ストライクウィッチーズ 大空の傭兵の軌跡 作:sontakeda
宮藤に言われて、全員のいる場所に戻ってみると、少し大きめのタープが置かれていた。その下では、なにやらウィッチたちがキャンプ道具を広げていた。よくよく見ると、それらは料理に使うものばかりだった。
「なんだこりゃ?」
「お、来たか」
怪訝な顔をする足立を発見した坂本。
「屋台でも始めるつもりか?」
「はっはっはっ!!それも悪くないが、残念ながら違うぞ」
足立の皮肉混じりの冗談を坂本は大笑いした。だが、足立の予想とは当然違った。
「んじゃなんなんだよ」
「みんなで昼食を作るぞ」
「………………は?」
それは足立の予想の斜め上の答えだった。食事は当番制で決めていたが、みんなで作る、というのは初めて聞いた。
「いつ如何なる状況で食事を摂るのも、軍人として大事な事だ」
「今日は休日じゃなかったのかよ………」
「あら、立派なレクリエーションの一環じゃない」
「モノは言いようじゃねぇか………」
少しノリ気なミーナの言い方に、足立は納得がいかない表情をしていた。
「でも、いったい何を作るんですか?」
足立の隣に居た宮藤は頭を傾げながら聞いた。
「カレーライスだ」
『………カレーライス?』
知らない事はなかったが、意外な料理にウィッチ達はキョトンとした。
「ご飯にルーをかけて食べる……あのカレーライスですか?」
「そうだ」
リーネは念の為、一応聞いてみると坂本は首を縦に振った。
「わぁ〜!それならみんなで作れますね!!」
「作り方知ってるの?芳佳ちゃん」
「うん。滅多には作らないけど、何回かお母さんと一緒に作ったことあるから」
「じゃあ宮藤が知ってるなら安心じゃないか?」
経験者がいるということでシャーリーは安心した。しかし、坂本の話はまだ終わってなかった。
「そんな事はないぞ。ここからはチームに分かれて作るんだからな」
「チーム?」
「全員で作るのも良いが、今回は戦場での想定だ。必ずしも全員一緒という訳ではないからな。そこで、こちらの方でチーム分けをさせてもらった」
今回の趣旨を話す坂本、すると一人ひとりの名前を挙げていった。
「第一班、坂本、ミーナ、ペリーヌ。第二班、シャーリー、ルッキーニ、バルクホルン。第三班、サーニャ、エイラ、ハルトマン。第四班、リーネ、宮藤、足立。以上だ」
「少佐と一緒に……!!」
「シャーリーと一緒だー!!」
「リベリアンと同じ班か」
「足引っ張るなよ〜?」
「それはこっちのセリフだ」
「よろしくね〜サーにゃん」
「…よろしくお願いします、ハルトマンさん」
「さ、サーにゃんッ!?は、ハルトマン中尉!!オマエ……!!」
「頑張ろうね!リーネちゃん!」
「うん!よろしくね芳佳ちゃん!」
それぞれの班決めで一喜一憂するウィッチたち。しかしその中でひとり、気が進まない者もいた。
「足立くんも一緒に頑張ろうね!………あれ?」
宮藤の横に居たと思われる足立が忽然と消えたかと思った。しかし、後ろを振り返るとその場から立ち去ろうとする足立を確認出来た。
「足立くん!!どこ行くの!?」
「悪ぃけど、そういうことはオマエらでやってくれ。俺はパスだ」
「足立くん………」
「………………………」
足立は振り向かず、そのままスタスタその場を後にし、宮藤はそれを見ているしか出来なかった。そしてもうひとり、その様子をハルトマンも見ていた。
各々料理の準備を始め、宮藤の班は仕方なくふたりだけで料理をすることになった。だが、足立が居なくとも問題はさほど無いとは思われる。
そんな時、サーニャの班のハルトマンがある事に気づいた。
「あれ?ねぇサーにゃん」
「……どうしたんですか?」
「カレーってお水使うんだよね?」
「スープみたいにするんだから当たり前ダロ?」
「けど無いよ?」
気まぐれのハルトマンがたまたま材料を確認すると、自分たちの班にだけ水が無いことに気づいた。
「ホントだ」
「どうしよう………」
「………………」
いつもだったら面倒ごとを誰かに押し付けようとするハルトマン。しかしそこは気まぐれ、意外な発言が出た。
「私が取ってきてあげようか?」
「えぇっ!?ハルトマン中尉が!?熱でもあるんじゃないカ……?」
「私をなんだと思ってるのさ!もう!」
