ストライクウィッチーズ 大空の傭兵の軌跡   作:sontakeda

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第4話 だいっきらい Bパート

「……………ん……」

 

「足立くん!!」

 

その夜、ピアノやソファが置いてあるミーティングルームに、

足立はソファに寝かせられていた。そして目が覚めると、目の前には心配そうに見つめていた宮藤の顔が視界に入ってきた。

 

「良かったぁ………目が覚めて………」

 

「………別に死にはしないだろ」

 

「だって…………」

 

起き上がると、バルクホルンとエイラとサーニャ以外のメンバーが揃っていた。

 

「もう大丈夫なのか?」

 

「ご覧の通り、すっかり治ってるだろ?」

 

「それは宮藤の治癒魔法のおかげだからな」

 

状態の確認する坂本に足立は両手を広げながら自慢するかのように言うが、真実は違ったようだった。

 

「宮藤の?」

 

「怪我を見てたらいてもたってもられなくて……えへへ……」

 

「…………まぁ礼は言っとく」

 

足立からしてみたら「なんでそんな無意味なことを………」と思いかけたが、彼女の優しさを汲み取り、あえて口に出さなかった。

 

「美緒やエーリカから聞いたわ。貴方がトゥルーデに殴られたって」

 

「あのバルクホルンに殴られてよく生きてるな!ははは!!」

 

「あたしだったら逃げちゃうのにね!」

 

「………ふたりとも、ちょっと黙っててもらっていいかしら?」

 

『………はーい』

 

シャーリーとルッキーニの茶化す発言に呆れたミーナはふたりを口止めするよう黙らせた。

 

「足立さんが先に挑発したって聞きましたけど………なんでそんなことを…?そんな事をする人じゃ……」

 

「リーネさんの言うとおりよ。貴方はいつも何かしら考えて行動してる節があるわ。もしかして……今回も?」

 

「…………ああ、ありゃわざとだ」

 

『えぇ!?』

 

「思ったとおり………どうしてそんなことを?」

 

一同が驚いてる中、ミーナは予想通りの顔をしていた。それに対して足立は開き直った態度だった。

 

「頭に血が上ってたからだ」

 

「…………それだけなの?」

 

ミーナは拍子抜けした表情をした。

 

「軍人てのは頭に血が上りやすいやつばっかりって聞いてたからな。あの大尉もそうなんじゃないか?」

 

「まぁ、間違ってないな」

 

頷きながら肯定するシャーリー。

 

「そんなんじゃまともな会話も出来ないって思ったから、一発ぶん殴らせて落ち着かせたってわけだ」

 

「ずいぶん手荒なマネをするな………」

 

「あそこじゃあアレが1番手っ取り早いって思ったんだよ」

 

呆れる坂本に対して足立は笑い話するかのように語った。

 

「ていうかさ、聞いた話だけどバルクホルンの悩みって何だ?足立知ってるのか?」

 

「そういえば……そんな事も仰ってましたわね」

 

シャーリーの疑問にペリーヌは思い出したかのように肯定した。

 

「………知らないさ。けど、大方見当はついてる」

 

「と言うと?」

 

「俺さ」

 

「!、足立くんが?」

 

意外そうな顔をした宮藤。しかし、ミーナは心当たりがある顔をしていた。

 

「俺の存在が悩みの種ってとこだろうな」

 

「…………多分、そうね……」

 

視線を下に落としながらミーナは肯定した。

 

「今朝も、私のところに相談しに来たわ」

 

「だろうな」

 

「バルクホルン大尉は……やっぱり足立さんことが嫌いなんでしょうか……」

 

「……………………」

 

(たぶん嫌ってないんだよなー………)

 

なにか言いたげそうなハルトマンだったが、ここはあえて口に出さなかった。

 

 

「………嫌いかどうかはしんねぇけど、俺が引っかかってるってのは事実だ。そんな悩みを、一発で解決する方法もある」

 

「そうなの!?」

 

足立の前に居た宮藤は目を丸くした。

 

「気を失う直前に言ってたな。解決したければまた話し合おう、と。なにか秘策があるのか?」

 

「くっふふふ………ミーナ中佐」

 

不気味な笑い声を上げながら、足立はミーナの名を呼んだ。

 

「俺を部隊から……いや、俺を拘束して機関に差し出せ」

 

