ストライクウィッチーズ 大空の傭兵の軌跡 作:sontakeda
急遽、ブリーフィングルームへ招集されたウィッチ達。それぞれ席に座って待ってるが、なんの為に招集されたのか疑問に持つ者もいた。
「なんで私達が集められたんだ?」
「さぁな、だがあの男に関係してることでは違いないだろう」
シャーリーの質問に腕を組みながら答えるバルクホルン。
「まさか公開処刑とか?」
「んなわけあるか」
ハルトマンは楽しそうな声で冗談を言ったがバルクホルンがそれを呆れたような声で否定する。
(いったいなんだろ………なんか嫌な予感がする………)
不安そうな顔をする宮藤。しかし、彼女が胸騒ぎを感じてると、部屋の扉が開く音がした。顔を扉の方に向けると、坂本、足立、ミーナの順に並んで入ってきた。ウィッチたちは扉の方に顔向けると、物珍しさに驚く者がちらほら見かける。しかし足立はそんなことはお構いなしに、部屋の中を見渡すように顔を動かしていた。すると、一番後ろに座っていた宮藤と目が合った。
「!」
宮藤の目に写った足立は、どこにでも居そうな黒い瞳の扶桑の少年に見えた。しかし、どこか少年らしからぬ、貫禄のある雰囲気を纏ってるようにも見えた。
足立も宮藤と目が合うと、確保された時にいた少女なのを思い出したが、別に何とも思わぬように顔を前に戻した。
教壇まで行くと、教卓が片付けられてて足立を中心に、左隣に坂本、右隣にミーナと挟んだ状態で立っていた。足立の手元は変わらず手錠が掛けられ、まるで囚人のような姿だった。
「さーて、どっから話せばいいんですかね?ミーナ中佐」
開幕早々にへらへらした態度でミーナに聞いた。
「………みなさん、いま集まってもらったのは、彼からみんなにある提案を受け入れてくれるかどうか、を聞いてもらう為です」
「提案だと?」
ミーナが今回集まってもらった趣旨を話すとバルクホルンは怪訝な顔した。
「ああ、それには順を追って事情を話し、コイツに自己紹介をしてもらう」
坂本は段取りをつけ、先程の執務室で話したことをウィッチ達に話した。ネウロイ消失の件、コアの事、ストライカーボードの事、足立の生い立ちを。
「心臓にコアが!?」
「坂本少佐が驚いたのはそれだったのですね……」
驚愕する宮藤、坂本が魔眼で見た時の反応で腑に落ちたペリーヌ。
「じゃあネウロイってことナノカ?」
「正直、調べてみないと分からないな」
「いーや、俺はネウロイだよ」
エイラと坂本の疑問に答えるように足立が言った。
「少佐、刀を抜いた状態で、俺に向けてくれないか?」
「なにをする気だ?」
「実際に見てもらおうと思ってな、ネウロイって証拠を」
そう言って坂本は、足立に言われた通り抜刀した状態で足立に向けた。その様子に怯える宮藤とリーネはハラハラした顔をしていた。すると次の瞬間……。
「よっ」
足立の手は手錠に繋がれたまま、握手をするかのように刃の方を握った。
「なっ!?」
『えぇ!?!?』
突然の出来事に驚愕する一同。足立の握った手から血が少量流れ落ちた。
「何をしているんだ!!」
坂本が怒鳴ると同時にパッと手を離す足立。
「治さないと!!」
滴る血を見て宮藤は席から立ち上がり、すぐさま足立に駆寄ろうとした。
だが足立はその様子を見て、血が流れてる右手の掌を見せるようにし、「来るな」という意思表示をした。
「えっ………」
「これが証拠だ」
出血をしている掌を見せていると、次第に出血量が少なっているのが目に見えてわかる。
「傷が治っていくぞ!!」
「ネウロイの再生能力か!」
その様子に驚きを隠せないシャーリーと坂本。もちろん他のウィッチたちも驚愕した。
「幸か不幸か、皮肉なことに小さめの傷なら再生出来ちまうんだ、深くやられたら流石に無理だと思うぜ」
