ストライクウィッチーズ 大空の傭兵の軌跡   作:sontakeda

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第9話 君を忘れない Bパート

翌日。昼間の基地には警報の音が鳴り響いていた。招集がかかり、メンバーたちはブリーフィングルームに集められた。

 

「ガリアから敵が進行中のとの報告です」

 

教壇の前に立つミーナは毅然とした表情で言った。

 

「今回は珍しく予測が当たったな」

 

席に座っていた坂本はニヤリと笑った。

 

「ええ。現在の高度は1万5000。進路はまっすぐこの基地に向かっているわ」

 

「よし、ルーチンの迎撃パターンで行けるな」

 

坂本は席を立ち、教壇の前に立つと本日の出撃メンバーが書いてある紙を読み上げた。

 

「今日の搭乗割は、バルクホルン、ハルトマンが前衛。ペリーヌとリーネが後衛。宮藤と足立は、私とミーナの直衛。シャーリーとルッキーニ、エイラとサーニャは基地待機だ」

 

「お留守番~お留守番~♪」

 

「ユニットのセッティングでもするか~」

 

「すぅ…………すぅ………」

 

待機組のメンバーたちは相変わらずの警戒の無さが目立った。しかし、それはいざという時の余裕の現れでもあった。

 

「よし、準備にかかれ!」

 

坂本の指示に従い、出撃メンバーはすぐさま格納庫に向かった。

 

ストライカーを履き、一斉に発進する様は圧巻だった。隊列を組み、そのまま上空へと飛び立った。

 

「いってらっしゃ~い」

 

格納庫の入り口で、手を振りながら見送るルッキーニとシャーリー。

 

 

 

 

 

 

 

海上の上空を突き進むウィッチたち。その中でも、いち早く、敵の存在を感じ取った者がいた。

 

「!、敵発見!!」

 

はるか遠くにいるネウロイを、坂本は誰よりも早く確認した。

 

「タイプは?」

 

「確認する!!」

 

どんな種類かミーナは聞き、坂本は眼帯を外し魔眼を発動させた。すると正体は、巨大なキューブ状のネウロイだった。

 

「300m級だ。いつものフォーメーションか?」

 

「そうね」

 

「よし!突撃!!」

 

坂本の合図とともに、バルクホルンとハルトマンは目標に向かって降下し、続いてリーネとペリーヌもそれに付いていくように降下し始めた。そして、ハルトマンがネウロイに狙いを定めた。しかしその時……!

 

「っ!」

 

ハルトマンは異変に気づいた。キューブ体のネウロイが一瞬光ったと思うと、無数の小型機にバラけ始めた。

 

「なにっ!?」

 

「分裂した!?」

 

「こりゃ骨が折れそうだ」

 

バルクホルンと坂本は驚きを隠せなかったのに対し、足立は全く動じなかった。むしろ、ワクワクすると言った意味で笑った顔をしていた。すると、ミーナは固有魔法を発動していた。空間把握の能力を使い、ネウロイの数を数えていた。

 

「右下方80、中央100、左30」

 

「総勢210機分か。勲章の大盤振る舞いになるな」

 

「そうね」

 

坂本の冗談にも動じない返事をしたミーナ。

 

「で、どうする?」

 

「あなたはコアを探して」

 

「了解」

 

「バルクホルン隊中央」

 

「了解」

 

「ペリーヌ隊、右を迎撃」

 

「了解!」

 

ミーナは冷静に淡々と、隊に指示を出した。流石の隊長と言ったところだった。

 

「宮藤さん!あなたは坂本少佐の直衛に入りなさい」

 

「了解!」

 

「いい?あなたの任務は、少佐がコアを見つけるまで敵を近づけないこと」

 

「はい!」

 

新人の宮藤に対しての配慮か、ミーナは宮藤に目的を明確にした。

 

「足立君、あなたは私と左を迎撃よ」

 

「あいよ」

 