親切心で言ったことが貶されたように聞こえ、不機嫌な顔をするハルトマン。
「……お願いしてもいいですか?」
「いいよ!ちょっと待ってて」
サーニャにお願いされると、さっきまでの不機嫌さが消え、身軽にその場を後にした。
水を取りに基地の方まで戻ろうとするハルトマン。その時、岸辺で見知った人物を発見した。
「!、あれって………」
座りながら釣りをしている姿は足立だった。その後ろ姿には、哀愁が漂うな雰囲気があった。
「……………………」
その姿が気になり、ハルトマンは足立に近づいた。
「なーにしてんの?」
「…………ハルトマンか」
ハルトマンの声掛けに足立は素っ気ない返事返した。
「お腹減ってるならみんなと一緒に作ればいいのに」
「………そうもいかねぇさ」
「なんで?」
純粋に疑問に思ったハルトマン。
「俺はネウロイだ。みんなでワイワイする資格なんてありゃしねぇんだよ」
「そうかな〜?さっきまで私たちを追いかけ回してたけど?」
「……………………」
先程までの行動を思い返してみると、足立は何も言えなくなってしまった。
「それに、もう誰も足立がネウロイだなんて思ってないと思うよ?」
「根拠は?」
「ネウロイは怒ったり笑ったりなんかしないよ」
「…………」
ハルトマンの根拠を否定しなかった。内心、その通りだとも思った。ハルトマンは足立の横に立ちながら話し続けた。
「それに、私は感謝してるんだよ?足立に」
「俺に?」
ハルトマンを横目に足立は聞き返した。
「トゥルーデを助けてくれたじゃん」
「……ありゃたまたまで………」
「たまたまでも変わりないって。ありがとう、足立」
「…………………」
(感謝か………)
足立にとって、この基地に来るまでに感謝されたことは父と母以外いなかった。それもひとりで生きようと思っていたからだ。だから足立にとって感謝される事は、新鮮なように感じた。
「それと、多分宮藤も楽しみにしてたんじゃないかな〜?」
「?、何がだよ」
「一緒にカレーを作ることだよ」
「……そんなわけねぇだろ」
先程の宮藤の顔を思い浮かべる足立。その顔は確かにワクワクしていそうな表情だったが、足立は無理矢理にでも認めなかった。
「ホントだよ〜、ウソだと思うなら戻ってみたら?」
「…………………」
ニヤニヤしながらみんなのところに戻そうと促すハルトマンだが、足立は動く様子はなかった。
「まぁ気が向いたらおいでよ。来たほうが楽しいからね」
そう言ってハルトマンは足立の側から離れた。残った足立は海を見ながらあることを考えていた。宮藤が楽しみしていること、自分に楽しむ資格など無いと言いつつ、少しばかりの罪悪感が芽生えた。
「………めんどくせぇなオイ……」
宮藤かハルトマンかに言うような呟きだったが、もしかしたら自分の事に対して漏れた呟きなのかもしれない。そして足立は釣りを中断した。
「ただいまー」
サーニャとエイラの下に帰ってきたハルトマン。その言い方からにとても軽そうな言い方だった。
「おかえりなさい……」
「ちょっと遅く無かったカ?………てか……」
エイラはある事に気づいた。
「水は?」
「………………あ」
エイラに指摘されて自分も忘れていた事に気づく。当初の目的を忘れていたのだった。
「何しに行ってきたんだヨ………」
「えへへ〜ゴメンゴメン」
見た目は軽そうだが、一応謝罪する気持ちもあるようだった。
「……みなさんに分けてもらうのはどうかな?」
「それがいいカモナ」
「いいね!それ私に………」
「絶対任せないからナ」
サーニャの提案にふたりは快く賛成し、サーニャも笑顔になった。ハルトマン汚名返上とばかりに名乗りあげようとしたが、エイラに釘を刺されてしまった。
「!」
ふと、宮藤たちの班の方に視線を移すと、とある事が起きていた。
宮藤とリーネはそれぞれいつもどおり、食事を支度する感覚で準備を進めていた。そんな時、宮藤の背後に気配を感じ振り返ると、そこには一杯の水が入った容器を持った足立が立っていた。
「足立くんっ!?」
宮藤の声に反応してリーネも振り返ると、確かにそこに足立が立っていた。
「戻ってきてくれたんだね!」
「うっせ。サボる方がめんどいだけだ」
「!、あの、そのお水は……?」
リーネに指摘された水を足立はサーニャたちのいる方向に差し出した。
「あ!その水!私たちのだゾ!!」
