ストライクウィッチーズ 大空の傭兵の軌跡   作:sontakeda

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第3話 もうこわくない Bパート

ネウロイを撃墜させたメンバーは無事に基地に帰投した。足立の傷も大したことはなく、基地に戻る最中に再生され完全になくなっていた。そしてその夜、リーネはシャワーで汗を流した後、自室に籠もったままだった。ベッドで横になり、自分がしてしまったことを強く悔やんでいた。

 

「私が……足立さんを……」

 

まぶたを閉じると、先程の光景が思い出される。自分の引いた引き金で仲間を誤射してしまったことに。リーネは罪悪感で潰されそうになった。そんなことを考えていると、リーネの部屋の扉からノックする音が聞こえてきた。

 

「リーネちゃん、大丈夫?」

 

「芳佳ちゃん………」

 

来客は宮藤だった。恐らくリーネが心配で様子を見にきた節だろう。

 

「入っていいかな?」

 

「……いいよ」

 

リーネの了承を得て、宮藤は入室した。

 

「リーネちゃん………」

 

「芳佳ちゃん………私…足立さんを傷つけちゃった……」

 

リーネがベッドから起き上がると、ベッドに座る形になり宮藤もリーネの隣に座り、そのまま話を聞いた。

 

「私が……撃たなかったら……足立さんは……」

 

「そんなことないよ、リーネちゃんが足立くんを守ったんだよ」

 

「……芳佳ちゃんは優しいね」

 

「ううん!みんなも思ってるよ!足立くんだって、リーネちゃんのこと心配してるし……」

 

「………ありがとう……芳佳ちゃん……」

 

宮藤の優しい言葉にリーネは少しだけ肩の荷が下り、精一杯の笑顔で宮藤に少しでも心配かけまいと振る舞った。しかし、自分で傷つけたという事実は変わらなかった。

 

 

 

 

 

 

リーネが落ち着くまで話を聞いた宮藤は、みんなが集まっている食堂まで戻った。

 

「宮藤さん、おかえりなさい」

 

「どうだった?リーネは」

 

宮藤が入ってきたことに気づいたミーナ。坂本はリーネの様子が気になるみたいだ。

 

「はい、今は落ち着いてました。ただ………やっぱり足立くんを傷つけたのを気にしてるみたいです……」

 

「やはりか………すまないな、こんなことを頼んで」

 

「いえ!大丈夫です」

 

坂本に頼まれて宮藤はリーネの様子を見てきたのであった。

 

「リーネさん……大丈夫……じゃないわよね……」

 

「味方への誤射か、リーネなら尚更こたえるな……」

 

「リーネちゃんの気持ち分かります。私も……同じことをしたらと思うとゾッとします……」

 

3人は暗い顔をしながらリーネを心配していた。しかし、ひとりムスッとした顔をした人物が、椅子に座り腕を組みながらこう言った。

 

「やられたな、あのネウロイに」

 

足立だった。

 

「あのネウロイの仕業だと言うのか?」

 

「そうとしか考えられない」

 

「待て」

 

坂本と足立の話の間にバルクホルンが割って入ってきた。

 

「ではなにか?あの誤射はネウロイのせいで、自分は悪くないと言うのか?」

 

「ちょっとトゥルーデ……」

 

今にも喧嘩が始まりそうな雰囲気にミーナは止めに入りろうかと思った。しかし、足立は拳を強く握りこう発言した。

 

「………一番悪いのは俺だ」

 

「!」

 

意外な発言にバルクホルンは少し驚いた。それもそのはず、いつも軽口を叩く足立が自ら反省しているのだから。

 

「一番機二番機なんて、使うか使われるか程度に考えていたけど……甘かった」

 

「足立くん……」

 

「おれは考えるのを放棄したんだ……だから……」

 

下に向いていた目線を足立は前に向けた。

 

「だから俺が責任を持って連れ戻さないといけないんだ」

 

