ストライクウィッチーズ 大空の傭兵の軌跡   作:sontakeda

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第13話 最終話 未来への約束

「メッセージ………?」

 

「一体どういうことなの?」

 

何の話なのか、バルクホルンとミーナには皆目検討もつかなかった。しかし当の足立は楽しそうな顔をしていた。

 

「あぁアンタらにはまだ言ってなかったな、俺をネウロイにしたのは俺の親父だ」

 

「なんですって!?」

 

「やっぱりそうだったの!?」

 

「ネウロイの巣で確認済だ」

 

前にハルトハマンが言っていた予想が当たっており、3人は予想通り驚いた。そこで当然、バルクホルンはある疑問が浮かんだ。

 

「だとしたらなぜ……ネウロイなんかに……」

 

「俺もそれが謎だったんだが、オッサンの話を聞いてようやくその謎が解けた」

 

「それが宗次郎博士からのメッセージ……」

 

目線をマロニーに向けながら足立は話した。話の流れにミーナはようやく納得がいった。

 

「メッセージはこうだ」

 

足立はウォーロックを指しながら言った。

 

「『ウォーロックを止めろ』」

 

「ウォーロックを……止める…?」

 

ミーナはいまいちピンと来なかった。ミーナだけじゃなく他ふたりも同じことを思った。

 

「ウォーロックって足立のお父さんが考えたんでしょ?なんでそんな……」

 

「順番に話してやるよ」

 

ハルトハマン疑問に足立は説明を始めた。

 

「まず、『なんでコアを持っているのか』『なんでウォーロックを作ったか』なんてことはこの際どうでもいい、てか分かんねえしな」

 

分からないことは一切切り捨てる形で話を進め始めた。

 

「問題なのは、研究データを盗まれた後の事だ」

 

「盗まれた後?」

 

ミーナは眉間にしわを寄せた。

 

「データを盗んだ、こんなの欲しがるのは政府か軍、しかも盗んだってことは悪意があった証拠、親父はその事に気づいてすぐに悪用される前に対策を打つ予定だったはずだ」

 

「ということは……それが、コアを持ち出したってこと?」

 

「あぁ、けどそこに想定外が起きた」

 

「ネウロイによる事故……か」

 

足立からの話の流れで聞いたことがある昔話。ネウロイの攻撃により宗次郎は瀕死、当の進也は息絶えた状態となっていた。

 

「奇跡的に生きてた親父、既に死んでる俺、そして手にはネウロイのコア、親父は咄嗟的に思いついたはずだ」

 

「も、もしかして……」

 

ミーナは全てを察した。

 

「あぁ、俺をネウロイにさせてウォーロック計画を破綻させるってな」

 

『………………』

 

一同は黙ってしまった。そんなことの為にネウロイにさせられてしまったのかと、みなは思ってしまった。

 

「一歩間違えれば人類滅亡するかもしれねぇのに……アホすぎて怒る気にもなれねぇ、むしろ涙が出るくらい笑えるわ……クク……」

 

足立本人は右手で顔を覆いながらホントに笑った声をしていた。自分がネウロイされた理由が下らなすぎたのか、呆れたような、自分でも分からない感情が溢れそうになった。

 

バルクホルンもハルトマンも声を掛けられなかった。

 

その時、ただひとりだけ、別の視点で考えていた。

 

「………そうかもしれない……けれど足立君、ホントは別の理由もあったんじゃないかしら」

 

「………あぁ?」

 

指摘したのはミーナだった。その指摘に足立は睨むような、でも落ち着いた声で聞き返した声を発した。

 

「足立君に生きていてほしい、たったひとりの家族だから、息子だから……足立君を生き返らせたんじゃないかしら」

 

ミーナは足立の推測から派生するように、親の視点に立って話し始めた。

 

「もし計画を破綻させるだけなら、博士自身がネウロイになれば済む問題、親だから……貴方を選んだじゃないかしら……」

 

「……………………」

 

これはミーナの推測、真実かどうかなんて分からない。

 

けど、足立にはなんとなく、そうかもしれない、そうであってほしいと無意識に願っていたかもしれない。無言の足立は顔を伏せて考えた。

 

 

 

 

 

 

 

「進也……!!クソ…!!」

 

家はボロボロ、周りは火の海、そして瀕死でうつ伏せとなっている宗次郎と、目の前には同じくうつ伏せで血の海となっている進也だった。

 

「どうして……どうして俺だけ………」

 

宗次郎は悔やんだ。自分ではなくなぜ息子になのか。悔やんでも悔やみきれなかった。

 

(俺も生きていられるかどうか……ウォーロックのことも気がかりだが………この状態じゃ……)

 

この窮地を脱出する術を模索するが、自分もほとんど動けず、火が迫り来るのも時間の問題だった。その時、ふいにポケットにある物を思い出した。

 

「!」

 

(ネウロイのコア………)

 

自分の研究室から持ち出したネウロイのコア。自身の研究結果によると、コアにはとてつもない生命エネルギーが宿っていることが判明していた。そしてそれは死者をも復活させるかもしれないと、宗次郎は考えいた。

 

「なに考えてるんだ俺は……そんなこと……」

 

倫理から逸脱してる考え、しかし親としての葛藤が宗次郎に訴えてくる。

 

「だが……もし……どっちかが生き残るなら……」

 

究極の選択だった。いや、生き返らせるだけなのらばもう決まっていた。進也だった。ただ、生き返った後の事を考えると胸が苦しくなった。

 

「すまねえな………進也……悪い父親で……けどよ……怒るかもしれねえけど……お前に託す……」

 

宗次郎這いつくばりながらも、コアを進也の押し転がした。

 

(生きてくれ進也………ウォーロックを……そして人類を……ウィッチを助けてやってくれ……)

 

宗次郎は自分の意思を、息子の進也に託し、炎に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………かもな」

 

顔を伏せながら腰に手をつき、ため息混じり声で足立はミーナの推測に同意した。その様子にミーナ、バルクホルン、ハルトマンはホッとした表情になった。

 

「ならば、ここで立ち止まってる暇なんてないな」

 

バルクホルンがマロニーを縛りつけるため、コードをロープ代わりにしようとしていたその時、ハルトマンは窓辺からあるもの発見した。

 

「!、大変!!赤城が沈みそうだよ!!」

 

赤城の惨状を今確認したのであった。

 

「あっ!ウォーロックとウィッチが戦ってる!誰なんだぁ?」

 

