今回の話は交響魔人先生(以下先生)の作品「猫シンクロ使いが行く遊戯王GX!」(以下猫シンクロGX)とのコラボであり、猫シンクロGXの「第23話!さらば、デュエルアカデミア!丸藤翔、退学!」の彩葉VS翔のデュエルパートを「もしも彩葉がサイバー流デッキで翔とデュエルしたら」という題材にちょっとした+αを書き下ろしで追加して書かせていただきました。
もちろん先生からの許可は取った上で、作品内容に関しては先生に監修していただいております。
そのため猫シンクロGXを読んでいただいた上で読んだ方が楽しめると思います。
少なくとも本作投稿時点で猫シンクロGXで丸藤翔が登場している第11話と第23話だけでも読んでおいた方が「どうして翔はこんな事になってるの?」という理由がある程度でも分かると思います。
ある小さなデュエルモンスターズの大会の準決勝戦。大きなブーイングの中――準決勝に入るまでさんざん対戦相手のルール上問題のないプレイングを「リスペクトがない」と批判してきたのだから是非も無し――で、才災の教えを受けたデュエルアカデミアの卒業生でサイバー流の一人――
「魔法カード[パワー・ボンド]! 手札の[サイバー・ドラゴン]三体を融合し、現れろ[サイバー・エンド・ドラゴン]!! さらにパワー・ボンドの効果で融合召喚されたモンスターは元々の攻撃力分、自身の攻撃力がアップする!」
サイバー・エンド・ドラゴン 攻撃力:4000→8000
出現するのはサイバー流の切り札であるサイバー・エンド・ドラゴン。さらにその攻撃力は倍になり、才盾はクククと笑って対戦相手である黒ネコミミパーカーを着てネコミミ付きフードを被った少女を見た。
「これでトドメだ! サイバー・エンド・ドラゴンでゲート・キーパーを攻撃! サイバー・エンド・ドラゴンは貫通効果がある! いくらお前が未だに無傷でも、守備力1800のゲート・キーパーでは耐えきれまい! エターナル・エヴォリューション・バーストォ!!」
サイバー・エンド・ドラゴンの三つの頭から放たれる光線がゲート・キーパーを一撃で粉砕、勢い衰えぬまま黒ネコミミパーカーの少女へと向かっていく。その瞬間彼女の場の伏せカードが翻った。
「ダメージ計算時にトラップカード[パワー・ウォール]発動♪ 相手モンスターの攻撃によって自分が戦闘ダメージを受けるダメージ計算時に発動できて、その戦闘で発生する自分への戦闘ダメージが0になるように500ダメージにつき一枚、自分のデッキの上からカードを墓地へ送る。私が受ける戦闘ダメージは6200、これが0になるように500ダメージにつき一枚、つまり十三枚のカードを墓地に送って、今回の戦闘は無傷で終了。残念でしたー☆」
十三枚のカードによって形成された障壁がエターナル・エヴォリューション・バーストの一撃から少女の身を守る。だがその光景に才盾が目を剥いた。
「自分の身を守るためだけに自分のデッキを破壊するなんてリスペクトに反する行為だぞ! 恥を知れ!!」
「あはは☆ 何それ攻撃が通らなかったからって文句言わないでよー。対策取ってない方が悪いんじゃん♪」
「リスペクトに反する奴が開き直るなんて見苦しい。だが、これでお前の場の
サイバー・バリア・ドラゴン ×3 攻撃力:800
「く……」LP4000→1600
「俺はメインフェイズ2に[サイバー・ジラフ]を召喚し、リリースをして効果発動。このターン俺が受ける戦闘ダメージを0にする。これでパワー・ボンドのデメリットは実質無効になる」
なんだかんだでパワー・ボンドでの自爆はしないように立ち回った才盾は、自慢げに笑いながら己の陣形を見せびらかすように両手を広げた。
「どうだ、俺の鉄壁の布陣! パワー・ボンドにより攻撃力が倍になったサイバー・エンド・ドラゴンと、それを守る三体のサイバー・バリア・ドラゴン! このターンはしのがれたが、サイバー・ジラフの効果でこのターン受ける俺の効果ダメージは0! 次のターンこそ終わらせてやる! ターンエンドだ!」
サイバー・バリア・ドラゴンは攻撃表示で場に存在する時、相手モンスターの攻撃を一度だけ無効にする。それが三体、つまり三回相手の攻撃を無効にすることが出来る。
そして今才盾の相手である黒ネコミミパーカーを着てネコミミ付きフードを被った少女の場にモンスターはいない以上、この防御を破るだけでも至難の業。かと言って守備を固めても次のターン、貫通効果持ちのサイバー・エンド・ドラゴンで終わりになる可能性は極めて高い。まさしく絶体絶命という状況だ。