ミーナはそう言うと降下していき、ネウロイの群れの中に入っていった。足立もそれに付いていく形で向かった。

 

四方八方からネウロイの攻撃が来るのにも関わらず、ミーナはそれらを全て避けきり、1機1機確実に落としていった。

 

「へぇー流石は中佐だな。っと!」

 

後に付いて行ってる足立もすれ違うネウロイを1機も逃さず切り裂いていった。

 

「あまり飛ばすと、後で疲れるわよ!」

 

「へいへーい!」

 

ミーナの忠告にも雑な返事をするが、トリッキーな動きは相変わらずだった。

 

「これで10機!!」

 

「こっちは12機!!」

 

エーズ二人のハルトマンとバルクホルンも、ネウロイに囲まれながらも巧みな空中戦で次々と撃墜していった。

 

「久しぶりにスコアが稼げるな!」

 

「ここのところ全然だったからね!」

 

ふたりはニヤリと笑いながら背中合わせになり、軽口を叩けるほどの余裕があった。

 

「いいこと?貴方の銃では速射は無理だわ!引いて狙いなさい!」

 

「はい!」

 

「私の背中は、任せましたわよ!」

 

ペリーヌはリーネに的確な戦い方を教え、自分は急降下しながらネウロイの群れに突っ込んでいった。

 

「これを使うと、あとで髪の毛が大変なのよね………トネールッ!!!」

 

ペリーヌが愚痴をこぼしながら固有魔法を使うと、体中に電気を纏わせ、周りにいるネウロイに放った。当然ネウロイたちは木っ端微塵に消えていった。

 

「ふぅ、私にかかればこのくらい………」

 

固有魔法を使ったことで髪の毛が跳ね上がり、周りのネウロイを倒した事で慢心が漏れたペリーヌ。それと同時に、背後にいたネウロイが倒された。

 

「っ!?」

 

振り返ると、もうい1機撃墜されるところを確認した。その正体はリーネの援護射撃だった。

 

「はぁ………はぁ………」

 

息が切れそうな状態でリーネはペリーヌの援護に努めていた。

 

「や、やるじゃない」

 

意外な表情をするペリーヌは、上からな褒め言葉を呟いた。

 

メンバーが戦っている中で上空から見下ろす宮藤と坂本。坂本は本体のコアを、この無数の中から探していた。

 

「みんな……すごい………」

 

「………………」

 

感心する宮藤。魔眼を見開いた状態で探す坂本。だがしかし、コアは見つからない。

 

「はっ!?」

 

宮藤は近づいてくるネウロイを見つけた。すると、いち早く機関銃を撃ち、見事数機のネウロイを撃墜させた。

 

「その調子で頼むぞ!!」

 

「はいっ!!」

 

宮藤も懸命に任務を全うしていた。その中で、足立は嫌な予感が頭の片隅に浮かんだ。

 

「中佐、こりゃこのままだと………」

 

「ええ、まずいわね……」

 

足立とミーナはお互いの言いたいことが分かっていた。消耗戦になり長引くとこちらが不利になることを危惧していた。

 

ミーナは一、坂本の下へと戻った。

 

「コアは見つかった?」

 

「ダメだ」

 

「っ!?まさかまた陽動!?」

 

以前の作戦でしてやられたこともあり、ミーナは過敏になっていた。

 

「違うだろう。コアの気配はあるんだ。ただし、どうもあの群れの中にいない」

 

「……戦場は移動しつつあるわね」

 

無数のネウロイを3人は見下ろしていた。そして気づくと、戦場は陸地の方へと近づいていた。

 

「ああ、大陸に近寄っているな」

 

そう感想を述べるかのように呟く坂本。とその時、宮藤は更に上空のほうで気配を感じると振り返った。

 

「ッ!!上!!」

 

「ッ!!!」

 

宮藤の声で上空を確認する坂本とミーナ。すると、そこには数機のネウロイが飛んでいるのが確認できた。

 