手の傷が完全に治ると、足立は掌を開いたり閉じたりし、問題なく動くことを表した。
「他になにかあるか?」
「………あの……」
足立が他になにか質問が無いか確認すると、リーネが申し訳なさそうな動きで手を上げた。
「さっきのお話の中で言ってた、天涯孤独って……ホントですか?」
「そうそう!そのテンガイコドク?ってなに?」
リーネが気になったのは、足立がホントに独り身なのかを確認したかった。その聞き慣れない言葉にルッキーニは意味も分かってなかった様子。
「天涯孤独とは、家族や親戚、身寄りが一人も居ないってことだ」
「じゃあ……つまりそれって………」
「独りぼっち………」
坂本が簡潔に説明し、意味が分かると宮藤は憐れむような表情をし、サーニャがポツリと言葉が出た。
「そういうこった、まぁ今までもほぼほぼ一人だったから、あまり実感は沸かないけどな」
「………………」
足立は気にしてない様子だったが、今の足立の姿に宮藤は泣きそうな表情をしていた。
「さてと、だ。こっからが本題だ、俺はお前達にあるお願いをしたいんだ」
「お願いだと?」
足立は息を整え、ニヤリ顔で話した。
「俺をこの部隊に入れさせてくれ」
『………ええぇぇぇっっ!!??』
予想通りの反応。ウィッチたちの声は部屋中に響き渡るかのような驚きだった。
「ふたりには話したんだが、少佐は賛成で、中佐は反対になって、決まらないから隊員のお前達に聞いてみることにしたんだ」
「坂本少佐が!?そんなこと言うはずが……!!」
「ホントだ」
「少佐!?どうして……!!」
「いろいろあるが、まず戦力が上がる。お前も見ただろ?ペリーヌ」
「確かに……実力は見事ですけど……」
「それにこの男には、ネウロイを倒すという意思の根幹を私は見た。だから仲間に入れてもいいと思ってる」
「………………」
坂本の理由にペリーヌは押し黙った。
「ミーナは?」
話を聞いていたハルトマンがミーナに理由を求めた。
「部隊の安全面を考えての反対よ、生い立ちは不幸な事だけど、コアがある以上、危険すぎて部隊では扱えないと判断したわ」
「同感だな」
「そう?私は面白いと思うんだけどなぁー」
「面白くないだろ馬鹿者!!」
腕を組みながらバルクホルンはハルトマンに激を飛ばした。
「私も面白いと思ったんだけどなぁ」
「私もー!」
シャーリーとルッキーニはまんざらでも無さそうな反応。むしろ興味が勝ってると言えるであろう。
「真剣に考えてますの!?確かに坂本少佐のお言葉は最もですけど………部隊の安全面を考えたら……ちょっと……」
ふたりの不真面目さにペリーヌが激を飛ばし、普段なら坂本少佐の言葉を肯定するはずが、今回は反対派に回った。
「どっちにする?サーニャ」
「………私はどちらでもいい………」
「ダヨナァ〜、でもまぁ入ったら面白そうではあるんだけどナ」
「だから真剣にお考えなさってくださいまし!!」
「どう思う?……芳佳ちゃん……」
「………………」
どうすればいいか分からなく、宮藤に意見を求めるも、宮藤自身もどうすればいいか判断がつかない状態だった。
「………反対が二人、このままだと、さっきの約束通りになるけど?」
「………………」
ミーナが挑発するような言い回しをすると、足立は黙り込んだ。自分の手錠を見て、次に反対派のウィッチ達に視線を移し考え込んだ。
(堅物そうなカールスラント軍人……ツンツンしてそうなガリアお嬢様……ふたりの共通点……)
足立はふたりが先程どういう意見を言ってたかを思い出し、共通点を見つけた。
「なーんだ……案外簡単そうじゃねえか」
「えっ?」
ポツリと呟くと、ミーナは呆気に取られた声が出た。