「足立……」

 

坂本は足立の目が、どこか宮藤と似ているような雰囲気に見えた。

 

「連れ戻すってまさか……」

 

「ミーナ中佐、お願いがあるんだ」

 

足立は席を立ちミーナの前まで来て、お願い事をした。

 

「次の襲撃のときは、俺とリーネを使ってくれ」

 

「えぇ!?」

 

その提案に一番驚いたのは宮藤だった。

 

「それはできないわ。今のリーネさんは精神的に不安定で、戦える状態じゃないわ」

 

「もし、アイツが自分から言ってきたら?」

 

「!」

 

いつもの軽口を叩く表情ではなく、真剣そのものだった。

 

「今ここで、アイツが戦場に出なかったら、二度と戦場に戻れなくなる」

 

足立の握る拳がまた強くなる。

 

「それは、リーネもそう望んじゃいないはずだ」

 

足立はリーネの涙を見た。それを見て足立は何を思ったか。傷つけて悲しんでいるのか、怒られると思って泣いたのか、ずっと考えていた。そしてひとつの答えにたどり着いた。二度と誰かを守れなくなるんじゃないかと思ったのではないか。だからこそ、足立は偽りなくミーナに言った。

 

「………分かったわ。リーネさんが出撃したいと言ってきたら、貴方たちを出すわ」

 

「…サンキュー、中佐」

 

いつにない真剣な言葉にミーナは認めた。

 

「だがリーネをどうする気だ。今の状態では……」

 

「…宮藤、リーネってどんなやつなんだ?」

 

「どんな?」

 

突然の質問に宮藤は困惑した。

 

「リーネの親友はお前だろ?お前の感じたまんまで言ってみろ」

 

「………リーネちゃんは、いつもみんなに優しくて、がんばり屋さんで、お菓子作りが得意で……それで……」

 

宮藤はこれだけは言っておく必要があることを溜めて言った。

 

「勇気がある子だよ」

 

「……ハハッ、それだけ聞けりゃ十分だ。望みはある」

 

乾いた笑いが足立から聞こえる。そしてそれは真剣な宮藤の顔を見たからでもある。お世辞のひとつもない純粋な言葉に足立は笑ってしまったのである。

 

「宮藤、お前も手ぇ貸してくれるか?」

 

「うん!もちろん!」

 

足立の協力に宮藤は快く了承した。どうやっていまのリーネから戦場に復帰させるのか、今ここにいるメンバー立ちには見当もつかなかった。

 

 

 

 

 

 

翌日。例の事件から一夜明けたリーネは、身体は重苦しいものの着替えを済まし、準備を完了した。しかし部屋から出るのが怖くなってる様子で、手に力が入る。

 

「……………………」

 

(……また…あんなことが起きたら………)

 

「リーネちゃん!起きてる?」

 

「!、芳佳ちゃん?」

 

廊下から宮藤が呼びかける声がした。リーネはハッとした表情で呼び返した。

 

「ごめんね朝早くから。いま大丈夫?」

 

「うん、どうかした…の……」

 

リーネがベッドから立ち上がり扉を開け要件を聞こうとした時、宮藤の後には足立が立っていたのだ。

 

「よっ」

 

「あ、足立さ……」

 

足立が手を上げ挨拶し、宮藤の前に出てきた足立はリーネが驚いてる間に手首を掴んだ。

 

「へっ?」

 

「いまヒマなんだろ?だったらちょっと付き合ってもらうぜ」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!なんなんですかいったい!」

 

目的が分からないリーネは本能的に足立が引こうとしてる手に抵抗した。

 

「なにって射撃の訓練すんだよ。それ以外なにがあるんってんだ」

 

「しゃ、射撃!?私行くなんて一言も!!」

 

「さっきヒマって言ってたろ?」

 

「言ってないですぅ!!!」

 