「……クスッ」
「ふん、負けを理解しておかしくなったか?」
少女の口から漏れた笑い声を聞いた才盾の言葉に、少女は答える。
「守りはサイバー・バリア・ドラゴン三体だけ、伏せカードはなし、展開に必死になりすぎて手札もなし。この程度で鉄壁の布陣なんてお笑いだな~って思っただけだよ。おにーさん☆」
「な、なんだと貴様!?」
「私のターン、ドロー」
少女の答えに才盾が憤るも、少女は構わずにカードをドロー。彼の攻撃の中でも温存していた事で保持に成功したドローカード含めて五枚の手札と二枚の伏せカードをちらりと確認、続けて僅かに口角を持ち上げて微笑。
「このターンで決めてあげるね♪」
そして深く被ったフードの奥から赤い眼光を覗かせて勝利宣言。辺りがわぁっと盛り上がった。
「ふはははははは! 俺の鉄壁の布陣を破れる者などいるはずがない!!」
「あは♪」
彼女の言葉を冗談か負け惜しみの類と受け取ったか高笑いをする才盾に対し、少女も口元を歪ませて笑みを見せる。
「私は魔法カード[黙する死者]を発動。墓地から通常モンスター[振り子刃の拷問機械]を守備表示で特殊召喚」
振り子刃の拷問機械 守備力:2000
少女の場に現れるのは拷問機械の名を持つ一体のロボット。しかしその守備力はサイバー・エンド・ドラゴンには遥か及ばず壁にもならない。と才盾は勝ち誇った笑みを見せている。
「魔法カード[トランスターン]。自分フィールドの表側表示モンスター一体を墓地へ送り、墓地のそのモンスターと種族・属性が同じでレベルが一つ高いモンスター一体をデッキから特殊召喚する。私は振り子刃の拷問機械を墓地に送り、機械族・闇属性のレベル7モンスターをデッキから特殊召喚する」
振り子刃の拷問機械が魔法陣の中に消え、その中から新たな機械モンスターが出現する。黒光りする機械的な身体に頭部と両腕が銃になっている、いわば
「おいで、[リボルバー・ドラゴン]。さらに魔法カード[死者蘇生]発動、墓地から[ブローバック・ドラゴン]を特殊召喚」
リボルバー・ドラゴン 攻撃力:2600
ブローバック・ドラゴン 攻撃力:2300
「リ、リボルバー・ドラゴンにブローバック・ドラゴンだと!? それはリスペクトに反するカードだ!」
「リスペクトに反する?」
「その通りだ! コイントスを三回して、二回表を出すだけでなんのデメリットもなくモンスターやカードを破壊する。戦闘すらせずに効果破壊なんてリスペクトに反するに決まっているだろう!」
才盾がまるで親の仇でも見ているような目でリボルバー・ドラゴンとブローバック・ドラゴンを睨みつけ、糾弾する。しかし周りの観客から同意は得られず、むしろ嘲笑が向けられて才盾がぐぬぬと唸り声を上げた。
「心配しなくてもリボルバー・ドラゴン達の効果は使わないであげるよ? その代わり――」
ため息一つと共に、少女の場のカードが翻る。
「――トラップカードオープン、[ロスト・プライド]。手札の魔法カード一枚を墓地に送り、相手の墓地にある魔法カード一枚を手札に加える。私は魔法カード[オーバーロード・フュージョン]を墓地に送る。そして、あなたの墓地から[パワー・ボンド]を手札に加える」
「お、俺のパワー・ボンドを奪うだと!? お前にはリスペクト精神がないのか!?」
再び才盾の批判が始まる。審判から「ルール上何も問題ありません、デュエルを続けてください。デュエルを不当に遅らせる場合、あなたを失格とします」と注意されては唸り声を上げながら黙るしか出来ず、少女はフードで顔を隠しながら、才盾からパワー・ボンドを受け取ると才盾に背を向けて元の位置へと戻っていく。
そして彼に背を向けたままくるりと振り返って、パワー・ボンドのカードを今にも口付けそうな程に唇に近づけながら微笑んで言葉を紡ぐ。
「このカードをプレイした時、1000ポイントのダメージを受ける……じゃあさっそく[パワー・ボンド]を発動。ロスト・プライドの代償により私は1000ポイントのダメージを受ける」LP1600→600
「まさか、貴様! 俺のパワー・ボンドで!!」
「効果は説明するまでもないよね? 私は場のリボルバー・ドラゴンとブローバック・ドラゴンを融合!」
才盾が声を荒げるが少女はフードで隠れていない口元をニヤつかせながら、ロスト・プライドの代償によってダメージを受けつつも気にも留めずに場の二体の機械龍による融合を宣言。