「クソッ!見えない…!!!」

 

太陽の背に飛んでいるため、逆光のおかげで上手くコアを確認することができなかった。

 

「いきますっ!!!」

 

宮藤が積極的に応戦に入った。シールドで守り、隙が出来れば機関銃で応戦。何機か見事に撃ち落としていた。ミーナも宮藤に続き、ふたりで応戦に応じた。

 

「よしいいぞ!もう少し頼む!!」

 

「はいっ!!!」

 

宮藤は命令通り、近づかせないよう撃ち続けた。太陽を見ないよう、なんとかネウロイを観察し続ける坂本。すると………

 

「………っ!!見つけた!!」

 

ついに見つけた、コアを持った本体が。しかし、本体は宮藤たちとすれ違うように抜けていった。本体のネウロイは大陸方面に逃げるように向かった。

 

「あれなの?」

 

「ああ!」

 

「全隊員に通告。敵コアを発見、私たちが叩くから他を近づけさせないで!」

 

『了解!』

 

ミーナはインカムで隊員たちに報告した。

 

「行くわよ」

 

『了解!!』

 

宮藤と坂本はミーナに続くように、コアを持ったネウロイに向かった。雲を抜けると、目の前にそのネウロイはいた。

 

「いた!」

 

ミーナが発見し、撃ち始めると二人も同時に撃ち続けた。すると、なんとかネウロイに掠った程度で当たったが、そのまま旋回し逃げようとしていた。

 

「宮藤逃がすなッ!!!」

 

「はいッ!!!」

 

なんと、宮藤は背面になりながらもネウロイに喰らいつきながら撃ち続けた。徐々に、徐々にネウロイに照準をあわせながら撃ち続けると、見事ネウロイ本体に当たり砕け散った。砕け散ったネウロイの破片に当たらないよう、3人はシールドを展開した。

 

しかし………

 

「っ!?」

 

「ッ!!美緒ッ……!?」

 

坂本のシールドは貫通した。当たりはしなかったものの、坂本とそれに気づいたミーナは衝撃を隠せなかった。

 

「芳佳ちゃんすっごーい!!!」

 

横から飛んできたリーネは、宮藤に抱き止められながらやってきた。他の隊員や足立も宮藤たちの下に集ってきた。

 

「ふん、あんなのマグレですわよ」

 

「いや、不規則空中の敵機に命中させるのはなかなか難しいんだ」

 

ペリーヌがマグレで片付けようとするも、バルクホルンが如何に難しい芸当をしたか説明した。

 

「宮藤やるじゃ~ん!」

 

「えへへ……そ、そうかなぁ」

 

「マシになった、程度だけどな」

 

ハルトマンやバルクホルンが褒める中、足立は水をさすような事を宮藤に投げかけた。その言葉に、宮藤は頬を膨らませ足立に言い寄った。

 

「もう!みんな褒めてくれるのにどうして足立くんは素直じゃないの!!」

 

「十分褒めてるだろ」

 

「褒めてるように聞こえないよ!!」

 

ふたりのやりとりにクスっと笑うリーネに、足立の言う通りと言わんばかりにペリーヌはうんうんとうなずいていた。

 

ネウロイの破片はキラキラと大陸に降り注ぐ光景にウィッチたちは見とれていた。その光景に宮藤はつぶやいた。

 

「きれい………」

 

「ああ、こうなってしまえばな」

 

坂本は宮藤の感想に肯定した。

 

「綺麗な花には棘が……って言いますわね」

 

「……自分のことか~?」

 

ペリーヌの言い例えにハルトマンは茶化してきた。

 

「し、失礼ですわね!!………まぁ、綺麗ってとこは認めて差し上げてよろしいですけど」

 

「棘だらけってか~?」

 

「っっ!!!貴方って人はどうして人の揚げ足ばかり取ってばかり!!」

 