「なぁ反対派のお二人さん」
足立の言葉に反応し、視線を向けるペリーヌとバルクホルン。
「どうして俺の入隊を反対なんだ?」
まるで今までの話を聞いてなかったような質問を足立はぶつけてきた。
「どうしてって……それは危険で怪しいからですわ!」
「コアがあるというのなら尚更だ」
「ハハッ……だったら尚更賛成でいいじゃねぇか、気づかねぇのか?」
『!?』
不敵な笑みを浮かべる足立に、ペリーヌとバルクホルンは皆目検討もつかなかった。
「俺の心臓にコアがある、てーことはいつでも殺せるってことだぞ?」
足立は自分の心臓を強調するように胸を叩く。
「つまり俺の命はお前らに握られてるようなもんだ、だいたい……どこに危険があるってんだ?」
「あ、あなたが裏切ったり不意打ちをして、攻撃を仕掛けるかもしれないじゃないですの!!」
「ハッ、んなことは100億%ねぇよ」
「なぜそう言い切れる」
足立の自信に満ちた顔にバルクホルンは怪しんだ。
「メリットがねぇからだ、今ここでお前らを全滅させても余計面倒になるだけで、そんなバカなマネはしない」
「………それを信用しろ、ってことですの?」
「初めて会った相手に信用なんて出来るわけねぇだろ、だから疑い続けろ」
「疑い……続ける……?」
意味が掴めないペリーヌに対し、飄々とした表情で話していた足立が、真剣な顔に変化した。
「仲間になったとしても、全力で俺を疑い続けろ、いつどんな時でも、疑われるのが俺なりの信用だ」
(………なるほど、信用出来ないなら疑い続けろ、か)
さっきまで足立の事を怪しんでたふたりだったが、今の話を聞いて多少の警戒は薄れたみたいだ。足立の説得に坂本は感心した。
「んで?まだ反対なのか?」
「ぐっ……」
「……確かに筋は通ってるが……認めたわけではないぞ!」
グウの音もでないペリーヌに、バルクホルンも返すことが無いようだ。
「別にそれでもいいさ、反対派がいないなら俺が入隊できるわけだしな」
「残念だけど、そうはいかないわ」
「………あ?」
反対派はもういないと思った足立だったが、その横にいるミーナから冷たい言葉がかけられた。
「……まさかアンタまで納得させろってか?」
「さっき言ったとおりよ、ひとりでも反対派がいれば、この話は無かったことになるわ」
「……ウィッチの隊長とは思えないほど汚い人だなアンタ、嫌いじゃねぇけど」
「なんとでも言いなさい、私には……この子たちを守る義務があるのよ」
(………何を言っても変わらない、か。こりゃどうしようもないか……?)
ミーナの強い瞳に説得しようがないと思った足立は諦めかけていた。
「ミーナ、もうその辺で……」
「あの!!」
「!」
坂本が仲介に入ろうとした瞬間、席から立ち上がった宮藤の声が部屋に響いた。その声に、ミーナと足立、坂本は宮藤の方に向いた。
「芳佳ちゃん……?」
「あの……もし入隊できなかったら、どうなるんですか……?」
心配そうに見つめるリーネに、恐る恐る質問をする宮藤。
「……詳しくは分からないけど、総司令部に報告をして、身柄を拘束させます」
「なんとも言えないが、良いようには扱われないだろうな、最悪死刑だってありうる」
『死刑……!?』
あまりの事の大きさに、ウィッチたちは驚いた。
「そりゃそうだ、こんな得体のしれない怪物がいたら始末しとくのが一番だ」
(……まぁ、捕まった時から覚悟はしてるんだがな……)
なんでもなさそうに自分の後のことを話す足立だが、その顔は何かを悟ったような顔にも見えた。
「………ミーナ中佐!」
今一度、宮藤は声を響かせ、ミーナの名を叫んだ。
「やっぱり私には、この人がネウロイには見えません……!!」
「……ッ!?」
(コイツなに言ってんだ……!?)