「現れろ、[ガトリング・ドラゴン]!! パワー・ボンドの効果で攻撃力は倍になる!」
ガトリング・ドラゴン 攻撃力:2600→5200
「リスペクトに反するモンスターを素材にリスペクトに反する方法で召喚されたモンスター、絶対にリスペクトに反する悪どいモンスターに決まっている……」
そして融合召喚されたのは三つの首の頭部にガトリング砲がついた機械龍。その姿を才盾が再び怒りに燃えた目で睨みつけた。
「ガトリング・ドラゴンの効果発動。一ターンに一度、自分のメインフェイズにコイントスを三回行う。そして表が出た数だけ、フィールド上のモンスターを破壊する」
「ひ、卑怯だぞ! つまり三回表が出ればデメリット無しでモンスターを三体も破壊できるって事じゃないか!」
「うん。だってそういうカードだもん」
「リ、リスペクト精神があればそんな卑怯なカードなんてデッキに入れないはず! お前にはやっぱりリスペクト精神がないんだな!」
「そういう言い訳は聞き飽きたなー。じゃ、ガトリング・ドラゴンの効果発動。ガトリング発射準備」
ガトリング・ドラゴンの三つの首を示すように、三つのコインのソリッドビジョンが出現。弾かれたように回転して上空に跳び、回転しながら重力に従って落下。
思わず息を飲んでコインを見守ってしまう。そして落ちたコインの内二つが表を示す金色を、一つが裏を示す銀色になって着地していた。
「ハ、ハハハハハ! ざまぁみろ! これでサイバー・バリア・ドラゴンが残る! 攻撃さえ防ぎきればパワー・ボンドのデメリットでお前の負け! リスペクトがないからこう――」
「はいバーン」
「――え?」
パァンッと乾いた銃声が響き、それに合わせて銀色の面を示していたコインが再び跳ねると表を示す金色の面を見せて着地した。
そして、いきなり「バーン」とか言い出した少女は、右手にいつの間にか握ってコインの方に向けていた拳銃をくるくると弄び、その拳銃でフードの端を軽く持ち上げた。なんだかやけに様になっている格好である。
「はい、これで三つとも表。よってガトリング・ドラゴンの効果により、フィールドのモンスターを三体破壊するね」
「ふ、ふざけるな! どう見ても今のはおかしいだろう!? イカサマだ!」
才盾先輩の糾弾の叫びや流石におかしいとざわつく観客に対し、少女は全く動じてない様子でソリッドビジョンだったらしい拳銃を消して、いつの間にかその手に握っていた罠カードを提示する。
「ガトリング・ドラゴンの効果発動にチェーンして、墓地の永続罠[
「ひ、卑怯者が!」
「そういうコンボだって言ってほしいな? さあ、ガトリング・ドラゴン。全力掃射!!」
ガトリング・ドラゴンの三つの頭部に装備されているガトリングが急激に回転を開始、そしてガガガガガッと連続した銃声と共にガトリングから放たれる弾丸が才盾の場を襲い、三つの爆発が彼の場を覆う。
そしてその爆発によって生じた煙が消えた時、才盾の場から三体のサイバー・バリア・ドラゴンが消えていた。
「お、俺の鉄壁の布陣が……」
才盾がわなわなと震える。だが直後ギリッと歯を噛みしめて少女を睨みつけた。
「ひ、卑怯者め! 真っ向から攻撃せずに効果破壊をするとは何事だ!?」
「こんなの禁じられた聖杯の一つでも使ってれば防げた事態でしょ~? それもしないで卑怯者~なんて言わないでほしいなー」
「だっ、黙れ卑怯者!! 真っ向勝負で勝てないからってこんな汚いリスペクトの欠片もない手段を使うとは!」
才盾のまたも批判に対し、少女は肩をすくめて悪びれる様子もなく、そもそも悪いことなどしていないのだから当然だが堂々としている。
「だ、大体貴様の負けに変わりはない! 俺の場のサイバー・エンド・ドラゴンは攻撃力8000! 同じパワー・ボンドで融合召喚したところで元々のステータスが違うんだ!」
「うん、そうだね。でも……これなら問題ないよね?」
そう言って女の子が提示したカードを見た才盾が固まり、同時に彼女が発動したその魔法カードがソリッドビジョンに映し出される。
「[リミッター解除]。これでガトリング・ドラゴンの攻撃力は倍になるよ」
ガトリング・ドラゴン 攻撃力:5200→10400
「な……いやでも俺のライフは4000、この攻撃さえ耐えられれば……」
そう。いくら攻撃力が高くなり、サイバー・エンド・ドラゴンを破壊したとしても、才盾のライフさえ残ればエンドフェイズにパワー・ボンドで彼女のライフは尽きる。