足立がリーネの手を引っ張ろうとする姿に宮藤はアワアワしていたが、事前に足立から横槍を入れるようなことはするなと、釘を刺されているのだ。

 

「とにかく!訓練しにいくぞ!」

 

「い・や・で・す!!」

 

「なんでだよ!!!」

 

「そ、それは………」

 

抵抗が感じられなくなると、足立はリーネの手を無理やり引こうとするのを止めた。リーネの話を聞こうとしたからである。

 

「……昨日のことを思い出して……引き金を引くイメージができないんです…」

 

リーネは視線を下に向けたまま話した。

 

「だから……今は銃を握ることさえ……」

 

「それはネウロイが目の前にいても言うのか?」

 

「!」

 

足立は背中越しでリーネに問いかけた。

 

「宮藤から聞いたぜ?お前がどんなやつなのか」

 

「えっ?」

 

「おっちょこちょいでノロマで天然で、それでいてオドオドしてて……」

 

「ちょ、ちょっと!!わたしそんなこと言って……」

 

前日で言っていたことがまるっきり違うことに宮藤は抗議しようとした。

 

「けど芯はある。勇気があるやつだって聞いた」

 

「…………………」

 

リーネは足立の後ろ姿をじっと見つめた。

 

「いまここにいるリーネは、本当のリーネじゃないと思ってる」

 

「……本当の……私…?」

 

「それを確かめるためにも、撃ってくれ」

 

顔が見えないはずなのに、妙に重く凄みが感じられたリーネ。その言葉に少しだけ、ほんの少しだけ心が軽くなったような感覚がした。

 

 

 

 

 

 

滑走路の一番先にて。リーネはライフルを手で支え、床に伏せた状態で構えていた。その後には、宮藤と双眼鏡を持った足立が立っていた。

 

「いいか、俺が合図したら撃てよ?」

 

「…………………」

 

足立の言葉が聞こえていないのか、リーネからは返事がなかった。無意識にも引き金を引く指も震えていた。

 

「リーネちゃん………」

 

「………リネット・ビショップ!!!!」

 

「は、はいっ!!!」

 

突然、足立の大きな声が響き渡り、さすがのリーネも耳に入って反射的に返事をした。

 

「撃てッ!!!!」

 

「はいっ!!!!」

 

驚いてるヒマもなく、流れるように指示を出す足立にリーネはこれまた反射的に引き金を引いた。いつも坂本に怒鳴られるのと同じく本能的に反応したんだろう。

 

リーネの放った弾は、遙か先の的を大きくズレて通過した。

 

「引けたじゃねえか」

 

「………引けた……」

 

リーネ自身も驚いていた。足立の喝のおかげで引けたこともあるが、先程まで悪いイメージが浮かび恐ろしくなり引けなかったはずなのに、あっさり引けてしまったことにリーネは目を丸くしていた。

 

「つっても人ひとり分くらいズレてるから話になんねぇけどな。つーわけでだ」

 

持っていた双眼鏡を宮藤に投げ渡すと、手を腰に当てながら言った。

 

「一日50発で、あの的に10回連続で当たるまで続けろ」

 

「!!」

 

「10回もっ!?」

 

宮藤は声に出して驚いた。

 

「弾数は気にすんな。ミーナ中佐からは話してあるから何発でも撃てるぞ」

 

「……………………」

 

リーネは押し黙ったままだった。

 

「んじゃ、宮藤、お前はリーネの監視役な」

 

「私が?」

 

「もしかしたらリーネがサボるかもしれないだろ。あとはよろしく」

 

足立はリーネ達に背中を向けながら話し、基地の方へと向かっていった。

 

滑走路の入口まで戻ると、そこには坂本が立っていた。

 

「仕返しのつもりか?」

 

「そりゃな、危うく死にかけたんだから」

 

坂本の冗談に足立もノッた。

 

「そういえば、次の襲撃っていつなんだ?」

 

「5日後だ」

 

