逃げ場のない牢屋の中、まるでコロシアムのように金網で囲まれているその中で一人の20代半ばから後半くらいだろう青年が目を血走らせて、目の前に立つ中学生くらいの少女を睨みつけていた。
黒いパーカーを着ていてフードを被り、そのフードにネコミミがついていることからまるで黒猫を思わせるような猫目の少女はニヤニヤと笑いながら、ニット帽とベストを着用したワイルドな風貌をした青年を見つめていた。
「悪く思うなや嬢ちゃん。お前に勝てばワイの借金はチャラになるんや……」
「んっふふふ♪ 楽しもーねー♪」
青年の言葉に少女はゆらゆらと揺れながら余裕綽々な様子で笑いながら答える。その様子に青年がチッと舌打ちを叩いた。
「さあ、本日のメインイベントォ! デスマッチデュエルを開催するぜぇ!」
スピーカーからそんな実況が聞こえ、牢獄コロシアムの外でまるで見世物のように二人を見物してワインや軽食を嗜んでいる仮面をつけた男女が牢屋を見る。
「赤コーナー。若いなれどデュエルセンスは超逸品のラッキーガール。ヘルキャット彩葉!」
「応援よろしくお願いしまーす♡」
紹介を受けた少女──彩葉が観客に媚びを売るように手を振って挨拶、彼女のファンなのか知らないが観客の一部が「おおおぉぉぉっ!」と盛り上がる。
「いいぞー彩葉ちゃーん!」
「君にまた大金を賭けたんだー!」
「また面白いデュエルを見せてくれー!」
黄色い声を上げる観客に青年が忌々しそうな舌打ちを叩き、実況が続いて青コーナー、と口にした瞬間彼の声が響く。
「紹介なんぞどうでもええわ! とっととデュエル始めんかい! ワイはこんなクソガキとっとと倒して借金チャラにしたいんや!!」
「……えー、ではまあ。省略いたしましょう」
青年の怒号に実況は彼の紹介を省略。
「あっはははは!」
「いいぞーチャレンジャー!」
「大穴でお前に賭けたんだー! 勝ってくれよー!」
彩葉に対する声援に比べると嘲るような笑い声が混じった応援に青年がイライラしたように歯ぎしり。そう思っていると突然牢屋に入ってきたグラサン黒服のいかにもな男達が、青年の両腕や首に何かの装置を嵌め始めた。
「お、おい、なんやこれ!?」
「衝撃増幅装置。僅かなダメージでも全身に苦痛が走ります」
「なんやて!? そんなもん聞いとらんぞ!?」
シルクハットにコート姿な痩躯の男性の言葉に青年が声を上げるがお構いなし。「これが地下デュエル」と締めくくるのみだった。
「ちぃっ! まあええわい。約束通り、このクソガキを倒せばワイの借金チャラにしてくれるんやろうなぁ?」
「お約束いたします」
青年の言葉に痩躯の言葉はそう返すのみ。青年はだったらいいと言いたげな様子で、慣れたように件の衝撃増幅装置を装着した彩葉を再び血走った目で睨みつけた。彩葉もニヤニヤ笑いをしながら青年を見て、二人はデュエルディスクを構える。
「「デュエル!!!」」
「イッツァ、ショーターイム!!!」
そして二人の掛け声とデスマッチデュエルなる地下デュエルの開始を宣言する実況の声が重なり合った。
「先攻は私だよ、ドロー」
先攻を取ったのは彩葉。彼女はカードをドローすると手札を取る。
「私は[一撃必殺侍]を召喚して、カードを五枚セットしてターンエンドだよ」
一撃必殺侍 攻撃力:1200
「はぁ!? いきなり手札全て使うやと!? 嬢ちゃんデュエルの定石知らんのか? まあええわ、ワイのターン。ドロー!」
青年は彩葉のプレイングに呆けた声を出しつつ、だがそんな雑魚相手ならさっさと勝って借金チャラにしようと思ったのか深くツッコまずにドロー……その瞬間、彩葉がニヤリと笑った。
「おにーさん、手札今何枚?」
「はぁ? 六枚に決まっとるやろうが?」
彩葉の言葉に青年がまた呆けた声を出す。後攻ワンターン目、手札は初期の五枚のまま、そこに一枚ドローしたから合計六枚。わざわざ計算するまでもない程単純な足し算だ。
「そっかー六枚かー。私の手札はゼロ枚なんだー」
「お、おう……」
