ストライクウィッチーズ 大空の傭兵の軌跡 作:sontakeda
そこはとある研究所の一室。そして研究に没頭している白髪に白衣を着た父親と、それをつまらなそうに見ていた息子がいた。
「どうだ?これすごいだろ?」
「………何が?」
父親が手にして見せたのは、白い板の形状をした機械だった。
「ストライカーボードって言うんだ。俺のアイデアだぞ?」
「……けどダメだったんだろ?」
「そ、それは言うなって!」
息子の痛いところを突く発言に父親は聞きたくなかった。
「絶対いつか、ウィッチ達を空で自由に飛ばせられるものを作るんだ。宮藤博士とな」
「……………………」
そう言って諦める様子はなく、次の試作の研究を考える父親だった。その息子は父親が作ったストライカーボードをただただ見つめていた。
「……お前も飛んでみたいのか?」
「いや別に………」
息子の視線の先に気づき父親は提案したが、息子は仏頂面で顔色ひとつ変えず否定した。
「……ならオレが作ってやるよ!お前でも飛べるようなストライカーを!」
「それ無理だろ」
「今はな。けどウィッチ達が飛べるようになったら、今度はそっちの研究だ!へへっ」
父親は楽しみが増えたかのように話した。
「……なんでそんな楽しそうなんだよ」
「考えるのが好きだからな。それに、子にプレゼント出来ると思ったら、親は楽しみになるさ」
「……………………」
「だから、楽しみにしとけよ?進也」
息子に振り向いた父親の顔は、眩しいくらいの笑顔だった。
が、次の瞬間、目の前が光に包まれ次に映った光景は、その研究所の成れの果てだった。辺りは破壊され火災も発生しており、そこには足立の父親も倒れていた。
「オヤジ………」
足立はボロボロの身体で辛うじて生きてる状態だった。なぜ自分が生きているのか分からないくらいだった。だが、すぐに判明した。ガラスに映った自分の上半身の心臓部に、赤いコアが光っていたことに。
「なん………だよ……これ……」
そして足立は気を失った。
夜中、部屋で眠っていた足立は目を見開いた。
「………なんつー夢見てるんだか」
半笑いで自分が今しがた見た夢に呆れる足立。思い出したくないわけでもないが、良い思い出でもない。
「………いったい誰なんだ?コアを埋め込んだのは……」
足立も誰がこんな身体にしたのか分からなかった。しかしそれが、足立の飛んでいる理由かもしれない。誰がこんなことをしたのか、それを突き止めるために飛んでいるんだと。
「ふぁぁ〜〜ねっむ………」
翌朝、食堂に向かおうと足立は大きな欠伸をかきながら宿舎の廊下を歩いていた。
「あ!足立くんおはよう!」
「おはようございます。足立さん」
「ん?ああ、おはようさん」
後ろから挨拶してきたのは宮藤とリーネだった。
「足立くんなんか眠そうだね?」
「久しぶりに寝れなくてな」
「寝癖までついてますけど……」
「別にほっときゃ直るだろ」
「ちょっと待っててください!」
「あ、オイ!」
リーネがそういうと自分の部屋まで戻り、取り出してきたのはブラシだった。取ってきたブラシでリーネは足立の寝癖を取り始め、あっという間に寝癖が無くなった。
「これで大丈夫です!」
「別に寝癖のひとつやふたつどうってことないだろ………」
「しっかりしないと坂本さんとかに怒られちゃうよ?」
「へいへい」
宮藤の話を聞き流すかのように足立は返事を返した。すると前の食堂の方面からバルクホルンが歩いてくるのが見えた。
「あ、バルクホルンさん!おはようございます!」
「バルクホルン大尉、おはようございます」
「ああ、おはよう」
宮藤とリーネはバルクホルンに挨拶すると、穏やかな挨拶で返してくれた。
「…………………」
「…………………」
しかし、足立とバルクホルンはお互い見つめたままだったが、切り出したのは足立からだった。
