ストライクウィッチーズ 大空の傭兵の軌跡   作:sontakeda

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第10話 対話 Bパート

少佐に呼ばれ、足立は訓練からミーナの部屋になっている執務室にやってきた。呼ばれた理由を探してはみたものの心当たりが見つからず、足立は意を決して部屋に入った。

 

「失礼しまーす…………!」

 

入室し、目に入ってきたのは椅子に座って手を組んでいるミーナとその横には坂本が立っていた。そして、机の前には怪訝な顔をしたバルクホルンと頭の後ろに手を組んでいるハルトマンの姿だった。

 

「すまないな、急な呼び出しで」

 

「………ただ怒られるわけじゃなさそうだな」

 

メンバーと表情を察して足立は皮肉めいた言い回しをした。

 

「これを見てほしいの」

 

ミーナが机の上に置いてある封筒を指し示した。足立は机の前に来ると、バルクホルンとハルトマンの間に入るように立った。

 

「なんだこれ、手紙?」

 

「『深入りは禁物、これ以上知りすぎるな』」

 

「!」

 

手紙の内容に足立は興味を示した。

 

「これはどういうことだ?」

 

「やましいことはない。そうだろ?ミーナ」

 

「!、え…ええ」

 

手紙を見つめたまま固まっていたミーナは坂本に聞かれると正気を取り戻したかのようにハッとした。

 

「私たちはただネウロイについて調べていただけよ?」

 

「それならどうしてこんなものが届く!?」

 

「差出人は?」

 

ハルトマンは別の方からの質問を投げ掛けた。

 

「私たちの事を疎ましく思うのは軍のなかでもいくらでもいるはずだから……」

 

「しかし、こんな品の無い仕方をするのは1人だけだ」

 

「!」

 

足立はピクリと反応し、坂本の目をじっと見た。

 

「我々はネウロイを調べてるうちにある核心的部分に触れたのであろう、それをあの男が阻止したがってるんだ」

 

「男?」

 

バルクホルンが聞き返すと、坂本はニタリとした笑みを浮かべながら言った。

 

「トレヴァー・マロニー、空軍大将さ」

 

『!!』

 

ハルトマンとバルクホルンは衝撃を受けた様子だったが、足立だけは素性の分からない人物だったため、首を傾げた。

 

「それともうひとつ、手紙には書いてあったそうだな」

 

「………………」

 

バルクホルンはなぜか言い淀んでしまった。

 

「なんて書いてあったんだよ?」

 

「……『飼い犬を引き渡せばこの話は不問にする』と書かれていた……」

 

バルクホルンは苦虫を噛み潰したような表情で手紙の内容を話した。

 

「飼い犬って……」

 

「…………俺だな」

 

ハルトマンと同様、足立も誰を指しているのか察した。

 

「もちろん、こんな話に乗るわけではないが、ひとつ気になることがある」

 

「マロニー大将は、貴方を手中に納めたいみたいなの、何か心当たりはないかしら?」

 

「……心当たりも何も、分かりきってるじゃねぇか」

 

足立にはマロニーの狙いがお見通しの様子だった。

 

「ネウロイと俺、共通点はコアだ」

 

「やはりそうなるか……」

 

「ネウロイのコアが狙い!?そんなものどうする気だ!」

 

声を荒げるバルクホルン。しかし、ミーナ、坂本は冷静に目的を紐解いていった。

 

「恐らく軍事利用、それしか考えられないわね」

 

「現にその成果が目の前にあるからな」

 

「人体実験かよ」

 

坂本の皮肉に足立がツッコミを入れた。その時、ハルトマンがある事に気がついた。

 

「ねぇ!足立のお父さんって白衣のまま会いに来たんだよね?」

 

「あぁ」

 

「もしかして……最初から足立をネウロイにしようとしてたんじゃないの……?」

 

『!!』

 

「……………………」

 

核心をついたかのような言葉にみんなは足立の方を見た。その表情からは、考えもしなかった様子にみんなは何も言えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

ハルトマンに言われた言葉を、足立は考えていた。自分の父親が最初からネウロイを生みだそうとした事を、廊下を歩きながら繰り返し考えた。

 

(……確かに、その線も無きにしもあらず、むしろそっちの狙いの方が高い……けど…………)

 

足立は父親との思い出を思い出していた。陽気で気さくな父親を。

 

(クソッ!!考えがまとまんねぇ……!)