『ッ!?』

 

あまりにも突拍子もない発案にその場にいた全員が声にならない驚きをした。

 

「………どういうことなの?」

 

「まさか足立くん!バルクホルンさんのために自分をッ……!!」

 

「焦んな、これは条件付きだ」

 

「条件?」

 

条件と聞くとミーナは、反射的に足立を怪しむ目で見た。

 

「もしバルクホルンが、俺のことをまだ嫌い、憎いって思っているなら拘束して機関に差し出せ。けどそうじゃなかったら、俺は今までどおりここに居座るぜ」

 

「それは条件でもなんでもないのではないか?」

 

「立派な条件さ。俺とバルクホルンのケジメをつけるための」

 

「ケジメ?」

 

意図が見えない坂本は聞き返した。

 

「アイツは苦しんでる。俺が居ることによってな」

 

「苦しむ…………」

 

その言葉を聞いてミーナは今朝の部屋から出ていくバルクホルンの顔を思い出していた。

 

「そんな俺がいて、あの大尉が死ぬんだったら本末転倒だろ?だから大尉がどうしたいかを決めさせる」

 

「………貴方の意見はないの?」

 

「俺は………どっちでもいいんだ」

 

「えっ?」

 

足立は目をつむりながら清々しさを感じさせるほどのトーンで言った。

 

「俺は死ぬ気はさらさら無い。けどな、ウィッチにだったら別にいいと思ってる」

 

「どうしてそんな……」

 

「俺は本来存在しちゃいけないやつだ。だから、ネウロイを倒すウィッチにだったら文句はねぇよ」

 

足立は淡々と冷静に、自身の覚悟をしていることを打ち明かす。

 

「存在しちゃいけない……?」

 

「俺は元々死人だぞ?それをコアのおかげで生きながらえてるだけだ。死人は死人らしく、眠っていたほうがいい」

 

「……………それでも」

 

「?」

 

視線を下に向けたあと、再び足立に視線を戻す宮藤。その顔は真剣だった。

 

「それでも……自分は死んでいいなんて思っちゃいけないと思う。だって足立くんは、今もこうやって生きてるんだから」

 

「……………………」

 

「宮藤………」

 

「芳佳ちゃん………」

 

宮藤は真っ直ぐな目で足立に言った。その真っ直ぐな瞳に足立も坂本もリーネも、ここにいる全員が心を打たれた。

 

「………その話、受け入れるわ」

 

「ッ!!、ミーナ中佐!!」

 

「安心して宮藤さん。彼も言ってたじゃない、死ぬ気はさらさらないって」

 

「そうですけど………」

 

今までの話を聞く限りでは宮藤にとって安心出来る要素はなかった。

 

「トゥルーデに聞く前に、私からもひとつお願いがあるの」

 

「ん?なんだ?」

 

「トゥルーデに謝ってちょうだい」

 

「……………は?」

 

予想外な要求だった。足立は思わず間の抜けた声が漏れた。

 

「今までの話を聞く限りじゃ、悪いのは貴方のほうよね?」

 

「命令違反もしてるしな」

 

嫌味のように、ニッコリとした顔で言うミーナと余計な事を口にする坂本。

 

「そうですわね。私達を置いてけぼりにした罪もありますし」

 

「アハハ…………」

 

「そういえばそうだね」

 

置き去りにしたことを根に持っているのかペリーヌも嫌味ったらしく言い、リーネも思わず苦笑いし、ハルトマンも便乗し同意した。

 

「だってさ。どうする?足立」

 

「どうすんの?」

 

「うっせ!!」

 

シャーリーとルッキーニにからかわれてるように聞こえた足立はふたりに向かって吠えた。

 

「!、ねぇ足立くん!」

 

「あぁ?」

 

「私も一緒に謝ってあげようか?」

 

「……………………」

 

ひとりで謝りに行くのは恥ずかしいのかなと思った宮藤は、満面の笑顔で提案したが、足立にとってはバカにしてるようにしか聞こえないばかりか、ついには宮藤の額に力いっぱいのデコピンを喰らわせた。

 

「いっっったああい!!!なにするの!?」

 

「お前がバカにしてるからだろ!それにさっきの件もあったしな!」

 

「バカになんかしてないよ!!」

 

