ウェイストランドで生き延びます 作:とっつき
今後の話の展開とか特に考えずに勢いで書いてます。
校正も取りあえず書き上げた後に通しで読んだだけなので見落とし多いかと思います。変なところがあったら誤字脱字報告機能の方を使っていただけると幸いです。
「おい、調子はどうだ新入り」
銃の手入れと、弾倉の弾込めをしていると後ろから声をかけられた。
振り向くと禿頭に黒いひげをたっぷりと蓄えた大男がニッと歯を見せて笑い、佇んでいた。
「えっと……」
「“ダグ”だ。おいおい、そろそろ覚えてくれないと、おっさん悲しくなっちまう」
「すんませんっス」
俺が申し訳なさそうに謝ると別に怒ってねえよ、と笑いながらバンバンと背中を叩いてくる。
「どうだ、緊張してるか?」
「まあ……はい。多少は」
「だろうな」
今日、俺は生まれて初めて“鉄火場”というやつに挑む。
とあるキャラバンからの依頼で、商品を売った帰りのルートを護衛をすることになった。ここ数回、とある街への定期便の帰りに必ず
だが、その街へコンボイで通れる道はそのルート一本しかなく、ルートを変えるに変えられないらしい。
「そう肩肘張らなくてもいいぞ。キャラバンのお抱え護衛だっているんだ。あいつらは歴としたプロだ。俺たちの何倍も鉄火場を潜り抜けてる」
「けどその護衛だけじゃ頭数が足りないから俺たちが雇われたんスよ。それに俺たちは奴隷です。なんかあった時に見捨てられるんじゃないかって気が気じゃないんです」
「またそれか。お前、いつの時代の奴隷の話してんだよ」
俺とこのダグは奴隷だ。とある奴隷商に買われ、その奴隷商が護衛の依頼を受け、俺とダグを含めて総勢10人の奴隷をキャラバンに派遣した。
今は
「お前がどんな田舎で育ったのか知らんがな、今の時代の奴隷ってのは貴重な労働力なんだ。ボスが俺たち奴隷を労働力として貸し出す代わりに、借主はそれを可能な限り元の状態でボスに返さにゃならん。あくまで貸し出してるのは俺たちの労働力だからな」
ダグが俺に、これまで何度も話しただろう?と半ばあきれ顔で話す。
「労働力ってのはそれを使ってる間は別の事に回せないけどな、使い終わったら無くなるってもんじゃない。ある人間に畑仕事をさせたからって翌日別の仕事が出来なくなるわけじゃないだろう?だから、奴隷は借りたら返す必要がある。戦いだって同じだ、即死だとかじゃなければ、負傷したやつを見捨てて賠償金を払うよりは助けて連れ帰る方が安くつく」
「それはそうだけど、俺の故郷じゃ奴隷はその生死も持ち主の自由って言うような状態のときに使う言葉だったんスよ」
「ほんっと、一体どんな田舎生まれなんだよ、お前は」
ダグの言葉に、俺は答えることが出来ない。俺は故郷がどんな場所だったのか覚えていない。
いや、覚えてはいるのだ。故郷の知識や価値観、文字や言葉は覚えている。だが、そこで俺がどんな環境でどんな生活をしていたのか、これが全く思い出せない。妙な話だ、おれ自身そう思う。
俺が苦笑いをしているとダグが言葉をつづけた。
「まあ、何度も言うけどな。今回の仕事は楽なもんだ。野盗との戦闘は基本的に護衛連中がやる。俺たちはその間の連中の補佐だったり、トラックに野盗がとりついた時に荷台からこん棒でぶっ叩いて落とすだけだ」
「ウッス」
「それにな、ここいらでの野盗ってのは大抵がハッパでラリってる。意味もなく銃を撃ってるだけで、あたりゃしない」
「そんなもんなんスか?」
「ああ、俺は似た仕事を何度かやってる。正直、怪我する方が難しいぜ」
「って話はなんだったんスか!ダグゥ!」
「いやー、スマン。まさかここまで
ダグとの会話から数時間後、俺は荒野を横切る古い舗装道路を爆走するコンボイの中の、最後尾のトラックの荷台にいた。さらに後方にはこちらへ銃撃してくるバギーが5台。
出発前のダグの話とは打って変わって、コンボイを襲撃した野盗はハッパでラリるどころか、的確にこちらを銃撃し、既にキャラバンの護衛を3人撃ち抜いている。
死者こそまだ出ていないが、撃たれた護衛は重傷でとても戦えそうにない。