 

思考がまとまらず、足立はイラついていた。その時、無意識に足をハンガーまで運んでいた。そしてそこに居たのはシャーリーとルッキーニとリーネだった。

 

「!、何してんだ?お前ら」

 

「おぉ足立!もういいのか?」

 

「今ね!すっごく面白いことしてるんだよ!」

 

「なんじゃそら……」

 

シャーリーとルッキーニの様子に呆れたような顔をする足立。すると一緒にいたリーネが、足立に詰め寄ってきた。

 

「た、大変なんです足立さん!」

 

「お、おう、どうした?」

 

ルッキーニ達とは裏腹に、リーネはとても焦っていた様子だった。足立は信用できるリーネの話を聞いた。

 

 

 

「………要は、ペリーヌが宮藤の成長具合に嫉妬して決闘してる、と」

 

「は、はい………」

 

リーネが言うにはこうだ。訓練後、みんなでお風呂に入っている最中、ペリーヌが宮藤に坂本と秘密特訓をしてるに違いないと思い込み、そこから決闘に発展したということだ。

 

「そりゃ面白いな」

 

「だろ?」

 

「面白くないですよ!!銃だって持ち出して、バレたらとんでもないですよ!?」

 

てっきり味方になってくれるかと思ったリーネだったが、足立もノリ気なほうだった。

 

「つってもどうしようもないだろ、俺たちの言うことを聞くタチでもないし」

 

「それは…………そうですけど……」

 

足立の正論にリーネは口をつぐんでしまった。そんなやり取りをハンガーでしてると…………

 

 

 

ウウウウゥゥゥゥ!!!!!

 

 

 

突如、基地にてけたたましいサイレンの音が鳴り響いた。

 

「ネウロイ!?」

 

「!」

 

リーネが反応し声を出すと、足立はサイレンを聞き顔つきが変わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「警報よ!」

 

「ネウロイが出たの!?」

 

決闘と称して飛んでいたペリーヌと宮藤。二人も基地からサイレンの音が遠くの方で鳴っていることに気がついた。すると、基地の無線から通信が入った。

 

『グリット東23地区!ネウロイを捕捉!動ける者はただちに戦闘準備を!』

 

ミーナの通信を聞くと二人が一番近いエリアに居ることが分かった。ペリーヌはすぐさま管制塔に返事をした。

 

「ミーナ中佐!それでしたら、わたくしと宮藤さんが一番近いですわ!」

 

『ペリーヌさんと宮藤さん?どうしてあなた達がそこに?』

 

「え、えっとそれは……編隊飛行の訓練を……」

 

『そんな予定は聞いてないけど……?』

 

「っ!!」

 

実銃を持ち出しての飛行訓練などと口が裂けても言えないペリーヌ。下手したら懲戒処分も免れない状態で、ペリーヌの心拍数はみるみる上昇した。

 

『まぁそれは後にするわ、それより二人はそこで待機しててちょうだい、私たちもそっちに合流します』

 

「り、了解しましたわ」

 

すぐさま怒られるのではないかとヒヤヒヤしたが、問題を後回しにされたペリーヌは通信が切れたあと、ひとまず安堵したため息が漏れた。

 

「聞きましたか?私たちはここで待機してみなさんとごうりゅ……」

 

「ペリーヌさん!私先に行ってます!」

 

「ッ!?あ、あなた今の通信を聞いて……!!」

 

宮藤はペリーヌの話を聞かずにひとりでネウロイの元へ行ってしまった。ひとりになってしまったペリーヌは終始憤慨している様子だった。

 

 

 

 

 

 

 

ひとり独断単騎で出撃してしまった宮藤。だが、震えている訳でも、後悔している様子でもなかった。足立や仲間からの成長を受け取って自信が付いているようだった。そんな中で、辺り周辺を見回しながら、ネウロイを探っていた。

 

「この辺……かな?」

 

捕捉位置周辺に到着したものの肝心のネウロイを見つけられていなかった。そんな時、一抹の不安が過った。

 

(やっぱりペリーヌさんとみんなで待ってた方が良かったかな……?)

 

戦闘区域まで来てようやく冷静になり始めた宮藤。しかし、もう後には退けない所まで来てしまっていた。

 

「ううん、大丈夫。私なら出来る、足立くんだって誉めてくれてたし」

 

不安を搔き消そうと宮藤は自分を鼓舞した。そんな時だった。雲に隠れそうな位置に、小さい黒い物体を目撃した。

 

「あれって……!!」

 

宮藤は急いでその黒い物体に近づいた。そして予想通り、それは小型ネウロイ単騎の姿だった。

 

(ネウロイ……だよね?あれなら私ひとりでも……)

 

ヒラメと同等の体長のネウロイを見て少しホッとする宮藤。小さい相手なら自分にも勝機があるとふんで、機関銃を構え引き金を引いた。

 

が、しかし

 

「っ!?安全装置が!!」

 

先ほどのペリーヌとの決闘の際に安全装置を付けたままにしてしまっていた。宮藤は急いで安全装置を解除した。

 

「よし、これで……」

 

解除したのと同時に、再びネウロイに視線を向けると驚くべき光景だった。

 

「ええっ!?」

 

ネウロイの姿が変わっていた。それもウィッチに似たような姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

「宮藤はひとりで向かったわけだな?」

 

「申し訳ありません少佐、わたくしの監督不行届で……」

 

空の上で坂本に謝罪するペリーヌ。事のあらかたを説明し、ウィッチ達は宮藤を追うように出撃した。そこには足立もいたが、なにやら険しい表情をしていた。

 

