ストライクウィッチーズ 大空の傭兵の軌跡 作:sontakeda
足立に怒鳴られた夜、気にしてないかのように鼻歌交じりでシャワーを浴びるシャーリーに、バツが悪そうな顔立ちで湯船に浸かっているルッキーニ。
「♪~」
「………ねぇシャーリー」
「うん?なんだ?」
「あたし、なにか悪いことしたのかな?」
「……さっきのことか?」
「うん………」
どうやら、ルッキーニはあの時の足立の言動が気になっていたようだった。
「そうだなー。なんとも言えないけど、足立には良くないように聞こえたのかもな」
「…………………………」
シャワーを浴び終えたシャーリーはルッキーニの隣に座り込んできた。
「悪いことしたって思ってるのか?」
「…………………うん」
「なら、一緒に謝りに行こうか」
「シャーリーも?」
「ああ、アタシもちょいと悪ノリしたし。それに、アイツそんなに怒ってない思う」
「どうして分かるの?」
「女の勘ってやつ、さ」
「えー、なにそれ〜」
「アハハハッ!!」
シャーリーは雰囲気を和やかにしようと、ルッキーニの前でワザとふざけた。
「それと、私はコアに頼らないよ」
「なんで?」
「だってそれってズルだろ?ズルで速くなっても、嬉しくもなんともないさ」
手をひらを前に出しながらシャーリーは語った。
「私が求めてるのは純粋なスピード。人間の手でどこまで速くなるのかを探してるんだ」
「………………」
「だから、せっかくのルッキーニのアイデアだけど、それはナシだ。ごめんな?」
「……ううん、シャーリーの方が正しいよ。ズルしても面白くないもんね」
「ああ、そういうことさ」
ルッキーニの解釈にシャーリーが同意するとふたりは笑顔になった。
『いつまで続けるつもりだ?』
「……………………」
どこか分からない暗闇の世界。どこからともなく足立に語りかける者は、存在が見えない。
『いい加減仲良しごっこもいいんじゃないか?』
「……………………」
『ホントは気づいているんじゃないか?アイツらがお前を憎んでいることに』
「………………うっせ」
今まで無視し続けた足立だが、しびれを切らして反応した。
『今なら油断している。お前の力なら誰にも負けない』
「………うっせぇ…………」
『手始めに、あの「宮藤」とか言うのを殺してはどうだ?』
「うっせぇうっせぇうっせぇッッ!!!」
『アイツもお前を信用していない、強いものに媚びてるだけだ』
「黙りやがれぇぇぇッッッ!!!!」
絶叫するかように足立は叫んだ。そのどこからともなく聞こえてくる声を拒絶するように。
「ッ!!」
すると足立は、目をカッと見開いた。自分の部屋のベッドに寝ており、外の様子を見るともう朝だった。
「…………………………」
変な汗が滝のように流れていることに気づいた。よほどうなされていたことが伺える。
「…………ハハッ……やっぱ慣れねぇなこれは………」
足立を目元を手のひらで隠し、乾いた笑い声が出た。そのまま再び眠りに入りそうになったとき、廊下から声が聞こえた。
「足立くーん、起きてる?」
「………宮藤?」
声の正体に気づき、足立は重苦しい身体を無理やり起こし、部屋の扉を開けた。
「あ!足立くん!おはよう」
「……なんだ?」
「ミーナ中佐と坂本さんが呼んでたよ。執務室に来てって」
「…………すぐ行くわ」
「……………………」
宮藤は足立の顔をジッと見て何かを感じ取った。
「……足立くん?」
「あぁ?」
「具合いでも悪いの?なんか顔色が良くないような……」
「……………………」
先程の夢のような幻聴が、脳裏によぎる。宮藤はただ媚びているだけなのか、それともホントに心配しているだけなのか。足立の中で少し考えたが、後者を選んだ。
「足立くん?」
「……あぁ、ちょっと夜ふかししてな。あんま寝てないだけだ」
