ストライクウィッチーズ 大空の傭兵の軌跡   作:sontakeda

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改変7話です。アニメでは伝説の7話とされていますが、ここではちょっと遅れます。


第7話 私たちのするべきこと Aパート

月の明かりが隠れてしまうほどのネウロイ。その下にいる足立は、サーニャを抱えながら呆然と飛びながら直立不動になっていた。

 

「見つけた………」

 

ネウロイを見ながら足立はポツリと言った。それは無意識に口に出てしまったようだ。

 

「あ、足立さん……?」

 

様子がおかしい足立にサーニャは呼びかけるが、まるで聞こえていなかった。すると、離れていたエイラと宮藤が足立に近づいてきた。

 

「サーニャ!大丈夫カ!?ってオマエ!!いつまでサーニャを抱えてるんダヨ!!!」

 

「大丈夫!?足立くん!!」

 

安否を確認する宮藤と、サーニャに触れていることに不満を持つエイラだった。そして当のサーニャはそう言われ意識し始めると頬を赤く染めていた。

 

そして足立は、次のことを言った。

 

「宮藤」

 

「?」

 

「サーニャとエイラを連れて基地に帰れ」

 

「!、足立くんは!?」

 

「…………コイツをぶっ潰す……!!」

 

足立は上にいるネウロイを目を離すことなく、力強く言った。

 

「足立くんひとりで!?」

 

「そんなのホントにムチャだろ!!」

 

「先に引けってつってんだよッッ!!!!」

 

『!!』

 

今まで聞いたこと無いような足立の怒鳴り声にビクッとする3人。宮藤に支えさせるようにサーニャを預けると、足立は更に上昇していった。その間も、ネウロイの攻撃は激しい数のビームが雨の如く撃ってきた。しかし足立はそれを全部かいくぐっていった。

 

(ここで……ここでコイツを仕留めれれば……!!)

 

足立は集中力を最大限にし、ついにはネウロイより上に出れた。左右に二枚ずつ、合計四枚の翼、全長が縦長なことながら昆虫のトンボようだった。

 

「コアは………あそこかッ!!!」

 

コアの気配を感じ取ると、場所は頭に当たる部分だった。分かった途端、足立は即座に全力で頭部と思わしき方に向かった。しかしネウロイもただ見過ごすこともなく、ビームの追従をやめなかった。

 

「ッ!!」

 

その時、一発のビームが頬を掠め、血が流れた。しかしそんなことを気にしている足立ではなかった。執念に取り憑かれたかのように頭部に向かった。

 

「これで、終わりだッッ!!!!」

 

得意のコマのように斬りつける回転斬りを、コアのある頭部に切りつけたその時。

 

ガキンッ!!!!!

 

「なっ!!!?」

 

切れなかった。ただその場に、金属音が響いただけだった。思わぬ出来事に足立も動揺していた。

 

「クソッ!!!だったらもう一回……ぐっ!!!!」

 

体勢を立て直しもう一度切り込もうと準備した時、心臓部に激しい痛みが走った。

 

「なんだよ……まだいけんだろッッ!!!!」

 

心臓部が痛くなるにつれ、イライラし始めてきた足立。自分の身体のはずなのに言うことがきかなくてもどかしい気持ちになっていた。

 

「ここで!!!コイツを倒させてくれッッ!!!!」

 

自身の心臓部に拳でドンッと叩く足立。その瞬間、後ろから赤い光がくるのが分かった。ネウロイのビームだ。振り向きざまに足立は悟った。避けれない、間に合わないと。痛みに伴って反応速度も鈍っていた。

 

(間に合わない………クソッ!!!)

 

死を覚悟した。自分ビームがゆっくりとが迫ってくるように感じる中で足立は、自分の弱さを悔いた。しかし、いくら悔いたところで変わらない。数秒後には塵となっているのだから。

 

…………彼女が現れなければ。

 

「ッ!!」

 

足立の前には巨大なシールドが現れた。その巨大なシールドは何度も見慣れたものだった。

 

「なんで………なんでお前がいるんだよ………宮藤ッ……!!」

 

そう、宮藤だった。必死にネウロイのビームを防いでくれているのは宮藤だった。

 

「仲間だから!友達だから……見捨てることなんてできないよ!!」

 

ビームを防ぎながら答える宮藤。それは、宮藤本人の本質だった。父を失った彼女にとって。友人も、誰も失ってほしくないという気持ちで動いているのであった。

 