「バトル! ガトリング・ドラゴンでサイバー・エンド・ドラゴンに攻撃! ジャックポット・ガトリング・ラッシュ!!」
その攻撃宣言と共に再びガトリングが回転をし始めた。ギャリリリリと先程よりも速い、まさに
次々と排出される薬莢が、まるで漫画とかでのスロットで
だがそれはそれほどの数の弾丸が放たれたという事でもあり、実際にその弾丸の暴風雨に晒されたサイバー・エンド・ドラゴンがついに耐えきれず爆散した。
「ぐあああぁぁぁぁっ!!!」LP4000→1600
そしてサイバー・エンド・ドラゴンを破壊してなお飽き足らないといわんばかりの弾丸が才盾を襲ってライフを削る。だがライフは尽きていない。これでエンドフェイズ、パワー・ボンドの効果で少女の負けが確定した。そう確信した才盾がざまあみろと彼女の場を見た時だった。
爆発の勢いによってかネコミミ付きフードが外れ、緩くウェーブのかかったショートの銀髪を露わにしている少女の場の最後の伏せカードが翻っており、ガトリング・ドラゴンの姿が消え、その代わりにというように二体のモンスターが現れている。
「速攻魔法[融合解除]。ガトリング・ドラゴンの融合を解除して融合素材である[リボルバー・ドラゴン]と[ブローバック・ドラゴン]を墓地から特殊召喚」
リボルバー・ドラゴン 攻撃力:2600
ブローバック・ドラゴン 攻撃力:2300
「な……」
そのモンスターの姿を見た才盾が絶句する。いや、彼の目線はむしろフードの取れた少女へと向けられていた。
「もちろん知ってるよね? バトルフェイズ中に特殊召喚されたモンスターにも攻撃の権利はある」
「あ、あ、あ、あ……」
少女の赤い瞳を宿す猫目が才盾を射抜く。それと同時にリボルバー・ドラゴンの三つの銃口が、ブローバック・ドラゴンの頭部の銃口が向けられ、才盾の顔が青くなる。
「ファイア♪」
「うわあああぁぁぁぁぁっ!!!」LP1600→0
そしてそこから放たれた弾丸を浴びた才盾のライフが0を示した。
「き、貴様……やはり貴様には、リスペクトがない……」
「これが私のリスペクトだよ。せ・ん・ぱ・い♡」
負けたショックで尻もちをつきながらも、対戦相手である少女を睨みつける才盾に対し、少女は尻もちをついている彼の元に歩き寄ると、彼の顔を上から覗き込むようにしながら煽る笑みを向ける。
「ううん……ざぁこ♡」
「ぐ、ぬ……」
「ざぁこざぁこ♪ せっかくデュエルアカデミアを卒業できたっていうのに、プロデュエリストにもなれず、サイバー流の失墜で職にもつけず日銭稼ぎ♪ 挙句の果てにあんなに自信満々だったくせに中学三年生にワンショットキルで負けちゃうなんて恥ずかしくないのぉ?」
「う、ぐぐぐ……うああああぁぁぁぁぁっ!!!」
真正面から煽りを受け、周りからも嘲笑を向けられた才盾は頭を抱えて発狂したかのように叫び声を上げる。
そして少女は自分と同じく決勝戦へと勝ち上がった相手をチラリと見る。勝利の美酒に酔いしれ、得意気に笑いながら準決勝で戦った相手の戦術を偉そうに否定して悦に入る。決勝戦で戦う相手の事なんて見てもいないその相手に対し、彼女はどこか寂し気な目を向けていた。
そして来たる決勝戦。
黒ネコミミパーカーの少女は、同じく決勝戦に勝ち上がったデュエリスト――丸藤翔の対戦相手として立ちはだかる。その姿に翔が目を見開いた。
「あ、
「久しぶり、翔おにーさん♪」
絶句する翔に対し、煽るようなニヤニヤ笑いで久しぶりと答える少女の名は
翔とは一応幼馴染といえる関係であり、サイバー流の元門下生である彼女は翔とはかつて兄妹弟子だったが、サイバー流の師範が才災に変わった後教えられるようになったリスペクトデュエルを良しと出来ず才災やその派閥と激突、最後にはサイバー流から去っていった過去を持つ。
ちなみに現在はデュエルアカデミア中等部三年生、卒業後は高等部への進学を希望しているが、才災は校長だった頃に彼女の入学だけはなんとしても阻止しようと計画していたという噂がまことしやかに囁かれているのは余談である。
そんな彼女が決勝の相手であることに翔は苦虫を噛み潰したような表情を見せ、対して彩葉は幼馴染であり元とはいえ兄妹弟子である彼との再会を喜ぶような笑みを浮かべる。
「デュエル、見てたよ。相変わらず才災おじさんの教えを守ってるんだね」
「あ、当たり前ッス! 才災師範の教えは、正しいッス!」
「正しい、かぁ……」
翔の主張に対し、彩葉は笑顔を消して、とても、とても悲しい眼を彼へと向けた。