俺たち奴隷組も既に5人やられ、全員がひとまずの止血だけされてトラックの荷台に寝かされていた。
「おい、護衛のアンタ!普段こいつら相手にどうしてんだ!?」
ダグが脇で銃撃から伏せている護衛に怒鳴った。
「普段?普段だと!?ふざけるな、こいつらいつもの奴らじゃねえ!」
「何だと!?」
「どいういう事ッスか!?」
護衛の言葉に、ダグは顔を顰めてさらに怒鳴り返した。俺もその言葉に驚き、叫ぶ。
「こいつら南の港町を拠点にしてる、うちとは別のキャラバンだ!商売敵だよ!」
「じゃあこいつらの狙いは、金じゃなくてアンタらの命か!そんでアンタらの流通ルートを奪う気か!」
「ああそうだ!しかも連中、あちこちのルートで他のキャラバンを襲ってるって話だ。しかも護衛諸共皆殺しでな!」
「はぁ!?じゃああいつら撃退しなきゃ俺らも殺されるんスか!?」
「多分な!」
そう叫ぶと護衛は立ち上がり、銃を構える。
このトラックは、トレーラーの荷台の上半分を切り取って、残った下半分に防弾用の鉄板を溶接している。
護衛は敵が一通り弾倉を撃ち切って出来た隙に、その鉄板から上半身を出し、トラックの後方にまとわりつくバギーの1台にフルオートでアサルトライフルを撃ち放つ。
銃撃を受けたバギーはトラックから距離を離すが、撃破には至らない。
「クソッ。連中、正面はガチガチに固めてやがる。これじゃいくら撃っても埒が明かん」
敵のバギーは、側面と後方こそフレーム丸出しの4輪バギーだが、正面と座席をかばうように何枚もの鉄板を車体に取り付けていた。
「タイヤはどうだ?」
「ダメだ。狙ってるが、こっちが銃を構えた途端に蛇行して狙いが定まらない。それにタイヤ自体がこっちからじゃ殆ど見えない」
「手榴弾とか無いのかよ」
「あるにはあるが、数個だ。それにあるのはフラグだ、あのバギー相手じゃ大したダメージにはならない」
ダグと護衛が互いにこの状況を切り抜けるために頭を捻る。
俺も何か方法をはないかと周りを見渡した。だが、目につくのは先ほどの街での取引で得た金の入った袋、車両整備用の工具や油、途中の休憩中に見つけて仕留めて食った動物の残りとその時使った
「ライフル!」
「なんだ、どうした」
俺の叫びにダグが反応する。
「ライフルだよダグ!連中のバギーの装甲板はドライバーのためにスリットがある!そいつをライフルで撃ち抜くんだよ!」
「撃ち抜くだあ?そりゃあスリット越しにドライバーを撃ち抜けばクラッシュするだろうけどな、そんな事出来る奴がいるか?」
「俺だ!俺がやる」
ダグのもっともな意見に、俺は自信を持って答えた。
何故かはわからない。だが、俺にはやってのける自信があった。
「わかった、仮にあの小さなスリットをお前が狙撃出来るとしよう。だが、狙いをつけるまでに撃たれるし、1台潰せてもその間に他の車両に撃たれるぞ」
「大丈夫だ、考えがある 」
俺は作戦と言うにはあまりにもお粗末な、失敗したときのことを何も考えていないような作戦を2人に話した。
「なるほど、確かに上手く行けばまとめて連中を撃退出来るだろうな。けど、おい
傭兵の悪態交じりの言葉に、ジロリとにらみながらダグは答える
「分からん。実をいうとコイツと組むのは初めてなんだ。けど、まあ、自信があるのは確かのようだし他に良い手も思いつかん。やってみよう」
「今だ!全員撃て!」
作戦その1、まずは敵の隙を突き、俺以外の残存戦力全員で荷台から銃撃を加える。それも横に広がる敵バギーの両端の車両から。
「撃破する必要はねえ、敵を出来るだけ抑えこめ!」
走行する舗装道路は広いがそれには限りがあり、その外側は瓦礫が広がる荒野だ。とてもバギーで道路の外へ逃げ出すことはできない。
車列の両端を銃撃されれば必然、車列から下がり他のバギーの陰に隠れる事になる。それを何度か繰り返せば、敵バギーは横一列から円形に車列を変える
作戦その2、
「次!手榴弾!」
その円形に固まったバギーに向けて手榴弾を一斉に投げる。
キャラバンに用意されていた手榴弾は
だが、それでもタイヤのゴムは貫くし、側面から晒されている搭乗員は殺傷出来る。
であれば、それを正面に投げつけられたバギーはどうするか?