「……忙しねぇなぁ相手も」

 

「それまでに戻ると思うか?」

 

「俺に出来ることはしたさ。あとは本人次第」

 

「ふっ、確かにそうだな」

 

坂本は鼻で笑うような言い方をした。

 

「それと、少佐。頼みたいことがあるんだ」

 

「ほう?いったいなんだ」

 

「少佐と、あと2、3人は協力がほしいかな」

 

足立は何かを見据えた目をしていた。

 

 

 

 

 

 

その日の夜。結局リーネは50発全て撃ち尽くしたが、連続で的に当てられたのは2回だけだった。やはり精神的に影響を受けているのは間違いなかった。

 

夕飯の準備が終わり、リーネを呼びに部屋まで向かっていた宮藤。部屋に着くとさっそく呼びかけた。

 

「リーネちゃん!ご飯の準備出来たよー!」

 

しかしリーネの返事はなかった。

 

「……リーネちゃん?」

 

宮藤は首を傾げた。

 

ところ変わって、夜の滑走路の先にリーネは立っていた。何かを思い詰めるような表情で、地平線の向こう側を見つめていた。

 

「…………………」

 

「リーネちゃーん!!やっぱりここだったんだー!」

 

「芳佳ちゃん………」

 

パタパタと駆け寄ってくる宮藤にリーネは気づいた。

 

「夕飯の準備が出来たから呼びに行ったらいなくて、もしかしたらここかなって、えへへ」

 

「………ねぇ芳佳ちゃん」

 

「うん?」

 

「私……足立さんに嫌われちゃったのかな……」

 

「えぇ!?なんで……」

 

「だって、今の私にこんなことしても、今までみたいに戻ると思えない……」

 

「リーネちゃん………」

 

「やっぱり……私が守ることなんて…もうないのかな………」

 

「…………………」

 

(……ごめん、足立くん)

 

諦めかけているリーネを見て宮藤はなんとかしよう思い、足立から言われてることを破ろうとした。

 

「リーネちゃん、聞いて」

 

「えっ」

 

「実は足立くんはね………」

 

宮藤は前日の夜の経緯を話した。足立が責任を感じてること、そしてリーネが何を望んでいるのか、このままではリーネが戻れなくなってしまうこと、そしてふたりで出撃すること、全てを話した。

 

「………足立さんが?」

 

宮藤の話を聞いて目をぱちくりさせるリーネ。

 

「うん、だから絶対嫌いになんてならないよ」

 

「………すごいや足立さん、なんでわかるんだろう」

 

「えっ?」

 

「足立さんを傷つけたのは凄いショックだけど、1番怖かったのは、守ることが出来なくなることだったの」

 

「……わたしもわかる気がする。ストライカー履く前は自分に出来る事が無くて怖かったな」

 

「えっ、でも芳佳ちゃんには治癒魔法があるよね?」

 

「まだちゃんと安定してなかったからちゃんと使えなくて……」

 

自分の失敗談を軽く笑い話にするかのように話す宮藤。その話を聞いてリーネは先程まで暗い顔をしていたのが明るい顔になっていった。

 

「……ありがとう芳佳ちゃん。おかげで元気が出てきたよ」

 

「ううん、落ち込んでるリーネちゃんを見たくなかったから」

 

「ふふふ、あっでも、その話して良かった…のかな?」

 

「バレたら怒られるよね……あはは……」

 

足立に怒られる想像する宮藤、するとリーネが口元をニッと笑わせながら言った。

 

「なら、一緒に謝ろうっか」

 

「!、うん!ありがとう!」

 

リーネの笑顔に宮藤もお礼を言いながら笑顔になった。そしてふたりの笑い声が聞こえてくるのも感じた。

 

 

 

 

 

 

翌日、宮藤は朝食の準備に食堂に向かおうとしたとき、宿舎の廊下でムスッとした足立に出会った。

 

「あ!足立くんおは……」

 