「相手のエースモンスターや、練り上げた戦術を批判・否定するのがリスペクトデュエルなの?」
「当たり前ッス! 攻撃力2500のモンスターがエースとかレベルが低すぎるッス! そして恐竜族をドンドン除外するような戦術なんて批判されて当然っス! 僕は、正しい事をしているッス!」
翔の主張を聞き、ふぅと控えめなため息を一つ。そして彩葉は決心する。
審判にデッキ調整を申告してサイドデッキを取り出し、メインデッキ及びエクストラデッキから神の宣告、リボルバー・ドラゴン、炸裂装甲、ブローバック・ドラゴン、奈落の落とし穴、ガトリング・ドラゴン、パワー・ウォールなど才災師範の言う「リスペクト」に反したカードやそれらのサポートカードを抜き、それによって不足したスペースにサイドデッキに入れておいた「リスペクト」に則ったカードを投入。デッキをシャッフルした後、デュエルディスクにセットする。
「だったら……サイバー流の元兄妹弟子として、その正しい・リスペクト・デュエルで引導を渡してあげるよ」
「ふ、フン! サイバー流を追い出された癖に偉そうに! 卑怯なカードさえ使われなければ、僕が負けるはずが無いッス!」
ニヤニヤ笑いを消し、どこか憐れむような瞳をしながらデュエルディスクを構える彩葉。それに対して翔もデュエルディスクを構える。
「「デュエルッ!!」」
そして二人の声が重なり合った。
「先攻は譲るッス!」
「なら遠慮なく。私のターン、ドロー! モンスターをセット! カードを一枚伏せて、ターンエンド!」
「僕のターン、ドロー! よし、僕は[パトロイド]を召喚!」
パトロイド 攻撃力:1200
「パトロイド……」
モンスターとカードをセットし、相手の攻撃を警戒するように基本に忠実な一手を取る彩葉に対し、翔はパトカーがモチーフとなったビークロイドを召喚。そのモンスターを見た彩葉が警戒するように自分がセットしているカードを見た。
「バトル! パトロイドでセットモンスターを攻撃っス、シグナル・アタック!」
「え?……セ、セットしていたのは[サイバー・フェニックス]! 反射ダメージを受けてもらうよ!」
サイバー・フェニックス 守備力:1600
「えっ?! う、うわああああああああっ!」LP4000→3600
サイレンを鳴らしながら突進するパトロイドだが、彼女の場にセットされていた機械の不死鳥が姿を現し、己の身を守るように構えていた翼でパトロイドを受け止めるとそのまま弾き飛ばし、弾かれたパトロイドが直撃した翔のライフが削られた。
思わぬ反射ダメージに怯む翔だが、くっと唸って彩葉を指差した。
「く、ひ、卑怯ッス!」
「そう? そもそもパトロイドは、相手の場にセットされているカードを確認する効果があるよね。なんで使わないの?」
「うっ、そ、それは……」
「
居丈高に彩葉に批判の言葉を浴びせる翔だが、彩葉がジト目で答えた後鋭く指摘を返すと途端に言い淀み、やや考え込み始める。
「あ、相手のカードを確認するのは、リスペクト違反だからッス!」
「なら、なんでそのリスペクト違反のカードを入れてるの?」
「うぐっ!」
とってつけたような言い訳のようだがその通り、話の矛盾をついてやればすぐボロが出る。
デュエルアカデミアに行ったから成長したのかと思っていたが、逆にプレイングが劣化しているし挙句にプレイングミスをリスペクトだと言い張り、自分の未熟をリスペクトデュエルに責任転嫁している。
一体何を学んでいたというのか。そんな事を考えてしまい、年上相手にする態度としてどうかと思うが、幼馴染の醜態に彩葉は頭を抱えて呆れてしまうのを隠せていなかった。
「ぼ、僕はカードを二枚伏せてターンエンドっス!」
「私のターン、ドロー! 私は、サイバー・フェニックスをリリースして、[サイバー・オーガ]をアドバンス召喚!」
サイバー・オーガ 攻撃力:1900
「サ、サイバー・オーガ!? なんでそれを彩葉ちゃんが!?」
「ちょっと訳あってね?」
「ふ、ふん! でも攻撃力は1900、そんなモンスター怖くもなんともないッス!」
彩葉の場に現れる機械の鬼、サイバー流の中でもマイナーだが鮫島元師範が使っていたという事で一部では有名なモンスターの存在に翔はぎょっとするものの、すぐに虚勢を張り始める。
「バトル! サイバー・オーガで、パトロイドを攻撃!」
「くっ、罠発動[スーパーチャージ]! 僕の場のモンスターがロイドと名のつく機械族モンスターのみが存在する場合、相手の攻撃宣言時に発動できるッス! カードを二枚ドロー!」
