ストライクウィッチーズ 大空の傭兵の軌跡   作:sontakeda

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原作のミーナ回とほぼ同じ話になります。


第9話 君を忘れない Aパート

ある日、宮藤はストライカーの整備をしてくれている整備兵の下に扶桑のお茶菓子を持ってきていた。

 

「いつもありがとうございます!」

 

「!」

 

整備兵達が宮藤の姿に気づいた。

 

「お菓子作ってみたんですけど、みなさんで食べてください」

 

「……………」

 

労いや感謝の意味を込めて作ってきたおはぎ。宮藤は笑顔で渡そうとするが、整備兵たちは宮藤の言葉を無視、作業を再開した。その反応に宮藤は驚きを隠せず、話を続けた。

 

「あ、あの、これ扶桑のお菓子で……」

 

すると、ひとりの整備兵が口を開いた。

 

「すいません。ミーナ隊長から、必要最低限以外はウィッチ隊との会話を禁じられてますので」

 

「えっ……!?」

 

そんな事は初耳だった。宮藤はしばらく驚きを隠せなかった。

 

 

 

 

 

 

 

快晴の青空。そんな基地の下に、シーツやらの洗濯物が干されていた。どうやら宮藤とリーネが家事をしていた。

 

「ふあ~!!今日は風が強いね!」

 

「そうね、でも洗濯物も早く乾きそう」

 

今日は風が強く、宮藤やリーネの服が強くなびいていた。そしてふと、宮藤は先程の出来事を思い出した。

 

「そうだリーネちゃん、さっき格納庫でね……」

 

「うん?」

 

手で風を塞ぐ仕草をしながらリーネは横目で宮藤の話に返事をした。

 

洗濯物をすべて干し終えたふたりは、近くの岩場に腰掛けながら宮藤の話を聞いた。

 

「へぇ~、そんなことがあったの」

 

「なんで、ミーナ中佐はそんな規則を作ったんだろう……?リーネちゃん知ってる?」

 

「わたしも命令があるのはしってたけど……あまり気にしてなかったから」

 

「えーー!!こんな命令絶対変だよ!変すぎる!リーネちゃんもそう思わない?」

 

納得のいかない宮藤はリーネに同意を求め訪ねた。

 

「えっ……私、兄弟以外の男の人とほとんど話したことなくて……足立さん以外は……」

 

リーネは恥ずかしそうモジモジしながら答えた。

 

「ふーん。学校とかは?」

 

「ずっと女子校だったから……」

 

「そうなんだ」

 

「うん……ごめんね……」

 

「ううん」

 

申し訳なさそうに答えるリーネに宮藤は怒っている様子もない返事で返した。

 

「でも………足立くんとは普通にメンバーのみんなと話せてるんだよね」

 

「多分、特例だと思うよ。一応捕虜の扱いだし……」

 

「そっか……」

 

宮藤は納得しきれていない様子だったが、捕虜扱いと聞いて少しショックを受けた。

 

「あっ」

 

そんな相談をしていると、海辺に見えている軍艦に宮藤は目が入った。

 

「ほら!あれ赤城だよ!!」

 

「赤城?」

 

「うん。私の乗ってきた艦。修理してるって聞いたけど、直ったのかな?」

 

以前、宮藤がブリタニアに向かってる最中にネウロイに襲われた際、赤城は酷い損傷を受けた。その間、修理をされていたみたいだ。

 

すると、視界の隅の方からルッキーニとシャーリーが現れるのが見えた。

 

「あぁいたいた!芳佳ー!!」

 

「ミーナ中佐が呼んでたぞー!」

 

「あ、はーい!!………なんだろう?」

 

呼ばれた理由に心当たりがなく、宮藤とリーネはお互い首をかしげながら見合わせた。疑問に思いながらも宮藤は言われた通り、ミーナがいるブリーフィングルームに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼しまーす」

 

ブリーフィングルームに入り、一声挨拶し中を見回すと、坂本とミーナ、坂本と同じ白い軍服を着た中年の男性が立っていた。その声に気づいた男性は振り向くと、宮藤に声をかけた。その手には紫の布に包まれたなにかを持っていた。

 

「宮藤さん。お会いしたかった」

 

