ストライクウィッチーズ 大空の傭兵の軌跡   作:sontakeda

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第11話 心強い Aパート

基地に運び込まれた坂本。その間、宮藤は常に治癒魔法を掛け続けていた。坂本をを乗せている担架に宮藤、ペリーヌ、リーネ、バルクホルンが側に寄り添っていた。

 

「少佐!坂本少佐!!」

 

意識不明の坂本の側でペリーヌは何度も名前を呼び続けた。

 

「わたくしが、わたくしが付いていますから!!返事をしてください!!」

 

しかし坂本は変わらず無反応だった。その姿に耐えきれず、宮藤の治癒魔法にすがるようにお願いした。

 

「宮藤さん!!」

 

「はぁ……はぁ・・・・!!」

 

宮藤も真剣そのもの、全力で回復に注いでいた。だが容態は変わらず、むしろ宮藤の方に異変が出始めた。全力で魔法を使い続けていたためか、その場でフラつき始めた。しまいには倒れそうにもなった。

 

「芳佳ちゃん!」

 

倒れそうになった宮藤をリーネは支えた。しかし宮藤は再び、坂本に治癒魔法を掛け続けた。

 

(坂本さん……坂本さん……坂本さん……)

 

目が覚めるまで何度も名前を思い続ける宮藤。今の自分にできることを全力でやるしかなかった。しかし、人には限界が付き物と知る。

 

「宮藤!」

 

ついには意識さえも失いそうになり、倒れそうになるところをバルクホルンに受け止められた。

 

「……は、離してください…!離して……」

 

「落ち着きなさい。宮藤さん」

 

「……ミーナ」

 

暴走しそうになった宮藤を止めたのは、ミーナだった。すると後ろから医師と看護師が坂本を手術室に運んだ。

 

「少佐……!!」

 

手術師の扉が閉められペリーンは扉の前で待つしかなかった。

 

すると、バルクホルンに支えられている宮藤が、ガクンと意識を失なってしまった。

 

「宮藤!!」

 

「芳佳ちゃん!!大丈夫!?芳佳ちゃん!!」

 

意識を失った宮藤は汗が多量にかいていた。

 

 

 

 

 

 

 

手術室前の長椅子にミーナとペリーヌは黙ったまま、手術が終わるのを待っていた。それは10分が1時間と感じる程に、心穏やかではなかった。そしてその前にある人物が現れた。

 

「少佐はどうなった?」

 

「!」

 

足立だった。ペリーヌが最初に気付き、ミーナは目を伏せながら答えた。

 

「見れば分かるでしょ……手術中よ」

 

「………魔法力の衰え、ってやつか」

 

「ッ!!」

 

足立にも分かっていた。何故坂本がシールドで防げなかったのか。そしてペリーヌもやはりと思うような悲しい表情を見せた。

 

「まぁ、んなことはどうでもいいんだけどよ」

 

「!!、どうでもいいて……アナタね……!!」

 

「人型ネウロイについて、知りたくないか?」

 

「………………」

 

足立の配慮の無い言葉選びにペリーヌが怒鳴ろうとしたとき、遮るようにミーナに問いかけた。しかしミーナは黙ったままだった。

 

「もし、あのネウロイが俺に語りかけていたって言ったら……どうする?」

 

「!!」

 

「そ、そんなことあるわけないでしょうが!!」

 

あの時のノイズ、足立にしか分からない音。その得られた成果にミーナはピクリと反応した。ペリーヌも冗談だと思い強く否定した。

 

「そんなことはあるんだよ、俺はネウロイだからな」

 

「っ!!」

 

人間ネウロイだという事実を突きつけられて、ペリーヌも言葉がつまった。

 

「正直、なんて言ってたかは分からねぇ、遠くに居たし逃げられたしな」

 

足立は両手を広げやれやれと言いたげなジェスチャーをしながら話した。

 

「けど、ひとつだけ言えることはある、あのネウロイは何かを訴えようと宮藤や俺に伝えようとしてたかもしれない」

 

「………………」

 

「み、宮藤さんに……?」

 