「……宮藤さんだわ!」

 

「!!」

 

「宮藤が!?」

 

ミーナの固有魔法が発動すると、戦況の把握ができた。その状態に足立とバルクホルンは耳を疑った。

 

「ありえん!お前たちのユニットは全てをハンガーに封印されているはずだ」

 

マロニーも信じられないという顔で説明するが、ミーナはストライカーの所有者までも探し当てた。

 

「!!、このユニットの波形は……美緒のストライカー……!!」

 

「ウッソー!!やるなぁ宮藤ー!!」

 

坂本のストライカーとわかるとミーナは出撃するつもりだったのかと呆れたような悲しげな表情に一瞬なった。そして相対的にハルトマンは宮藤の行動力に感心していたのであった。

 

そして、その話を聞いて足立は管制塔から一刻も早く抜け出すよう走り出していた。

 

「足立君!!」

 

その行動にミーナは呼び止めた。だが足立は止まらず、続けて言った。

 

「先に行って準備してる!!お前たちも急げ!!」

 

「お、おい待て足立!!」

 

「あー、ここにも宮藤好きが居たっけなぁ、にしし」

 

思わず慌ててしまったバルクホルン、そしてハルトマンは変わらずのからかいを独り言のように言い放ち笑った。

 

 

 

 

 

 

 

一方、基地の離れた場所にて、リーネは車から降りており、沈む赤城と宮藤がウォーロックと戦っている姿をただただ心配そうに見守ることしかできていなかった。

 

すると、運転手の男がリーネに問いた。

 

「あれはお友達……ですか?」

 

「ええ……私の友達……一番大切な友達………」

 

自分に言い聞かせるように出た言葉。大切な友達が戦っている、自分にできることをしている、その事に気づかせ思い出させてくれた宮藤を見て、リーネも今自分にできることを再認識した。すると、リーネは基地に向かって走りだしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまりだ、足立と宮藤がネウロイに接触しようとしたから、奴らは慌ててしっぽをだしたというわけさ、分かるだろ?ミーナ」

 

「うん、はいはい」

 

「だろ?エーリカ」

 

「はぁ……もう私の知ってるトゥルーデじゃない」

 

外から格納庫に向かって走っていたカールスラント3人組。バルクホルンは移動しながら宮藤と足立の貢献をくどくどと説いていたみたいだ。ミーナはにこやかな表情で聞き流していたが、ハルトマンは珍しく呆れたような顔になっていた。

 

そして格納庫前に着くと、思わぬふたりが塞がれている格納庫前に立っていた。

 

「エイラさん!サーニャさん!」

 

「あっ!」

 

ふたりがミーナに呼ばれたことに気づくと、エイラはしまったと言いそうな表情になった。

 

「お前たち……なんで戻ってきたんだ?」

 

「あ……えっと……あの……れ、列車がさ!ほら、ふたりとも寝てたら始発まで戻ってきちゃって……仕方ないからここの様子でも見ようカナーって……なぁサーニャ?」

 

バルクホルンの質問に、エイラは指でなにかのジェスチャーをしながら理由を考えてたが、しどろもどろな説明になってしまい、サーニャに同意を求めた。すると、サーニャはこう答えた。

 

「今……芳佳ちゃんが戦っている……私たち……芳佳ちゃんを助けにきた」

 

「ああぁぁぁ!サーニャおぃ……」

 

エイラはバラしてほしくなさそうな声を上げるが、何も悪いことをしてなさそうな表情で正直に答えるサーニャ。

 

「素直じゃないなぁ」

 

「私たちも同じよ」

 

「ち、違うぞ!!私は違うぞ!!」

 

ハルトマンに素直じゃないと言われるが、照れを必死に隠すバルクホルンも同類であった。

 

「そんなことよりさ、というか……足立は?」

 

「そういえば……先に行ってると言っていたな」

 

バルクホルンは周りをぐるっと見渡すも、先を走っていた足立の姿は無かった。

 

「ねぇ、ふたりは足立君を見てない?」

 

「足立?見てないゾ」

 

「ここには来てないです」

 

「そう……とりあえず始めましょうか」

 

誰も足立の姿を見ていない、考えてもしょうがないと判断したミーナは作戦を進めた。

 

格納庫前には鉄骨が何本も刺さっており、重機でも使わない限り退かすことなど不可能な状態だった。しかし、そんな事を可能にするのがウィッチだ。

 

バルクホルンは目を閉じ、筋力強化の固有魔法を発動させた。そして目を開け、一本の鉄骨の前に立った。すると、両腕で鉄骨を抱えるように掴み始め、魔法力を鉄骨にも伝えさせた。

 

「くぅぅぅぅっっ!!!!」

 

持ち上げようとバルクホルンの唸り声が漏れる。すると驚異的なことに鉄骨が浮き上がり始めた。

 

「うおおおおりゃああああぁぁぁッッ!!!!」

 

次の瞬間、鉄骨は棒切れのように滑走路に投げ飛ばしてしまった。

 

「ハァ……ハァ……」

 

『おぉ!!』

 

驚異的な力を見せつけたバルクホルンに歓声が上がるが、当の本人は満身創痍な状態だった。

 

そして一本の鉄骨が無くなったことにより、これでストライカーが取り出せるようになった。しかし、一本空いた隙間から、プロペラ音とエンジン音の轟音と共に風を切り裂くような何かがミーナたちの前から飛び出していった。

 

「わぁぁッ!!!」

 

「なんだなんだ!?」

 

「あれは……足立君!?」

 

思わず身体を伏せてしまったエイラとサーニャ。エイラの悲鳴が上がると、ハルトマンが飛び出していった物体を追うように視線を移動させた。そしてミーナが先に気づいた、ストライカーボードで全速力で向かう足立の姿だった。

 

「待ってろ……宮藤ッ……!!」

 

戦闘している宮藤に全力で向かうが、足立の顔色は悪く、息も切れている状態だった。だが、当の本人はそんなことは気にしていられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悪戦苦闘する宮藤。なんとかウォーロックと互角に渡り合えているが、攻めあぐねている様子。宮藤の頭には、ネウロイの巣の時のように和解できるのではと甘い考えがよぎる。しかし攻撃は激化する一方、和解など到底無理に見えたその時。

 

「えっ!?」

 

ウォーロックの動きが止まると、中身のコアを宮藤に見せつけてきた。そう、まさにあの人型ネウロイと同じような行動をしてきた。その様子に宮藤は驚いた。

 