額を抑えながら涙目になりかけた宮藤は足立に抗議するが、足立もそれなりの理由を述べて正当化しようとしていた。

 

「それで、どうなの?」

 

「……………………わーーったわーーった!謝ればいいんだろ!謝れば!!」

 

「ふふ、そうそう。素直が1番だわ」

 

ミーナの圧力に屈した足立は渋々謝ることを決定し、足立の素直(圧力)さにミーナはニッコリとした。その場にいた全員はミーナの圧力の恐ろしさを垣間見たのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

一方そのころ、バルクホルンは自室のベッドで考え込んでいた。自分が何に悩んでいるのか、そして足立を殴った時の感情はなんだったのか。延々と頭の中で考え込むが、答えが見つからない。

 

(………アイツが言っていた悩み………私自身が気づかないことなのか……?)

 

足立が気を失う直前に言っていた言葉が引っかかっていた。

 

「解決したかったら話し合おう……か……」

 

(いったい今更何を話す気なんだ……?)

 

ベッドで横になっているバルクホルンは腕で目元を隠すように塞いだ。

 

すると、自室の扉から誰かがノックをしてきた。

 

「私よ、トゥルーデ。入ってもいいかしら?」

 

「………ああ」

 

バルクホルンの部屋に入ってきたのはミーナだった。入室するのと同時にバルクホルンは起き上がり、ベッドに腰掛けた。

 

「落ち着いた?」

 

「ああ………すまない。騒ぎを起こして」

 

「貴方は悪くないわ。彼のほうにキツく言っといたから」

 

優しい表情でウソをつくミーナ。実際は足立のほうに非があると認めたのでそこまで怒っていなかった。

 

「………ミーナ」

 

「なぁに?」

 

「私は……どうしたらいいのか分からない………」

 

バルクホルンの表情は酷く悲しげに落ち込んでいた。視線は下に向いたまま、いつもの元気さの面影もなかった。

 

「アイツを殴るまでは、人間の皮を被ったネウロイだって認識していた。だが………殴った感触は………人だった」

 

「…………………」

 

「倒れ込んだ姿を見て初めて気づいた。私が殴ったのはネウロイではなく、人間だったんだと……」

 

先程の出来事思い出しながら思ったこと口にしていくバルクホルン。それをミーナは真剣な表情で聞いていた。

 

「私は………アイツをどんな風に見ていいかもう………」

 

「……………………」

 

バルクホルンの握りしめる拳が強くなる。そんなバルクホルンを見てて辛い気持ちが込み上げてくるミーナは、ある決断をした。

 

「………さっき、足立君が言ってたわ。自分を拘束して機関に差し出せって」

 

「なんだとッ!?」

 

ミーナは足立が言っていた話し合いの件を先にバラしてしまった。

 

「どうしてそんな………ッ!!まさか!?」

 

「えぇ、貴方のためと思っての提案よ」

 

「私のため………?」

 

「自分が存在することによって、トゥルーデに被害が出るのなら、自らを差し出すのをいとわないみたいだわ」

 

「そんなの……………バカげてる………」

 

理由を聞いて動揺を隠せないバルクホルン。そしてミーナは続けて話した。

 

「ホントに………バカげてるわね。どっかの誰かさんみたいに」

 

「………?誰のことだ?」

 

キョトンとした顔でミーナに聞いた。

 

「貴方よ。宮藤さんに出会う前の」

 

「宮藤に、出会う前……?」

 

バルクホルンは自分が宮藤と出会う前が、どんな人間だったのかを思い出そうとしていた。

 

「貴方は戦争で妹さんを守りきれなくて酷く落ち込んで、あまつさえ死に場所を探していたでしょ?」

 

「…………ああ」

 

「彼と似てると思わない?死に場所を求めていた貴方と、味方になら殺されてもいい足立君と」

 

「!!」

 

そう言われてバルクホルンは閃くかのように気づいた。自分がなにに悩んでいたのか、ネウロイ以外の理由で足立を嫌っていた理由が浮上してきた。

 

今までの足立の言動を思い出していた。最初に出会い、心臓を撃ち抜けと言ったこと。独断専行をしていたこと、そして、味方になら殺されてもいいこと。ほとんどが自分に似ていることにバルクホルンは気づいた。

 

「そうか………そういうことだったのか………」

 

「トゥルーデ………」

 