「ならこっちも手札の[サイバー・オーガ]の効果発動。このカードを手札から墓地に捨て、自分フィールド上に存在するサイバー・オーガ一体が行う戦闘を一度だけ無効にし、さらに次の戦闘終了時まで攻撃力は2000ポイントアップする」
サイバー・オーガ 攻撃力:1900→3900
「はぁ? 自分の攻撃を自分で止めるなんて何考えてんスか?」
サイバー・オーガの前に新たなサイバー・オーガが出現、その攻撃を受け止める。
その光景を見た翔が訳が分からないとどこか見下した様子でぼやくと、彩葉はやれやれとかぶりを振った。
「こう考えてるの。速攻魔法発動[ダブルアップ・チャンス]。モンスターの攻撃が無効になった時、そのモンスター一体を対象としてこのバトルフェイズ中、そのモンスターはもう一度だけ攻撃できる。そしてこの効果でそのモンスターが攻撃するダメージステップの間、そのモンスターの攻撃力は倍になる」
サイバー・オーガ 攻撃力:3900→7800
「こ、攻撃力7800!?」
「くらえ、ダブルアップ・エヴォリューション・スマッシュ!」
先程攻撃を止めたサイバー・オーガが、最初にいたサイバー・オーガと共にパトロイドの方を見る。その協力による攻撃力はサイバー流最大の切り札であるサイバー・エンド・ドラゴンの倍にも迫り、今度は二人がかりで攻撃を仕掛けるという様子でパトロイドに襲い掛かった。その姿に翔がひっと声を上げる。
「ひっ、ト、トラップ発動[ダメージ・ダイエット]! このターン受けるダメージを半分にするッス!」
「あれ? そういうのリスペクト違反じゃないの?」
「ダ、ダメージを半分にするだけで0にしたり攻撃を無効にしてるわけじゃないから問題ないッス!」
発動したカードは才災の教えていたリスペクトデュエルではいい顔されないはずの防御カード。それを見た彩葉の言葉に翔はどこか言い訳がましく答えるも、彩葉はひょいと肩をすくめるだけでそれを終える。
「まあいいや、戦闘破壊させてもらうね。当然半減したとはいえダメージも受けてもらうよ」
「わあああああっ!」LP3600→300
「カードを一枚伏せてターンエンド!」
サイバー・オーガ 攻撃力:7800→1900
二体のサイバー・オーガの拳にパトロイドが粉砕され、衝撃波が翔に襲い掛かって彼のライフを削る。しかしなんとか首の皮一枚繋がった翔だった。
「ぼ、僕のターン、ドロー! よし。魔法カード[パワー・ボンド]を発動! 僕は手札のスチームロイド、ドリルロイド、サブマリンロイドを融合! 現れるッス! [スーパービークロイド-ジャンボドリル]! パワー・ボンドの効果で攻撃力は倍になる!」
スーパービークロイド-ジャンボドリル 攻撃力:3000→6000
翔の場に地面からドリルで穴を開けて登場するスーパービークロイド。その圧倒的な攻撃力を見た翔が自慢げに胸を張り背を反り返らせる。
「この攻撃で僕の勝ちっス! バトル! ジャンボドリルでサイバー・オーガを攻撃!」
勝ち誇る翔の指示を受けたジャンボドリルが真正面からサイバー・オーガに突撃。しかしその時彩葉の場のリバースカードが翻った。
「罠発動[ホーリー・ジャベリン]! 相手モンスターの攻撃宣言時、その攻撃力分ライフを回復!」LP4000→10000
「?! そ、そんなカードに何の意味があるッス?!」
「その後、ジャンボドリルとの戦闘によってサイバー・オーガは破壊される……」LP10000→5900
「い、一体何を考えているんスか……バトル終了! メインフェイズ2に[サイバー・ジラフ]を召喚! このカードをリリースして、僕が受ける効果ダメージを0にするッス! カードを一枚伏せてターンエンドッス!」
翔が彩葉の不可解な行動にぼやく。ライフを回復したとはいえただの一時しのぎ、モンスターはいなくなった以上ジャンボドリルに勝つ事は不可能。しかもジャンボドリルには貫通効果があり、守備モンスターを出してきてもそれを倒しながらライフを削っていけばいいだけ。いや、そこらのモンスターなら貫通攻撃の余波だけで倒せるかもしれない。
なんにしてもこれから彩葉がやるのはただの悪あがき、そう考えた翔は勝利を確信してニヤリと笑みを漏らしていた。
「私のターン、ドロー! モンスターをセット。そして魔法カード、[太陽の書』を発動! さっきセットした[メタモルポット]を反転召喚! メタモルポットのリバース効果発動、互いのプレイヤーは手札を全て捨てて新たに五枚ドローする」