信じられない、ミーナとペリーヌは同じ気持ちであったが、同じネウロイである足立の言うことに妙な説得力があった。

 

「あくまで予想だけどな。だとしたら、宮藤は妙なことに首を突っ込むかもな、あの性格だと」

 

「………今はあとにしてちょうだい」

 

口を開いたミーナは、足立を突っぱねる形で言葉を返した。今は何も考えられない状態だと足立は察した。

 

「……だな、報告したいことはそれだけだ。邪魔した」

 

そう言い残し、足立はその場を去った。

 

(………宮藤さん……)

 

追い払うよう言いつけたミーナは、先程の足立の言葉に微かに頭に残った。

 

宮藤は

 

 

 

 

 

 

 

気を失った宮藤は自室のベッドで眠っていた。その様子をリーネは椅子に座り見守っていた。その時、ドアのノックする音が聞こえた。

 

「入るぞ」

 

「!、はい」

 

足立の声だと分かると、リーネは入室を許可した。

 

「聞いたぜ、魔法力を使い果たしてぶっ倒れたんだって?」

 

「はい……」

 

事情を聞いた足立は、宮藤の様子を確認するため自室に訪れた。そして確認するとリーネの横に立つと、そのまま続けてリーネがポツリと話し始めた。

 

「芳佳ちゃん………ずっと坂本少佐を治してて……自分の責任だと思って……きっと……」

 

「…………」

 

目に涙を浮かべながら、リーネは宮藤の気持ちに寄り添っていた。以前の足立との件を味わっているリーネには、痛いほど共感出来た。その気持ちに、足立は何も言わなかった。

 

「リーネ、ひとつ頼まれてくれないか?」

 

「えっ……?」

 

涙を拭うリーネに、真剣な表情をしている足立は頼み事をした。突然の事にリーネは少し驚いたが、内容を聞くとリーネは快く聞き入れた。

そして二人が話していると、宮藤の身体がピクリと動きだし、目を覚ましはじめた。

 

「………………」

 

「芳佳ちゃん!!」

 

「………リーネちゃん……?」

 

意識がだんだんハッキリしてきた宮藤は側にいるリーネを認識し始めた。すると、先ほどまでの記憶が蘇る。

 

「そうだ!坂本さんは…!?」

 

「………………」

 

「リーネちゃん教えて!坂本さんは!?」

 

「落ち着け宮藤」

 

「あ……足立くん…………」

 

取り乱した宮藤を足立は冷静になだめた。すると、すぐに我に返った宮藤。

 

「芳佳ちゃん、坂本少佐は今手術中なの」

 

「手術…………」

 

そう聞いて宮藤は先ほどまでの戦闘を思い返し始めると、涙が溢れてきた。

 

「わたしが……わたしのせいで坂本さんが……うっ……」

 

「芳佳ちゃんのせいじゃないよ!」

 

涙ぐむ宮藤を、強く否定するリーネ。

 

「私も足立さんに似たような事をしちゃったから分かるの、自分を強く責めちゃダメだよ……」

 

「リーネちゃん……」

 

以前、足立に誤射してしまったリーネの事を思い出す宮藤。本人からの言葉の重みは普段より感じ取れた。

 

「なんだ案外元気そうじゃねえか」

 

「足立くん……」

 

どういう様子を見たらそんな言葉が出てくるのか、足立の楽観的な態度を見て宮藤は少し気が楽に感じた。

 

「だったらすることはひとつだ」

 

「すること?」

 

「大人しく寝とけ、手術が終わるまでは」

 

「そ、そんな!ゆっくり寝てるなんて……!!」

 

「魔法力も無いのにどう助けるってんだ?お前の武器はそうじゃねぇだろ」

 

「……………」

 

足立の言う通り、魔法力無しの宮藤では坂本を救うことはできない。その現実に宮藤は歯がゆかった。

 

「少佐を助けたかったら、寝てまたぶっ倒れるまで治癒してたらいいだろ」

 

「…………うん」

 

「ま、また無茶したらダメだよ!」

 

「で、でも………」

 

冗談ぽいような発言に宮藤は本気でやろうとしてるところ、リーネは焦りながらも止める。しかし当の本人は本気の様子だった。

 