「やーい棘だらけ~」

 

「……………………」

 

ハルトマンとペリーニが漫才をしている中で、ミーナは物悲しげに大陸の方を見つめていた。すると、目線の先は1台の車だった。しかしそこはすでにネウロイの攻撃によって荒れ地になっているところだった。

 

するとミーナは、その車に向かって飛んでいった。

 

「ミーナ?」

 

バルクホツンの掛け声によってペリーヌはミーナの方に振り向いた。

 

「えっ?おーい!どこに…!」

 

「待て」

 

「?」

 

ハルトマンが追いかけようとすると、坂本が横手で静止させた。

 

「ひとりにさせてやろう」

 

「………そうか、ここは……パ・ド・カレーか………」

 

バルクホルンと坂本は何かを察し、ミーナを一人にさせるようにした。そんな時、足立はある疑問が浮かんだ?

 

「ん?少佐、中佐はカールスラント出身だろ?なんでパ・ド・カレーなんかに……」

 

「足立、お前が昨夜知りたがっていた答えが、ここに全て詰まっている」

 

「全て……?」

 

少佐の意味深な言葉を聞いて、ミーナとパ・ド・カレーを眉間にシワが寄るぐらいじっと見つめた。ネウロイの攻撃によって陥落した街。そしてミーナがなぜ男女との規則に厳しいのか、考えた。そして、ある道理が思いついた。

 

「………そういうことか……」

 

「?、何がですか?足立さん」

 

足立の納得したような顔だったが、スッキリしたような表情ではなかった。リーネは足立が何に納得したのか聞いたが答えてはくれなかった。

 

「事故は未然に防ぐ……てことだろ?少佐」

 

「………さぁな」

 

「ねぇ足立くん、どういうことなの?」

 

「帰ったら教えてやるよ」

 

結局足立は、その場では答えを言わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

ネウロイの攻撃によって何もかもが無くなってしまったパ・ド・カレー。しかし、そこに1台の車が残っていた。ミーナはその車の側に降り立ち、車の扉を開け中を覗いてみた。

 

「っ!!」

 

ミーナは声にならない声で驚いた。それは、助席のところにある包が置いてあった。

 

「…………………」

 

ミーナはその包を見ながら昔の事を思い出していた。

 

 

 

数年前、ミーナはある任務に付くために、パ・ド・カレーにいた。しかしひとりではなかった。なぜなら、恋人のクルト・フラッハフェルトが一緒だったからである。そんなふたりは同棲している程の中だった。そんなある時、ミーナが最前線に転属が決まった日にクルトも整備兵として志願したのだった。音楽家としての夢も捨て、ミーナと一緒にいることを決めたのだった。

 

そしてダイナモ作戦当日、ミーナの出撃準備にクルトがあたっていた。ミーナが出撃する際にクルトはこう言っていた。

 

 

ミーナ!後で渡したいものがあるんだ!!

 

 

それ以降、彼の姿を見たものはいなかった。その後のネウロイの攻撃によって、パ・ド・カレーの港湾基地は壊滅されたのだった。

 

 

 

辛く悲しい記憶が蘇る中、ミーナは包みを開いた。中身はワインカラーのドレスと手紙だった。音楽家を目指していたミーナに贈ろうとしていたと分かると、ミーナは涙が溢れてしまった。

 

「うっ………うっ………」

 

ミーナの涙はしばらく止まらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

涙が落ち着くまで待つと、刺してあったストライカーの側に坂本が待っていた。

 

「…もういいのか?」

 

坂本の声はいつもより優しい声に聞こえた。

 

「ええ………」

 

いつものミーナらしい覇気のある声ではなかった。しかし………

 

「基地に帰還します」

 

「了解。ふっ………」

 

次の瞬間にはいつもの凛々しい姿に戻った。その姿に坂本も安堵の息が漏れた。

 

 

 

 

 

 

 

