ストライクウィッチーズ 大空の傭兵の軌跡   作:sontakeda

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第6話 見つけた Bパート

1944年8月18日。

 

食堂にはなにやら怪しい灰色の飲み物が、おちょこに一杯それぞれ置かれていた。

 

「これは?」

 

怪訝な顔で質問するペリーヌ。その隣には謎の一斗缶を持った宮藤が現れた。一斗缶には「肝油」と書かれていた。

 

「肝油です。ヤツメウナギの。ビタミンたっぷりで目に良いんですよ!」

 

「スンスン……なんか生臭いぞ?」

 

「魚の油だからな。栄養があるなら味など関係ない」

 

異様な匂いに流石のハルトマンも怪しむが、隣のバルクホルンは軍人らしく動揺せず宣言した。

 

「おっほほほ!!いかにも宮藤さんらしいチョイスですこと!!おっほほほ!!」

 

「いや、持ってきたのは私なんだが………」

 

宮藤の隣にやってきた坂本は言った。それを聞いてペリーヌは血の気が引いた感覚がした。

 

「ありがたく頂きますわ!!」

 

慌てておちょこを手に取り、それを一気に飲み干してしまったペリーヌ。しかしそれは悪手だった。

 

「う"っ!!」

 

それはとてもマズイということ。表現出来ぬほどのマズさに顔面蒼白にもなるレベルだった。

 

「うぇ〜何これ〜」

 

「エンジンオイルにこんなのがあったな……」

 

味見するレベルでもダメなルッキーニと、ツッコミたくなるような表現をするシャーリー。

 

「ぺっぺっ!!」

 

「………………………」

 

エイラに至っては受けつけない様子、サーニャはその場で固まってしまうレベルだった。

 

「私も新米の頃に無理矢理飲まされてな。往生したもんだ」

 

「お気持ち……お察し致しますわ…………」

 

頭をかきながら笑い話にする坂本。その話を聞いて悶絶しながらも同意するペリーヌ。

 

「もう一杯♪」

 

そんな中、ひとり美味しそうにおかわりを貰おうとするミーナの姿があった。それを見たハルトマンは引いてた。ちなみに、先程宣言していたバルクホルンだが、この肝油には勝てず暗い顔をしながら小さい声で「不味い……」とつぶやいていた。

 

 

 

 

 

 

 

食堂が騒がしくなってる中、ひとり遅れて食堂に向かおうと部屋から出てくる足立の姿があった。

 

「ふぁ~、寝坊した」

 

半目になりながら欠伸をし、足立は独り言をつぶやいた。

 

「とっとと食べて寝るか~…………ん?」

 

足立が食堂に向かおうとした時、リーネの部屋から何か廊下の様子を伺おうと顔を出しているリーネを発見した。その様子は怯えた様子だった。

 

「なにしてんだアイツ……」

 

意を決してリーネに近づく足立。

 

「おい、どうしたんだ」

 

「っ!!あ、足立さんっ!?」

 

「なにビビってんだよ?」

 

「い、いえ!そのあのっ!!なんでもな……!!」

 

リーネが扉を閉めようとした時、足立は扉を掴み引きこもらないよう抵抗した。

 

「ど・う・し・た・ん・だ・?」

 

「うぅぅっ……!!」

 

まるでホラー映画の一種かの如く、足立は悪い顔をしながら問いただした。その表情に怯えるリーネ。

 

リーネは仕方なく部屋に連れ込み、訳を話してくれた。

 

「んで?なにかあったのか?」

 

「実はその……今朝、食堂に肝油があって………」

 

「………カンユ?」

 

聞き慣れない足立はリーネに聞き返した。

 

「むかし東洋の薬って言われて小さい頃に飲まされたんですけど、それがものすごく美味しくなくて………ちょっとトラウマなんです……」

 

「…………つまり肝油にビビって引きこもってた、と?」

 

「はい………」

 

「………………………」

 

(……俺は運がよかったってことか?)

 

足立は横目になりながら今日の寝坊がいい方に働いたと思うことにした足立。

 

「……足立さん?」

 

「いや、今日は運がいいなと思っただけだ」

 

「?」

 

足立の言動にイマイチ掴めないリーネだった。

 

その時、廊下から聞き覚えのある声がした。

 

「リーネちゃーん?起きてるー?」

 

「っ!?よ、芳佳ちゃん!?」

 

「…………………」

 

(これは……かなりヤバいんじゃないか……?)