「………………」

 

銃を下ろし、コアに導かれるように近づいた。しかし………。

 

「ッ!!!」

 

それは罠だった。ウォーロックの両手が赤く光始めたと思ったら、至近距離で宮藤にビームを浴びせたのであった。そう、ウォーロックは過去の別個体から学習し、こうすれば近づくと分かっていたのだった。

 

かろうじてシールドで防ぎきれたが、宮藤は確信に変わった顔になった。

 

「違う……これはあのネウロイじゃない!!」

 

再び機関銃をウォーロックに突きつけた。

 

「これは………敵なんだ!!」

 

宮藤は再認識した。あの時のネウロイではなく、眼の前にいるのは倒すべき敵だと分かった。すると、ウォーロックが赤城に攻撃しようとすると、その背後から宮藤はウォーロックに鉛の雨を浴びせた。ウォーロックはたまらず旋回するが宮藤もそれに付いていった。

 

その戦闘の様子をペリーヌと坂本は見届けていた。

 

「すごい………」

 

「あぁ……あの化け物と互角の戦いとは……」

 

ついこないだまで新人だった宮藤の戦いぶりに感心するふたり。しかしその時、ウォーロックのビームの流れ弾が赤城に直撃した。

 

「っああぁぁぁ!!!!」

 

直撃した際の爆発に艦は激しく揺れ、ペリーヌの悲鳴が響く。沈みかかってる故、坂本とペリーヌは海に投げ出されそうになった。

 

「あっ!!!」

 

落ちそうになっているふたりを助けたいがウォーロックがそれを阻むように宮藤にビーム攻撃を浴びせてくる。迂回しようが躱そうとするが、どうにも近づけさせないようにしていた。

 

かろうじて艦の縁に片手でしがみついているペリーヌ。そしてもう片方の手では坂本の手を握っていた。

 

「くっ……!!」

 

「もういいペリーヌ!!手を離すんだ!!」

 

「っ!!そ……その命令だけは……聞けません!!」

 

「ペリーヌ……!!」

 

坂本の命令には絶対聞くペリーヌだったが、初めて坂本の命令に背いた。その意外な行動に坂本は心を打たれた。

 

「坂本さん!!ペリーヌさん!!」

 

早く助けに行きたいが、ウォーロックの攻撃でやはり近づけなかった。しかし、その時だった。

 

宮藤の横を飛行機のプロペラ音と共に通り抜けて行った。

 

「あれは……!?ルッキーニちゃん!?」

 

「ルッキーニ!!」

 

「じゃんじゃじゃーん!!」

 

シャーリが名前を呼ぶと、飛行機の二番席にはルッキーニが魔力を解放して立ち上がっていた。すると、ウォーロックは標的をシャーリーたちに変更しビームの雨を浴びせた。しかしシャーリーの操縦テクニックでなんとか躱していた。

 

だが、ビームの流れ弾が赤城に直撃し、再び艦が大きく揺れた。

 

「!!、きゃあああぁぁぁ!!!」

 

揺れた衝撃でペリーヌは手を滑らせてしまい坂本と共に落下してしまった。響き渡るペリーヌの悲鳴、だが坂本は咄嗟にペリーヌを守るように抱きしめた。そのまま海に叩きつけられるとふたりは覚悟した。

 

そう思った瞬間、ふたりの落下する地点にシャーリーたちの飛行機が通過した。

 

「よっしゃああああ!!ナイスキャッチルッキーニ!!」

 

「おっかえり~!」

 

なんとも無茶な救出で、落下するふたりをルッキーニがキャッチしたのだ。

 

「やった!!」

 

救出した姿を見て宮藤は歓喜した。だがそれもつかの間、直様ウォーロックの攻撃が襲ってきそうであった。

 

「芳佳!!危ない!!」

 

「!!」

 

ルッキーニの警告で振り向くと、ウォーロックはビームを溜めている構えだった。その姿に宮藤は身構えた、しかし、とある声が海上に響き渡った。

 

「宮藤ぃぃぃぃぃッッ!!!!」

 

「足立くん!?」

 

次の瞬間、ミサイル的な速度で突っ込んできた足立、そのままストライカーボードの底面をウォーロックにぶつけた。その衝撃でウォーロックは狙いが外れ、ビームが明後日の方向に放たれ、ウォーロックは体勢を立て直すためすぐさまその場を離れた。

 

「シンヤだ!!」

 

「アイツ!!元気そうじゃないか!!」

 

ルッキーニとシャーリーも仲間の登場に歓喜した。そして飛行機はその場を後にし、ブルタニア基地に戻って行った。

 

「み……宮藤……大……丈夫か……?」

 

「私は大丈夫だけど……足立くんが…!それに顔色もすごく悪そうだよ!」

 

「へ……へへ……んなことより……」

 

息が絶え絶えで汗も尋常じゃないほど吹き出ていた足立。その姿に宮藤は心配を隠しきれなかった。しかし足立は気にせず話を続けた。

 

「アレ……お前ひとりで食い止めてたのか?」

 

「えっ…?う、うん……」

 

「スゲェじゃねえか!!」

 

「えっ!?……あ、ありがとう……」

 

ウォーロックを食い止めていたことを急に褒めだす足立。あまりにも真っ直ぐな褒め方に宮藤も一瞬驚き、次には頬を赤く染めながらお礼を言った。

 

「……後は俺に任せろ」

 

「えっ…?」

 

宮藤に背中を向け抜刀する足立。その意味に宮藤は頭が追いつかなかった。

 

「コイツは……親父と俺の問題だ」

 

「足立くんのお父さん……?」

 

どういうことなのか、宮藤には理解できなかった。

 

「………説明は省くが、親父は……ウォーロックを止めてほしくて俺をネウロイにさせたんだ」

 

「!!」

 

衝撃的な事実に宮藤は驚きを隠せなかった。いろいろ聞きたいことはあるはずだが、宮藤は考えていた。

 

「………………」

 

「だからお前は後ろで……」

 

「足立くん!!」

 

「!」

 

唐突に名前を呼ばれハッとする足立。振り向くと宮藤は再び、艦上でもした覚悟を決めた顔になっていた。

 

「私も最後まで戦う!」

 

「!」

 

「足立くんのお父さんの夢、一緒に叶えようよ!!」

 

「…………………」

 

何度も見てきたこのお節介なやりとり。いくら言っても聞かない宮藤の姿を思い出していた。そして、その姿に足立は何度も救われてきた事も事実。足立はいつもの悪そうな笑顔に戻り、相応の返しをした。

 

「ハッ!だったら速攻で終わらすぞ!!宮藤!!」

 

「うん!!」

 

ふたりが戦闘体勢に構えるとウォーロックも距離を取り、戦闘態勢に入っていた。過去の因縁の決着をつけるための戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ……!ハッ……!」

 

(待ってて……待ってて芳佳ちゃん……!!いま行くから……!!)