「私達もいます……!!」

 

「!!、サーニャ……エイラ……!!」

 

エイラの肩を借りながら現れるサーニャ。ふたりが現れるのと同時に、ビームは一旦止んだ。

 

「足立さんが戦うなら、私達も戦います。けど……今の状態じゃ……」

 

「そうだヨ!弾も魔法力も無いのにどうやって戦うんだヨ!!」

 

「俺ならまだっ………!!!」

 

足立が未だに交戦しようとすると、インカムから声が聴こえてきた。

 

『聞こえるか!?宮藤!サーニャ!エイラ!足立!』

 

「坂本さん!!」

 

それは坂本の声だった。

 

『4人共、いますぐ撤退して!!魔法力や弾数を考えて、今の状態で戦うのは無理よ!!』

 

先程エイラが言ったことと同じことをミーナは言った。

 

「少佐ッ!!!俺はまだ戦えるッ!!!だからッッ……!!!」

 

『これは命令だ!!仲間のことを考えろ!!』

 

「ッ!!クッソ………クッソォォォォォッ!!!!」

 

「足立くん………」

 

命令に従うしかなかった足立は叫んだ。怒り、悔しさ、どこにぶつければいいか分からない感情が溢れ出て、叫ぶことしかできなかった。そしてその様子を宮藤は悲しげに傍観していた。

 

 

 

 

 

 

 

300m級のネウロイから無事に撤退し、基地に帰投できた4人。ハンガーに戻ると坂本とミーナが迎えてくれていた。

 

「サーニャさん!?その足!!」

 

「私は大丈夫です。みんながいてくれたから………」

 

「ならいんだけど………」

 

「足立は?」

 

坂本の言葉にエイラとサーニャはハンガーの入り口の方を振り返った。心臓部を掴むように抑え、呼吸が荒くなっている足立と心配そうに見つめる宮藤が入ってきた。

 

「ハァ……ハァ……ぐっ!!」

 

「足立くん!!」

 

ついには膝をついてしまった足立。こんな様子を見るのは初めてだった。見ていられない宮藤は手を貸した。

 

「大丈夫か!?」

 

心配になり駆け寄る坂本。

 

「ちょっと待ってて!!」

 

すると宮藤は耳と尻尾を生やし、治癒魔法で足立を治し始めた。

 

「やめろ………ほっとけよ……」

 

「ダメだよ!だってずっと具合悪そうなんだもん……!!」

 

「ほっとけってつってンだよッ!!!!!」

 

「っ!!」

 

苛立ちのあまり、払い退けようと足立は宮藤に手が出てしまった。

 

しかし、それは宮藤の顔がぶつかる寸前で止まった。足立は気づいてハッとした表情で少しの間、宮藤をじっと見ていた。そして宮藤も驚きのあまり、治癒魔法が中断されてしまった。すると足立は、座りながら足を立て、顔を伏せる形でポツポツと話し始めた。

 

「…………コアの電池切れだ……」

 

「えっ?」

 

「……コアを酷使し過ぎると痛み出すんだ。まるで割れるかのように……恐らく、無理したら死ぬだろうな……」

 

「!!」

 

初めて知る事実に驚愕した宮藤。周りも驚きを隠せなかった。

 

「……でも、ま……安静にしてたらすっかり回復してるさ。そこら辺はアンタらウィッチと一緒ってことだ……」

 

ニッとした表情を無理矢理作りながら、足立は皮肉そうに言った。

 

その時。坂本はある質問をした。

 

「足立。ひとつ聞いていいか?」

 

「?」

 

「お前が執拗に固執していたネウロイ、会ったことがあるのか?」

 

「…………あるよ」

 

坂本の質問に少し間を置いてから答える足立。

 

「………そういやまだ話してなかったな。なんで俺が、空を飛んで戦ってるのか」

 

「!」

 

それは坂本とミーナが一番知りたがっていた情報だった。なぜ彼が空で戦う必要があるのか、最大の疑問だった。

 

「……ちょうどいいや、全部話してやるよ……」

 

足立は自身の過去の話を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

休息も兼ねて場所を移動させて、ミーティングルームにて。それぞれがソファーに座りながら、足立はひとり用の椅子に足を組みながら座っていた。テーブルには全員に飲み物があったが誰も手に取っていなかった。

 

「まずは……俺の親父についてだな。つってもアンタらふたりは知ってるよな?」

 

「ああ、足立宗次郎博士だな」

 