 

声の主は宮藤だった。リーネも突然の来訪にしどろもどろな状態だった。足立も外見は冷静を装っているが、内心は冷や汗をかくぐらいの、とんでもない状況だと理解していた。リーネもその事態にすぐ気がついた。

 

(いまこの状態で宮藤が入ってきたら絶対誤解される……どうすれば………)

 

「ど、どうしましょう足立さん!?」

 

宮藤に声が聞こえない程度で足立に耳打ちをするリーネ。足立は少し考えた後、あることに気が付きその打開策を思いついた。

 

(……肝油……薬……そうか、その手があったか!)

 

「……リーネ、お前はベッドに寝とけ」

 

「えっ!?で、でも足立さんは!?」

 

「俺は正面から出ていっても問題ないさ。だから言うとおりにしとけ」

 

「は、はい……」

 

どこから出てくるかわからない自信。その姿にリーネは言う通りにするしかなかった。

 

「?、リーネちゃー……」

 

宮藤がもう一度呼びかけようとした時、ガチャッと足立が扉から出てくるのを目撃した足立。

 

「あれ?足立くん?なんでリーネちゃんの部屋にいるの?」

 

「あぁ、いいタイミングだ。食堂向かう途中、リーネが体調悪そうにしてたから、無理やりベッドに着かせたとこさ」

 

「えっ!?そうなの!?大丈夫リーネちゃん!?」

 

リーネの部屋に入るなり心配に顔を見に行く宮藤。そこは掛け布団で下半身を覆い起き上がっているリーネの姿があった

 

「う、うん、そんなに悪くないから、安心して芳佳ちゃん」

 

「そうなの?でも無理しちゃダメだからね?」

 

「う、うん」

 

「そうだ!いま坂本さんから扶桑から持ってきた薬があるんだけど……!」

 

「ひっ!!!」

 

「?、リーネちゃん?」

 

扶桑の薬と聞いて身構えるリーネ。恐らく肝油のことだと察しがついた。しかし、事情を聞いていた足立はすぐさまフォローを入れた。

 

「あー、肝油ってやつだろ?そんなのブリタニア人には効かねぇぞ」

 

「えっ、そんなことないよ。ビタミンたっぷりで目にもいいし……」

 

「だとしてもそんな刺激物を飲ませられないだろ……」

 

「うーん……言われてみればそうかも……」

 

「病は気からって言うくらいだし、好きな紅茶でも飲ませて休ませればいいんじゃないか?」

 

「うん。足立くんの言う通りかもね。ありがとう!わたし紅茶作ってくるね!」

 

「う、うん。ありがとう芳佳ちゃん」

 

「うん!待っててねリーネちゃん!」

 

宮藤はパタパタと紅茶を作りに食堂へ戻った。

 

「……ど、どんなもんよ……」

 

「ありがとう……ございます……」

 

足立の対応力に感心しつつも、お互い気苦労で朝からドッと疲れた様子だった。

 

その一方、紅茶を作りに行った宮藤は途中であることに気がついた。

 

「そういえば……足立くん、なんで肝油のこと知ってるんだろ?」

 

そんな疑問を抱く宮藤だった。

 

 

 

 

 

 

 

「あ~あぁ………」

 

朝食後。昨日と同じく、サーニャの部屋のベッドで3人はぐったりしていた。特に宮藤はこの暑さに少しやられれいた。ちなみに、足立は部屋の隅で壁にもたれながら座り瞑っていた。

 

「ねぇ、エイラさんとサーニャちゃんの故郷ってどこ?」

 

「ワタシスオムス」

 

「オラーシャ………」

 

暑さを紛らわせようと、二人に故郷の話題を振る宮藤。

 

「えっと……それってどこだっけ……?」

 

「スオムスはヨーロッパの北の方。オラーシャは東」

 

「そっかぁ………!、ヨーロッパって確かネウロイにほとんど襲われたって……」

 

「うん……。私のいた街もずっと前に陥落したの……」

 

「じゃあ……家族の人たちは…?」

 

宮藤は恐る恐る聞いた。

 

「みんな、街を捨ててもっと東に避難したの。ウラルの山々を越えて、ずっと向こうまで……」

 

「そっかぁ…………よかったぁ」

 

サーニャの話を聞いてひとりホッとした宮藤だった。

 

しかしエイラが黙っていなかった。3人は起き上がりながら話し始めた。

 

「なにがイイんだよ?話聞いてないのかオマエ?」

 