メタモルポット 攻撃力:700
「僕の手札も0だから、五枚ドローするッス! ウヒャヒャ!!」
引いたカードを見て馬鹿笑いする翔。
単純に手札が増えたのが嬉しいのか、それとも切り札を引き当てたのか。でも恐らく関係ないだろう。彩葉はそう半ば確信しつつも、最後まで油断しないように手札を取った。
「速攻魔法[サイクロン」を発動! その伏せカードを破壊!」
「引っかかったっスね! これは罠カード[ワンダーガレージ]! このカードが破壊された事で、手札からレベル4以下のロイドと名のつく機械族モンスター[ジャイロイド]を守備表示で特殊召喚するッスよ!」
ジャイロイド 守備力:1000
邪魔な罠を排除しようとしたところ、逆に罠を作動させて一ターンに一度戦闘では破壊されないジャイロイドを呼び出した。ざまあみろと笑う翔に対し、彩葉はふぅと安堵の息を漏らしていた。
(一応妨害を警戒してたけど、ブラフだったね……これで懸念事項は消えた)
伏せカードはこれで消えた。手札はまだ四枚もあるが、そもそも翔の守っている才災の教えでは妨害はリスペクトに反するとされている。それでも念のため警戒はしていたが、もはや彼女を止めるものは何もない。
「速攻魔法[サイバネティック・フュージョン・サポート]! ライフポイントを半分払い、このターン、自分が機械族の融合モンスターを融合召喚する場合に一度だけ、その融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを自分の手札・フィールド上・墓地から選んでゲームから除外し、これらを融合素材にできる!」LP5900→2950
「へん、何を呼び出そうとジャンボドリルに勝てるわけがないッス!」
「それならとくと御覧じろ! 魔法カード[融合]を発動! サイバネティック・フュージョン・サポートの効果により、墓地からサイバー・オーガ二体を除外し、これらを融合素材にする! 融合召喚、[サイバー・オーガ・2]!!」
サイバー・オーガ・2 攻撃力:2600
彩葉の場に現れるのは鮫島の切り札でもあった進化した機械の鬼。しかしその攻撃力はたった2600、と翔は勝ち誇った笑みを崩さない。
「リバーストラップ発動[メタル化・魔法反射装甲]! このカードを攻撃力・守備力300アップの装備カード扱いとしてサイバー・オーガ・2に装備!」
サイバー・オーガ・2 攻撃力:2600→2900
「ハーッハッハッハ! それでもたった2900! パワー・ボンドを使わなかったとしてもジャンボドリルに敵わないッス!」
「んふふ、それはどうかな? バトル! サイバー・オーガ・2でスーパービークロイド-ジャンボドリルに攻撃!」
「ははははは! 敵わないと見て潔く自滅の道を選んだッスか!?」
攻撃力の差は倍以上、つまりサイバー・オーガ・2が破壊され、その攻撃力の差3100のダメージが彩葉に入れば勝負は決まる。その未来を見て翔は高笑いをし始めた。
「サイバー・オーガ・2の特殊効果! このカードが攻撃を行う時、攻撃対象モンスターの攻撃力の半分の数値だけこのカードの攻撃力をアップする!」
サイバー・オーガ・2 攻撃力:2900→5900
「残念、ギリギリ足りないッスねぇ! 彩葉ちゃん、いや彩葉! これから僕の事をアニキって呼ぶことを許してあげるッスよ!」
「さらに! メタル化・魔法反射装甲の効果! このカードの効果でこのカードを装備したモンスターの攻撃力は、モンスターに攻撃するダメージ計算時のみ、その攻撃対象モンスターの攻撃力の半分の数値分アップする!!」
「…………え?」
彩葉の連続した言葉を聞き、最初は笑っていた翔の笑みが引きつる。
サイバー・オーガ・2自身の効果で攻撃対象モンスターであるジャンボドリルの攻撃力の半分の数値がサイバー・オーガ・2の攻撃力に加わる。そしてメタル化・魔法反射装甲の効果によってさらにジャンボドリルの攻撃力の半分の数値分サイバー・オーガ・2の攻撃力がアップする。つまり……
「サイバー・オーガ・2の攻撃力は実質ジャンボドリルの攻撃力分アップする!」
サイバー・オーガ・2 攻撃力:5900→8900
「あ、あわわわわ……」
一気に攻撃力が逆転。その光景に顔を青くした翔は彩葉を批判しようとしたが……出来ない。
何故ならこのデュエル中、彩葉が使用したカードに『正しい・リスペクト・デュエル』に反するカードは無い。
「ま、負ける……? 正しい・リスペクト・デュエルをしている相手に?」