「えっ?足立くんのお父さんって………」

 

「宮藤さんのお父さん、宮藤博士と同じ職場だったのよ」

 

『ええっ!?』

 

エイラとサーニャと宮藤は当然の如く、目を丸くして驚いた。

 

「んであのボードは親父の自信作な。すぐダメ出し食らって採用されなかったみたいだがな」

 

「…………足立くんは……お父さんと知り合いってこと?」

 

宮藤は恐る恐る聞いてみた。

 

「……ああ。全然話したことはないがな。怒ってるか?黙ってたままで」

 

「ううん」

 

足立の質問に頭を横に振りながら素直に返答する宮藤。

 

「アナタは研究所にいたの?」

 

「行くところもやることも無かったからな。親父の研究の手伝いをさせられまくった。主に雑用な」

 

手を広げながら、当時のことを思い出しながら話した。

 

「他の研究者と比べて頭悪いくせに、言うことだけは偉そうなんだ。『考えることが人間の武器だ』とかな」

 

「立派な考えだな」

 

坂本は微笑みながら褒めた。

 

「………そんな親父は、突然帰ってこなくなったんだがな……」

 

「えっ……」

 

「後から知った話じゃ、親父はチームを外されたみたいだ。唐突にな」

 

「理由も無しにそんなことを!?」

 

理不尽な事に声を荒げるミーナ。

 

「なんの圧力が掛かってたか知らんけど、俺はそんな事を知らずに、バカみたいにずっと研究室で待ってたんだ。いない間は、宮藤博士が声を掛けたりしてくれたっけな……」

 

「お父さん………」

 

「その居ない間にストライカーユニットは完成されたってわけだ。そしてほぼ同時期に、親父も帰ってきた。あの日にな………」

 

「あの日……?」

 

今までの聞き入ってたサーニャが首を傾げながら聞いた。

 

「第二次大戦か」

 

「……あぁ。ネウロイが侵攻してくる前に……親父は帰ってきた。唐突にだ」

 

今までの他人事かのように話していた足立だったが、今度は視線を床に落とし、声が少し暗くなった。

 

「白衣も親父もボロボロ。いろいろ聞きたくて怒鳴ろうともした。けど、親父は拳を握りしめながら何かを言おうとしてた。だが、間に合わなかった………そこでヤツらが攻めてきた……」

 

「………そこで博士も足立君も………」

 

「あぁ…………少し長くなっちまったな。本題はこっからだ。俺が最初に目覚めたときだ。話したろ?目覚めたらコアがあったって」

 

「そういえばそんな話を最初にしてたナ」

 

腕を組みながら最初の自己紹介の時を思い出すエイラ。

 

「実はそんとき、気を失う前に見たものがあるんだ」

 

「それがあのネウロイと言うのか?」

 

話の流れを察して、坂本は推測した。

 

「そういうこった。研究所の穴の空いた天井からな」

 

「ちょっと待てヨ、それってそん時見たネウロイと全く同じなのカ?ほら、量産型とかだったら別のやつかもしれないダロ?」

 

「実はそうでもないわよ。特徴的なネウロイであれば全て記録されるわ。そして、さっき話を聞いた限りじゃ、初めて聞くネウロイだわ」

 

「翼が4枚で胴体が縦長………まるでトンボみたいだな」

 

ネウロイの特徴を確認するようにつぶやく坂本。

 

「……その唯一記憶に残ってる手がかりに、俺はある仮説を立てた」

 

「仮説?」

 

ミーナは神妙な顔をした。

 

「そいつを倒せば俺の身体は元に戻れるんじゃないか、ってな」

 

『!!』

 

足立の発言にウィッチたちはざわついた。

 

「それは……確証があるのか?」

 

「ハッ、んなわけねぇだろ。実験もそんな論文も見つかってないわけだし」

 

真意を確かめる坂本だが、足立は鼻で笑うように返した。

 

「ただ………この先ネウロイとして生きて終わるのは……地獄だと思ったんだ。だから………だから俺は、可能性のある希望にすがったんだ。元に戻れるかもしれない希望に」

 

自身の握る拳を見つめながら、足立は力強く言った。

 

「これが俺の5年間。俺が空を飛ぶ理由だ……」

 

『……………………』

 

「……なら」

 

周りが押し黙ったままの中、沈黙を破ったのは宮藤だった。

 

「なら私も手伝うよ!一緒にあのネウロイを倒そうよ!」

 

「宮藤さん……」

 