出向した赤城。ストライクウィッチーズの基地を眺めながら残念そうにしているあの少年兵。

 

「やっぱり来なかった………」

 

ほんの少し、期待はあったかもしれないいがそれが叶わなかった。がしかし……

 

ブロロロロ……

 

少年兵の帽子が飛ばされるのと同時に、プロペラ音が同時に通り過ぎていった。

 

「っ!!!」

 

少年兵が見たものはウィッチだった。宮藤、リーネ、坂本が並列に並んで飛んでいる姿だった。

 

「宮藤さん!!」

 

大きく旋回したと思われると、赤城の横に付き船員たちに手を振る宮藤。

 

「みんなありがとうー!!頑張ってねー!!!私も頑張るからー!!!」

 

「芳佳ちゃん。良かったね」

 

「うん!ちゃんとお礼言えた!」

 

「世話になったからな」

 

「はい」

 

宮藤からのお礼を受けると、船員たち歓喜し手を振り返してくれる者もいた。このお見送りで船員たちの元気のもとになったのは違いなかった。

 

「みんな嬉しそう」

 

「良かった……」

 

船員たちの顔を見て、宮藤は満足そうなつぶやきが出た。

 

「基地に戻るぞ」

 

『はい!!』

 

坂本の帰還命令で3人は基地に戻ろうとした。がその時。

 

「?」

 

坂本のインカムから別の通信が入ってきた。その通信は赤城の船にも伝わっていた。

 

「艦長、通信が入っています」

 

「?、繋げ」

 

艦長の杉田は不明の通信を艦長室に聞こえるよう繫いだ。すると音声からは歌声が聞こえてきた。

 

『いとしのーリリー・マルレーン……』

 

「!、これは……!全艦に繋げ!」

 

杉田は誰が歌っているのかが分かると、全艦にこの歌声を乗せるよう指示した。その歌声は全艦に響き渡っていた。

 

基地のミーティングルームでは、ワインカラーのドレスを着てスタンドマイクの前で、魅了されるような歌声で唄っているミーナの姿があった。BGMにピアノが聴こえ、弾いているのはサーニャだった。その横には目をつむりながら聞いているエイラもいた。バルクホルンはその映像を残すためカメラを、シャーリーはその歌声を外に乗せるべく通信機器を。ソファには心地よく聞いてるルッキーニがうつ伏せになっていた。

 

その歌声を乗せながら、宮藤たちは夕日に向かう艦にむかって手を振りながら基地に帰還した。

 

再び基地に映すと、普段騒がしいハルトマンやペリーヌも目をつむりながら聴いていた。足立ももちろん、壁にもたれかかりながら、普段と変わらない仏頂面で目を瞑って聴いていた。すると、帰還した宮藤、リーネ、坂本がミーティングルームに入ってきた。坂本が帰ってきたのに気づくペリーヌ、しかし宮藤と共に目に入ってくると、ムッとしたような顔になるペリーヌだった。

 

後から来た宮藤も魅了して口が開いたままだった。そして、最後まで綺麗な歌声で歌い終えると、ウィッチや整備兵のみんなは拍手喝采だった。そしてミーナは一礼した。

 

「とっても素敵な歌でした!!」

 

「ありがとう」

 

ミーナに近づき感想を述べる宮藤。両指を組むほどの感動だったのだろう。ミーナは大人な笑顔でお礼を返した。

 

「ん!んぅ~~っ!!」

 

すると、宮藤の後ろからエイラが両端の口元を引っ張り始めた。

 

「何するんですか~!!」

 

「サーニャのピアノはどうした?サーニャの!」

 

「と、とっても素敵でした」

 

「えーいもっとホメろー」

 

「褒めてますってば~!!」

 

サーニャのピアノを半ば強制的言わせようとしていたが、宮藤が感じた感想は本心なのであろう。褒められたサーニャは恥ずかしそうになると、顔を下に向けた。

 