 

ブリタニア基地に着くなり、リーネは駆け出していた。宮藤の戦いぶりを見て思い、自分も出撃すると決めたのであった。

 

「リーネーーー!!」

 

「あ……あぁ……!!」

 

滑走路に辿り着くと、シャーリーたちが乗っている飛行機が到着していたのであった。そしてルッキーニはリーネに手を振りながら名前を呼んだ。その瞬間、リーネは自分だけじゃなかったと心から喜び、思わず笑顔になってしまった。

 

滑走路の入口には既にストライカーを履いて待っているメンバーたちが迎えていた。

 

「あぁ…!」

 

「きたきた!!」

 

サーニャとハルトマンもリーネの到着に喜んだ。

 

「遅いぞ……リネット・ビショップ」

 

「おかえり、貴方で最後よ」

 

「!、はい!!」

 

いつものバルクホルンとは裏腹に、優しい声で冗談めかした。そして最後のひとりが集まったということをミーナは言い回し、リーネもそれを理解した。そして、覇気のある返事を返し、全員が宮藤と足立の加勢に向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ウォーロックとの死闘を繰り広げてる宮藤たち。

 

「オラアァァッッ!!」

 

ウォーロックのビームの嵐を掻い潜りながらなんとか切りつけている足立。しかし、ダメージどころか傷をつけても即再生されてしまいほとんど意味をなしてなかった。

 

「クッソ!!」

 

「足立くん!!」

 

足立のサポートに入ろうとすると、ビームをシールドで防ぐ宮藤。

 

「もっかい行くぞ!!」

 

「うん!!」

 

ふたりは諦めず、攻めることをためらわなかった。体力も限界に近づきつつあるふたり。その戦っている姿を、救命ボートに乗っている艦長の杉田は思った

 

「アレは……」

 

「ウィッチと……あれは一体……」

 

隣にいる副長の男が、宮藤と一緒に戦っている人物に疑問を持った。

 

「……ネウロイ」

 

「えっ!?あれが!?」

 

「だが……紛れもなく、私たちの味方だ」

 

杉田艦長はふたりの戦いぶりを見て、自分なりの判断をした。ネウロイと分かってはいても、自分たちのために戦ってくれていると。

 

「ハァ……ハァ……」

 

(クッソ……このままじゃ……)

 

肩で息をし始めた宮藤。足立も顔が険しく、息切れが激しくなっていた。自分たちの攻撃が通用しない事を何度も突きつけられて心が折れそうになっていた。

 

「………しゃあねぇ……コイツが最後だな……」

 

「えっ……?」

 

足立はひとつ、作戦を思いついた。しかし、それは上手くいく自信が無かったために渋っていたが、そんな場合じゃないと判断した。

 

「宮藤、お前と出会った時にやった作戦、覚えてるか?」

 

「!、う……うん」

 

最初にやった作戦。合図と共に自分の足元を撃ち、足立が仕留める、という初めてのコンビネーションの話だった。宮藤は唐突に聞かれて焦ったがすぐに思い出した。

 

「あれやるぞ……ただし」

 

「……?」

 

「躊躇なく撃て、俺を信じろ」

 

「!、分かった!!」

 

以前では信じるなと言っていた男が、今度は力強く自分を信じろと言ってきた。いつの間にか、宮藤が足立を信じるように、足立も宮藤を信頼するようになった。その変化に宮藤も力強い返事を返した。

 

「それじゃ……行くぜ!」

 

「うんッ!!」

 

足立の掛け声と共にふたりはウォーロックに突進して行った。それを見たウォーロックもすかさずビーム砲を繰り出すが、足立はすんでのところで回避し、宮藤も足立の後ろから同じような軌道で回避していた。

 

(お前なら付いて来るよなぁ……宮藤……!!)

 

足立の信頼通り、宮藤は離れずしっかり付いてきていた。宮藤も、足立を追いながらもビームは視界に入れる程度で余裕が生まれていた。

 

そして、ウォーロックを目の前にした時、足立から声が上がった。

 

「見下ろすぞ!!!宮藤!!!」

 

「!!」

 

足立の指示に宮藤は一瞬で理解した。ウォーロックの目の前で上昇するのだとそう思った。宮藤は足立の言うとおり、ウォーロックの目の前で上昇する軌道を描いた。しかし次の瞬間。

 

「えっ!?」

 

宮藤が上昇するのとは逆に、足立はウォーロックの下に潜り込むように下降した。まるで上下で挟むかのような形、そして宮藤はウォーロックに見下ろすように銃を構えるも、ある問題が生まれた。

 

(このままじゃ……下にいる足立くんも一緒に……!!)

 

宮藤は躊躇ってしまった。このまま撃てば足立が巻き添えをくらってしまうと。しかし、そんな心配する宮藤とは裏腹に、足立の顔が目に入った。その顔は悪く、絶対に何かを企んでいるニヤけ面だった。

 

「さぁ!!どっちを狙うんだ!?デカブツ!!」

 

「!」

 

足立がウォーロックに声を荒げると宮藤は先ほどの言葉を思い出した。

 

[躊躇するな、俺を信じろ]

 

(そうだ……足立くんを信じるんだ!!)