「み・や・ふ・じ、お前リーネにネタばらししただろ」

 

「えっ!?」

 

宮藤の顔の前にズイっと近づき、間髪入れず質問してくることに宮藤はドキッとした。

 

「今朝、リーネがサボらず訓練に行ってるか様子見に行ったら部屋にいなくて、外を見たら昨日とは別人のようにやる気出してんだよ」

 

「え、えっと……ごめんなさい!!」

 

観念した宮藤は深々とお辞儀をし、正直に謝った。

 

「ったく、ネタばらししたら意味ねぇだろうが。大方、お前のお節介で言ったんだろ」

 

「すごい!どうして分かったの!?」

 

「感心すんな」

 

「は、はい………」

 

本気で怒ってるわけではなさそうだが、約束を破った宮藤は少々反省していた。

 

「反省してんなら、さっさと準備してリーネの監視に行ってこい、お前に出来ることだろ?」

 

「うん!」

 

どこか優しい言い方がする足立の言葉に宮藤はつい先程まで反省していた顔とは裏腹に、今では笑顔で返事をした。返事を返した宮藤はパタパタと急いで食堂に向かった。宮藤の後ろ姿を見て足立は、口元をニッと笑った。

 

 

 

 

 

 

そしてリーネの射撃の勘を取り戻す訓練が始まった。前日の迷っていた目とは違い、今は的に当てることだけに集中していた。足立の期待に応えるために、自分がまた守れるようになるためにと想いを込めながら、一発一発を撃ち続けた。そしてその日、連続で当てられたのは4回だった。

 

3日目、手に痛みが感じると思い見てみると、手や指にマメができていた。銃を持つのも少し辛い様子。それを見かねた宮藤は、リーネの手に治癒魔法をかけた。するとリーネの手のマメは無くなった。宮藤の優しさにリーネは微笑み、宮藤も治療が成功して笑顔になった。その日の連続で当てられた数は5回だった。

 

4日目、ネウロイの襲撃予定の前日。青空が広がる午後に、リーネは変わらず訓練をしており、本日の最後の一発を撃ちきった。

 

「わぁー!!リーネちゃんすごいよ!!今日は7回連続で当たったよ!!」

 

双眼鏡で覗いていた宮藤は、最後の一発を的に当たると双眼鏡から目を離し、自分の事のように喜び、リーネに報告した。

 

「うん、でもこれじゃまだ………」

 

「……また明日頑張ろうよ!次は成功するよきっと!」

 

「………うん、ありがとう。芳佳ちゃん」

 

宮藤の励ましに元気を貰えるリーネ。自然と笑顔になった。

 

すると、上空でプロペラ音が聞こえてきた。

 

「あ!足立くんたちだ!」

 

宮藤の目に映ったのは基地に帰投するウィッチたちだった。足立と坂本は何やら話してる様子。その後ろにはシャーリーとルッキーニ、坂本と話してるのが気に食わなそうな表情をしてるペリーヌもいた。

 

「最近ずっとみんなで飛んでるよね」

 

「うん、なにしてるんだろう…?」

 

リーネが疑問に思ってると、突然基地内のサイレンの音が響き渡った。

 

「ネウロイ!?」

 

「…………行かなきゃ」

 

「あ!リーネちゃん!!」

 

サイレンの音を聞いてリーネの目つきが変わり、一目散に基地に走っていった。

 

場所は変わってブリーフィングルーム。そこにエイラとサーニャ、1番前には足立が座っており、教壇の前にはミーナが立っていた。

 

「ズレがあるとは言え、間に合わなかったわね……」

 

「………案外そうでもなさそうだぞ」

 

「えっ?」

 

残念そうにしてるミーナに対し、足立は席で頬杖をついて窓を見ていた。すると、バンッと扉が開く音と共にリーネと宮藤が入ってきた。

 

「リーネさん!」

 

「ミーナ中佐!私も出撃させてください!!」

 