そう言うと男性は宮藤に近づこうとしたが、それをミーナは防ぐかのように横入りしてきた。

 

「こちらは、赤城の艦長さんよ。ぜひあなたに会いたいとおしゃって」

 

「杉田です。乗員を代表して、あなたにお礼を言いに来ました」

 

「お礼?」

 

「あなたのおかげで遣欧艦隊の大事な艦を失わずに済みましたし、なにより多くの人命が助かりました。本当に感謝しています」

 

杉田という艦長はその時の様子をしみじみに思いながら宮藤に感謝を述べた。

 

「いえ……私はなにも……あのときは坂本さんと他の人たちが………」

 

宮藤は自分の力ではないと謙虚さと恥ずかしさを持って言った。

 

「いや、確かにあのとき、お前がいなければ全滅していたかもしれん。誇りに思ってもいいぞ。宮藤」

 

「そうかなぁ~へへ」

 

一緒に戦った坂本に褒められ、宮藤の顔は照れながらもにやけた。すると、杉田は宮藤に紫の風呂敷で包まったものを渡された。

 

「全乗員と話し合って決めました。これをあなたにと」

 

予想もしてなかった展開に、宮藤は杉田の顔と風呂敷を交互に何度も見合わせた。

 

「あらあら、良かったわねぇ」

 

「ありがたく受け取っておけ。宮藤」

 

ミーナも坂本も笑顔で宮藤に受け取るよう促した。

 

「はい!ありがとうございます」

 

その風呂敷は宮藤に渡った。すると、杉田はさっきまでの優しい顔とは裏腹に、貫禄が出る戦場での真剣な顔つきに一瞬で変わった。

 

「反攻作戦の前哨として、我々も出撃が決まりました」

 

「ついに……ですか」

 

杉田はミーナに報告すると、待ってましたと言わんばかりの言い回しだった。

 

「反抗作戦……?」

 

宮藤は初耳な発言に怪訝な顔をした。

 

「ええ。今日はその途中で寄らせていただいたのです。明日には出航なので、ぜひ艦にも来てください。みなが喜びます」

 

「え………はい!」

 

急な申し出で宮藤は一瞬戸惑ったが、自分としてはお礼を言いたいと思い、快く返事をした。しかし、それを許さない者もいた。

 

「残念ですが、明日は出撃予定がありますので」

 

「!」

 

「そうですか……残念です」

 

ミーナの断りが入ると、宮藤の顔は沈んでしまった。どうしてもお礼を言いたかったのだろう。

 

「それでは、私は失礼します」

 

「はい、本日はありがとうございました」

 

「宮藤さんも、それでは」

 

「あ、はい………」

 

ミーナと坂本は杉谷敬礼し、杉田本人は部屋から立ち去ろうとした。宮藤は先程の元気な様子とは違い暗い顔をしていた。その時、ブリーフィングルームの扉が開くのに全員が気づいた。

 

「中佐いるかー?バルクホルンがアンタに渡しといてくれって書類が………」

 

そう言いながら入ってきたのは足立だった。周りもこのタイミングで入ってくるとは思わず、空気が凍った感覚がした。

 

足立の目の前には杉田と相対する形になっり、足立は杉田のことをジロッと見た。

 

「………………」

 

(少佐と同じ服………海軍?しかも扶桑人……)

 

どういう人物か推測する足立だが、余計な詮索は無駄だと思い、すぐに話し続けた。

 

「……取り込み中だったか?」

 

「い、いえ、その書類を頂けるかしら?」

 

「はいよ」

 

足立はミーナの下に行き、片手で渡した。ミーナも表情が苦笑いしている様子だった。

 

「んじゃ、確かに渡したからな~失礼しやした~」

 

「………あ!待ってよ足立くん!し、失礼しました!!」

 

後ろ姿で手を振りながら足立は退出し、宮藤も呆気に取られながらもお辞儀をしつつ、足立の後を追うように退出していった。

 

「……ミーナ中佐、もしかして今のが?」

 

「………はい」

 

お叱りの言葉を受けるかと思い、ミーナも覚悟をしていた。しかし、予想は外れた。

 

「……ハッハッハ!!!」

 

「す、杉田艦長?」

 

突然の笑い声に坂本も驚いた様子を見せた。

 