 

再び銃を構え直す宮藤。すると、ウォーロックは攻撃対象を足立に切り替え、ビームを発射する構えを取った。

 

「……だよな」

 

当然かのように足立はポツリと呟いた。

 

「やああああぁぁぁッッ!!!」

 

ウォーロックがビーム砲を発射するのと同時に宮藤は自身の足元目掛け引き金を引いた。すると、足立はビーム砲に巻き込まれたかのように見えた。宮藤の銃弾を上から浴びることにより、攻撃は通らなくとも怯み一瞬動きが止まった。そして、回避行動の動きを取ろうとした瞬間。

 

「逃がすかよ……」

 

足立はウォーロックの眼前に瞬間移動し、刀をは納刀しており居合の構えを取っていた。

 

「じゃあ……なッッ!!!」

 

歯を食いしばりながら最後の言葉を力強く言うと、足立は鞘から抜くのが見えないほどの速度で抜刀し、金属音が響くと共にウォーロックを上下に真っ二つにした。

 

真っ二つになったウォーロックはそのまま火花を散らしながら墜落していき、海の藻屑となった赤城の下に沈んでいった。

 

「………やった……」

 

倒したという実感が追いつかない宮藤は呆然としながら無意識に呟いていた。

 

「ハッ……ハッ……げっ……マジかよ……」

 

息を切らしながら足立は自身の刀を確認すると、刀身が折れてしまっていたことに気づき、軽くショックを受けていた。

 

「やったぁ!!やったね足立くん!!倒したよ!!」

 

「なッ!?おい宮藤!!」

 

倒した実感が湧き始めた宮藤は、足立に抱きついて喜びを抑えきれなかった。突然の宮藤の行動に足立も驚き、普段ぶっきらぼうな足立も赤面していた。

 

「は、離れろ!離れろって!!」

 

「………あ」

 

足立に言われ少し間を置くと、宮藤は冷静になり自分がしていることを理解した。

 

「ご、ごめんね!!嬉しくなってつい……」

 

自分のしている事を思い出し始めると、宮藤は赤面しながら慌てて足立から離れ、顔を見れなくなってしまった。

 

「………悪ぃな、宮藤」

 

「えっ?」

 

突然の謝罪に宮藤は思わず足立に振り向いてしまった。

 

「俺と親父の問題で……こんなことに付き合わせてよ……」

 

「ううん、だって……私がそうしたかったから」

 

「……ハッ、やっぱお節介だよな……お前」

 

申し訳なさそうに言う足立に宮藤は嫌な顔ひとつせず、むしろ微笑んだ笑顔で答えた。その答えに足立もやれやれと言いたそうな顔で、嫌味にならない嫌味を放った。

 

「芳佳ちゃーん!!!」

 

「!、リーネちゃん!!」

 

すると、ブリタニア基地の方面からリーネの声と共に、仲間たちウィッチが集合してきた。

 

「おまたせ!」

 

「芳佳!シンヤ!」

 

「みんな!」

 

シャーリーが切り出すとルッキーニもふたりの名を呼んだ。

 

「よく耐えたな、ふたりとも」

 

「坂本さん!!」

 

ミーナとペリーヌに支えてもらっている坂本を見て宮藤は喜びを感じ笑顔になった。

 

「少し……遅かった……んじゃないか?」

 

「だな、これは必要なくなったようだな」

 

息が上がりながらも足立は皮肉な言葉を投げかけるが、バルクホルンは気にせず同意し、両脇に抱えている宮藤のストライカーを指して言った。

 

「………そうでもないカモ」

 

「えっ?」

 

いつのまにかエイラがタロットカードで占っているとポツリと呟いた。その言葉にサーニャとリーネが反応した。ちなみに引いたカードは塔のカード。崩壊、天災、事故などのよくないカードだ。

 

エイラが言った直後、海面から何かが浮上しようと、空気が揺れていた。

 

「えっ……!?」

 

「……冗談だろ……?」

 

海面から浮上してきたのは、沈んだはずの赤城。しかし先程とは外観が変わっていて模様がネウロイの模様になっていた。そして先端には、倒したはずのウォーロックが張り付いていた。あれだけ苦労して倒した宮藤と足立は目を疑った。

 

「ウォーロックが……赤城と……!!」

 

そう、ウォーロックは赤城を乗っ取ったのだった。空に向かって浮上した赤城はさしずめ空中空母と言ったところだ。

 

次こそ最後の戦いのため、坂本と宮藤は自身のストライカーと交換し、戦闘準備を整えた。すると、赤城からは考えられないほどのビーム砲の雨が降ってきた。それに反応したウィッチたちは散開し、赤城と共に空に昇っていった。

 

「美緒!できる?」

 

「あぁ、大丈夫だ」

 

ミーナがそう聞くと、ミーナと坂本は手を繋ぎ魔眼を発動させた。そして同時にミーナの空間把握を発動させると、コアと内部の様子が把握できた。

 

「な、なんだこれは!!」

 

「赤城とウォーロックが融合しているわ」

 

コアを中心に、先頭に張り付けられているウォーロックに対して流れるようにエネルギーを送っていることがわかった。

 

「これじゃあ手のつけようがないわね」

 

「だが、やるしかない、あれはウォーロックでもネウロイでもない、別の存在だ」

 

その悍ましい姿を見て坂本も流石に血の気が引いたようだ。

 

「我々ウィッチーズが止めなければ、誰もアレを止める者はいない!」

 

坂本がチームの士気を上げるため鼓舞する。そして宮藤はその言葉に頷く。

 

そしてサーニャの魔導針が反応し始めた。

 

「!、来ます!!」

 

赤城全体からビームがされ始め、矢の雨の如く降り注ぐ形で襲ってきた。

 

「ストライクウィッチーズ!全機攻撃態勢に移れ!目標、赤城及びウォーロック!」

 

『了解ッ!!』

 

ミーナがウィッチ全員に指示を出し始めた。その時、ウィッチたちの声が一つになった。

 

「コアは赤城の機関部だ」

 

「外からでは破壊できそうにないわね……内部に辿り着くしか」

 

「内部を知っている私が行く」

 

「!」

 

ミーナと坂本の魔法を合わせ赤城内部のコアを確認すると、坂本が先陣を切って名乗り出た。その申し出を聞くとミーナの握る手が強くなった。

 

「私が行きます!」

 

「私も行きます!」

 

「わ、わたくしも内部なら多少わかりますわよ」

 

「ありがとう!」

 

「……べ、別に貴方のためじゃありませんわ!」

 

坂本の後に名乗りを上げたのは宮藤、リーネ、ペリーヌの3人だった。そしてペリーヌは赤城の内部を把握しており、性格上遠回しに案内すると言い回した。その意味を宮藤が汲み取ると、お礼を告げた。そしてペリーヌはいつものツンデレな返しをした。すると、もうひとり声を上げたものがいた。

 

「少佐!」

 

「!」

 

息切れが依然として激しい足立だった。その様子は肩で息していることから厳しい様子が分かる。

 

「お……俺も行く!仕留め損なった……俺の責任でも……ある……」

 

「……その折れた刀でか?」

 

「ッ……!!」

 