「ちょっと!離してくださいー!!」

 

「いーやまだまだダー」

 

「いたっ痛いですエイラさん!!」

 

半ば楽しみ始めたエイラ。周りからは笑い声が上がってきて、ミーナも先程の悲しい顔が嘘のように、ひとりの少女の笑顔になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

(あ、そういえば………)

 

「ね、ねぇ足立くん!」

 

「!」

 

エイラに頬を引っ張られつつあるが、ちゃんと話せる状態にまでは力が弱まっていた。そして思い出したかのように、エイラにつままれながら壁際にもたれ掛かっている足立に話しかけた。

 

「さっき何か分かったみたいだけど、何が分かったの?」

 

「…………あくまで俺の推測だから、100%信じるんじゃねぇぞ」

 

「う、うん」

 

足立はもたれ掛かるのをやめ、腰に手を当てながら話し始めた。宮藤は足立が改めて話始めようとするのを見てつばを飲み込んだ。そして、足立の話に興味があるのかエイラはつまむのをやめ、サーニャとペリーヌも聞き耳を立てた。

 

「あのパ・ド・カレー。ミーナ中佐にとって大事なヤツ、もしくは同じ職場の恋人が居たんじゃねぇか?」

 

「こ、恋人!?」

 

「声がでけぇ……!!」

 

「ご、ごめん………」

 

周りが驚く中、宮藤は思わず大きな声が出てしまい、足立に叱られた。

 

「だからあくまで推測だ。んで、その後どうなったかは……分かるな?あの惨状」

 

「あ………」

 

パドカレーの惨状を思い出して、なんとなくの察しがつく宮藤。

 

「おそらく、助からなかった。中佐はそんな経験をしたはずだ」

 

「………………」

 

足立の話を聞いて落ち込む宮藤。まるで自分のことかのように感じていた。

 

「んで、ここからが本題だ。もし仮に整備兵の恋人を失った中佐がそんな辛い経験をした。じゃあそんな辛いことを二度と起こさないようにするにはどうすればいいと思う?宮藤」

 

「えっ………あ!」

 

「もしかして……」

 

足立の質問に宮藤はすぐに答えが出てこなかった。しかし、昨日の出来事を宮藤とリーネは思い出した。思い出したリーネはそのまま続けた。

 

「ミーナ中佐は、そんな辛いことを起こさないために厳しくしていた………ってことですか?」

 

「辻褄は合うだろ。違うか?少佐」

 

「………さぁな」

 

隣にいる坂本に確認するが、坂本ははっきりとした答えは言わなかった。

 

「ミーナ中佐………」

 

宮藤は自分を恥んだ。自分のつまらない理由で怒っていたのが恥ずかしくなるぐらい悔やんだ。ミーナ中佐は誰よりも優しい人物だと再認識した。

 

「しかしまぁ、なにがあったかはしんねぇけど、最後は見送りを許してくれたみたいだけどな」

 

「………………」

 

足立と宮藤は他の者と談笑しているミーナを見ながら、感傷に浸る思いをした。そんなミーナの笑顔を見た宮藤は、気づくとミーナの下に駆け寄っていた。

 

「芳佳ちゃん!」

 

「ったくアイツは……!」

 

足立はやれやれと感じながらも宮藤の後を歩いていった。

 

バルクホルンやハルトマンと話しているミーナ。すると、誰かの息が切れるような声が聞こえ振り返ると、なにやら悲しそうな顔をして息切れしている宮藤が立っていた。

 

「宮藤……さん?どうかしたの?」

 

「み、ミーナ中佐!あ、あの……すみませんでした!!」

 

「!」

 

宮藤は突然、ミーナに深々とお辞儀をし謝罪した。

 

「私……ミーナ中佐の事なにも考えてなくて……ミーナ中佐はみんなの事を考えて厳しくしてたんですよね……?」

 

「宮藤さん………」

 