バルクホルンのセリフに心配そうに見つめるミーナ。

 

「……………ありがとう、ミーナ。気づかせてくれて」

 

「!」

 

顔を上げたバルクホルンは憑き物が取れたかのように、明るい表情になっていた。

 

「私は、つまらないことで悩んでいたのかもしれないな」

 

「………そうかもね」

 

バルクホルンの表情を見て安堵したミーナは同意した。

 

「アイツは今どこにいるんだ?」

 

「もう寝てる時間よ?」

 

時刻は23時過ぎを指していた。とっくに就寝時間は過ぎている。

 

「そ、それもそうか………」

 

「……そんなに慌てなくても、彼は貴方に決めさせたいみたいよ?」

 

「私に?」

 

「貴方の決断なら文句は無いらしいわ」

 

「…………ふっ、全く。覚悟を決めているのか信用してくれているのか分からんな」

 

「ふふふっ、そうね」

 

久しぶりにふたりが笑った。ここ最近はひりついた空気が続いていたが、いまこの空間は暖かな雰囲気に包まれていた。

 

 

 

 

 

 

「んで、なんでお前もいるんだよ」

 

「なんか目が覚めちゃって」

 

「そういうことじゃねぇよ……」

 

翌日の早朝。宮藤と足立が並んで宿舎の廊下を歩いていた。まだ誰も起きてないと思い足立は部屋を出たが、偶然廊下を歩いていた宮藤と出会ってしまい、事情を聞くと宮藤も付いていくことになった。

 

「足立くんが謝りに行くって昨日聞いて、懐かしい夢を見たんだ」

 

「夢?」

 

「うん。小さい頃お母さんとケンカしちゃって、私そのまま家から飛び出しちゃったんだ」

 

「ふーん」

 

夢の内容を楽しそうに語りだした宮藤に対し、足立は興味なさそうな相槌をうった。

 

「けど、冷静になって考えたらお母さんは私のために叱ってくれたんだなって思って、謝らないとって思ったの」

 

「…………………」

 

「それで夜になって家に帰ると、また怒られるんじゃないかなって思ったんだけど違ったの」

 

「違った?」

 

「お母さんは泣きそうな顔で心配しててぎゅうって抱きしめてくれたんだ」

 

「…………怒ってなかったのか」

 

「うん。私も泣きながら謝ってたんだけど……えへへ。お母さんも言い過ぎたって言って謝ってた」

 

自分の過去を宮藤は頬をかきながら照れくさそうに話していた。

 

「とんだ自慢の親子愛ですこと。俺への自慢か?」

 

「ち、違うよ!そうじゃなくて!」

 

自分に向けられた嫌味に宮藤は怒りで眉がつり上がった。

 

「バルクホルンさんも謝りたいんじゃないかなって」

 

「!」

 

「ホントは仲直りしたいんじゃないかなって思うの」

 

「…………どうだかな」

 

(………また訳のわからないことを言いやがって………)

 

足立が基地に来て1週間以上は経過したが、未だに宮藤には慣れない様子。抜けたところがあるかと思いきや鋭いところを突いたりもして足立には理解し難かった。

 

バルクホルンの自室に向かって廊下を歩いていると、意外な人物に出会った。

 

「!」

 

「バルクホルンさん!」

 

「…………………」

 

何かを決意したかのような表情でやってきたのはバルクホルンだった。

 

「………丁度良かった、大尉に用があったんだ」

 

「奇遇だな。私もキサマに用があったところだ」

 

「ハハッ、てことはミーナ中佐から話は聞いてるってことだな?」

 

「あぁ、全て聞いた。私が決めていいんだな?」

 

「そういうこった。俺が決める権利なんて無いからな」

 

「…………………」

 

ふたりの会話には張り詰めた空気が漂っていた。

 

「………ただ、決める前に言っとくことがある」

 

「?、なんだ」

 

「………あー……その…………なんだ………」

 

「足立くん!頑張って!」

 

「うっせ!!分かってら!!」

 

「?」

 

足立が何かを言い淀んでいると隣にいる宮藤がエールを送るが、足立には余計なお世話だったらしい。その様子をバルクホルンは首を傾げながら傍観していた。

 

「…………その……悪かった……」

 

「!」

 

不満そうな声でやっと出せた謝罪の言葉。それを聞いてバルクホルンは目を丸くしていた。

 