「なんだぁ!あんまり夜ふかししちゃダメだよ?」
「……はいよ」
(………あんな戯言を信じるな………)
足立は支度を整えると、執務室に訪れた。
「入るぞ」
ノックをした後、すぐさま扉を開けた。
「おはよう、足立君」
「?、どうかしたのか?」
入ってきた足立に対し、坂本はすぐに足立の状態に気づいた。
「……いやなんでも。で、いったいなんだ?」
「アナタに聞きたいことがあるの」
「足立宗次郎、お前のお父上についてだ」
「…………………」
父親の名前が上がると、足立は察した表情をした。
「………バレちまったってことか」
「事実なんだな」
「どうして言わなかったの?」
「言ったところで信じないだろ。アンタ達も裏が取れたから今聞いたんだろ?」
「…………………………」
正論を叩きつけてふたりを黙らせる足立。
「アンタ達はいいヤツかもしれない。けど、完全に信じたわけじゃない。だから全部を話す気もない」
「しかしだな………」
「分かったわ。今はそれで」
「ミーナ……!」
「ただ、ひとつだけ言わせてちょうだい」
「………?」
「アナタの参加を反対していた私が言えたことじゃないけど、ひとりで全部抱え込まないでほしいの」
「………………」
「なにかあったら相談して?私達は、アナタの味方だから」
「………んなもんねぇよ」
足立はそう言い残して執務室を出ていった。
「………めずらしいな。ミーナが引き下がるなんて」
「彼の顔色見たでしょ?日に日に悪くなっていってるわ」
「体調でも悪いのか?」
「それは分からないけど、今は話してくれるのを待つしかなさそうね」
「それしかないか」
腕を組みながら考えた込む坂本は、その案に妥協した。
朝食を食べに食堂に現れたシャーリーとルッキーニ。その様子からわくわくしてる様子だった。
「おはようー」
「あ、おはようございます!シャーリーさんルッキーニさん」
「おっはよう芳佳!」
「あれ、足立のヤツは?」
「朝から見てないゾー」
「そういえば朝から姿を見てないな」
シャーリーの質問に受け答えるエイラとバルクホルン。
「足立くんなら、今朝坂本さん達に呼び出されて執務室に行った以来ですけど」
唯一姿を見た宮藤は、ルッキーニ達の分の朝食を用意しながらシャーリーに報告した。
「なにかあったのかな……」
「どうせ、なにかやらかしてお説教でもされてるのでは?」
「まるでペリーヌみたいだね」
「どうしてわたくしが出てくるんですの!?」
「あはは………」
ハルトマンの言い方にペリーヌは食いついた。その様子をリーネは苦笑いした。
その時、再び食堂の扉がガチャと開き、坂本とミーナもやってきた。
「みんなおはよう」
「うん?そんなとこで突っ立ってどうしたシャーリー」
「いや、足立の姿が見ないなって思って」
「足立が?」
「さっき用は済ませたはずだけど……」
「こっちに来てないというわけだな」
「ふーん。じゃ、しょうがないか。ルッキーニ、後で探そうか」
「うん!」
「シャーリーさん!私も一緒に探します!」
「ホントか?そりゃ助かる!」
この基地内を二人で探すのは少々大変かと思ったが、宮藤の手伝いを借りられて喜ぶシャーリー。3人は朝食を食べ終えた後に、探すことにした。
外のオープンカフェにて、壁の塀の上であぐらをかいて地平線の先を見つめる足立。
「…………………」
(なにかあったら相談しろ、か)
先程のミーナの言葉が、足立には引っかかってるようだった。
「幻聴が聞こえなくするにはどうすればいいか、なんて聞けるわけねぇだろ……」
足立は愚痴を吐くようにつぶやいた。
「……あ!あそこ!!」
「おっ、あんなとこにいたか!」
足立の後ろからルッキーニとシャーリーの声が聞こえてきた。当然足立にも、その声と気配には気づいていた。