「持ってきてくれたんですか……?」
「なんか忘れてんじゃないかって思って確認したらこれがあったんだ。正解だったみたいだな」
「わーい!!サンキュ!足立!」
足立が持ってきた水をハルトマンに渡した。そして足立は宮藤に向かい合いこう言い放った。
「んで……何を手伝えばいいんだ?」
自ら進んで手伝おうする姿に、宮藤は満面な笑顔で俄然やる気になった。
「おいリベリアン、少し雑に切りすぎなんじゃないか?」
「こんなもんだろ?そっちが几帳面過ぎなんだって」
「シャーリー!!お米が炊けたよー!!」
「おっ!よくやったルッキーニ!!」
シャーリーの班では、ルッキーニがお米担当、シャーリーが野菜担当、バルクホルンが味付け担当になっていた。野菜のバラバラな大きさになっていることに少々気になるバルクホルンだが、大きな問題はなさそうだった。
「お水の量ってこのくらいかしら?」
「もう少し多くて良いんじゃないか?その方が美味しく炊けそうだぞ」
お米に入れる水の量を確認するミーナ。その横に様子を見ながら意見を述べる坂本。
「さて、私は何をすればいい?ペリーヌ」
「わ、私が指示を!?そ、そんな大それたこと……」
「この中でまともに作れるのはお前ぐらいだ。普段の飛行演習だと思って指示をくれ」
「ッッ!!しょ、承知致しました!!ペリーヌ・クロステルマン!誠心誠意務めさせてもらいます!」
「ああ」
坂本の頼みとあってはモチベーションが上がらない訳がなかったペリーヌ。そのやる気が空回りしなければ問題は無さそうだった。
「……ボルシチみたい…」
「サルミアッキも入れてみるか?」
「なにそれ?美味しいの?」
「やめといたほうがいいと思う………」
カレーの材料にサルミアッキを入れようとするエイラをサーニャは止めようとした。一口チョコみたいな形をしており、ハルトマンは興味津々だった。
「…………………」
宮藤の班はでは、足立がジャガイモの皮を黙々と切っていた。ただ、やはり慣れていないのか所々に切れてない皮があったり、身を削り過ぎたりしているところがあった。心なしかだんだん不機嫌な表情にも見えてきた宮藤とリーネ。それを見かねて声をかけた。
「あ、足立さん……?」
「良かったら手伝ってあげ……」
そう声を掛けようとすると、足立はふたりの方に睨むように顔を向けた。
『ひっ!』
恐怖で小さな悲鳴が漏れたふたり。しかし、足立は次の瞬間、持っていたジャガイモをふたりの前に差し出してこう言った。
「………見せてくれ」
「……えっ?」
「見本」
それは意外なことに、足立は見本を見せてくれと要求してきた。プライドが高いのかと思いきや、案外謙虚なのかもしれない。
足立からの要求に宮藤とリーネは戸惑いながらも、皮むきの手本を足立の前で実践してくれた。
「……………」
「こう……あまり指に力を入れないでやるといいよ」
「わかった」
(指の角度……力の入れ方……動かし方……)
まるで穴が開くかと思うほど、足立は宮藤たちの指の動かし方を凝視していた。ふたりも多少の戸惑いがあったものの、気にせず続けていた。
そして宮藤たちから教わり、すぐさま実践に移動した足立。教えてあげたふたりもドキドキしながら見守ることにした。すると、先程のぎこちなさが嘘のようにスムーズに皮を剥いていった。
「そうそう!」
「見本を見せただけなのに、器用ですね」
「いいや不器用だ。俺は」
「え?」
リーネの褒め言葉を足立は皮を剥きながら否定した。そして一通り剥き終えると、宮藤たちの前に差し出し確認させた。
「これでいいのか?」
「うん!バッチリ!」
「この調子で野菜を切っていきましょう!」
「あいよ」
抑揚のない返事をする足立だが、ふたりはそれでも楽しそうな顔だった。
『できたぁ!!』
それぞれの班からは、グツグツと煮えたカレーの匂いがしてきた。全員無事にカレーを完成させたようだった。
「全班完成せさせたようだな。それぞれ味見しつつ昼食にしよう」
坂本の指揮により、全員自分のお皿にカレーとライスを盛り付け始めた。
『いっただきまーす!!!』
そして一口、口に運ぶと周りのウィッチたちは好評な様子だった。
「美味しいね!」
「うん!上手くいって良かったね!」
宮藤とリーネは顔を見合いながら感想を述べた。