「いや、すみません。我々上層部と基地内の者にしか伝えられてない情報で、どんな人物かと思ったら意外な子でした」

 

「……恐縮です」

 

「それで、どんな子でしたか?」

 

「…………………」

 

ミーナはどう答えようか一瞬考えたが、杉田という男を考えた結果、素直に答えることにした。

 

「不器用ですけど、とても仲間思いの子です」

 

「なるほど……ミーナ中佐が言うのであればそうなのですな」

 

杉田とミーナは共に微笑みながら答えた。

 

 

 

 

 

 

 

ブリーフィングルームを後にした宮藤と足立、それと待っていてくれたリーネ達が中庭の方を歩いていた。

 

「それで……艦長さんの前で書類を……?」

 

「へぇ〜艦長だったのか。あのおっさん」

 

「か、艦長さんは大佐だから、ミーナ中佐より偉いんですよ!?」

 

「そんなに偉い人だったんだ……」

 

足立の興味なさそうな様子にリーネは驚きを隠せず、宮藤は改めて知り事の重要さを知った。

 

「でも、艦長さんが代表してお礼に来てくれたなんて、すごいね!」

 

「えへへ………」

 

「宮藤さん!!!」

 

「ふぇっ!?」

 

リーネに褒められ照れていると、突然宮藤とリーネの前に少年兵が現れ宮藤を名指した。宮藤は思わず間の抜けた驚いた声が出てしまった。

 

「さ、先の戦いでの宮藤さん勇戦敢闘には、大変敬服致しました!!艦を守っていただき、た、大変感謝してます!!」

 

「は、はい……どういたしまして……」

 

この少年兵は赤城の乗員みたいだった。その時の宮藤の戦う姿を見てお礼を言いに来たのだった。しかも手紙付きで。少年兵は手紙を差し出しながら感謝を述べ、宮藤も戸惑いながらも言葉を返した。

 

「あの………そのですね………これ、受け取ってください!!!」

 

「えっ?………あの……」

 

「ラブレターじゃない?」

 

少年兵の手紙を見てリーネはワクワクした顔になった。

 

「ラブレター?」

 

「うん!受け取ってあげたら?」

 

「えっ……えっ?」

 

そう言うとリーネは宮藤が持っていた荷物を変わりに持ってあげた。宮藤は次第に理解していくと、事の恥ずかしさに顔を赤らめていった。そして観念し、少年兵の手紙を受け取ろうとしたその時。

 

『あっ!!』

 

突然の風。手紙は宙を舞い、飛んでいってしまった。

 

「待てー!!!」

 

少年兵が追いかけていくと宮藤も一緒に追いかけて行ってしまった。

 

「わぁー!わぁー!!」

 

「………楽しんでないか?リーネ」

 

宮藤たちの後ろにずっといた足立は、リーネの目の変わりようにアホらしく思えた。

 

手紙を追っていったふたり。すると、中庭の壁に挟まっているのが見えた。

 

「よかった」

 

少年兵が安堵の声を漏らすと手紙を取ろうとした。その時、宮藤も一緒に取ろうとすると、ふたりの手はお互いに当たってしまった。

 

『あっ』

 

ふたりはお互いの顔を見合わすと頬を赤らめ、手を引っ込めてしまった。すると、風が再び吹き、手紙が宙に舞ってしまった。そしてその着地先は、運悪くミーナの手元に落ちた。

 

「ミーナ中佐!!」

 

どこから現れたか知らないミーナに宮藤は驚いた声が出た。

 

「このようなことは、厳禁と伝えたはずですが」

 

ミーナは毅然とした態度で言った。

 

「すいません……ぜひとも一言……お礼を言いたくて……」

 

「そうです。なにも悪いことなんてしてません……」

 

宮藤も少年兵も怒られると思い、必死に弁解しようとした。しかし、ミーナは一瞬目を閉じ、再び開けると少年兵の下に近づいた。

 

「ウィッチーズとの必要以上の接触は厳禁です。従って、これはお返しします」

 

そう言うとミーナは、手紙を少年兵に返した。

 

「申し訳ありませんでした………」

 

「あっ………」

 

少年兵は手紙を渡せず、その場を足早と去っていった。その姿に宮藤は悲しんだ。

 