「おーい!足立ぃー!」
「………………………」
「ったく朝食に来ないから基地中探したぞ」
「…………なんだよ」
足立は振り返らず、そのままの状態で聞いた。
「ルッキーニから言いたいことがあるってさ」
「…………………」
「あのね………昨日はゴメンナサイ………足立が嫌がることを言っちゃって………」
「…………………」
ルッキーニの謝罪に対し、足立は黙ったままだった。
「アタシからも謝るよ。ごめん。ちょっとふざけ過ぎたのもあるし、私に免じてルッキーニを許してやってくれないか?」
「…………………」
するとそこに偶然、シャーリー達の後ろ姿を発見した宮藤が通った。
「あそこに居るのって、シャーリーさん達だ………!足立を見つけたんだ!」
(………でもなんだろ、真剣な話をしてるような……)
宮藤が駆寄ろうとしたとき、何か重いような雰囲気を感じ取り、近づけなかった。
「………別に怒ってねぇよ」
「……えっ?」
後頭部をかきながら足立は言った。その返答にルッキーニは目を丸くした。
「ただ、コアには興味を持つなってことだ」
「どういうことだ?」
「……コアの力は確かに凄い。人間には出来ない事を平然とやってのけてしまう。こんな風にな」
足立は徐ろに、塀の上で逆立ちをし始めた。すると今度はゆっくりと、片手で支え始めた。
『………………………』
超人的な力とバランスに唖然とするシャーリーとルッキーニ。そして後ろにいる宮藤もだった。
そして支えていた片手を塀から弾き返すようにすると、1回転して塀の上に立った。
「だけどこれは呪いみたいなもんだ」
「呪い?」
「コアを持つってことは、人間やウィッチを辞めるってことだ」
「!」
「人間を辞めれば、普通の生活は出来なくなる。人に隠れながら生きていかなくちゃいけない」
「なんで?誰かに相談したらいいんじゃ……」
「ハハッ、自分はネウロイになったからどうすればいい?って聞いて回るか?」
「あっ………そっか………」
「だから『呪い』ってことか」
「そういうこった」
(呪い…………足立くんはそれを5年間も………)
5年間もひと目に付かず生活するのは並大抵事ではないと、宮藤も感じ取った。
「…………なーんだ。やっぱ優しいヤツじゃんかお前」
「……なんだよいきなり」
「てっきりシャクに触ったかと思ったけど、アタシたちを心配して言ってくれたんだろ?」
「そういうわけじゃ……」
「じゃなくてもだ。それがお前の本心なんだろ?サンキューな足立」
「うん!ありがとう!シンヤ!」
「………勝手に言ってろ……ったく」
(俺の本心……か………そういえば、あんな大声を出したのは初めてだったな)
前日の怒鳴った日を思い出す足立。それが自分の本心だと言うことに気づき始めた。
「……良かった。仲直り出来たんだね」
シャーリーとルッキーニがワイワイと話してる姿を見てホッとする宮藤。
そう思ったのも束の間。基地のサイレンが響き始めた。
「来たな」
「ネウロイ!?」
「この前きたばっかりじゃん〜!!」
「んなことは関係ないってこった」
足立は塀から跳ねるように、カフェの出入り口まで飛んだ。着地すると、出入り口付近にいた宮藤と目が合った。
「!」
「足立くん……!」
「……さっさといくぞ」
「うん!」
何か戸惑いを感じつつも、足立は宮藤たちと出撃に向かった。
出撃したのは足立、宮藤、シャーリー、ルッキーニ、坂本の5人。海上を飛行していた。
「まさか高速移動するネウロイの残党がいるとはな」
「なんでもいいさ。私達からは逃げられないし」
「……………………」
「どうかしたのか?足立。機材トラブルか?」
「いや、なんでもねぇ」
(違和感がある。けど悪い違和感じゃない。良くなってるのか……?)