「宮藤……」

 

「私も手伝います……!私にできることならなんでも……!」

 

「そういうことならもっと早く言えヨナ。全く……」

 

宮藤に続き、サーニャとエイラも協力する気だった。しかし、当の足立は険しい表情で次のことを言った。

 

「………そりゃムリだ」

 

「えっ!?」

 

「なんでだヨ!オマエひとりだって倒せなかったダロ!!」

 

「そういうことじゃねぇ。あの仮説には続きがあるんだ」

 

「続き?」

 

宮藤はキョトンした表情で聞いた。

 

「ネウロイを倒したら元に戻るかもしれない、けど逆の可能性もあるんだ」

 

「逆の可能性だと?」

 

「………俺が消えるかもしれない」

 

『っ!?』

 

「足立くん……が!?」

 

周りが驚愕している中で、宮藤は口にしていた。

 

「そうか……親玉のネウロイをやれば………」

 

「当然、子のネウロイも消滅する……そういうわけね」

 

「そういうこった。さて、それを踏まえた上で聞きたい」

 

足立は立ち上がり、宮藤、サーニャ、エイラが座っているソファの前に立った。

 

「お前ら、何の躊躇も無く引き金を引けるか?」

 

『ッ!!』

 

足立の倒したいネウロイを一緒になって戦う、それは足立自身を消してしまうかもしれない事に加担するのと同義。そんな意味を突きつけられて、3人は固まったままだった。

 

『……………………』

 

「…………つまりはそういうこった」

 

3人が何も言えないのを確認すると、足立はそのまま自室に戻ろうとした。しかし、出ていく直前で立ち止まり、振り返らずにこう言った。

 

「………悪かったな、怒鳴ったりして」

 

その声はいつもより小さく、優しい雰囲気の声で聞こえた。そしてミーティングルームを後にした。

 

残された者たちは、ただただテーブル上を見つめることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

「進也、お前好きな子とかいないのか?」

 

「は?」

 

研究の資料を見ながら、宗次郎は進也に話題を振った。しかし話題を向けられた進也は怪訝な表情だった。

 

「いきなり気色悪い話題出すな」

 

「まぁそう言うなって。もしも、だ。そういう子が出来たなら、死んでも守ってやれ。それが男としての役目だ。俺は………それが叶わなかったからな………スマン……」

 

「………………」

 

妻の死を宗次郎は今でも悔やんでいた。研究者の自分ではどうすることも出来なかった。そんな力不足な事を思いながら、なんの意味もない謝罪を進也にした。

 

「……それと、女の子には手を出すなよ?絶対だぞ?どんなにムカついても、手を出したらクズ同然だからな!」

 

「……いきなり何力説してんだこのアホ親父は……」

 

「ハハハッ!!お前には紳士に育ってほしいからな!」

 

「寝言いってろ」

 

進也はくだらない話だと思い、ソファに寝っ転がった。

 

「宮藤博士にも、お前と近い歳のウィッチの子がいるそうなんだ」

 

「……………………」

 

「博士はその子のために、ストライカーユニットを開発してるみたいなんだ。ホントは戦争なんかに出したくないハズなんだがな……」

 

やりきれない気持ちに宗次郎は声の大きさが小さくなった。

 

「ぜめて、オレたち男が戦いに参加出来たらな……」

 

「……科学者が夢語んな」

 

「なに言ってんだ?科学者は夢語ってこそだぞ。夢を口にしなきゃ、実現できるものもできないんだぞ」

 

「………理解できねぇ」

 

「ハハハッ!そりゃお前!まだお子様だからな!ハハハッ!!」

 

「…いつかぜってぇぶっ殺す」

 

「おーおー言ってろ言ってろ。怖い怖い」

 

宗次郎にバカにされた進也はイラつき悪態をつくが、宗次郎にとっては猫とじゃれるような感覚だった。それが、ふたりにとってのいつもの日常だった。それが唐突に壊れるとも知らずに………。

 

 

 

 

 

 

 

月明かりに照らされている宿舎廊下で、足立は宗次郎との日常を思い出していた。そして自身の手のひらを見て、先程の宮藤に手をあげそうになった瞬間が、脳裏によぎった。

 

「………どうして思い出すんだか……めんどくせぇな………」

 

宗次郎の言葉が、深く足立の中に響いていた。

 

「約束は守ったからな………クソ親父………」

 

足立は拳を強く握りしめ、自室に向かった。

 

 

 


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