「……アンタを怒らせたのはわざとだ。殴らせて落ち着かせるためのな」

 

「………………」

 

「けど、アンタに酷いことを言ったのは事実だ。それは変わらない。だから……謝る。悪かった」

 

謝罪することに慣れてないのか、足立の謝罪は端切れが悪かった。

 

「………足立くん、謝ってるのになんかエラそうだよ?」

 

「ちゃんと謝ってるだろうが!!他にどう謝れってんだよ!!」

 

宮藤の横槍に足立が噛み付いた。その噛みつきように宮藤は少したじろいだ。

 

「………ふっ…ふふふ……」

 

『………?』

 

笑いを堪えるかのように口元を指で抑えるバルクホルンに宮藤と足立はポカンとしていた。

 

「いや、同じことを考えていたなと思ってな」

 

「同じこと?」

 

「私もすまなかった。怒りに身を任せたとはいえ、殴ったのは事実だ。そして………もうひとつ」

 

「…………もうひとつ?」

 

宮藤の予想通りで少し驚いていた足立だが、その先は予想外だったようだ。

 

「私がお前を拒絶していたのは、前の私を見ていたようだからだ。宮藤と出会う前のな」

 

「私に出会う前……ですか?」

 

「ああ、私は故郷も妹も守れなくて荒んでいた。そしてついには死に場所を探していた」

 

「……………………」

 

バルクホルンと足立の表情は真剣そのものだった。

 

「私には何も残っていないんじゃないかって考えていたとき、宮藤が現れた」

 

「あっ………」

 

宮藤は何かを思いだしたかのような声が出た。

 

「瀕死になった私を宮藤は見捨てなかった。妹のために戦えと言われたとき、私は目が覚めた。私が何故戦うのかを思い出させてくれたんだ。ありがとう、宮藤」

 

「いえそんな………」

 

照れくさそうに反応をした宮藤。そんな横にいる足立は正反対に眉間にシワを寄せていた。

 

「…………んで?どこが似てるんだよ?」

 

「似ているだろ?死にたがりのところが特に」

 

「俺は別に死にたがりじゃ……」

 

「ウィッチになら殺されてもいいのにか?」

 

「………………」

 

事実を突きつけられて黙り込む足立。

 

「死に場所を探す私と、殺されてもいいと思うお前。考え方は違うが、同じ死に向かっている。似たもの同士だとミーナに言われたさ」

 

次第に表情が暗くなり顔を伏せるバルクホルン。だが、次に顔を上げたときは元の真剣な表情に戻っていた。

 

「だからこそ、お前を見ないように、目を背けてしまったんだ。ホントにすまかった」

 

「バルクホルンさん………」

 

「………………」

 

深々とお辞儀をし謝罪するバルクホルンに、宮藤に、足立にも真剣さが伝わってきた。

 

「………私の答えを言う前に、上官として……ひとつ命令をきいてくれないか」

 

「……なんだ?」

 

「……ウィッチになら殺されてもいいなんて思うな。私たちは……仲間だ」

 

「!!、バルクホルンさん!!」

 

その命令の意味に、宮藤は喜んだ声で名を呼んだ。

 

「………拒否権は?」

 

「上官命令だ」

 

「…………ふっ」

 

バルクホルンがしたり顔で返すと、足立は目をつむり、不敵の笑みを浮かべ鼻で笑った。

 

「………ハハハ、なーんだそりゃ……命令でもなんでもねぇじゃねぇか……」

 

目元を手のひらで覆い顔を上げながら、足立はあざ笑うかのように言った。しかしその手で覆ってる中にキラリと光る何かが見えた気がした。

 

「けど………命令は絶対、なんだよな?」

 

「そうだ」

 

その確認の意味は無意味に等しかった。しかし、足立は確認したくてしょうがなかった。その命令に従う意味をハッキリさせるために。少し黙り込んだのちに、足立は口を開いた。

 

「…………了解だ。バルクホルン大尉」

 

覆っていた手を離すと、そこには何か吹っ切れたようにスッキリとした足立の表情があった。それを見て宮藤とバルクホルンは安堵した表情を浮かべていた

 

しかしそれは突然やってきた。襲撃のサイレンが基地全体に鳴り響いた。

 

「ネウロイ!?」

 

「連日に襲ってくるだと!?」

 