「その話は後だ、今は宮藤を追おう」

 

「……はい!」

 

坂本の命令にペリーヌは覇気のある返事をした。しかし、その後ろで心配をしてなさそうな声もあった。

 

「しかしやるねぇ、宮藤は」

 

「感心してる場合か!?命令無視に独断専行!ただではすまないぞ!」

 

ハルトマンのコメントにバルクホルンは声を荒げた。その声にリーネは心配そうな顔をしていた。

 

「……足立さん?大丈夫ですか?顔色が……」

 

宮藤の心配しつつも、横で飛行している足立の様子が明らかに変に感じたリーネ。その表情は苦しそうに感じ取れた。

 

「……大丈夫だ」

 

やせ我慢するかの如く、足立から出た言葉がそれだけだった。

 

(……なんだこれ……?ラジオみたいな……ノイズの音がだんだん大きくなってきやがる……インカムの不具合でもない……)

 

足立が怪訝な顔してる理由は、自分にしか聞こえないノイズが聞こえていたからだ。初めての事で足立は嫌な予感が止めどなく浮かんできた。

 

その時、ミーナと通信しながら一緒に追っている坂本が何かを発見し眼帯を外した。

 

「!、宮藤の他にもうひとりウィッチがいる…いや、あれはネウロイだ!!」

 

坂本の魔眼で発見したのは宮藤とウィッチのようなネウロイだった。その光景は、ネウロイの胸元のコアを宮藤が釘付けにされてそれに触れようとしていた。

 

「何をしている宮藤ッ!!そこを離れろ!!」

 

「坂本さん!?」

 

インカム越しで怒号の如く、宮藤に離れるよう命令する坂本。宮藤はその声に思わず振り返ると、坂本が銃を向けながら突っ込んでくるのを確認した。

 

「撃てッ!!撃つんだ宮藤!!!」

 

「ダメです!!このネウロイは…!!」

 

坂本は射撃するよう命令するが、宮藤は拒否をした。何を宮藤がそうさせたのか、宮藤以外は誰も分からなかった。ただひとり、足立を除いて。

 

(………声?アイツ何か言ってる…?)

 

足立のノイズはあの人型ネウロイに近づくと大きくなっていった。そしてそれは次第に、足立に語りかけているようにも聞こえてきた。

 

「惑わされるな!!そいつは人じゃない!!」

 

「違うんです!そんなことじゃ……」

 

弁明しようとする宮藤、だが坂本は話を聞こうとせず銃を構え直した。

 

「撃たぬならどけッ!!!」

 

「少佐待て!!」

 

足立の声も届かず、坂本は人型ネウロイに射撃し始めた。

 

攻撃を開始すると、ネウロイは更に上空に避け、坂本に赤いビームを放った。

 

「おのれ!!!」

 

防御のシールドを展開する坂本。いつも通り防げられるはずだった。だが攻撃を受けた瞬間、坂本は昨日の夜の出来事を思い出した。

 

(私は、飛ばねばならんのだ…)

 

「うあぁぁぁ!!!!」

 

ビームがシールドを貫通し、それが銃にも当たり爆発。そしてその爆破に坂本は巻き込まれ悲痛な叫びと共に墜落していった。

 

「少佐ッッ!!!」

 

「坂本さん!!!」

 

ストライカーが脱げ落ち、落下していく坂本をペリーヌと宮藤がキャッチするように向かった。

 

『どうしたの!?何があったの!?』

 

「坂本少佐が、ネウロイに撃たれて……」

 

『ッ!!』

 

管制塔から状況を飲み込むミーナ。それは彼女が一番聞きたくない状況だった。

 

「シールドも張っていたのに……まさか…!」

 

『バルクホルン大尉…………ネウロイを追いなさい…』

 

「しかし少佐が……」

 

『追ってッッ!!!命令よッッ!!!』

 

知りたくない事実にミーナは感情的な命令を出すしかなかった。それにバルクホルンは察し、素直に命令にしたがうことにした。

 

「…わかった!」

 

管制塔にはミーナのすすり泣くミーナの涙と声だけが大きく聞こえた。

 

「うっ……美緒……」

 

「ミーナ中佐……」

 

様子を見に来ていたエイラとサーニャはその姿を見守ることしかできなかった。

 

墜落した坂本は、宮藤とペリーヌのおかげにより落下は免れ、近くの島の砂浜で治癒魔法を行っていた。緊迫している様子、胸からの出血が激しく宮藤にも力が入り一瞬の余裕もなかった。

 

「ッ………」

 

あこがれの人物が生死を彷徨っている姿に、ペリーヌは何もできず膝から崩れ落ちてしまった。

 

「坂本さん…!目を覚ましてください…!坂本さん…!」

 

呼びかける宮藤。しかし反応は無い。神にも祈る気持ちで坂本の名前を呼ぶ。だがその場で坂本が目ますことはなかった。

 

「坂本さん!!!」

 

宮藤の声だけが響き渡った。

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