「……じゃあ俺は行く」

 

「あ……足立くん!」

 

足立は部屋から去ろうと、ドアノブに手をかけるのと同時に、宮藤に呼び止められた。

 

「わたし………あの時……ネウロイと……」

 

「分かり合えたって言いたいのか?」

 

「!!、う……うん……」

 

振り向きもせず、足立は宮藤の言いたいことを言い当てた。その発言に宮藤は心臓が跳ね上がるのを感じた。

 

「だとしたら証拠が必要だな」

 

「証……拠?」

 

「俺以外にそれを言ってみろ。新米ウィッチのお前が口で言ったって、誰も相手にしてくれないさ」

 

「そ……そんなことないよ……」

 

足立の言う通り、宮藤は新米、証拠が無ければ只の戯言で片付けられる。そう予想する足立に宮藤も説得力があるように感じ、強くは否定出来なかった。

 

しかし、足立はこう続けた。

 

「俺には何か……伝えようとしたと思ったけどな」

 

「ッ!!、足立くん!それって……」

 

そう言い残して足立は部屋を後にした。最後の足立の言葉に宮藤の考えは確信に変わった。

 

「芳佳ちゃん……」

 

(やっぱり!足立くんもそう思ってたんだ……!)

 

心配の眼差しをリーネは向けるも、宮藤は何かを決心した顔つきになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

日が落ちようとしていた時、手術は無事に終了し坂本は病室のベッドにて安静していた。その側にはペリーヌもおり、片時も離さない状態で椅子に座りながら容態を見ていた。

それもそのはず、手術が成功しても医者からは今夜が山場と宣告されているのだから。ペリーヌが離れないのもうなずける。

 

「少佐…………」

 

ペリーヌは祈り続けた。藁にもすがるような気持ちで祈り続けた。すると、部屋に入ってきた音がして、顔を上げるとあの顔だった。

 

「坂本さん………」

 

入ってきたのは宮藤と一緒に付き添っているリーネの姿だった。そして宮藤の顔を見るなり、ペリーヌは先程の顔面蒼白から一気に怒りが込み上げるような憤怒の表情に変わりながら、宮藤の前に立つとその顔に平手打ちをした。

 

「ッ!!」

 

部屋の中では平手打ちされた音だけが響いた。瞬間の静寂、何をされたのか一瞬の分からなかった宮藤。しかし、頬の熱を感じ取れると何をされたのかようやく理解し始めた。

 

「アナタのせいよ……」

 

吐き出された言葉には怒りが混じっていた。しかし、宮藤は頬を押さえながら何も言い返さなかった。

 

「なにか言いなさいよ!!今までのうのうと寝ていたんでしょ!!」

 

「芳佳ちゃんは魔法力を使い果たして……!!」

 

「アナタは黙りさない!」

 

「黙りません!!芳佳ちゃんは全力で治療していたんです!!」

 

「そんなの!当たり前です!」

 

宮藤の代わりに言い返すリーネ。しかしペリーヌの怒りは収まりきれない感情だった。すると、二人が言い合いをしていると、宮藤はふたりを見向きもせず、坂本の側に駆け寄るとすぐに治癒魔法を開始した。

 

「坂本さん……!」

 

少佐を助けたかったら寝てまたぶっ倒れるまで治癒してたらいいだろ。

 

(ありがとう……足立くん……)

 

昼間に休んでいたおかげで、魔法力もすっかり回復していた。足立に言われた事を思い出しながら、自分に出来ること、自分にしか坂本を救えないと鼓舞するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「少佐大丈夫かな……」

 

食堂に集まっていたルッキーニは心配そうな表情でポツリと言った。

 

「待つしかないだろ、いいからこれを食え」

 

一緒に居たシャーリーが篭から取り出したのは、肉の加工品の缶詰めだった。

 

「うぇ~……またこれ~?」

 

「贅沢言うな」

 

不満が漏れるルッキーニにシャーリーはまるで姉の風格で返した。

 

「でも芳佳ちゃん……命令違反して大丈夫なんでしょうか……?」

 