足立の持っている刃が折れた刀を指摘する坂本。足立も痛いところを突かれ何も言い返せなかった。しかし、坂本はやれやれと言いたそうな顔で、足立の前に自分の刀を差し出した。

 

「………私の刀をお前に預ける」

 

「!」

 

坂本の行動に足立は驚いた顔になった。刀とは自分の魂そのもの、その刀を自分に預けるのかと足立は驚愕した。

 

「……いいのかよ……少佐……」

 

「その代わり、お前の手で返しに来い」

 

「……………了解だッ!!」

 

思わず確認する足立に、坂本はニッとしながら条件を提示した。しかしそれは条件というよりは絶対的な命令にも聞こえた。足立はその意味を理解し、語気が強くなった。

 

「ペリーヌ!3人のことは任せたぞ!お前がいれば心強い!」

 

「!、はい!!」

 

坂本に託されたペリーヌは喜びを感じながら返事をした。

 

「では、その他各員は4人の突入を援護、突破口を開いて!」

 

『了解!!』

 

「攻撃開始!!」

 

ミーナの命令が下ると、各ウィッチたちはそれぞれ異なる場所から赤城を攻撃し始めた。

 

「他の連中に手柄を残すなよ!ハルトマン!」

 

「にひひ」

 

「あ、こらっ!」

 

「先に行くよ!」

 

皮肉めいた発言をするバルクホルンだが、ハルトマンは笑いながらこっそり自分だけ攻撃を仕掛け始めた。

 

「シュトルム!!」

 

赤城のビーム攻撃を躱しつつハルトマンは、赤城の銃座であった部分を、自身の風を操る固有魔法で根こそぎ抉り取っていった。

 

「私の仕事を!!」

 

バルクホルンも直様追いかけ、残りのビーム砲が出ている部分を潰しに行った。

 

そしてエイラとサーニャ組は、エイラがサーニャの腰に腕を回し支え、サーニャが攻撃に専念できるようなスタイルになっていた。

 

「右ダナ?」

 

「うん」

 

エイラがそう言うと右に少し移動させると、数秒前に居た場所にビームが飛んできた。

 

「上ダナ」

 

「うん」

 

エイラの未来予知の固有魔法により攻撃を先読みすることにより、サーニャには決して当たらないコンビ技であった。そのおかげでサーニャは攻撃に集中することができるのであった。

 

 

「眠くないカ?」

 

「うん、大丈夫」

 

日常会話をするくらいふたりには余裕が感じられた。

 

そして、シャーリーとルッキーニのふたりは、遥か上空から見下ろしていた。

 

「攻撃が弱まってきたぞ!」

 

「行っちゃう?」

 

シャーリーが攻撃のチャンスを確認すると、ルッキーニを抱きかかえる形で赤城の船首にいるウォーロックに突っ込んでいった。

 

「いっっけえええぇぇぇ!!!ルッキーニ!!!」

 

「アチョー!!!」

 

シャーリーの掛け声と共にルッキーニを投げ飛ばした。シャーリーの降下するスピード+ルッキーニの多重シールドと光熱突進により、疑似隕石風の攻撃となった。

 

すると、船首にいたウォーロックは跡形もなく木っ端微塵となった。

 

「芳佳やっちゃえー!!」

 

「ルッキーニちゃん!」

 

「行きますわよ!」

 

ルッキーニが壊した船首部分から、中に入れるようになった。それをみた宮藤は名前を呼び、ペリーヌはすかさず突入することを決断した。

 

4人は内部に突入すると、とても暗く狭い場所だった。

 

「あっ!」

 

「隔壁が……!」

 

入ってすぐに障害が発生した。眼の前には壁のように立ち塞がっている隔壁があった。普通だった絶望する場面だったが、硬いものを破壊するプロフェッショナルがここにはいた。

 

「リーネちゃん!」

 

「はい!」

 

宮藤がリーネの名前を呼ぶと、リーネも咄嗟に理解し隔壁をライフルで撃ち壊した。

 

4人は次の通路に進み急ごうとした時。

 

『!?』

 

ペリーヌ。宮藤、リーネ、しんがりの足立が入った瞬間、通路全体が赤く光り始めた。

 

(クソッ!罠かッ!!)

 

最後尾の足立は入ったのと同時に手段を考えたその時、先頭にいるペリーヌが振り返る瞬間、足立と目が合った。そして同時に思いついた。

 

「ペリーヌッッ!!頼む!!!」

 

『きゃッ!!』

 

足立は宮藤とリーネの襟元を掴むように後ろに引き下げた。

 

「トネールッ!!!」

 

ペリーヌも足立の意図を汲み取り、固有魔法を言い放つと電撃が通路一体に広がり、全ての攻撃を破壊した。

 

「ありがとうペリーヌさん、足立くん!」

 

「ありがとうございます!」

 

「……最後に取っておくつもりでしたのに」

 

「そりゃ……悪かったな……」

 

お礼を言うふたりと、少し残念そうな声でペリーヌが言うと、足立は笑いそうな口ぶりで謝った。

 

「ただあの……武器が……」

 

「あ……私も……」

 

宮藤とリーネは先程の攻撃で当たってはいなかったが、武器を壊されてしまいふたりは素手の状態だった。

 

「ちょ、武器を失うなんて……」

 

「このまま………行くぞ……」

 

「………ですわね」

 

ペリーヌが文句を言いそうになると、足立はひとり動き出していた。ペリーヌもそれみて冷静になり、4人は再び通路を進み始めた。

 

そして、ついにたどり着いた。

 

「この奥ね……」

 

コアがある部屋の前に辿りついた4人。ペリーヌがポツリと言うと、機関銃を隔壁に全弾撃ち込むがやはりビクともしなかった。

 

「この銃じゃ無理ですわね……」

 

「そんな……」

 

「ここまできたのに……」

 

ペリーヌ、宮藤。リーネの3人はショックが大きかった。この壁の向こうにコアがあるのに辿り着けないことに絶望しかかっていた。ただひとりを除いて。

 

「俺が……やる……」

 

「えっ!?」

 

か細い声で言ったのは足立だった。あまりの小ささに聞き逃してしまいそうな声でペリーヌは驚いてしまった。

 

そして足立はゆっくりと3人を押し退けると、フラフラしながらも一番前に出てきた。

 

「ちょ、ちょっと!!大丈夫ですの!?」

 

「そうだよ!!足立くん!」

 

「無茶したら駄目ですよ!!」

 