「それなのに私……自分のことしか考えてなくて………それで……」

 

「そこまでだ」

 

宮藤が話を続けようとすると、宮藤の肩にポンと静止させるように手を置いてきたのは足立だった。

 

「足立くん………」

 

「何度も言ってるけどよ、あくまで俺の推測だ。確証なんてひとつもないんだ。それをお前は何の疑いもせずに……」

 

「だって………」

 

宮藤が更に余計な事を言わないように止めようとする足立。何の話かと一瞬戸惑ったミーナだったが、昨日の出来事を思い出した。すると、ミーナは微笑みながら二人の間に口を挟んだ。

 

「宮藤さん」

 

「!」

 

「私も、宮藤さんの頃はそんな風に思っていたわ。なぜ軍はルールに縛られないといけないのか……って」

 

「……………」

 

宮藤は黙ったままミーナの話を聞いた。

 

「でもみんなを守る立場になって気づいたの。みんなを守るためのルールだったって。その事に貴方は今日気づけたの。立派だわ」

 

「そんな………」

 

「それにね宮藤さん。貴方にはそのままでいてほしいの」

 

「えっ?」

 

意外な一言に宮藤は目を丸くした。

 

「貴方のその優しさ、いつまでも忘れないでいてほしいの。戦っている今も、これからも……ね?」

 

「………はい!!」

 

ミーナの笑みにはまるで母性のような雰囲気が感じられ、宮藤も自然と笑顔で返事をした。

 

「貴方もよ。足立くん」

 

「!」

 

足立は自分に話を振られると思っておらず、少し驚いた表情をした。

 

「特別な人生を歩んできて、これからも壁に当たると思うわ。けど、貴方ならきっと乗り越えられると信じているわ。それを信じて……疑わないで」

 

「…………ああ」

 

「……ふふ、ふたりとも、ありがとうね」

 

照れる様子もなく、真剣な表情で足立は返事を返した。ふたりの表情を見比べながら、ミーナは笑顔でお礼を言った。そして、一夜限りの公演会は無事終了した。

 

 

 

 

 

 

 

みんながそろそろ就寝に付く時間の頃。電気も点けずミーナは窓の外を見ていた。月明かりが照らす部屋には赤いドレスが目立っていた。

 

「…………………」

 

すると

 

コンコン

 

「!」

 

ドアのノックする音が聞こえ、振り返ると扉が開いたままの状態で坂本が立っていた。

 

「良い歌だった」

 

「ふふ、ありがとう」

 

ミーナは満面の笑みでお礼を言った。すると、坂本は昨日のようにミーナの隣で窓の外を見始めた。

 

「見送りの許可を出してくれて感謝している」

 

「貴方も行きたかったんでしょ?」

 

「ああ、世話になった船だからな」

 

ミーナは坂本の顔を見ると、再び窓の方へと向けた。

 

「あの人を失った時……本当に辛かったわ。こんな思いをするなら好きになんてならなければ良かったってね………でも、そうじゃなかった」

 

「………………そうか」

 

ミーナは悲しげな表情をしながら語った。坂本はミーナを思いやるような受け答えをした。

 

「………でも失うのは今でも恐ろしいわ」

 

そしてミーナの口調は少し強くなった。

 

「それなら……失わない努力をすべきなの」

 

キリッとした表情、覚悟を決めたような顔をしたミーナだった。すると、坂本に向けて伸ばした手にはあるものが握られていた。

 

 

 

 

拳銃だった。

 

 

 

 




お疲れさまです。

1期のお話を昨年中に終わらせようと思ったら過ぎてしまいましたね………今年は程々に更新ペースを上げていきたいと思っています。

この世界の足立は一応上層部と基地の中の人達だけにネウロイとバレている設定ですがいろいろと問題があるようにも見えますね。男性とウィッチとの接触は厳しいのになぜ足立だけ特別なのか、それも後に書こうと思っています。

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