「どうも、おはようございます。バルクホルン大尉」
「………………………フン」
相変わらず足立の敬語を使うときは茶化したような言い方になり、らしくもなく敬礼もしていた。しかし気に入らなかったのかバルクホルンは鼻を鳴らしてそのまま自室の方へと向かった。
「ありゃ、こりゃ相当嫌われてるな」
「そうじゃないと思うんですけど………」
「いいの足立くん…?このままで……」
「いいんだよあれで、中にはああいう警戒してるのが1人や2人居たほうが安心するってもんだ」
「足立くん………」
足立はそう言い残すと、スタスタとひとりで食堂に向かった。
場所は変わり、執務室にて。書類作業に追われてるミーナの前には、不機嫌そうなバルクホルンが立っていた。
「……そんな顔してると、おばあちゃんになっちゃうわよ?」
「こうもなるさ。アイツがいる限りは」
「そんなに気に入らないの?」
「ああ。ミーナ、お前もそうは感じないのか?」
「………現段階じゃ、彼が何をしようしているのかは分からないけど、私たちを助けてくれたのは事実よ」
冷静に今まで起こったことを分析するミーナ。
「しかしネウロイと分かってる以上、泳がせとくのも危険過ぎるだろ」
「ふぅ………」
作業が進まないことにミーナは少しイラつき、ペンを置いた。
「ならどうしろと言うの?」
「すぐに身柄を拘束して送るべきだ」
「ひとりの少年を?」
「アイツは………」
「彼が言ってたわよね?私たちはコアの位置を知っていて、いつでも破壊できるって」
真剣な眼差しでバルクホルンを説得するミーナ。
「けどそれをしないって事は、アナタもひとりの少年として、人間として見ているからじゃないの?」
「ッ!!」
図星を突かれたような顔をするバルクホルン。
「宮藤さんも言ってたでしょ?見殺しになんて出来ないって。ネウロイには見えないって。あのまま反対していたら、私もアナタも後悔していたわ」
「………私には、コアがある時点でネウロイとしか見れない」
バルクホルンは何かを思いつめた顔で視線を下に向けたまま言った。
「ネウロイは一匹残らず倒さないといけないんだ………」
そう言い残すとバルクホルンはミーナの部屋から扉の音を大きく立てて出ていった。
「全く………変なところで生真面目なんだから………」
悪態をつくような言い回しでミーナは言うが、本心は心配していた。これ以上彼女がひとりで背負ってしまうのではないかと。
「ふっ、ふっ、ふっ」
「あ、坂本さん!」
「うん?宮藤にリーネか。どうした」
海岸付近で刀を素振りしている坂本を宮藤とリーネは見つけた。
「あの、バルクホルンさんと足立さんについてなんですけど……」
「あのふたりがどうかしたのか?」
「ふたりとも仲があんまり良くなくて、どうしたらいいのかなって思って坂本さんに相談しにきました」
「足立とバルクホルンか………」
素振りを止め、宮藤たちの相談に耳を傾け考えるが、坂本の答えはあっさりだった。
「すまないが、それは私にどうこう出来る問題ではないな」
「えっ!?」
坂本ならなにかいい解決方法があると思っていた宮藤にはこれは意外な答えだった。
「もっと言えば、恐らく当人以外は誰にも解決出来ない問題でもある、ということだ」
「ど、どうしてですか?」
発言の意図が見えないリーネは困惑した。
「例えばだリーネ。今日からお前の部屋にとある虫と一緒に過ごしてもらう。しかも放し飼いだ、そんなの耐えられるか?」
「そ、それはちょっと……ムリですね………」
「つまりはそれと同じだ。故郷を追われ、妹が意識不明、そんなヤツが簡単にネウロイと過ごしたいと思うか?」
「……………………」
坂本の言っている意味を理解したリーネは悲しげな表情をしていた。
「で、でも足立くんは……!」