「…………………」

 

3人が心配する中、足立は何も言わなかった。眼の前に集中するため、息を整え始めた。

 

(……これが……最後かもな……)

 

空中で動きが止まると、足立は先程と同じく居合の構えをした。息を整えるのは一瞬、整ったその瞬間、坂本から借りた刀にはネウロイのような赤いオーラらしきものが発した。そのオーラらしきものが発生するのと同時に抜刀した。

 

金属音が響く中、宮藤たちには一太刀で切れ込みを入れたかのように見えた。しかし実際は3回ほど切れ込みが入っており、隔壁は6等分に別れ壊れ落ちた。

 

「やったぁ!」

 

宮藤が喜ぶのと同時に、足立はフラフラとしながら地面に落ちそうになっていた。

 

「足立くん!!」

 

『足立さん!!』

 

落ちそうになる足立の腕を掴み首に回し支えたのはペリーヌだった。

 

「足立くん!大丈夫!?」

 

「しっかりしなさいな!!」

 

心配する宮藤と激を飛ばすペリーヌ。しかし、足立は坂本の刀をペリーヌの前に差し出した。

 

「悪ぃ……ペリーヌ……少佐に……返しといてくれないか……?」

 

「!!、なに言って……」

 

息も絶え絶えな足立が提案したのは、坂本の刀を代わりに返してほしいという願いだった。その願いにペリーヌは動揺した。

 

「俺を……置いていけ……」

 

「そんな!!」

 

「そんなこと言わないでください!」

 

「………………」

 

自分の限界さを悟り、足立は自身を置いていけと提案した。その提案に宮藤とリーネは感情的に否定するが、ペリーヌは刀を見つめ、次にこう言った。

 

「残念ですが、それは無理ですわね」

 

「……あぁ?」

 

ペリーヌの支えている手に力が強くなる。

 

「坂本少佐は3人を任せると言っていたわ、貴方をここで置いていったら……わたくしが怒られてしまいますわ」

 

「…………………」

 

「だから、その剣は貴方が直接返しなさい、そう命令されたはずよ?」

 

「………ハハ……そういやそうだな……」

 

ペリーヌの言い分に自己中心的に聞こえるが、実際は足立の事を思ってのこと。その意味を汲み取ると足立は鼻で笑いながらも同意した。宮藤もリーネもその様子を見て安心したようだった。

 

そして4人はついにコアのある部屋にゆっくりと突入した。

 

『!!』

 

そこは以前、ネウロイの巣の中で見たような広い空間の中心にネウロイのコアがあった。しかし、この中でコアを破壊できる武器といえば坂本の刀があるが足立以外は誰も扱えず、つまり破壊する武器がない状態だった。

 

しかし、そんなことはお構いせず宮藤はコアの側まで近づいた。

 

「芳佳ちゃん!」

 

「宮藤さん!一体なにを……」

 

「宮藤………」

 

心配する3人とは裏腹に、宮藤には考えがあった。唯一壊せるものを持っていたことを。

 

「リーネちゃん、私を支えてもらっていい?」

 

「えっ?」

 

リーネにそうお願いし、宮藤の両脇を支えるようにリーネは腕を通した。すると、宮藤のストライカーに異変が起こった。

 

「…………ありがとう」

 

父から貰ったストライカーにお礼を言う宮藤。すると、ストライカーのプロペラが通常の回転から逆回転し始めた。そして必然的にコアの方に向かって、宮藤の足からするりと着脱した。

 

『!!』

 

3人も意外な答えに驚いた。自分のストライカーを犠牲にするとは思わず声が漏れてしまった。

 

宮藤のストライカーはコアに吸い込まれるように離れていくと、そこには確かに、コアが砕かれる音と瞬間を目の当たりした。

 

外から見た赤城は次第にエネルギーが消失しつつ、墜落しそうになりながらも最後はネウロイと同じように綺羅びやかに散った。

 

「……やったな」

 

あの4人がやったと分かると、シャーリーは晴れやかな顔で呟いた。そして横にいるルッキーニはあるものを見つけた。

 

「!、芳佳だ!!」

 

ルッキーニが指したのはリーネに支えられてる宮藤。ペリーヌに肩を貸してもらっている足立の姿だった。

 

シャーリーとルッキーニは真っ先に向かい、バルホルンは思わずガッツポーズをしてしまった。その姿にハルトマンもご満悦だった。サーニャとエイラも4人の生存を確認して安心した顔をしていた。

 

「……やった!やったよ芳佳ちゃん!!芳佳ちゃんがやっつけたんだよ!!」

 

「わあ!」

 

支えていたリーネは宮藤に抱きしめるように喜びを噛み締めた。当の宮藤は思わずビックリした様子だった。

 

「……ふっ」

 

ペリーヌもその輪に加わらなかったが、思わず笑顔になり宮藤の凄さを少し認めたようだった。

 

「おい……ペリーヌ……あれ……」

 

「!」

 

足立が指し示したのはネウロイの巣だった。しかしその巣は、黒い雲が消えていき、最後にはひとつも残らず散っていた。

 

「ネウロイの巣が……」

 

「消えてくぞ!!」

 

「うーん!!勝ったぁー!!」

 

唖然とし呟く坂本に対し、シャーリーとルッキーニは本格的な勝利に喜びを分かち合った。

 

「ガリアが……わたくしの故郷が……解放された……」

 

「………良かったな……」

 

信じられないという表情で喜びを表しきれないペリーヌに、足立はポツリと微笑みながら言った。

 

「終わったな……」

 

「ええ」

 

坂本とミーナは今回の本作戦を成功させた余韻に浸っていた。

 

「少佐!」

 

「ペリーヌ!どうした?」

 

坂本に急いで側に寄ってきたのは。足立を担いでいるペリーヌだった。

 

「その、足立さんが……」

 

「!」

 

「……少佐……」

 

足立が辛うじて差し出してきたのは、坂本の刀だった。

 

「お前……!」

 

「確かに……渡したぜ……」

 

「おい足立!気をしっかり持て!」

 

意識が朦朧とし始めた足立。その様子から坂本は焦り始めた。

 

「もう………ムリ……だ……」

 

「きゃ!」

 

刀を坂本に返すと、足立は電池が切れたかのように動かなくなってしまった。そしてペリーヌに寄りかかっていまう形になりペリーヌも思わず驚いた声が出てしまった。

 

「足立くん!足立くん!!」

 

「……………」

 