「お早いこった!!」

 

足立がハンガーに向かって走り出すと宮藤とバルクホルンはそれを追いかけるように走った。

 

 

 

 

 

 

カールスラント方面から現れたネウロイに向かって出撃したのは坂本、ミーナ、バルクホルン、宮藤、足立の5人のみだった。

 

「今飛べる者がこれだけとはな」

 

「仕方ないわ。連日に襲ってくるなんて想定外だもの」

 

悔しそうな声でメンバーを見渡している坂本と、なだめるように今の状況を受け入れるミーナ。十分な戦力ではないことに少々不安が募っていた。

 

「いや、これだけいれば十分だ」

 

「わ、わたしも…頑張ります!!」

 

「とか言って、既に疲れてんだろ」

 

「そ、そんなこと………!!」

 

図星を突かれて必死に否定しようとする宮藤だが、魔法力が回復しきってないせいもあって、肩で息をしているのが伺える。足立はその様子を見逃さなかった。

 

「宮藤、あまり無理をするな。でないと事故に繋がりかねないからな」

 

「で、でも………!!」

 

宮藤のことを思い、バルクホルンは止めようとするが、意固地な宮藤は無茶をしてでも戦おうとしていた。

 

「坂本少佐、ひとつ提案があるのですが」

 

「なんだバルクホルン」

 

「私と足立で先行させてもらえませんか?」

 

『えっ!?』

 

唐突な提案にミーナと宮藤は思わず声を上げた。

 

「………大尉、マジで言ってるのか?それは」

 

「私はいつだって大真面目だぞ」

 

「………へっ!どうなっても知らねぇからな!」

 

バルクホルンと足立は共に不敵の笑みを浮かべていた。その様子を見た坂本も安心したのか口元がニヤけた。

 

「よし、許可しよう」

 

「ありがとうございます!」

 

バルクホルンがお礼を言うと、足立と共に先にいるネウロイに向かって飛んでいった。

 

「ちょっと美緒!!ホントにふたりだけで行かせるの!?」

 

相談も無しに決められ、声を荒げるミーナ。しかし坂本の表情は正反対に笑っていた。

 

「心配するなミーナ。あのふたりの顔を見ただろ?」

 

「それはそうだけど………」

 

「バルクホルンはもちろん、足立もエースを張れる実力を持っている。普段と変わらないってことさ」

 

普段と変わらない。それはハルトマンとバルクホルンのエースふたりが組むのと同義という意味を示していた。

 

先行していったバルクホルンが先頭で進んでいくと、先にいるネウロイの大群をその目で確認した。

 

「ネウロイを確認!小型が複数!!どうみる?足立」

 

「まぁまぁ数はいるが、少佐の訓練に比べたら楽だな」

 

「全く……口が減らない男だなお前は……」

 

いつもの軽口に戻っている足立にバルクホルンも呆れる様子。だが、不思議と今は気分が悪いとは感じなかった。

 

「んで?何か作戦あるのか?」

 

「そうだな、足立、自由に飛んでみろ」

 

「………は?」

 

バルクホルンらしからぬ命令に思わず間の抜けた声が出てしまった足立。

 

「お前は縛られて飛ぶタイプじゃないはずだ。だから自由にやってみろ。私が合わせてやる」

 

「………そりゃつまり、俺には簡単に付いてこれるってハナシか?」

 

「ふん、当然だ」

 

足立の飛行は暗に容易いと言いたげそうな言い回しで、得意げな顔でバルクホルンは鼻を鳴らした。しかし足立はそれが逆に胸を高鳴らせる起爆剤となった。

 

「ハハッ!!言ったな?後悔しても知らねぇからな!!!」

 

ストライカーボードの魔導エンジンが唸りを上げると、足立は飛び出すように加速させた。

 

「相変わらずの加速力………だが……」

 

バルクホルンもそれを追うようにストライカーを加速させた。

 

「それより早いヤツを私は知っている!!」

 

1機目のネウロイにぐんぐんと近づく足立。ネウロイがビームを放とうとしたときには足立の射程圏内、いや、切り裂ける圏内に入っていた。

 

「オラァッ!!」

 

身体とボードをコマのように回転させ、そのまますれ違うのと同時に斬りつけた。しかも1機だけでなく2機同時に倒していた。

 

「次だッ!!」

 