「よし、連中離れたぞ!」
バギーは手榴弾を避けるため、こちらから距離を取った。
「頼んだぞ新入り!」
作戦その3、
後方へ距離を開けたバギーの、マシンガンで援護しながらダグが叫ぶ。
俺は先頭車両へ向かってライフルを構え、アイアンサイトで狙いをつける。
1発目、スリットの下へ当たった。
2発目、スリットの同じ高さにあったバギーのミラーを吹き飛ばした
「おい大丈夫なのか!?」
護衛がアサルトライフルを撃ちながら声を震わせて叫ぶ。
「大丈夫、これで 決める」
3発目、狙いは寸分違わず、先頭バギーのスリットを通り、運転手の頭を撃ち抜いた。
その直後、バギーはぐらりと車体を揺らしてクラッシュ。周りの車両も巻き込んで大爆発を起こした。
のがもう3年前。
あの後も生き残った残党に何度も襲撃を受けて辛くも拠点の街へ帰り着いた。
あの時見せた狙撃の腕を買われて、あれからは銃撃戦が起きそうな仕事を優先的に回されるようになった。
結局あれ以上の修羅場を何度も潜ることになった。無事生き残ってよかったのか悪かったのかなんだかよく分からない。
今日は久々に平和な仕事だ。街の肉屋に頼まれて、商品の肉用に動物をいくらか狩ってくるだけ。
日が昇って気温が上がり始めた頃に森に入って、既に鹿を二頭仕留めた。今は納品するため解体の途中である。鹿の足にロープを繋ぎ、木に結んで川に沈める。肉を冷やしながら腹を捌いて内臓を取り出し、あとは冷え切るまで川にさらしておくだけ。
何とも簡単で平和な仕事だ。俺はロープを結んだ木にもたれかかって座る。
「このまま何事もなく、納品して、あとは寝て過ごすかな?」
そんな事を呟いたのがいけなかったのだろうか。
川の鹿の様子を見ようと目線を向けると、
着弾の衝撃で俺はもたれた木の根元ごと吹き飛ばされた。
何度も体を打ち付けて、ようやく止まる。
スリングで体に留めていたライフルを構えて膝立ちになる。
銃口をミサイルに向けると、ミサイルに思えたそれはよくよく見ればミサイル型のカプセルだった。
「な、なんだあ!?」
我ながら情けない声を出した。でもわかってほしい、ある日急に空から何かが降ってきてそれに殺されかけたのだ。情けない声の一つも出すものだろう。
堕ちてきたカプセルは、衝撃で吹き飛ばされた川の水位が上がるとともに徐々に水に飲まれていくが、それ以上何の動きも見せない。
意を決してカプセルに近づいてみる。
深さが精々俺の太もも程度までとはいえ、幅10メートルはある川の水を吹き飛ばし、クレーターを作っているのだ。だが、近づいてみるとこれだけの衝撃を受けたにも関わらず傷やゆがみなど一切見当たらない。
「何がどうなってんだ?」
ライフルを構えたまま困惑していると、今度こそカプセルが動き出した。
プシュ!っと言う音とともに、カプセルが何かの気体を吐き出す。すると次の瞬間、カプセルの側面が観音開きに開いた。
恐る恐る中を覗けば、全裸の女が横たわっていた。
「本当、何がどうなってるんだ?」
俺は再び同じことを呟きながら、視界の端で無残に粉々になった
お読みいただきありがとうございます。