同じテーブルに座っていたサーニャとエイラ。心配するサーニャの隣でエイラはタロットカードを並べ何かを占っていた。

 

「あ……」

 

「どうしたの?」

 

「宮藤占ってタ」

 

「なんて出たの?」

 

サーニャに言われ、エイラは手に取ったタロットカードを3人に見せた。

 

「……死神」

 

(縁起でもない………)

 

エイラ以外の3人は同時にそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

一方、ミーナの執務室にはバルクホルン、ハルトマン、ミーナの3人で宮藤の処遇について考えていた。

 

「独断先行、命令違反、それ上官を負傷させて、敵を取り逃すとは……重罪だな」

 

「えっ?もしかして軍法会議でバーン?」

 

「そこまで言ってない」

 

「だよねー、それだったら私も何回も死んでるよねー」

 

「…………」

 

バルクホルンやミーナとは対照的に、ハルトマンはノリが軽く、あまり深く受け止めていなかった。そしてミーナは心ここにあらずの状態、坂本の状態が気になり「死」という言葉にも反応してしまうほどだった。

 

「エーリカ……お前はもうちょっと真剣にだな…」

 

バルクホルンが耐えきれずハルトマンに説教を説こうしたその時、ミーナが口を開いた。

 

「判断は、坂本少佐が目覚めてからにします」

 

「はーい!」

 

「…甘いぞ、ミーナ」

 

「……………」

 

元気に返事にするハルトマンに、バルクホルンはミーナの対応に少々不満があるように感じた。しかしミーナは思い詰めたままの表情だった。

 

 

 

 

 

 

 

夜が更け、坂本の容態は回復せず。見守るリーネにペリーヌ、魔法を掛け続ける宮藤。心拍を計る機械の音が一定で鳴り続けていたその時、心拍に異常な警告音が鳴り響いた。

 

「芳佳ちゃん!心拍数が!!」

 

「坂本さん!!」

 

「少佐!!しっかりしてください!!」

 

声をかけ続けれる二人。坂本の顔は苦悶の表情をしていた。

 

「坂本さん!!」

 

「私、先生呼んでくる!!」

 

緊迫した状況だと判断したリーネは、医師を呼びに部屋を出ていった。

 

「どうして…こんなに魔法をかけているのに……」

 

必死に魔法を掛け続ける宮藤、しかしまるで効いていないように感じ、自分のしている事が無駄なのではないかと不安が襲いかかった。

 

「こんなとき……おばあちゃんやお母さんが居てくれたら……」

 

弱音を吐く宮藤を見たペリーヌは喝を入れた。

 

「貴方がやらなくてどうするの!!お願い…少佐を助けて……貴方にしかできないの……宮藤芳佳!!」

 

「………」

 

ペリーヌの言葉に打たれた宮藤はハッとした表情をし、ペリーヌと目を合わせると頷いた。

 

「わたしだけ………」

 

涙目の宮藤は苦しんでいる坂本を見て覚悟を決めた様子だった。

 

「そうだ、私にしかできないんだ……私しか」

 

「…そうよ!」

 

後押しするペリーヌに宮藤は目を閉じ、集中し始めると再び治癒魔法を開始した。

 

「落ち着いて……集中して……」

 

心を落ち着かせ、先程よりも集中力を限界まで上げる宮藤。すると、魔法の光が先程より大きくなり、部屋を包みこんだ。

 

その後、坂本の容態を確認しに来た医師とリーネ、そして事態を聞きつけたミーナ。3人が見たものは、安定した心拍の計測音と坂本のベッドにもたれ掛かって寝てしまっている宮藤とペリーヌの姿だった。その姿にミーナとリーネはホッとした表情だった。

 

「もう大丈夫です。この子の魔法のおかげです」

 

そう言って医師は部屋から退出した。

 

「美緒……」

 

「………………」

 

名前を呼ぶミーナ、すると坂本の目がゆっくりと開かれ、ミーナの顔に向いた。

 

ふたりはしばらく見つめたままだった。坂本はまるで何かを伝える目をしていた。覚悟だった。その目にミーナは何を言っても無駄だと悟り、言葉を漏らした。

 