「だって、今は離れ離れでも、いつかまたみんなと会えるってことでしょ?」

 

「あのな、オラーシャは広いんだゾ?ウラルの向こうたって、扶桑の何十倍もあるんダ。人探しも簡単じゃないゾ」

 

「うん…」

 

再びベッドに寝転び、呆れた様子で説明してくれるエイラ。その様子を理解し、うなずく宮藤。

 

「大体その間にはネウロイの巣だってあるんダ」

 

「そっか…………そうだよね……それでも私は羨ましいな」

 

「強情だなオマエ……」

 

意見を変えない宮藤に対し再び起き上がったエイラは、少し呆れた様子で宮藤に対し感心した。

 

「だって、サーニャちゃんは、早く家族に会いたいって思ってるでしょ?」

 

「うん…」

 

「だったら、サーニャちゃんの家族だって、ぜったい早くサーニャちゃんと会いたいって思ってるはずだよ」

 

「うん…」

 

「そうやってどっちも諦めないでいれば、きっといつかは会えるよ。そんな風に思えるのって素敵なことだよ!」

 

「…………………」

 

前向きに捉える宮藤を見てサーニャは不思議に思えた。しかし、それが宮藤という人間の象徴なのかもしれない。

 

「………気の長い話だな……」

 

それを聞いていた足立はポツリと呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

夕刻。宮藤たちは汗をかきながらサーニャの部屋から出てきた。

 

「あ~、汗でベタベタ」

 

「じゃ、汗かきついでにサウナに行こう」

 

「サウナ?」

 

「ほー、宮藤はサウナ知らないのカ」

 

それを知ったエイラはニヤッと悪い顔をした。

 

「あ、オマエは来んなよナ!」

 

「当たり前だ」

 

足立は当然のように言って自室の部屋に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

サウナ、そこは蒸気で蒸された空間。汗を流し新陳代謝を良くすると言われている。そんな空間に頭と身体にバスタオルを巻いた宮藤は、足をパタパタとさせながらうつ伏せになってうなだれていた。

 

「う〜……これじゃさっきと変わんないよ……」

 

「スオムスじゃ風呂よりサウナなんダゾ?」

 

二段目の腰掛けに肘を付きながら、エイラは説明した。その隣のサーニャは姿勢を正しく、人形みたくピシッと座っていた。

 

その姿をまじまじと見ていた宮藤はあることを口走った。

 

「サーニャちゃんの肌って白いよね」

 

その言葉に反応したサーニャはチラッと宮藤の見た。

 

「ドコ見てんだオマエ」

 

宮藤の視界にズイっと割り込み睨みつけるエイラ。

 

「いっつも黒い服を着てるから、余計目立つよね」

 

そんなエイラをお構いなしに、再びサーニャの方に合わせて言うと、サーニャの視線は前に向いていた。それを聞いていたエイラはワナワナしながらこう叫んだ。

 

「サーニャヲソンナメデミンナナァァッ!!!」

 

エイラの叫びは基地に響きわたりそうなぐらいだった。

 

 

 

 

 

 

「こっちこっち」

 

「ホントに大丈夫なの?」

 

エイラと宮藤が来たのは、サウナと隣接してある人工的に作られた池だった。ふたりはサウナから出たあと、素っ裸のまま来ていた。

 

「サウナの後は水浴びに限るんダ」

 

「確かに冷たくて気持ちいいけど………」

 

「恥ずかしがるなヨ!女同士ダロ?」

 

少し赤面しモジモジしている宮藤にエイラはイラッとし、声が大きくなった。その声に宮藤もビクッとした。

 

「だって………」

 

すると、どこからか歌声が聞こえてきた。

 

「!」

 

ふたりは歌声がする方向に向かっていき、岩陰から覗いた。そこにいたのは、足首に水を浸けながら、岩の上で座り身体を冷ましていたサーニャがいた。あまりの美しさにふたりは魅入っていた。

 

「♪~」

 

「なぜだろう………なんかこう、ドキドキしてこないカ?宮藤」

 

「うん……」

 

エイラの感想に同意する宮藤。ふたりの視線に気づいたサーニャは、ふたりの方に顔を向けた。

 

「!」

 

「あっ…あぁ…ご、ごめん!」

 

「?、なんで謝るの?」

 

咄嗟に謝ってしまった宮藤に、サーニャは立ち上がりながら聞いた。

 

「いや、邪魔しちゃったから………あの……」

 

宮藤はすぐさま言いたかったことがあった。

 