そして宮藤とリーネと足立は宿舎の廊下を歩いていた。その宮藤の姿に元気がなかった。

 

「ミーナ中佐怖かったね………」

 

「うん………」

 

「手紙、なんだったろうね」

 

「うん………」

 

「芳佳ちゃん……?」

 

「うん………」

 

リーネが何を言っても宮藤は俯瞰になりながら元気がない様子だった。

 

「…………………」

 

(ウィッチとの接触は厳禁………か)

 

後ろを歩く足立は上を見上げ、手を後頭部辺りに組みながら考えていた。ミーナがなぜ接触を禁じているのか。なぜ自分はいいのか。今はまだ理解できなかった。

 

 

 

 

 

 

 

少年兵の手紙を突き返したミーナは部屋に戻り、窓辺から基地の向こう側に見える大陸を見つめていた。その名前はパ・ド・カレー。以前、ネウロイによって破壊し尽くされた場所なのだ。

 

そしてミーナにとっては、とても思い出深い場所だった。

 

「……………………」

 

その見つめる先は、過去を思い出していた。炎の海となったパ・ド・カレー。その様子を見ることしか出来なかったミーナ。悔やんでみ悔やみきれなかった。まるでそこに何かを置いてきたかのように………。

 

「聞いたぞ」

 

昔のことを思い出していると、いつの間にか日が落ちていた。すると、月明かりで照らされた部屋に、聞き覚えのある声が響いた。その声に反応して振り返ると、坂本が立っていた。

 

「美緒………」

 

「手紙を突き返したそうだな」

 

「そういう決まりだもの」

 

ミーナは堂々とした態度で言い、再び窓の外を見た。

 

「まだ忘れられないのか?」

 

気にかけるように声をかけ、坂本も一緒に窓の外を眺めていた。ふたりはそれ以上会話を続けることは無かった。

 

しかし、そんな沈黙はすぐに破られた。

 

コンコン

 

ミーナの部屋からノックする音が鳴った。

 

「俺だ。中佐いるか?」

 

確認をとって扉を開けると、訪ねてきたのは足立だった。

 

「……夜に女性の部屋を訪ねてくるなんて、感心しないわね」

 

ミーナは足立の方を見ながら言った。

 

「お邪魔だったか?」

 

「冗談よ。それで、なにかしら?」

 

先程までの悲しい顔とは裏腹に、ミーナは含み笑いしながら聞いた。

 

「いやなに、純粋な疑問なんだ」

 

足立は両手を広げながら答えた。

 

「なんでそこまで男と関わらせないんだ?」

 

「!」

 

その質問にミーナはドキッとしたが、表情は崩れなかった。

 

「そしてもうひとつ。なんで男の俺は自由にさせてるんだ?」

 

「それは………」

 

「ミーナは規則に従ってるだけだ。必要以上に関わる必要がないからな」

 

「美緒………」

 

坂本はミーナを庇うように代弁してくれた。

 

「……じゃあ俺は?」

 

「お前は特例だ。上にも、あえて自由に泳がせることにしてるんだ」

 

「………なるほど、ね」

 

足立は坂本の言い分に無理やり納得させた。これ以上は何も聞き出せないと思った。

 

「聞きたいことはそれだけか?」

 

「ああ、つまんねぇこと聞いた。じゃあな」

 

「待って」

 

部屋を去ろうとする足立を呼び止めたミーナ。そして足立にこんな質問をした。

 

「………宮藤……さんは?」

 

「……いつもよりは静かだったな」

 

「そう………」

 

「じゃあな」

 

そう言い残して足立はミーナの部屋から退出した。

 

「……後悔してるのか?」

 

「……そんなわけないじゃない」

 

坂本の質問にミーナは強がるような言い方で返した。

 

一方、宮藤とリーネは宮藤の部屋で、杉田艦長から貰った品を開けていた。

 

「わぁ~!扶桑人形だ!!」

 

「かわいい」

 

中身は扶桑のウィッチを模った扶桑人形だった。ふたりには好評な様子だった。しかし………

 

「…お礼……言いたいな……」

 

宮藤はどうしてもお礼が言いたかった。その気持ちだけが心残りだった。

 

 

 

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