入ってきて早々にリーネはミーナに出撃願いを出した。

 

「今わたしが行かなかったら……きっと後悔すると思うんです!!」

 

その言葉を聞いた足立は席を立ち、リーネの前で質問をした。

 

「リーネ、何回当てられたんだ?」

 

「………7回です」

 

「的の中心に連続で当てられたのは?」

 

「えっと………2回…です」

 

想定外の質問にリーネは少し戸惑ったが、正直に覚えてることを言った。

 

「そんな命中率で俺の命を預けろって言うのか?」

 

「………足立さんの言う目標には届きませんでした。けど……」

 

リーネのその目は何かを決意した目だった。

 

「けど怖がってばかりじゃ何も変わらないと思ったんです!!このままじゃ前の私になってしまうって!!」

 

「リーネさん………」

 

「だから足立さん!!私と一緒に飛んでください!!」

 

その決意に足立はしばらく押し黙っていたが、答えはもう決まっていた。

 

「……そこまで言われたら、俺も命を張らねぇとな。なぁ中佐?」

 

「……………早く準備してきなさい」

 

「ッ!!、了解です!!」

 

ミーナがにこやかに言うとリーネも元気な返事をした。

 

「宮藤さん、あなたもリーネさんと一緒に出撃もらえるかしら?リーネさんの監視役、まだ終わってないでしょ?」

 

「はい!!」

 

そして、取ってつけたような理由で宮藤も出撃させた。ホントは前回の経験を得て、いつでもフォローに入れるよう宮藤を投入したのだろう。

 

 

 

リーネ、宮藤はハンガーに着くと自分達のストライカーユニットが設置してるところに目掛けて飛んで履いた。すると使い魔の尻尾と耳が生え、ストライカーユニットの下には大きな青い魔法陣が現れた。

一方、足立も自身のストライカーボードに飛び乗ると、ネウロイみたく白い線の光が脚から頭まで走り、目を開くと瞳の色が黒から赤色に変わった。そしてストライカーボードの下には赤い魔法陣が現れた。

 

「出るぞッ!!!」

 

足立が出撃の合図を出すと3人は一斉に基地から飛び去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

一方、交戦中の坂本たちは、残り1機の大型ネウロイと戦おうとしていた。

 

「残りはアイツだけか!!」

 

坂本が大型のほうに向きなおし体勢を立て直そうとすると、大型ネウロイの上部から何かを射出した。

 

「にゃ!?なんか撃ってきたよ!?」

 

「いやアレって……ネウロイか!?」

 

突然の攻撃にルッキーニとシャーリーが驚くが、シャーリーは冷静に判断し見極めた。ネウロイの中からネウロイが飛び出していったということになる。

 

「じゃあそれって……」

 

「分離型タイプか!!」

 

「んにゃろう!!逃がさない!!」

 

バルクホルンとハルトマンは敵の狙いを察し、シャーリーは自慢のスピードで飛び出したネウロイを追いかけようとすると、インカムから声が聞こえてきた。

 

「おっと!!ソイツは俺らでやるぜ?」

 

「!!、その声って………」

 

シャーリーが聞き覚えある声に動きが止まった。

 

「私たちがそのネウロイを撃墜させます!!」

 

「皆さんもそっちを頑張ってください!!」

 

「足立にリーネに宮藤か!!」

 

出撃しないと思われた者たちがそこに現れたことにシャーリーは歓喜した。

 

「足立!!聞こえるか!?」

 

「ああ?どうした少佐」

 

「恐らくそっちに向かっていったネウロイにコアがあるはずだ!!お前たちで確実に落とせ!!」

 

『了解!!』

 

「………へへっ、了解だ!少佐!」

 

坂本の命令に珍しくもやる気がある足立だった。その顔は獲物を狩るのを楽しむような表情だった。

 

 

 

 

 

 

坂本と通信して30秒も経たない間に、リーネが何かを発見した。

 