「素敵だね、その歌」

 

「……これは、むかしお父様が私のために作ってくれた曲なの」

 

「お父さんが?」

 

サーニャは幼い頃の記憶を思い出しながら話してくれた。

 

「小さい頃、いつまでも雨の日が続いてて、私が退屈して雨粒の音を数えていたら、お父様がそれを曲にしてくれたの」

 

その姿は、ピアノを弾いている父の曲に、喜ぶように駆けつける幼いサーニャがあった。

 

「サーニャはお父さんの勧めで、ウィーンで音楽の勉強をしてたんダ」

 

「素敵なお父さんだね」

 

「宮藤さんのお父さんだって素敵よ」

 

「えっ、なんで?」

 

3人は岩に腰掛けながら休んでいた。

 

「オマエのストライカーは、宮藤博士がオマエのために作ってくれたんだろ?それだって羨ましいってことダヨ」

 

「えへへ、だけど……せっかくならもっとかわいい贈り物のほうがよかったかも」

 

「贅沢ダナー、高いんだぞアレ?」

 

「あはは…………」

 

「ふっ……ふふふ……」

 

『ふふ、ははは……!!』

 

サーニャが笑い出すと宮藤とエイラも笑い出し、その場は3人の楽しそうな笑い声だけがあった。

 

「あとで足立くんにもこの水浴び場教えてあげようっと」

 

「いやアイツ使わないダロ男だし」

 

「あっそっか。あはは………」

 

「……………ねぇ宮藤さん」

 

「ん?なに?」

 

足立の話題を出した時、サーニャは物悲しげな表情をしながら宮藤に訪ねた。

 

「宮藤さんって足立さんと仲がいいよね……?」

 

「えっ?うーん……仲がいいのか分からないけど、なんで?」

 

「……足立さんと、どうやったら仲良くできるかなって思って……嫌いじゃないけど、なんだか怖くて……」

 

「あんな不気味なヤツほっといていいダロ」

 

「ダメよ、同じ部隊の仲間だし……私達は家族なのよ?」

 

「うぐっ………」

 

サーニャの最もな意見にエイラはグウの音もでなかった。

 

「うーん……どうすればいいんだろう………」

 

「……宮藤さんは、どうして足立さんが優しい人だって思ったの?」

 

「えっ?えっと………握手した時かな?」

 

「アクシュ?」

 

エイラは首を傾げながら繰り返した。

 

「うん。部屋で会った時に自己紹介して握手したんだけど、その時の足立くんの手がものすごく冷たかったの」

 

「……ソレ関係あるのか?」

 

「前にお母さんに教えてもらったの、手が冷たい人は心が温かいって」

 

「素敵なお母さんだね……」

 

「うん!お母さんの言う通り、足立くんは優しい人だったよ」

 

「……………………」

 

笑顔で言う宮藤にサーニャはつられてサーニャも笑顔になった。その時、サーニャの中で何かを思いついた。正確にはあることに気づいた。それを実行しようと、サーニャは決意を抱いた。

 

 

 

 

 

 

 

夜になり、夜間飛行訓練を始めようとハンガーに夜間哨戒メンバーが集っていた。宮藤やエイラが準備する中、サーニャは足立に近づいた。

 

「あの………」

 

「!、なんだ?」

 

サーニャの声に足立は気づいた。宮藤もエイラも足立の声でようやく気づき、サーニャ達のほうに顔を向けた。

 

「きょ、今日の夜間飛行訓練……よろしくおねがいします」

 

「……なんだ?改まって」

 

「足立さんとは、まだちゃんとした挨拶してなくて……だから……」

 

「律儀だな、お前」

 

「……………………」

 

足立の言い草に少し表情が曇るサーニャ。やはり迷惑だったのかと考えそうになった時、足立から次の言葉を掛けられた。

 

「夜はサーニャの方が詳しいんだ。こっちがよろしくだ」

 

いつも通りのぶっきらぼうな言い方で、足立は握手を求めた。

 

「!、は、はい……!」

 

思ってもみない言葉にはサーニャは少し動揺したが、すぐに返事をし握手をした。そして足立の手は、宮藤の言うとおりすごく冷たかった。

 

ふたりの様子を見ていたエイラは少々不満げな顔をし、宮藤はにこやかな笑顔になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ聞いて!」

 

飛行中、宮藤はサーニャとエイラの上を飛び始めると唐突に話し始めた。

 

「今日はね、私の誕生日なの!」

 

「えっ……?」

 