息をつく暇もなく次のネウロイに標的を合わせた。

 

「伊達にひとりで戦ってきただけはあるな!だが………!!」

 

足立が次のネウロイに向かおうとした時、別のネウロイから狙われているのをバルクホルンは気づき、それを両手のMG42で撃ち落とした。

 

「倒す順序を間違えているぞ!」

 

「それはアンタが倒してくれると思ったから無視したんだよ!!」

 

「そんなのは言い訳にしかならんぞ!!」

 

ふたりはケンカするような言い合いをしてるが、動きはしっかりネウロイを仕留めている。お互いの動きを見極め、初めて組むとは思えない働きをしていた。

 

「ッ!!足立!!後ろだ!!」

 

「!!、ならそっちやらせてもらうぜッ!!」

 

お互いの後ろにネウロイがいることを確認すると、互いの場所を入れ替わり、それぞれのネウロイを撃破した。

 

「アイツで最後だッ!!」

 

「俺がやるッ!!」

 

バルクホルンの視線の先には残り1機だけになったネウロイがポツンと残っていた。足立は切り落とすために向かうが、ネウロイのほうが先にビームを発射した。

 

「へっ!!今更そんな攻撃………ッ!?」

 

足立は辛うじてビームを避けたが身体に痛みを感じた。特定の部分、コアのある心臓部に痛み走ってきた。

 

「ぐっ……!!おいおいマジかよ………!!」

 

「足立ッ!!」

 

足立の異変に気づいたバルクホルンは、足立からビームの攻撃を守り、最後のネウロイに向けて銃口を向けて撃った。

 

「うおおおおおおッッ!!今だ!!足立ッ!!」

 

「……了解だッ!!!はあああああッ!!!」

 

バルクホルンのおかげでコアが露出し、足立は再び刀を強く握り直すと、最後の力を振り絞るかの如く、コアを切り裂いた。

 

「コアを破壊したぞッ!!」

 

胸の痛みを抑えながら、インカムでコアを破壊したことを伝える。

 

ネウロイを倒したと報告を受けた3人はポカンとした表情で驚いていた。

 

「………ふたりだけで……」

 

「とんでもないわね………」

 

「はっはっはっ!!頼もしいじゃないか!!」

 

唖然とする宮藤、その驚異に驚くミーナ、前向きに捉える坂本とそれぞれ別の反応を示していた。

 

ネウロイを倒したのち、バルクホルンは足立の様子がおかしかったことを心配し、すぐさま駆け寄った。

 

「足立!!大丈夫か!?なにかあったんじゃ……」

 

「あーあ、余計なことをしてくれやがって」

 

「………は?」

 

なにかあったんじゃないかと心配するバルクホルンを他所に、足立は愚痴を吐くように口を開いた。その様子にバルクホルンは呆気に取られた。

 

「今のは俺ひとりでも倒せてたのに。ま、礼は言っとくよ。バルクホルン大尉」

 

「…………き」

 

「?」

 

「キサマというやつはああああああッッ!!!」

 

まるで心配していた自分がバカみたいに、バルクホルンの怒りは爆発した。

 

「上官に対する敬意というものはないのかキサマはッ!!!」

 

「そんなのあるわけないだろ」

 

「開き直るなバカモノッ!!!」

 

インカム越しでケンカする2人を、3人は聞いているしかなかった。

 

「もう、せっかく仲良くなろうとしてたのに……」

 

「いや、あれはあれでいいかもしれないな」

 

「良くないわよ……全く………」

 

呆れ果てるミーナを他所にふたりは未だにケンカしていた。そして最後にはバルクホルンの本心がインカム越しからじゃなく、直接耳に届いて聞こえた。

 

「やはりお前なんか……だいっきらいだあああああああッッ!!!」

 

それがバルクホルンの本心、いや、照れ隠しに近い本心なのかもしれない。今までとは違う拒絶の仕方だった。口に出して、本心を伝えたのだから。この日からふたりは、互いを隊員同士と認め合ったのだった。

 

 

 

つづく




お疲れ様です。

第4話ということでバルクホルン回です。ここまでで1番悩みました。昔からだったんですがシャッキーニとバルクホルンが1番話作りが苦手なんです……
ですが決して嫌いなキャラじゃないので楽しくなるように頑張って書こうと思います。
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