心配する宮藤だが、足立は返事が無かった。ホントに死んでしまったかと思うぐらいに反応が無かった。しかし坂本は足立の様子を見てこう判断した。

 

「……大丈夫だ、気を失っているだけだ」

 

「!、……良かった……」

 

そう、息はある。身体も別段消えてる訳でもなく、コアの酷使と疲労による気絶だった。それを聞いて宮藤は安堵した。

 

「夜中から今までまともに休んでいなかったのですもの、無理もないわ」

 

「宮藤が危ないときも真っ先に飛んで行ったしね」

 

「………………」

 

ミーナとハルトマンの話を聞いて足立を見つめる宮藤。自分のために、無茶をしてきてくれたのかと分かると涙が出そうになったが、宮藤は微笑みながら小さい声で言った。

 

「……ありがとう、足立くん」

 

その声は足立にはきっと届いていない。けれど今はそれでいい、起きた時にもう一度言うのだから。

 

そして最後の作戦が残っていた。

 

「ストライクウィッチーズ!全機帰還します!」

 

『了解!!』

 

それは全員で基地に帰ることだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

ガリア地方のネウロイの巣が消滅して数日後。第501統合戦闘航空団「ストライクウィッチーズ」は正式に解散を言い渡され、1週間以内に出ていくことが決定された。原隊に戻る者、故郷に戻る者もおり、そして足立の場合は、ウィッチの誘拐と軍の上官への暴力などもあり、特別収容所に引き渡されることが決定されていた。

 

その引き渡される日の明朝、足立は一枚の写真を見ていた。それは足立が目覚めてから、全員集合して滑走路で撮った写真だった。

 

「……ハッ、俺もこんな顔できるんだな」

 

笑顔で写っている宮藤の隣の足立も意外なことに微笑んでいた。やるべきことを達成したせいなのか、自分でも信じられない様子だった。

 

写真を麻袋にしまうと、今度は自分の部屋を見回した。

 

(……ここから変わり始めたんだな……)

 

自室での宮藤との会話。そこから足立の環境が変わり始め、今では多くの仲間がいる。足立は感慨深く感じていた。

 

「さて、行くか……ん?」

 

足立が荷物を肩に下げ、部屋のドアに目をやると違和感を感じた。

 

「……余計なことしやがって……」

 

ドアに近づきよく見ると、少しばかり開いていた。廊下側から南京錠で施錠されているはずが、ロックされていない状態で施錠させられていた。

 

「これじゃお前らがしたってバレバレじゃねえかよ」

 

すると足立は、南京錠の錠の部分を指でパキッと折ると、廊下のドアの前に投げ捨てた。そしてそのまま部屋から立ち去り、格納庫へと向かった。

 

格納庫に着くと足立はこっそり顔を出し中の様子を見た。

 

(流石に誰も居ねぇよな……?)

 

しかし、そこに足立の期待を裏切る光景があった。

 

「み、宮藤!?」

 

「!」

 

格納庫の搭乗部の段差に座っていたのは宮藤の後ろ姿だった。今日脱走するのは誰にも言ってなかったはずが、驚いた足立は思わず声が出た。その声に宮藤は反応したがこちらに振り返りもしなかった。

 

「……もう……行っちゃうんだね」

 

「……あぁ」

 

振り返らず、哀愁漂う声だけが宮藤から聞こえた。それに足立は落ち着いた声で返事をした。

 

「このままだと刑務所送りだからな、だから……先にここから出ていく」

 

「……そっか」

 

このまま特別収容所送りだといつ出てこられるのか分からない、もしくは処刑される可能性もあるとなると、足立の人間に戻るという目標が達成出来ないと思い、今回の脱走を企てた。

 

それを聞いた宮藤は変わらず元気が無い返事をした。

 

「……どこに行くの?」

 

「……わかんねぇ、当ての無い旅ってところだな」

 

宮藤の質問に足立は半笑いで答えた。

 

「……また……会えるよね……?」

 

「…………わかんねぇな」

 

「………………」

 

宮藤の声が少しだけ震えていた。それを押さえつけるように笑ったような声で質問するが、足立の冷静な答えに涙が出そうになり、歯をくいしばっていた。

 

その悲しそうな宮藤の背中を見た足立はこう質問を投げ掛けた。

 

「なぁ宮藤……俺がどういう男なのか、最初に言ったの覚えてるか?」

 

「えっ……?」

 

唐突な質問に宮藤は理解が一瞬遅れたが、初めて会ったときの自室でのやりとりをきちんと覚えていた。

 

「……ウソがつけない……?」

 

「ああそうだ、俺はウソが下手だからな」

 

自分で自分に呆れたような声で足立は自虐した。

 

「そんで……もうひとつ」

 

「もう……ひとつ……?」

 

宮藤はゆっくりと繰り返しながら聞き返した。

 

「約束は絶対に守る」

 

「!」

 

足立の言葉を聞いた瞬間、宮藤は墓前でのやりとりや、ウォーロックの攻撃から守ってくれた事を思い出した。ハッとした宮藤は気付かず涙が流れていた。

 

すると、宮藤の横から搭乗部を蹴り返す金属音がした。目に入ってきたのは、足立が搭乗部から飛んでいた後ろ姿だった。

 

「またな、宮藤芳佳!」

 

「足立くん!!」

 

飛ぶのと同時に足立は空中でストライカーボードを装着した。底部のプロペラ音とエンジン音が出始めると、足立は瞬時に格納庫から出ていた。

 

宮藤は足立の名を呼びながら追いかけるように滑走路に出た。そして最後に、もう小さくなってしまった足立に、可能な限りの大声でこう言った。

 

「絶対!絶対また会おうね!!約束だよ!!」

 

この声が届いてるのかすら分からない、分からないが宮藤は約束を交わせたと信じていた。そう思うと、涙を流しながら笑顔になっていた。

 

そして滑走路脇にはそれを笑顔で見守っているウィッチーズ全員が立っていた。

 

基地から離れていく足立。すると突然ニッと笑うとこう呟いた。

 

「ああ、約束だ」

 

ふたりには未来への約束が交わされた。

 

 

 

 

つづく

 




ここまで読んでくださりありがとうございます。長い長い期間で1期編をお待たせして申し訳ございません。
2期にのお話は最後とロマーニャでの買い物以外はオリジナルの話を書こうと思っています。暇潰しでよければこれからもよろしくお願いします。
ありがとうございました。
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