「なんで黙ってたんだヨー!」

 

びっくりした顔をするサーニャに、楽しみを黙っていて怒るように聞き返すエイラ。

 

「私の誕生日は、お父さんの命日でもあるの」

 

「あっ………」

 

その理由にサーニャは納得し察した。

 

「なんだかややこしくて、みんなに言いそびれちゃった」

 

「バカだなぁオマエ。こういう時は、楽しいことを優先したっていいんダゾー?」

 

「そういうものかなー?」

 

「そうだヨー」

 

エイラが宮藤の更に上を飛びながら、エイラなりにフォローを入れる。

 

「なら両方やればいいじゃねぇか」

 

後衛に飛んでいた足立が言い放った。

 

「両方?」

 

「お前らで祝ってやって、墓に花でも供えてやればいいだろ?」

 

「へー、アダチもたまには良いこと言うジャン」

 

「うっせ」

 

「………お前らって、足立くんは?」

 

「俺はパス」

 

「えーっ!?なんで!!」

 

腕を頭の後ろに組みながら、足立はやる気なさそうに言った。その発言に宮藤はショックな反応をした。

 

「お祭りごとはお前らに任せる」

 

「もー!!」

 

頬を含まらせて怒りを顕にする宮藤。その時、サーニャが宮藤の隣に飛んできた。

 

「宮藤さん。耳を澄まして」

 

「えっ?」

 

そう言うとサーニャの魔導針の受信波が別のものを捉え始めた。宮藤たちのインカムからはとこかの曲が聴こえてきた。

 

「あれ?なにか聴こえてきたよ?」

 

「………ラジオの音……」

 

不機嫌そうな言い方になるエイラ。

 

「電波を拾ってるのか」

 

「夜になると空が静まるから、ずっと遠くの山や地平線からの電波も、聞こえるようになるの」

 

「へぇー!すごいすごーい!!こんなことできるなんて!!」

 

「うん。夜飛ぶ時はいつも聴いてるの」

 

「ふたりだけの秘密じゃなかったのカヨ?」

 

サーニャの右隣に飛んできたエイラは、サーニャに耳打ちをする。

 

「ごめんね?でも、今夜だけは特別」

 

「ちぇ………しょうがないナー」

 

「えっ?どうしたの?」

 

「うん。あのね……」

 

「あのな!今日はサーニャも……!」

 

エイラが割り込もうとしたその瞬間。サーニャの魔導針が何かの声らしきものを捉えた。

 

「っ!?」

 

「どうした?……………ん?なんだ?」

 

「……なんだこりゃ……?」

 

「これ、歌だよ!」

 

「……どうして…?」

 

 

 

 

 

 

 

一方、基地の管制塔からも謎の声が聞こえていた。管制塔にいる坂本とミーナは戦慄していた。

 

「これが、ネウロイの声…?」

 

「サーニャを真似てるってのか?サーニャは!?」

 

「夜間飛行訓練中のはずよ。宮藤さんたちと一緒に」

 

「すぐ呼び戻せ!」

 

焦るように指示をする坂本だが、肝心のレーダーが使い物になっておらず、サーニャたちの位置がわからなかった。

 

「ムリよ!この状態じゃどこにいるかも…!!」

 

「そうか……!敵の狙いはッ!!」

 

坂本の脳裏にある考えが浮かんだ。敵はサーニャの歌を真似て攻撃を仕掛けようと考えているのではないかと。そんなシナリオが浮かんだ。

 

 

 

 

 

 

 

「どうして…?」

 

サーニャには分からなかった。なぜネウロイが歌うのか。その狙いが何なのかまだ気づかなかった。

 

「敵か!?サーニャ!!」

 

「ネウロイなの!?どこ!?」

 

「落ち着け。戦闘準備だ」

 

そういうと足立は、坂本から借りた機関樹を手に持ち、構える準備をした。

 

「3人とも避難して…!!」

 

サーニャの魔導針に更にノイズが走る。

 

その時、サーニャはようやく敵の狙いを理解した。理解したのと同時に、サーニャはエンジン音をふかし出力を最大まで上げ急上昇した。

 

「あっ!!」

 

「アイツっ!!!」

 

サーニャが急上昇した時、雲の中から遠距離でネウロイのビームがサーニャに向かって飛んできた。がしかし、間一髪サーニャはそれを避けた。正確には左足のストライカーを破壊されたが、黒のストッキングも破れ白い足が顕になっていたが、なんともない様子だった。

 