「ああ、分かってる。ヤツは人間だ。血を流していた。血を流すのは人間か動物のみだからな」
扶桑刀の切っ先を見ながら、初日に足立がしたことを坂本は思い出していた。
「しかし頭で分かっていても、身体が拒否しているんだろうな」
「……拒否してる?」
「バルクホルンは戦争が始まった時から戦っており、そして軍規に重んじるカールスラント軍人だ。なおさら良いようには見ないだろう」
「そんな………」
坂本の話を聞いて宮藤も悲しげな表情に変わってしまった。
「今は時間が解決するのを待つしかなさそうだ。お前らも、あまり首を突っ込むことはするな。いいな?」
『はい………』
ふたりは落ち込みながらも、坂本の命令には返事をした。しかしその返事にはいつもの元気さは残ってなかった。
その日の午後。襲撃の警報が鳴り響き、ネウロイの迎撃に出た501メンバー。向かったのはバルクホルン、ハルトマン、坂本、宮藤、足立、ペリーヌのメンバーだった。
目標のネウロイは300m級の超大型。左右には巨大な羽翼がついており、海上を進んでいた。
「いいか!!私とバルクホルンとハルトマンで本体を叩く!足立は宮藤とペリーヌたちでサポートを頼む!」
「俺がか?」
「上官命令だ」
「………了解了解」
いつもの本体を倒す役目ではなく、サポートに回る事に渋々返事をする足立。
「くるぞッ!!」
坂本の掛け声と共に、ネウロイのビームが通過してきた。そしてそれは次第に多くなり、ウィッチたちも応戦し始めた。
「いくぞ!ハルトマン!」
「はーい」
バルクホルンとハルトマンのふたりは、戦闘を開始するとネウロイのビームの雨をモノともせず、MG42の銃弾を叩き込んだ。
「足立くん!!私たちはどうすれば!!」
「んなもんテキトーに空いてるとこに当てればいいんじゃねぇか?」
「そんないい加減な指示に従えますか!!!」
「つってもなぁ…………ん?」
いい加減な指示に怒号を飛ばすペリーヌを尻目に足立は、バルクホルンの動きが気になった。何度か一緒に戦って動きは把握していたが、いつもと違う感じがした。
「…………………………」
「ちょっと!!聞いてますの!?」
「宮藤、ペリーヌ、お前らは少佐に付いていけ」
「えっ!?」
足立はさっきまでとは違う真剣な表情になっており、ペリーヌも思わず驚きを隠せなかった。
「足立くんは!?」
「ちょっと離れるわ」
「えぇっ!?」
宮藤が驚いて、そう言うと足立は宮藤とペリーヌを置いてひとりあさっての方向に飛んでいった。
「な、なんなんですの全く!!!!」
「とにかく坂本さんのところに行こう!!」
隊員とは思えないテキトーさに怒り心頭のペリーヌに対して、宮藤は冷静に足立が言ってた事を従うことにした。
「この分だと、楽勝だね!」
「ああそうだな!!」
「ッ!」
いつものハルトマン軽口に同意を示したバルクホルン。しかしハルトマンにはこれがいつもと違うと気づいた。いつもなら慢心するな等を言って気を引き締めるはずだのだが、今日はそれが無い。
「そこだ!!バルクホルン!!」
坂本が魔眼で見たのは、バルクホルンが攻撃している位置にコアがあった。そこで坂本はインカム越しに指示をした。
「うおおおぉぉぉ!!!」
両手に持ったMG42の銃弾の雨をこれでもかというぐらい浴びせ続けると、表面の装甲が破壊され赤いコアが確認された。
「コアを確認!!これで終わりだ!!」
コアを確認し、再びMG42を構え直すバルクホルン。
がしかし、その直後に別の部位からバルクホルンに向かってビームを発射しようとしてるのを、ハルトマンは気づくのが遅かった。
「ッ!トゥルーデ危ないッ!!」
「!?」
ハルトマンの掛け声に気づき、自分の置かれてる状況を理解したが、攻撃体勢に入ってる状態でどうすることも出来ないと悟った。このままビームを受けきるしかないと、覚悟を決めたそその時。
ザンッ!!
