あたしはこの時決意した。時間は……そう無いだろう。
「ねぇ、パトラ」
「どうしたの、凪優」
「ヒルダ達って何処に捕まってるの?」
「それは……横浜の紅鳴館だけど……まさか、貴女」
「勿論、助けに行く」
パトラの問いにあたしは断言した。
「止めても……無理よね。だって凪優だもの。 ……解ったわ。私も同行する」
「え、でも……」
「確かに今は十全に能力は使えない。けど、あんな奴に遅れを取る程衰えてはいないわ」
あたしの懸念を論破するかのようにパトラは言い切った。
「そう。だったら二人で……」
「『3人』だよ。お姉ちゃん」
あたしの言葉を遮ったのはつばさだった。
どうやら目覚めてからこの会話を聞いていたらしい。
「私も同行するよ」
「えっ……でも」
「危険なのは承知の上だよ。それとも、私じゃ力不足なの?」
「そんな事は無いよ……だって、つばさの……ううん。
「その名前で呼ばれるって久しぶりだよ。なゆおねーちゃん。
「ゴメン……」
「別に謝って貰わなくても良かったのに。 どうせ何れはバレるだろーなとは思ってたし」
つばさ……あかりはアッサリと流していた。
「だったら尚更問題ないよね?」
「そうだね。愚問だった」
改めての問いにあたしの……私の答えは決まっていた。
「お願い。あかり。ヒルダ達を助けるのに力を貸して」
「良いよ。なゆおねーちゃん。3人一緒でやろう!」
あかりの了承に士気は自然と上昇していた。
「流石は元祖女人望ね……」
パトラはその様子をくすくすとしつつも見守っていた。
そしてそれから、あたし達は互いを転生後の名前で呼び合うことにする等、紅鳴館奇襲の打ち合わせを行い、アルシノエの能力は3日後には十全に使えるまでに回復することから、3日後の夜の決行が決まった。
その間の3日は奇襲の準備等に充てられた。無論、装備に不具合があっては致命的になるからだ。
3日間の準備期間はあっという間に過ぎていった。
3日後の丁度、新月の夜にあたしとつばさ、それにアルシノエの3人はあたしの
》To The Next Stage……!!
如何だったでしょうか。
今回登場した新オリキャラ、アルシノエ。
イメージCVはつむつむでお馴染みの紡木吏佐さんです。
やべーキャラにはならない……と思うよ……多分、きっと、めいびー。
詳細な設定とかも定まってないので、固まり次第、人物紹介に書きたいと思います。
次回は紅鳴館奇襲メインとなります。
あのキャラ達のファンお待たせしましたぜ。
投稿時期は超未定なのでお楽しみに。
ではでは。