「サーニャっ!!!」

 

エイラと宮藤と足立はすぐさまサーニャに駆け寄り、落ちそうなになったところをエイラはなんとかキャッチしサーニャの肩を掴んだ。

 

「バカッ!!ひとりでどうする気だヨッ!!」

 

「敵の狙いは私!間違いないわ!」

 

エイラに掴む手が強くなるサーニャ。

 

「私から離れて……一緒にいたら……」

 

「バカッ……なに言ってんダ!!」

 

「そんなことできるわけないよ!!」

 

「だって………………」

 

迷惑を掛けたくないと思ったサーニャだった。その表情はまるで親に叱られている子の顔だった。

 

その時、足立はサーニャの頭をノックするかのように1回叩いた。

 

「!、足立さん……」

 

「隊長格が先に死にに行ってどうすんだ。仲間が居るなら頼りやがれ。サーニャにはそれができるだろ」

 

「私に……できる………」

 

宮藤とエイラがニッと笑うと、エイラがサーニャのフリーガーハマーをやや強引に取り、サーニャはなんとか片足で飛行していたが、宮藤の肩を掴みながら飛んでいた。そしてエイラは右手にフリーガーハマー、左手にはMG42を持ち構えた。

 

「どうするの!?」

 

「サーニャはワタシに、敵の居場所を教えてくれ。大丈夫、ワタシは敵の動きを先読みできるから、やられたりしないよ」

 

エイラは振り向きながらサーニャに言った。その姿はサーニャを守る意志が伝わってきた。

 

「アイツはサーニャじゃない。アイツはひとりぼっちだけど、サーニャはひとりぼっちじゃないだろ?ワタシたちは、絶対負けないよ」

 

心配そうに見つめるサーニャに、自身の肩に手をかけてるサーニャの手を握り返す宮藤。

 

「うん」

 

そして安心させるために宮藤は、サーニャにとびっきりの笑顔で応えた。その笑顔を見てサーニャは不思議な安心感を持った。

 

「んじゃそっちは任せた。俺は後ろのヤツをやるよ」

 

「えっ!?他にもいるの!?」

 

「ええ……実は後方にも2機現れてて……」

 

「マジかよ……」

 

1機だけなら、と思っていたエイラも流石に余裕の顔ではなくなりつつあった。

 

「そこで俺の出番だろ?」

 

「でも、相手は雲の中です……姿なんて全く……」

 

「んじゃ任せたわ~」

 

「あ!」

 

サーニャの話を途中で切るかのように足立は離れてしまった。その唐突さに宮藤も声が出てしまった。

 

「相変わらずムチャクチャなやつだナ……でもま、任せるしかないナ」

 

「うん。足立くんなら大丈夫だよ」

 

「………うん」

 

エイラも宮藤も足立の実力はもう既に知っているため、その実力を信用することにした。サーニャも覚悟を決めて目の前の敵に専念することにした。

 

「ネウロイは、ベガとアルタイルを結ぶ線の上を、まっすぐこっちに向かってる。距離、約3200」

 

「こうか?」

 

夜空の星を目印にサーニャはエイラに的確な指示を与える。

 

「加速してる。もっと手前を狙って……そう。あと3秒……」

 

「当たれよ!」

 

エイラの持つフリーガーハマーのロケット弾が3発発射されるのと同時にネウロイのビームも向かってきた。しかし、エイラの未来予知のおかげで、それを避けた。

 

一発、二発と間隔を刻みながら着弾するロケット弾。そして三発目、一際大きな爆風が見えるのと同時にネウロイの悲鳴を聞こえた。倒したのかと思い様子を見る3人。しかし、ネウロイはエイラ達の下の雲の中を泳ぐように飛んでいた。

 

「外した!?」

 

「いいえ、速度が落ちたわ。ダメージを与えてる」

 

すると、雲の中にいたネウロイは急旋回をし、エイラたちに向かってきた。サーニャも自身の固有魔法でその動きを先に探知した。

 

「戻ってくるわ!!」

 

「戻ってくんナッ!!」

 

一発二発と雲の中にロケット弾を発射させるが、今度はネウロイが弾を回避した。

 

「避けたっ!?」

 

「クソッ、出てこい!!!」

 

ダメ押しで最後の一発を発射させたエイラ。しかし、その足掻きが良かったのか、ダメ元で撃ったロケット弾がネウロイに直撃した。

 

『出たっ!!!』

 