自分の乗っているストライカーボードをチラチラと見る足立。いつもとは違う感覚を感じ取った。
「あ!アイツだ!」
ルッキーニが叫ぶと、前方に目標のネウロイが飛んでいるのを確認した。
「敵機確認!!囲んで叩きに行くぞッ!!」
『了解!!』
坂本達が追いかけようとしたとき、ネウロイも坂本達の加速に合わせて更に加速し振りきろうとした。
「なっ!アイツ!!」
「逃げる気か!!」
「このままじゃ逃げられちゃいます!!」
「させるかよッ!!」
出力を最大まで上げると、ストライカーボードのエンジンから唸り声みたく音があがった。
すると、坂本達を置いていくかの如く、あっという間に加速していった。
「わっ!!!」
「うわっ!まるでシャーリーみたい!!」
「あの加速、シャーリーに負けてないな………ん?シャーリーは?」
「あれ?さっきまで一緒にいたはずですけど……」
加速していくストライカーボード。その速さに足立の違和感は確信に変わっていた。
(こりゃ勘違いじゃなさそうだな……)
「調子良さそうだなぁ!!」
「!」
足立がボードに目を目移りしていると、横から声を掛けられた。それはシャーリーだった。
「なんかいい事でもあったか?」
「……………そういうことか」
「なんの事だ?」
「話は後だ。それよりは………」
そんなやりとりをしていると、高速移動しているネウロイに追いついてしまった。
「コイツを倒すぞ」
「そりゃ賛成だね!」
賛同するシャーリーを横目に、足立はネウロイのビームをかわしながらネウロイの下に潜り込んだ。
「はぁぁッッ!!!」
抜刀した刀を逆手に持つと、足立はネウロイを下から上へと切り上げた。真っ二つに別れたかと思ったが、片側の方からコアを露出した小型のネウロイが、足立から逃げるように飛び出した。
「チッ!そっちか!」
「任せろ!!」
反応が一瞬遅れた足立だったが、シャーリーがそれをカバーし、コアが露出したネウロイの背面を取った。
「逃さない!!」
M1918を構えると、コアに向かって銃弾の雨降らせた。そして見事、銃弾がコアに当たり砕け散った。
「コア破壊確認っと!」
シャーリー報告を坂本達は無線越しで聞いていた。
「やったー!」
「すごいです!!」
「どうやら私達の出番は無さそうだな」
喜び合うルッキーニと宮藤。そして冗談っぽく言いながら笑みを浮かべる坂本だった。
「聞いてはいたけどすげー戦い方するなぁ!」
「……んなことよりだ」
「ん?」
「シャーリー、俺のストライカーボードに何かしただろ」
「……ああ、したよ」
足立の問いかけに、一拍置いてからシャーリーは答えた。
「……あのなぁ……」
「ただ勘違いしないでほしい。消耗品のパーツを新しくしただけさ。それ以外改造はしてないよ」
「!」
シャーリーの話を聞いて、足立は意外そうな顔をした。
「素人メンテにしちゃ悪くなかったけど、苦労したよ〜」
「……なんで」
「うん?」
「なんで改造しなかったんだ?メカ好きのアンタならしたかったはず……」
「………それ、大事なモノなんだろ?」
「…………………あぁ」
答えるかどうか迷った足立だったが、本能的に肯定した。
「だからだよ。私だってお気に入りのバイクが勝手に改造されてたら嫌だしな」
「…………………」
「大事なモノなら出来るだけ長く使っていたいだろ?相当使い込まれてるみたいだし、ソイツも喜んでるんじゃないかな?」
シャーリーに言われ、足立はストライカーボードと共に過ごしてきた自分の人生を思い返していた。ストライカーボードが無ければ、今もこうやって飛んでいないと思いながら。
「………シャーリー」
「ん?」
「…サンキューな」
「……ああ!」
少し照れくさそうな、それでいてぶっきらぼうな言い方をしながら足立は礼を言い、シャーリーはそれを真っ直ぐ受け止めた。この日から足立は、自分のストライカーボードに少しだけ、向き合うようになったのだ。
つづく
今回はシャーリー回です。
正直シャッキーニは自分の妄想の中だと極端に関わりが少なくてどうしようかと悩んでましたが、スッキリした話に出来たかと思います。
5話の本編にしようかと思いましたが、どうも話に合わないなと思い断念しました。
ここまでありがとうございました。次回はみんな大好きサーニャ回です。