「才災おじさんの正しい・リスペクト・デュエルに乗っ取ったデッキだよ? これなら何の文句もないよね? 翔おにーさん☆」
「う、うぐぐぐぐ……!」
がしり、とサイバー・オーガ・2がジャンボドリルを掴み、その身体が赤熱したように赤くなっていく。
にぱっ☆と無邪気な微笑みを向ける彩葉に翔は顔を青くしたまま唸り声を上げる。
才災に師範が変わり、サイバー流の中で教えられていたリスペクトデュエルが様変わりした事で、彩葉はサイバー流から離れた。
それからデュエルアカデミアの中等部に通ってデュエルの基礎を学び直しながら、色々な場所に出かけて様々な大会に参加、武者修行をしていく中で色々なデュエリストに出会った。
多彩な戦術に、戦略に出会った。自分が使いこなせるとは思えなかった低攻撃力なモンスターをエースとして活かす戦略を見た。自分では思いつかない程に練り上げられた戦術を見た。何度も勝って何度も負けた。しかし負けても相手を卑怯だと断じる事はせず、自分にない戦い方をリスペクトし、それを超えようと、勝利しようと努力を続けた。
それこそが「己のカードをリスペクトし、共に勝利を掴むために最大限に活躍させる」、「相手をリスペクトし、だからこそ勝つために全力を尽くす」という、己の考えるリスペクトデュエルの道なのだと信じて。
その間翔がしていた事と言えば、テスト前には祭壇を作って神頼みを行い、相手をリスペクトに反すると批判・否定するだけであった。
「……打ち砕いちゃえ、サイバー・オーガ・2♪」
赤熱した片手でジャンボドリルを掴んで動きを封じ、もう片手を振りかぶって今にも燃え上がらんばかりに熱された拳を握り込む。
「エターナル・エヴォリューション・スマッシュ!!!」
そしてジャンボドリルの頬を抉り抜くようなストレートがジャンボドリルに突き刺さり、ジャンボドリルが爆発。
「うぎゃあああああああああっ!!!」LP300→0
その衝撃波を受けてライフが尽きた翔はその場にへたり込み、目の前の光景が信じられないという様子の放心状態になるのだった。
《後書き》
前書きで申し上げた通り、今回のお話はまたも交響魔人先生の作品「猫シンクロ使いが行く遊戯王GX!」とのコラボです。
まあコラボというか、23話で彩葉ちゃんを出してくれたお礼にと今回のお話の原型を寄稿して、好評だったから許可を取って加筆修正して投稿したというか……。
ちなみに話の流れがほとんど23話と同じになるので「盗作行為」判定されるか不安で一回投稿を中止、それから数日後「運営に聞けばいいじゃん」と思いついて運営に質問、「元作品の作者の許可済みであれば問題ございません。」という回答をいただいたので投稿したという裏話があったりします。
そして今回のお話の内容ですが。前回の“『柳里彩葉君。君のデュエルはリスペクトに反しています』”は本作の世界観寄りの平行世界だから彩葉もサイバー・ダークデッキを使ってたけど、本作は元々猫シンクロGXへの寄稿という形で作っため猫シンクロGXの世界観寄りなのでサイバー・ダークは封印されているという設定で、だから彩葉も別のデッキを使う事になりました。それがガトリング・ドラゴンやサイバー・オーガになります。
ちなみに前座になった才盾に関しては、今回のお話は元々「猫シンクロGXコラボへのお礼とあわよくば寄稿という形で投稿してくれないかな?という下心」で送ったので、彩葉が翔に対しては「道を踏み外した元兄弟子に引導を渡す」という意志でデュエルしてたからメスガキキャラは封印した形になっていたため、猫シンクロGX読者で彩葉ちゃん初見になる方が「彩葉はクールキャラ」と勘違いされたら申し訳ないと思って、メスガキマシマシで書いてみた結果になります。
そうしたらなんかやっとこいつデュエル終わった後にメスガキらしい煽りをしてくれた……。(万丈目:メスガキの「ざぁこ」煽りしたら洒落になりそうにないと封印。亮:煽る余裕なかったし負けた。猫シンクロGXコラボ第一弾:デュエル終わった途端才災との問答フェイズ入って煽れなかった。という感じでデュエル終了後のメスガキ煽りする余裕がなかった)
もしも今回のお話で興味を持っていただけたなら交響魔人先生の「猫シンクロ使いが行く遊戯王GX!」もよろしくお願いします。
それでは今回はこの辺で。ご指摘ご意見ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。