爆風で周りの雲が無くなると、ネウロイの本体が見えた。そして本体が見えたかと思った次の瞬間には、ネウロイはエイラたちに特攻を仕掛けてきた。

 

弾が尽きたフリーガーハマーを捨て、エイラはもう一つ持っていたMG42を構え、特攻してくるネウロイに乱射し始めた。

 

「エイラ!!ダメ!!逃げて!!!」

 

「そんな暇あるか!!!」

 

徐々に削れるネウロイの装甲、しかしこのままではぶつかってしまう状態だった。その時、エイラの前に巨大なシールドが張られていた。

 

「!、気が利くな宮藤」

 

宮藤だった。彼女も今の自分にできることをしたかったのだ。

 

「大丈夫、私たちきっと勝てるよ!」

 

「それがチームだッ!!」

 

「…………………………」

 

各々が自分にできることをしていく姿を見てサーニャは何かを思った。自分も変わりたい、できることをしたい、そんな色々な感情が混ざりあった中で、サーニャは一番にこう思った。

 

私も守りたい

 

そんな感情が飛び込んできたサーニャは真っ先に行動に移した。宮藤の支えから離れるのと同時に、宮藤の機関銃を半ば奪い取るように掴むと、サーニャも援護に参加した。

 

『!!』

 

サーニャが自ら行動したことに一瞬驚いた表情を見せたふたり。だがそんなのは気にせず、自分たちの仕事に専念した。

 

ネウロイの装甲がさっきより早く破壊されていった。そしてついにコアが見えた。そのコアが見えるのと同時に、弾幕の雨により破壊された。エイラたちの前で破壊されたが為に、破片が目の前で飛び散るはずだったが、宮藤のシールドのおかげでそれが免れた。

 

ネウロイの破壊により、雲が大きく穴が空いた状態になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

「おー、いたいた」

 

エイラたちが悪戦苦闘してる一方、足立は雲の中。視界良好とは真反対な中で足立はネウロイ2機を発見した。正確には姿は見えてないが、コアを感じ取ることが出来るので、それを頼りにさがしていた。

 

(しかし速いな……俺よりちょっと飛ばしてる感じか?)

 

見つけたネウロイの背後を追うが、追いつける感じがしなかった。

 

(しょうがねぇ、付き合うか)

 

足立はストライカーボードの出力を上げ、ネウロイとほぼ同じ速度に合わせた。それはシャーリー程ではないが、それに類する速度だった。

 

「もらったぜ!」

 

ネウロイの背後を完全に取り、射程圏内に収めた坂本から借りた機関銃構え発射させた。ネウロイのコアが感じる方に乱射させた。が、しかし………。

 

「なっ、一発も当ってないかよ!?」

 

当たった感覚がなかった。コアは確かにあった、しかし問題があるとすれば足立の腕だ。銃をまともに握ったことすらほぼほぼ無かったのだから、命中率も頗る悪いはずだ。

 

その銃声で2機のネウロイに気づかれ、二手に別れられてしまった。

 

「…………やっぱ銃はナシだなこりゃ」

 

足立はその場に留まり、機関銃を背に担ぎ、使い慣れている刀を抜刀した。

 

(気づかれた………てことは絶対オレのことを狙ってくるはず。むやみに移動しても宮藤たちの方に引き寄せちまう。だったらここは………留まって様子を見る)

 

どこから攻撃が来るか分からない。圧倒的に不利な状況だが、足立にはいつも通りな感覚だった。

 

その時、雲の奥から赤い光が見えた。足立は即座に避ける動作に入っていた。

 

「っと!」

 

するとネウロイのビームが、足立の横を通った。しかし、避けても次のビームが足立を狙っていた。

 

(次から次に……!めんどくせぇな!)

 

間一髪で全てのビームをかわしているが、それも長くは持たない。足立はこの打開策を考えた。

 

(考えろ……考えろ……こんな視界の悪いところなんだ………お互い姿は見えてないはずだ………だったら……)

 

足立は片方のネウロイに突っ込んでいった。するとすぐにネウロイの姿を発見出来る程の距離まで近づいた。

 

「ハッ!そのスピードだったら付いてこられるんだろッ!?」

 

挑発するかのようにネウロイを後ろに付かせた。しかしそれでもネウロイの攻撃は止まない。避け続けながら足立は移動していた。

 

「じゃあな!」

 

次のビームが来るのと同時に足立はそう言って急降下した。すると、足立を追っていたネウロイの前にはもう片方のネウロイのビームが迫ってきていた。そして2機ともビームによって破壊された。

