ストライクウィッチーズ 大空の傭兵の軌跡   作:sontakeda

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アニメ1期 本編5話の後の話となります。


第5話 ふるいのとやわらかいの Aパート

大事なひとり娘に別れを告げ、ひとり欧州へ向かうために船に乗った。メガネを掛けた壮年の男性はそんな娘のことを思いながら、甲板の先の地平線を見つめていた。

 

「あのー、すいません……もしかして……」

 

メガネの男性の後ろから声をかけてきたのは、白髪に紺色のスーツをきた初老の男性と、目つきが悪そうに見える小さい男の子の姿あった。

 

「宮藤博士……ですか?」

 

「…はい。あなたは?」

 

「!!、俺!同じ研究チームの足立宗次郎って言います!感激だぁ!!」

 

本物の宮藤博士を前に宗次郎は興奮が収まらない様子だった。

 

「同じ研究仲間でしたか。宮藤一郎と申します。よろしくお願いします」

 

「こちらこそ!よろしくお願いします!!進也!お前も挨拶しろって!」

 

「…………………」

 

ふたりは握手をした後、進也に挨拶を促すが、一郎を見つめたままだった。

 

「……あの、失礼ですがこの子は……?」

 

「ウチの息子です。母親はもういなくて、家にひとりにさせるのもアレだったんで、無理言って連れてきました。ははっ」

 

宗次郎は気にする様子もなく笑い飛ばすかのように話した。

 

「そうだったんですね、失礼しました」

 

「いやいや!そんなことより、いつまで博士に睨みつけてんだお前は!!」

 

「……………………」

 

一郎をじっと見つめたままかと思いきや、そっぽを向いてどっかに行ってしまった。

 

「いやすいません……アイツ人見知りなヤツで………」

 

「いえ、構いませんよ。私も似たようなモノですから」

 

「そう言って頂くと、助かります」

 

宗次郎は申し訳なさそうに後頭部をかきながら感謝した。そのふたりが楽しそうに話をしているのを、進也は振り向きざまに確認した。

 

 

 

 

 

 

「足立くん?聞いてる?」

 

「あー、聞いてる聞いてる。海が楽しかったんだろー?」

 

「やっぱり聞いてない!昨日のシャーリーさんの話だよ!」

 

午後、食堂で休憩を取っていた足立に、昨日の話を聞かせていた宮藤とリーネ。

 

「昨日、シャーリーさんがもの凄いスピードで、ネウロイを追いかけたんですよ」

 

「途中で飛ばされちゃいそうになったよね!」

 

「そりゃ衝撃波ってやつだ」

 

「しょうげき…は?」

 

聞き慣れない単語に宮藤は首を傾げた。

 

「すっげぇ簡単に言えば、音速を超えたら出る空気の衝撃だ」

 

「へぇー」

 

「じゃあ、シャーリーさんはあの時点で音速を超えたってことですよね?」

 

「おそらくな」

 

「それって……夢が叶ったってことだよね!?すっごーい!!」

 

宮藤はまるで自分の夢が叶ったかような喜びを見せた。

 

「それでネウロイとぶつかって倒しちゃうのも、ある意味すごいよね……」

 

「俺よりムチャクチャだろそれ……」

 

いつもデタラメな戦い方をする足立が、呆れた口調で感想を言い述べた。

 

「それでふたりで担いできたってわけか」

 

「ッ!!」

 

「えっと………」

 

本来ならシャーリーの救出に行ったふたりだったが、何故か宮藤は言い淀んだ。

 

「………どうした?」

 

「担いだって言うか………担がれたって言うか………」

 

「アタシの胸を堪能してたんだよなぁ?」

 

「そうそう!……ってシャーリーさんッ!?」

 

いつの間にか入ってきてたシャーリーが、宮藤とリーネの席の後ろに立っていた。

 

「アタシが疲れきって動けないことをいい事に宮藤は……」

 

「ち、違いますよ!!アレはわざとじゃなくて!!」

 

「でも良かったんだろ?」

 

「それは………ふへへ……」

 

「よ、芳佳ちゃん……」

 

シャーリーの胸の感触を思い出す宮藤は、とても幸せそうな顔をしていた。

 

「………なんだそりゃ……」

 

心底どうでも良さそうな顔で宮藤達を見つめる足立だった。

 