予想外の発言に足立は思わず、声が漏れた。
「宮藤さん、気持ちは分かるけど、あなたも見たでしょう?ネウロイ特有の再生能力を」
「それでも……私にはひとりの男の子にしか見えないです……」
ミーナに諭されようとしても、なお自分の意見を曲げない宮藤。
「それにこのまま反対にしたら、私達は見殺しにしたってことになるんじゃないですか!?」
「!!」
「私そんなの嫌です!誰かを守るためにウィッチに入ったのに、見過ごすことなんてできません!守りたいんです!」
「ッ!!」
宮藤の守りたいという言葉、それはミーナにも、他のウィッチたちにも伝わっていた。彼女の飛ぶ理由は、その全てに詰まっているからである。
「だからお願いしますミーナ中佐!!この人を、この部隊に入れてあげてください!!お願いします!!」
宮藤が深々としたお辞儀は誠意が全力で伝わってきた。嘘や偽りのない、純粋なお願いだった。
「………………」
「お前の負けだな、ミーナ」
「美緒………」
「私達はひとりの少年を見殺しにするところだった、それを宮藤が私達に気づかせてくれた。それで十分じゃないか?」
「………認めたら、後には引けないわよ……?」
「ああ、元より覚悟はしてるさ」
「………………」
ミーナは目を閉じしばらく沈黙した。そして目を開き、言葉を発した。
「………わかりました、足立さんの仮入隊を認めましょう」
「!!、ありがとうございます!!ミーナ中佐!!」
「………………」
(宮…藤……?)
まるで自分のことのように喜ぶ宮藤。それに対し足立は、神妙な顔をし宮藤という名について考えていた。今日はじめて会ったふたり、だが足立には聞き覚えがある名前だった。
一騒動を終え、執務室の椅子にぐったりと座るミーナ。その様子を見て苦笑する坂本。
「はぁ………」
「だいぶお疲れのようだな」
「当たり前よ………またひとり問題児を抱えたようなものなのだから……」
ミーナはムスッとした顔で、愚痴を吐くように言った。
「だが後悔はしてない、だろ?」
「………そうね、宮藤さんには感謝しないといけないわね」
宮藤の説得を思い出し、少しだけ笑顔になるミーナ。
「多分、あのまま反対を押し切っていたら、私や部隊は崩壊してたかもしれないわね」
「初めてのことだ、仕方あるまい」
「そう言ってもらえるとありがたいわ」
「ところで、仮入隊させるのはいいが、上層部がすんなり入隊させるか?」
「ふふっ、悪知恵が働くのは私だけじゃないみたいよ?」
「ほう……」
ミーナの言葉に坂本は何か策があるなと察した。
「ほぉー、久々にまともな部屋を見たわ」
足立は宮藤の案内で、今後足立が寝泊まりできる客室にきていた。そこはベッドがひとつのみポツンと置いてあった。
「ベッドもあるし、最高だなこりゃ」
「………………」
(こんな人がネウロイだなんて……やっぱり信じられない……でも……)
「そういえばさっきは助かった、サンキューな、えっと……」
「あ!、わたし宮藤芳佳って言います。よろしくお願いします!」
「………ああ、よろしくな、宮藤」
「!」
宮藤が笑顔で握手を求めると、足立もなんの抵抗なく宮藤と握手した。すると、足立の手は、冷えた鉄みたいな冷たさだった。その冷たさに少しビックリした宮藤。
「どうした?」
「あ、いえ!なんでもないです!」
「?」
握手をし終えると、足立は話し始めた。
「そうだ、助けてもらった礼にひとつ、言っておいてやる」
「?、なんですか?」
「俺のことは信じるな」
「………えっ?」
足立が真剣な表情に対し、宮藤はポカンとした表情だった。
「俺がネウロイなのは変わらないし、さっき言った事も口約束だしな。その気になればいつでも攻撃ができるわけだ」
「そんな……!?」
「お前はお人好しな感じがするからな、だからストレートに言っておくわ」
宮藤に背を向け、ベッドに向かっていく足立。
「………あの」
「あ?」
「……どうして、わざわざ教えてくれたんですか………?」
「………………」
足立は少し沈黙したが、振り向きざまにこう言った。
「俺はウソがつけねぇんだ」
「………………」
そう言った足立の顔は、今まで見せてきた笑顔でも悪意が感じられない笑顔だった。宮藤はその笑顔を見ると、どこか寂しそうな表情にも見えた。
つづく
お疲れ様です。
オリジナル主人公登場というわけですが、登場シーンが1番悩んだ話でした。コアを途中から植え付けられるシーンも考えましたが、自然な話が浮かばらず最初から植え付けられていることにしました。100億%はただ言いたかったセリフです。