 

「…………武器なんて要らなかったなこりゃ」

 

刀の刃を見ながら収め、足立は3人の元へ戻った。

 

 

 

 

 

 

 

「……まだ聴こえる」

 

「なんで?やっつけたんじゃ………」

 

音に気づいたエイラと宮藤。まだ敵がいるのかと身構えそうになった。

 

「違う………これはお父様のピアノ……!」

 

父のピアノをもっとよく聴こえるようにと、サーニャは片足のまま上昇し始めた。

 

「そうか!ラジオだ!この空のどこかから届いてるんだ!すごいよ!奇跡だよ!」

 

「いや、そうでもないカモ」

 

「えっ?」

 

エイラは嬉しそうな顔をしながら話してくれた。

 

「今日はサーニャの誕生日だったんダ。正確には、昨日かな?」

 

「え?じゃあ私と一緒?」

 

「サーニャのことが大好きな人なら、誕生日を祝うのは当たり前ダロ?」

 

その間にも、サーニャは月に吸い込まれるように上っていった。

 

「世界のどこかに、そんな人がいるなら、こんなことだって起こるんダ。奇跡なんかじゃない」

 

「エイラさんって優しいね」

 

「そんなんじゃねぇよ……バカ……」

 

「バカって………」

 

エイラの照れ隠しが宮藤には悪態をつかれたように思えた。

 

「お父様……お母様……サーニャはここにいます……ここにいます……!」

 

ラジオの向こう側に語りかけるように言うサーニャ。しかしそれが届かないのは自身が一番知っている。それでも、言わずにはいられなかった。

 

すると、サーニャを周りにはオーロラのような波紋が広がるのが見えた。それはまるで幻想的な光景だった。

 

「お誕生日おめでとう。サーニャちゃん」

 

「あなたもでしょ?」

 

「え?」

 

「お誕生日おめでとう。宮藤さん」

 

「おめでとナ」

 

「………ありがとう!」

 

自分にも言われるとは思っておらず、宮藤は涙を浮かべながら笑顔で礼を言った。そしてサーニャも涙を浮かべながら祝った。

 

ここで無事に帰還できれば、彼女たちにとっては感動的なお話で終わった。そういう世界線があったかもしれない。しかし、ここにはイレギュラーが紛れ込んでいる。そして、それは今、唐突に現れた。

 

「ッッッッッ!!!!!!!!」

 

奇怪な鳴き声。それは、サーニャの更に上空にはトンボのような、巨大なネウロイが現れた。その大きさは300m級だった。

 

「っ!?」

 

「ネウロイッ!?」

 

「どっから現れたんダヨ!?」

 

突如だった。ふたりがサーニャに目を奪われてる間の隙に視界に入ってきた。サーニャもラジオの音に油断していたせいもあり、すぐに探知できなかった。

 

唖然としているとサーニャの真上で赤く光始めた。

 

「!、サーニャッ!!!」

 

「サーニャちゃん危な………!!!」

 

二人が危険を伝えようとしたの同時に、宮藤の横で何かが通り過ぎ急上昇していった。

 

「足立くん!?」

 

物凄い速度でサーニャに近づく足立。その表情は険しかった。

 

「間に合えッ……!!!」

 

そう願っていると、ビームが発射された。まるで一本の赤い柱が降ってきた感覚だった。宮藤とエイラはその勢いに飛ばされそうになりながら耐えた。

 

「サーニャ!サーニャ!!!」

 

「足立くんッ!!!」

 

ビームの勢いが収まると、ふたりは名を呼んで安否を確認した。その視線の先には、サーニャを抱きかかえた足立の姿があった。

 

「よかった!ふたりとも無事だ!!」

 

二人の姿を確認するとエイラと宮藤は安堵した。

 

一方のサーニャは目を瞑っていたが、直後にゆっくり開くと足立の顔がすぐ近くにあり、少々驚いていた。

 

「あ……ありがとうございます……足立さ……!」

 

状況を理解しサーニャは足立にお礼を言おうとしたその時。足立の顔は目を丸くし、口を少し開け、唖然とした表情でネウロイに向かってこう言った。

 

「見つけた………!」

 

それは、足立の探し求めていたものだった。

 

 

つづく




お疲れ様です。

6話本編をベースに考えましたが、ちょっと長くなってしまいました。日本語がちょっとおかしい部分もあると思いますが許してください………

できるだけ伏線を回収できるように努めていきます。
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