「高速で移動するネウロイを発見しました!!」

 

「アイツか」

 

「すごく速いよ!!」

 

足立も宮藤もそのネウロイの姿を確認した。今にもぶつかってきそうな勢いで足立に向かってくる、と思ったその時。

 

「えっ!?」

 

リーネが見たものは、高速で移動するネウロイが、更に3機に分裂した。

 

「3つに増えた!?」

 

「………元々小型だったってことかよ」

 

「どうしよう足立くん!?」

 

「相手が悪かったな」

 

「えっ!?」

 

弱気な発言に聞こえた宮藤は耳を疑った。しかし実は真逆で、敵ネウロイに同情した発言だった。

 

「宮藤!!お前は左のネウロイに注目してろ!リーネの邪魔させるな!」

 

「は、はいッ!!」

 

足立の指示に従い、宮藤は機関銃を構え直した。

 

「リーネ!!俺たちが狙うのは右側のネウロイだけだ!!」

 

「!、真ん中のネウロイはどうするんですか!?」

 

「途中で落とす!!」

 

「!!」

 

途中で落とす、この発言でリーネはおおよその察しがついた。どれにコアがあるのか、それは右側のネウロイだと言うことに。

 

「行くぜッ!!」

 

『了解!!』

 

今まで立ちながら空を飛んでいた足立が、ウィッチたち同様のうつ伏せのスタイルで飛ぶと更に加速した。リーネと宮藤はそれに必死に付いていった。

 

すると前方からネウロイ達の攻撃が迫ろうとしていた。その時、足立は右手を背中にやると指で左方向を指した。

 

(左?)

 

すると足立が左方向に移動しようとしてる予備動作にリーネは気づいた。

 

「!!、芳佳ちゃん!左に避けるよ!!」

 

「!、うん!!」

 

リーネは意図を察し、足立が移動する左方向に付いていくと、先程までいた場所にビームが通った。

 

「すごいや!リーネちゃん!」

 

「えっと、私じゃなくて……ッ!」

 

目を足立のほうに向けると、今度は左手で右方向を指していた。

 

「今度は右だよ!!」

 

「うん!!」

 

リーネの指示通りに動くと、ネウロイのビームをスムーズに次々と避けていった。前回とはまるで違う動きにリーネは驚いた。

 

(すごい……動きやすい………足立さんのおかげで、何がしたいのか分かる…!!)

 

そんなリーネが驚いていると、右のネウロイが飛び出し、足立たちを1番近くで狙ってきた。

 

「宮藤!!」

 

「はいッ!!!」

 

宮藤が返事をすると同時に飛び出し、足立とリーネをネウロイのビームから巨大なシールドで守った。

 

「くっぅうううう!!!」

 

「ありがとう!!芳佳ちゃん!!」

 

食い止めてくれている宮藤にリーネがお礼言うと、そのまま足立とリーネは残りの2機に向かった。

 

「リーネ!!前回のアレで真ん中を落とすぞ!!」

 

「!、了解です!!」

 

足立とリーネは、2機が並列に並んでいるネウロイの間に入り込んだ。

 

「オラァッ!!」

 

足立が回転しながら入り込むのと同時に刀を居合抜きのように抜刀すると、真ん中のネウロイは足立が通ったところの装甲が剥がれていった。すると今度はリーネが、ボーイズライフルをほぼ至近距離で撃ち抜いた。

 

「やった!!」

 

ライフルの弾が当たり真ん中にいたネウロイは失速していった。

 

「ターン!!」

 

足立が掛け声をだしリーネとそのまま宙返りをすると、1番上まで到達し、その場でロールしながら体勢を立て直すと、残りの右側にいたネウロイの後ろに付いた。

 

「残りはアイツだけだ!!」

 

そう言うと足立は出力を更に上げ、1番前のネウロイに追いつこうとした。しかしリーネは足立のスピードに追いつけなかった。

 