「そういえば、足立は海に居なかったけど何してたんだ?」

 

「俺は基地で留守番だ。中佐の命令でな」

 

「なんだ、それは残念だったな」

 

「?、何がだ?」

 

「私達の水着姿が見れなくて残念だったなってことさ」

 

自分を含め、リーネや宮藤を指しながら得意げな顔で足立に言った。

 

「……残念がることないだろ」

 

「なんだよノリ悪いなー、そんなんじゃモテないぞ?」

 

「必要なし」

 

「ちぇ、少しは女の子に興味持てよな」

 

ノリが悪いと思いながらシャーリーは、食堂の冷蔵庫から食料を片手に持てる程の量を持ち出した。

 

「あ、シャーリーさん、もうすぐお夕飯の準備しますよ?」

 

「これくらい大丈夫大丈夫!整備のお供にほしいだけさ。んじゃ」

 

リーネの忠告を流し、そう言ってシャーリーは食料を持ち出して部屋を出ていった。

 

「お夕飯前に食べて大丈夫なのかな?」

 

「アレぐらい普通なんだろ。身体も俺たちよりデカイしな」

 

(身体だけじゃないような気も………)

 

リーネは自身の胸とシャーリーの胸を比べながら思ったが、口には出さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、執務室ではミーナと坂本は報告書を見ながら睨んでいた。

 

「今月でもう10回は出撃してるわね」

 

「明らかに現れる頻度が多くなっているな」

 

そこにはネウロイを撃墜したと書かれた報告書が10枚以上あった。

 

「それも彼が現れてから、ね。宮藤さんが来てからも多少のズレがあったけど……」

 

「今ではズレだけでは解決されない事態だな。どう見る?」

 

「………少なくとも彼が敵じゃないって言うのは分かったわ」

 

「と言うと?」

 

ミーナ引き出しから別の書類を取り出した。その書類を坂本に手渡した。

 

「これは?」

 

「彼の身辺調査をした報告書よ。読んでみればわかるわ」

 

「……………………なんだとッ……!!」

 

そこには足立についての情報が書かれていたが、1番に目に止まったのが、足立宗次郎という父親の名前。そしてストライカーユニット開発の協力者であるということ。

 

「宮藤博士と同じ研究者だったってことね」

 

「だとしたらあのボードも合点がいくな。しかし妙だな………開発の協力者ならなぜ私が知らないんだ……?」

 

「テストパイロットの貴方なら知ってるかと思っていたけれど、だとしたら………」

 

「まだ知らない真実がある、ってことか」

 

「恐らくね」

 

ふたりは顔を見合わせながら神妙な表情をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

再び食堂の様子を見ると、宮藤とリーネは夕飯の支度を終えようとしていた。

 

「できたぁー!手伝ってくれてありがとうリーネちゃん!」

 

「ううん!こちらこそ!」

 

完成した夕飯を運ぼうとしたとき、食堂扉が開くとバルクホルンが入ってきた。

 

「あ、バルクホルンさん!」

 

「丁度いまお夕飯が出来たところなんです」

 

「そうか、ご苦労だったな。ところで、足立は見なかったか?」

 

「えっ、足立くんならあそこに……」

 

宮藤が指を指す方向を見ると、奥の席でポツンと座っている足立と目が合った。

 

「ほう、それは丁度良かった」

 

「何がだー?」

 

動こうとしない足立はテーブルに肘を付きながら頭を支える形で返答した。

 

「シャーリーのところまで運んでほしいものがあるんだ」

 

バルクホルンが床にドサっと置いた箱は3つ。中身が見えてるのもあり、何かのパーツらしきものがぎっしり詰まっていた。

 

「………これなんのパーツだ?」

 

「さあな。あのリベリアンの私物だ。自分のところに運べと言ったのに丸っと忘れていってだな………全く」

 

「……まさか全部運べってか?」

 

「そうだ」

 

1つならまだしも3つともなると、流石の足立も顔が引きつりそうな表情をしていた。

 

「いやムリだろ流石に」

 

「男だろ?」

 

「関係ないだろそれ!!」

 

「上官命令だ」

 

「なっ!!汚ぇぞ!!」

 

「あの〜……だったら………」

 

 

 

 

 

 

 