「………それでも、飛ぶのね……」

 

その意志を変えてほしかった。唯一の親友であり仲間である坂本には戦ってほしくないと何度も願ったが、変わらなかった。ミーナはその運命を受け入れる事にした。

 

気がつくと、外は朝日が登り始めていた。宮藤たちはそのままの状態で夜を明けた。

 

「ん…………」

 

宮藤の目に朝日がかかると目覚め始めた。昨夜の事をよく覚えておらず、坂本のほうを見た。最初こそ気づかなかったものの、だんだんと頭がハッキリし始めると、そこには起き上がっている坂本の姿があった。

 

「あ!!、あぁ!!坂本さ…」

 

「しー……」

 

思わず大声が漏れ出す宮藤に坂本は指を立てて静かにするよう伝えた。すると宮藤は自分の口を手で抑える仕草をした。

 

そのまま坂本はある方向に指を指した。その方向に宮藤は目で追っていくと長イスにペリーヌとリーネが肩で支え合って寝息を立ててしまっている様子だった。

 

「………良かった」

 

眼帯を付けていない坂本の顔をみて宮藤は言った。

 

「宮藤、顔色が悪いぞ」

 

「えっ……」

 

「ありがとう」

 

「………………」

 

冗談っぽいような言い回しに、最後には感謝をする坂本。ドキっとした宮藤だが、お礼を言われ少し照れくさそうな表情をしていた。

 

「………なぜ撃たなかった?」

 

坂本はあの日の場所を見るかのように、窓の海に顔を向け話始めた。

 

「あの時、なぜお前はネウロイを撃たなかった?」

 

「………撃てなかったんです」

 

拳に力が入る宮藤。しかしその時に、坂本は宮藤の腕を掴み、自分の側に寄せた。

 

「人の形だからか?あれはお前を誘い込む罠だ」

 

宮藤の目を見ながら、坂本は言い聞かした。

 

「でも……わたしあの時……何か感じたんです」

 

「ネウロイは……敵だ」

 

「…………………」

 

力強い坂本の言葉に宮藤は何も言えなかった。むしろ信じてもらえなかった事にショックを受けてしまったのかもしれない。

 

そんな出来事を抱えながら宮藤は部屋を後にし、足取りが重くなりながらもミーナの執務室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

執務室に入ると、そこは重苦しく張り詰めた空気が漂っていて、バルクホルン、ハルトマンに挟まれた宮藤が立っていた。そして眼の前の席にはあの優しそうな顔とは真逆な表情をしているミーナが座っていた。

 

「宮藤軍曹、貴方は独断専行の上、上官命令を無視、これは重大な軍規違反です」

 

「はい……」

 

淡々と読み上げられるミーナの声に、宮藤は普段と違う雰囲気に飲み込まれ、返事に覇気が無かった。

 

「この部隊における唯一の司法執行官として質問します。貴方は、軍法会議を望みますか?」

 

「…………あ、あの………」

 

「返答が無いので、軍法会議は望まないと判断しました」

 

「………………」

 

何か言いたげな宮藤であったが、毅然としたミーナの対応に何も言えなかった。

 

「今回の命令違反に対し、勤務、食事、衛生上やむを得ない場合を除き、十日間の自室禁錮を命じます。意義は?」

 

「あの………わたしネウロイと………」

 

「改めて聞きます、意義は?」

 

「………聞いて下さい!!」

 

頑なに宮藤の話を聞こうとしないミーナに、宮藤は大声が出てしまった。しかし、ミーナはそれを圧で言わせないかの如く、書類を机の上にバンと大きな音を立てて置いた。そして再びこの質問をした。

 

「………意義は?」

 

「…………………ありません」

 

「退出してよろしい」

 

(……ごめんなさい宮藤さん……貴方のためなの……)

 

何度言っても駄目だと悟り、先に折れてしまった宮藤。ミーナは変わらず、毅然とした態度で通していた。しかし、心の内は宮藤の身を心配してのこと。もし、軍法会議を開催されたら、最悪極刑もありえる話。それを防ぐための策だった。

 

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