ビームの発射口が切られたように破壊された。
「足立だ!!」
「今だッ!!やれ!!」
「ッ!!はああああぁぁぁ!!!」
現れたのはどっかに行ってしまわれたと思った足立だった。意外な現れ方をして歓喜するハルトマン。足立がチャンスを作ると、バルクホルンは再びコアに向かって銃弾の雨を降らした。
すると赤いコアは破壊され、超大型ネウロイも白い破片に弾けた。
「やっるじゃーん!!足立ぃ!!」
「どわっ!!なんだよオイ!!」
足立の後ろから抱きついてきたのは、歓喜をあらわにしたハルトマンだった。
「美少女からのハグだぞー?嬉しくないの?」
「その前に鬱陶しいから離れろ!!」
「えー、やーだよ♪」
「だあああ離せぇぇぇ!!!」
女の子からハグされるという経験が無い足立にとっては、未知な体験だが嫌な気持ちにはならなかった。むしろ少し赤面をしていたぐらいだった。
しかし一方のバルクホルンは何も言わず、ただただ足立を冷たい目で見つめていた。
出撃に出ていたメンバーが無事に基地に帰投すると、ハンガーでストライカーを降りた直後に、ペリーヌに鬼のような形相で足立が問い詰められた。
「あ・だ・ち・さん?」
「どうした?そんな怖い顔して」
「どうしたもこうしたもありませんわよ!!わたくしと宮藤さんを放って置いて!!自分は何をしてらしゃったの!?」
「あー……まぁいろいろとな」
ペリーヌの問に足立は何故か正直に答えようとはしなかった。
「私はふたりと一緒にサポートしろと言ったはずだが?」
「まさかあの状況でサボっていた、なんてございませんわよね?」
「…………あのなぁ」
「足立はサボってなんかないよ?」
ペリーヌと坂本の疑問にハルトマンが割って入ってきた。
「ハルトマン中尉!」
「どういうことですか?ハルトマンさん」
「トゥルーデがやられそうなところに、足立が助けてくれたんだよ?」
「えぇっ!?そうだったんですか!?」
予想外な答えに宮藤は目を丸くしていた。
「そんな庇うようなご冗談を………」
「ウソじゃないよ?ねっ?足立!」
「………そういうこった」
足立も観念し、ハルトマンの言ったことを認めた。
「………ホントですの?」
「なーんだぁ、わたしてっきり足立くんがネウロイから逃げちゃったかと思ったよ〜」
「宮藤、お前はあとでぶん殴る」
「えぇッ!!?」
宮藤は本気で悪げなく言ってるのでタチが悪いと思い、足立はそれなりの処罰を発言した。
「しかし、それならそうと報告しなければならないな」
「反省点ってところか?次からは気をつけますよ、少佐」
「まったく………」
相変わらずへらへらした態度の足立で坂本も呆れる始末だった。
「ほら、トゥルーデもお礼言ったら?助けてもらったんだし!」
「……………………」
ハルトマン言われ、1番遠く居たバルクホルンは冷たい視線で足立に向かい、そして足立の前に立ち、最初の発言をした。
「どうして命令に従わなかった」
「!」
ピシャリと氷のような無機質な声にも聞こえるトーンでバルクホルンは足立に問いた。その状況に他のメンバーもザワつき出した。足立も一瞬目を丸くしたが、すぐにいつもの楽観的な表情になった。
「お説教か?報告しなかったのは本気で反省してるんだ…」
「どうして命令に従わなかったのかと聞いているんだ!!」
「ッ!?」
「バルクホルンさん………」
「………………………」
突然の怒鳴り声にペリーヌと宮藤はビクッした。まるで自分が怒られているかように聞こえたのだから。そして足立は楽観的な表情から目をつむり、再び開いた時にはバルクホルンと同じような冷たい表情に変わっていた。
「様子がおかしかったからだ。アンタのな」
「私が?」
心当たりがない表情をするバルクホルン。もしくは気づいていないだけかもしれない。
「アンタとは何度か一緒に戦ってるからどういうレベルかある程度は把握してる。すげぇよ、並の強さじゃないってのはすぐにわかった」
足立は淡々とバルクホルンの強さを褒める。
「が、しかしだ。今日のアンタを見てたらなーんか様子がおかしかった。いつもの動きのキレがなかった」
「!」