「結構簡単に作れるもんだな」
「ああ。材料の調達は置いとくとして、練習しといて損はなさそうだ」
「辛いけど美味しい!」
シャーリー達もこれには好評だった。
「美味しい……」
「美味しいけど、暑いに日に食べなくても良くないカ………?」
「おかわり!!」
食欲旺盛なハルトマンも二杯目を食そうとしていた。
「でも、なんでカレーを作ろうと思ったの?」
ミーナは坂本に問いた。
「いやなに、昔同期のふたりと3人で一緒に作らされたことがあってな。まぁ……褒められた物ではなかったな」
苦笑いしながら過去を思い出す坂本。
「しかし私はそれがいい経験だと思ってる。違う個性でも違う道でも、目的が同じなら必ず達成できると思った」
力強く説く坂本。その姿に全員は魅入っていた。
「その経験を、お前たちにもさせたかったんだ」
「そう………」
今回の目的の理由を聞いて、ミーナは微笑みながら納得した。他の者も今の話を聞いて、今回作ったカレーの事を思い返していた。
「そして………足立」
「あ?」
「お前に頼みたいことがある」
坂本は正座しながら足立の方に向き直した。
「私たちと一緒に、ネウロイを倒してはくれないか?」
「…………………」
おかしな頼み事だった。足立は既に501のみんなとネウロイを倒してくれいるはずなのに、改めてお願いされた。その疑問にエイラが口火を切った。
「ん?足立はもう私たちと一緒に倒してるじゃないカ」
「それは捕虜としての処遇だ。足立自身からの意思ではない」
そう。足立が501のメンバーと一緒に戦う理由は、捕虜として確保し、その処遇として戦わせてるに過ぎなかった。坂本はそのことに気づいていた。
「……一見無傷に見えるが、その実は無数の傷が刻まれてるんじゃないか?」
「…………………」
坂本の問いかけに返事をせず、足立はカレーを食べ続けた。
「正直、私はその力がお前に宿っていて良かったと思っている。もしその力が、他の不届き者に渡っていたら、今頃人類は三つ巴になり、私達は絶望しただろう」
「その通りね……」
目をつむりながらミーナは肯定した。
「しかし、お前には正義の心がある」
「………正義?」
「守りたいという正義だ」
「どこにそんな………」
「お前は救ってくれたじゃないか。リーネやバルクホルンやサーニャを」
「…………………」
「そういう性格なのさ。お前は」
(…………考えたこともなかったな………)
今まで家族以外と過ごした事がなかった為に、客観的に自分を見る機会がなかった。仲間から指摘されて初めて気づき始めた足立だった。
「その正義の心を持った者として、仲間として、ネウロイを一緒に倒してはくれないか?」
坂本のお願いに沈黙した。足立は考えていた、坂本の言葉の意味を。
(仲間か………)
足立は考えていた。自分がホントに仲間として相応しいのか。そんな資格が自分にあるのか。しかしそこであることに気づいた。
「俺だけ………か」
答えが漏れた。そう、自分だけが許そうとしなかったのだ。自分だけが責めていたのだった。周りのウィッチ達を見回してみると、過ごしたいろんな顔を思い出されていた。その表情は、人間として、仲間としての笑顔があった。
そして足立は覚悟を決めた。
「いいぜ、少佐。協力してやる」
「ホントか!」
「ただし、条件がある」
「条件?」
足立の返事に坂本は前のめりになりかけたが、足立は話を続けた。
「仲間だったらお願いとかするな。命令してくれ」
「……ふっ、条件が多い男だな」
何かと警戒した自分がバカみたいと思った坂本は、冗談で悪態をつきながら手を差し出し、足立に握手を求めた。すると足立も、躊躇なく握手を交わした。
「ようこそ、ストライクウィッチーズへ」
「ああ」
その言葉は2度目だったが、意味が違っていた。これは、足立が真の仲間として迎え入れた日になったのだった。周りのウィッチ達も笑顔になり、快く歓迎してくれていた。
握手を交わした足立も、口元が笑っていた。
お疲れ様です。
ストライクウィッチーズと言えば折返し地点になると神回が鉄板ですが、自分はそのような話を作ることが出来ませんでした………
正直キャッキャウフフを書くのも苦手です(全然嫌いではないです)
なので今回はムリヤリ水着回にしてそれっぽい話にしました。ながくなって申し訳ないです。