ふたりの言い合い結果、宮藤とリーネと足立で一箱ずつ持っていく事になった。

 

「ったく、途中まで持っていけるなら最後まで持っていけよな」

 

「いいじゃん、夕飯の準備が終わって丁度よかったし、ね?リーネちゃん」

 

「うん、私達に頼って良かったんですよ?」

 

「へいへい、次からは頼みますよ」

 

「ふふっ」

 

先頭の足立がぶっきらぼうに言うと、リーネと宮藤はお互いの顔を見合わせながら、言動が照れ隠しだと思いクスッと笑った。

 

足立たちがやってきたのはハンガーだった。ストライカーの整備をしているシャーリーならここに間違いないとふんで訪れた。

 

「やっぱここか」

 

「シャーーリーーさーん!!」

 

「ん?その声……宮藤か!」

 

宮藤の叫ぶ声に反応して、シャーリーはストライカー発進ユニットからヒョコっと顔を出した。

 

「ってお前ら、揃ってどうしたんだ?」

 

「どうしたもこうしたも、アンタのおかげで使いっぱしりにされてるんだよ」

 

シャーリーの前まで行くと、足立はドサっとパーツが詰まった箱を雑に置いた。

 

「おいこれ!アタシのモノじゃないか!もうちょっと丁寧に扱ってくれよ!」

 

「だったら次から忘れないようにしてくれ」

 

「……へっ?」

 

「バルクホルン大尉から頼まれたんです。シャーリーさんの代わりに運ぶようにって」

 

リーネが訳を簡潔に伝えるとシャーリーはハッとした表情で頼まれた事を思い出した。

 

「あーそっか!悪い悪い!すっかり忘れてたよ!」

 

「やっぱりか………」

 

「ココに置いとけばいいですか?」

 

「ああ、あとはアタシが運んでおくから。お前らにはお礼しないとな」

 

『お礼?』

 

お礼と聞いて首を傾げる宮藤とリーネ。すると次の瞬間、シャーリーがふたりを包み込むように抱きしめた。

 

「わぁッ!!」

 

「しゃ、シャーリーさん!?」

 

「荷物を運んでくれたお礼さ。ありがとうなふたりとも」

 

「どう……いたしまして……」

 

「ふえへへ………」

 

「よ、芳佳ちゃん……!」

 

少し苦しい様子のリーネだが、宮藤にとっては天国の空間だったようだ。

 

「あーー!!ふたりともずるいーーー!!」

 

ハンガーの上部から響き、そう言って上から降ってきたのは、ルッキーニだった。

 

「ルッキーニちゃん!?」

 

「そこはあたしの場所なの!!」

 

「はいはい、ルッキーニにもやってやるから。ほら」

 

「やったーーー!!!」

 

ふたりにハグをし終えるシャーリーは、ルッキーニに向かって迎え入れるように両手を広げた。するとルッキーニは迷わずシャーリーの胸の中に飛び込んだ。

 

「んー……ぱふぱふ………」

 

「はははっ!!ホントにコレが好きだなルッキーニは!!」

 

「………いいなー……」

 

「芳佳ちゃん………もう………」

 

ポツリと呟いた宮藤に流石のリーネも顔を赤くしながら呆れた。

 

「……………………」

 

「ん?おっそうだ、足立もしてほしいか?」

 

「………アホらし、俺は先に戻ってるぞ」

 

「ッ!!ちょ、ちょっと待った足立!!」

 

「あぁ?」

 

何かを思い出したかのようにシャーリーは足立を引き止めた。その声に足立も振り向いた。

 

「悪いルッキーニ、ちょっと離れてくれ」

 

「えー………分かった………」

 

抱きついていたルッキーニは残念そうに離れた。

 

「なんだよ」

 

「お前に一生の頼みがあるんだ」

 

「頼み?」

 

そう聞くと足立は神妙な顔をした。それほどの重要な事なのかと勘ぐっていた。

 

「……………お前のストライカーボードを見せてくれないか?」

 

「…………は?」

 

「頼む!!お前のストライカーボードの中身が気になって仕方ないんだ!!だから頼む!!」

 

「やだ」

 

シャーリーの必死な頼みに2文字で一蹴する足立。

 

「そこをなんとか!」

 

「断る」

 

「ホントにダメなのか?」

 