「足立さん速い……!!これ以上は………あっ!!」

 

リーネが諦めかけている目の前で意外なものが現れた。それは先程失速していったネウロイだった。リーネを狙わず、足立を追ってまたも挟みうちをしようとしていた。

 

「足立さん!!後ろ!!」

 

「ッ!!」

 

呼びかけに足立は反応し、顔だけ振り向くと後ろのネウロイに気づいた。しかし足立はこの状況を待っていましたと言わんばかりの顔をしていた。

 

「リーネ!!」

 

「俺が合図したら俺に向けて撃て!!」

 

「えっ!?そんなこと!!」

 

「なにがなんでも撃つんだ!!いいな!!」

 

(足立さんに……?なんで?そんなことしたらまた足立さんを………あッ!)

 

リーネは気がついた、足立の意図を。

 

(分かりました………足立さん!!)

 

「………へへっ、ホントの答えは、こっちなんだろッッ!!!」

 

そう言うと足立は急停止し、後ろのネウロイに標的を変えた。すると刀を構え、ネウロイにのスピードの推進力だけで、後方のネウロイを切り裂いた。

 

「今だッ!!リーネッッ!!!」

 

「はいッ!!!」

 

(もう、怖くないッ!!)

 

ダンッ!!!

 

リーネは引き金を引いた、足立に向けて。そう、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()撃ったのだ。

 

「ハハッ、大当たりだ」

 

切り裂かれたネウロイの間に足立が見え、その顔の横に寸分狂いなく弾が通り、足立の前にいたネウロイに命中した。すると同時にコアも破壊され白い破片となって消えた。

 

「…………やった……?」

 

ネウロイは消えた。しかしリーネにはまだ実感が沸かなかった。

 

「リーネちゃーーーーん!!!」

 

「芳佳ちゃん!!!」

 

食い止めていた宮藤も駆けつけた。

 

「リーネちゃん!!やったんだね!!」

 

「うん………うん!私やれたよ!!芳佳ちゃん……!!」

 

宮藤に言われ、遅れながらもようやく自分で守ったという実感が沸き、涙目になりながら歓喜し、宮藤と抱き合った。

 

「その様子だと無事に倒せたようだな」

 

「!、坂本さん!」

 

「坂本少佐!!」

 

ふたりが喜び合っていると、先に戦っていた坂本たちが合流してきた。

 

「ふたりの練習の成果もあったんじゃないのか?」

 

「えっ、ふたりって………」

 

「わたしは何もしてませんよ?」

 

「いーや、リーネと………アイツだよ」

 

シャーリーが指したのは足立のほうだった。

 

「リーネが訓練し始めた当初から、足立も編隊飛行の訓練をしていたんだ」

 

「アタシたちも協力してさ」

 

「そうそう!!」

 

「せっかくですから、というわけですわ」

 

「…………………」

 

訓練に協力していた者たちが一言ずつ述べると、リーネは足立の方に近付いた。

 

「あの!足立さん!!」

 

「あ?」

 

「いろいろありがとうございました!!これからもよろしくお願いします!!」

 

以前のリーネだったらどこかオドオドしていた様子だったが、今はその影もなく真っ直ぐな素直な表情をしていた。

 

「………また誤射だけはカンベンな」

 

「はい!!」

 

足立の冗談にリーネは笑顔になった。元のリーネに戻ったことにより他のメンバーも和やかな雰囲気に包まれ、無事に基地に帰投した。

 

 

 

つづく




お疲れ様です。

第3話ということでリーネちゃん回です。宮藤程ではないですがすんなり書けました。というより1番悩んだのがどんなネウロイを出すか悩んでいたのですが、1期もいろんなネウロイは出てきましたが特別強いネウロイがいた訳ではなかったので、平均的なネウロイになってしまいました。

作者はお風呂シーンは好きですがどう書いたらいいかは苦手です。

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