足立の指摘を聞いてハルトマンもバルクホルンの違和感に気づきはじめた。
「そんで嫌な予感がしたんで、アンタのところを飛んで観察しながら戦ってたら予想的中、ネウロイの攻撃を喰らいそうになってたから手助けをした。ってなわけ」
「………それが命令を無視した理由か?」
「ああそうだ」
一通りの話聞いたバルクホルンは変わらず冷たい声だった。しかし、今度は怒りが混じってるようにも聞こえた。バルクホルンの問に今度は迷いもなく答えた。
「なら今すぐ部隊から降りろ。命令を守れないヤツが軍隊にいる資格などない!!」
「………………………」
足立は押し黙ったままだった。
「そもそもだ!仲間を放りだして独断専行とは何事だ!!軍隊ではあるまじき行為だぞ!!いつもいつも自由にしてるからそんな行為に走るんだと……」
「クッ…フフフ………」
本格的なお説教が始まったかと思ったら、足立は突然笑い出した。
「何がおかしい」
「いやぁ、なんとなーく分かっちまった気がしてな。アンタがネウロイにやられそうになったのが」
「なに?」
不気味な笑いに何かを見透かしたような目の足立に、バルクホルンは警戒した。
「軍規や規律を守れ守れ守れ。正にカールスラント軍人の鑑だアンタは」
「何が言いたいんだ」
「軍人の鑑過ぎてセオリー通りにしか動けなくなったんじゃないか?」
「なんだと!?」
「ちょっとトゥルーデ!!」
「ふたりともやめないか!」
足立の挑発めいた発言にバルクホルンは一瞬手が出そうになったが、ハルトマンと坂本の手によって抑えられた。
「それとも、俺に恐れているか。だな」
「私がお前に恐れているだと!?そんなことあるわけが!!」
「無い、かもしれないな?まぁアンタが何考えてるのかは別にいいとして、ひとつ忠告しとくわ。そのまま変なことを考えながら戦ってると………」
足立はバルクホルンに近づきながら言い、そして眼前でこう言った。
「いつか死ぬぞ?アンタ」
最高の挑発だった。あのバルクホルンを暴走させるには十分過ぎるぐらいの挑発だった。そして必然的にハルトマンと坂本の手を振りほどき殴りかかるモーションに入っていた。
「お前に……私の何が分かると言うんだああああッ!!!!」
そうハンガー中に響く声を上げながらバルクホルンは、足立の頬を力いっぱい殴り飛ばした。
「っ!!」
「足立くんッ!!」
「落ち着けバルクホルン!!!」
あまりの衝撃にペリーヌは思わず口を手で覆い、宮藤は人形みたく吹っ飛ばされた足立に駆け寄り、坂本は再びバルクホルンを抑えた。
「大丈夫!?足立くん!!」
「………………………」
「足立くんッ!!」
返事がない。まるで電池が切れたかのように動かない足立に宮藤の不安は高まった。がしかし、悪い予感は外れた。
「………あー………うっせぇよ………宮藤………」
「!!」
ようやく返事を返してくれた足立は、意識が朦朧としてるのか、上半身だけ起き上がろうとすると、フラフラな状態だった。
「あまり動かさないほうが……!!」
「……………………」
足立は満身創痍の状態ではあったが、視線の先はバルクホルンだった。
「ハァ………ハァ………ハァ………」
ハルトマンと坂本に抑えられているバルクホルンは肩で息をしていた。そして、殴った事により次第に落ち着きを取り戻しつつあった。
「………頭に上ってた血は引いたか?………バルクホルン」
「!」
殴られて口を切り出血もしているのにも関わらず、足立は挑発めいた事を口にした。
「多分………アンタの悩みは……これじゃ解決しないんじゃないか……?」
「私の………悩み……?」
言われて初めて気づいた。バルクホルンのモヤモヤした考え事は悩んでいるのではないかと。嫌悪感ではなく、悩みだと。
「解決したかったら………ま……た………話そ……う……ぜ………」
「あっ足立くんッ!!」
意識が再び無くなり倒れそうになる足立を宮藤は受け止めた。
「……………………」
意識を無くした足立を、バルクホルンはただただ見つめるだけだった。自分がしたことを、自分が抱えてる悩みは一体なんなのか。色々な感情が流れ込んできたが、その表情はひどく悲しそうだった。