「ダメ」

 

「そうか………なら……しょうがないな……」

 

断り続けて諦めてくれたかと思い食堂に向かおうとした足立。その瞬間、後ろから何者かに抱きつかれる感覚がした。

 

『あっ!!』

 

「なッ!?」

 

「頼むよー足立ぃー。マジのお願いなんだからさー」

 

その正体はシャーリーだった。自分の武器でもある胸を押し当てるかのように後ろから抱きつき、またも頼み始めた。

 

「ちょ、お前!!離れろ!!」

 

「足立が良いって言うまで離れないぞー」

 

「ウザい!!しつけぇ!!やめろ!!」

 

「そう言ってる割には顔が赤くなってるが?」

 

「なっ!!」

 

確かに足立の顔は赤面していた。足立も男であり、女性に抱きつかれたと必然的に羞恥という感情が働いた。

 

「なぁいいだろー?頼むぜー足立ぃー」

 

「………だああああああ!!!わぁーーったよ勝手に見ればいいだろちくしょッ!!!」

 

「ホントか!?やったぜ!!サンキュー足立!!」

 

「………シャーリーさんって……スゴイね……」

 

「………うん………」

 

シャーリーの行動の大胆さに、宮藤とリーネは赤面しながら同意した。

 

「さぁーて、そう決まったら………」

 

「あ、シャーリーさん!もう夕飯の準備が出来てるんですけど」

 

「ああ、中をパッと見るだけだからすぐ済むさ」

 

忠告する宮藤にそう言って、シャーリーは足立のストライカーボードの魔導エンジンが積んである装甲の表面を、慣れた手付きで蓋の止め具を外していった。

 

「さぁて、中はどうなってるかな〜?」

 

わくわくした気持ちでストライカーボードの中を開けると、シャーリーは固まった。

 

「…………………」

 

「どったのシャーリー?」

 

固まったシャーリーを見て宮藤とリーネとルッキーニは首を傾げた。

 

「これ……最初期の魔導エンジンじゃないか……?」

 

「最初期って………ストライカーユニットが開発された時のことですか?」

 

「ああ。今じゃ滅多に見られない、こりゃテスト用のエンジンだぞ……!」

 

「それがどうかしたんですか?」

 

「出力や馬力、スピードがアタシ達とは段違いに悪いってことさ。アタシが使ったら宮藤にすら置いていかれるだろうね」

 

「そんなにですか………」

 

シャーリーの例えで宮藤は驚きの意味を理解した。

 

「それをアタシ達と同じ、もしくはそれ以上のスピードで飛ぶんだ。足立の力は想像以上ってことさ」

 

「………スゴイのは俺じゃない。コイツだ」

 

話を聞いていた足立は、自身の心臓を部に親指を立てながら指した。

 

「ネウロイのコアか……」

 

「コイツが無かったら、俺はただの一般人。まともに飛べもしないってことだ」

 

「!、シャーリー!あたしいい事思いついた!」

 

「うん?なんだ?」

 

足立の言葉に何かを閃いたルッキーニ。その提案をシャーリーに報告した。

 

「ネウロイのコアがあったらもっと速くなるんじゃない?」

 

『ええっ!?』

 

「ッ!!」

 

「……面白そうだなそれ。けどルッキーニ、それは………」

 

「んな馬鹿なことは考えるなッ!!!」

 

『っ!?』

 

突然、足立の怒号がハンガー中に響き渡った。その大声にその場にいた全員がビクッとした。

 

「…………………」

 

「あ、足立くん……?」

 

宮藤の呼びかけに足立はハッと表情で正気を取り戻した。

 

「………見終わったら元に戻しとけよ。俺は先に戻ってる」

 

やってしまった、という雰囲気に包まれた足立は、その場に居るのが気まずく感じたのか、逃げるようにハンガーを後にした。

 

「もーなんなの!?急に大声なんか出して」

 

「……冗談じゃないってことさ」

 

「えっ……?」

 

理不尽に思えたルッキーニだが、シャーリーは何か思うところがあるみたいだった。その言葉に宮藤とリーネとルッキーニはシャーリーの顔に向いた。

 

「謝らないといけないな、これは」

 

ストライカーボードの魔導エンジンを見ながらシャーリーはそうつぶやいた。

 

 

 

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