「だからー……これを発動するね?」
ニヤニヤ笑いの彩葉の場の伏せカードが一枚、翻る。
「トラップカード[ギャンブル]! このカードは相手の手札が六枚以上、自分の手札が二枚以下の場合に発動する事ができる。コイントスを一回行って裏表を当て、当たった場合、自分の手札が五枚になるようにデッキからカードをドローする。ハズレの場合、次の自分のターンをスキップする」
「なぁ!? ワンターン目からギャンブルカードやと!?」
彩葉の大胆なプレイングに青年が騒然としていると、フィールドの中央に巨大なコインのソリッドビジョンが出現。表を示す目玉が一つある向きと裏を示す無地の向きが交互にくるくると回転して表示される。
「表」
彩葉が自分の出目を宣言し、指をパチンと鳴らすと同時にコインが弾かれたように上空に飛ぶ。そして落ちてきたコインは彼女の宣言通り表向きを示していた。
「ギャンブルせいこー♪ ギャンブルの効果により手札が五枚になるように、五枚のカードをドローするね♡」
「ちぃっ! やけどそれがどうした! ワイは手札から──」
「あ、待っておにーさん。メインフェイズに入る前に、スタンバイフェイズにこのカードを発動するね」
「──なんやまだあるんかい!?」
青年は彩葉が一気に五枚もカードをドローしてきたが、そんな事で流れを取られるものかと動き出す。が、腰を折るように彩葉が再びカードを発動する。
「永続罠、[死神の巡遊]を発動。相手ターンのスタンバイフェイズ時にコイントスを一回行って、表なら相手はエンドフェイズ時まで召喚・反転召喚する事ができず、裏なら私は次の自分のターン召喚・反転召喚する事ができない」
「チッ、またギャンブルカードかい……」
再びフィールドの中央にコインのソリッドビジョンが出現。今度は出目を当てるのではなく出目によって決まる効果のためか彩葉は何も言わずに指パッチン。またもコインが上空へと飛んだ。そしてそのコインの出目が決まった途端、彩葉の場の死神の巡遊のカードから黒い霧が吹きだし始める。
「く、くそっ!?」
「あは♡ ラッキー♪ 表が出たことでこのターン、おにーさんは召喚・反転召喚出来ないよ♪」
青年の表情が歪んだことからも分かるように出目は表。青年のフィールドを黒い霧が覆うが、青年はだったらと動く。
「だったらワイは手札から[俊足のギラザウルス]を特殊召喚! こいつは手札から特殊召喚が可能、その代わり特殊召喚に成功した時、相手は墓地からモンスターを無条件で特殊召喚できるが、お前の墓地にモンスターはない!」
俊足のギラザウルス 攻撃力:1400
つまり実質デメリットなしでの特殊召喚というわけだ。さらに青年はもう一体[俊足のギラザウルス]を特殊召喚。召喚が制限されたにも関わらず二体のモンスターを展開してみせた速さに観客が「おぉ~」と歓声を上げた。
「どうせギャンブル使いたさに苦し紛れで伏せたカードやろ! 三枚の伏せカードにビビるワイやないで! バトルや! 俊足のギラザウルスで一撃必殺侍に攻撃!!」
「この瞬間、一撃必殺侍の効果発動! このカードが相手モンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時に発動してコイントスを一回行い、裏表を当てる。当たった場合、その相手モンスターを破壊する」
突進するギラザウルスに応戦しようと槍を構える侍、その頭上でコインがくるくると回転し始めた。
「表だよ」
そして彩葉が宣言すると同時にコインが弾かれ、侍も槍を構えながらギラザウルス目掛けて突進。ギラザウルスの爪が振るわれ、侍の槍が突き出される。
そして僅かな硬直の後に倒れたのは侍の方。彼の頭上のコインは裏を示していた。
「きゃああぁぁぁっ!」LP4000→3800
「へっ、ざまあみい。ギャンブルなんぞに頼るからそうなるんや。ゆけ、俊足のギラザウルス! ダイレクトアタックや!」
ギラザウルスと一撃必殺侍の戦闘が行われたことによるダメージが発生。黒い電流が彼女の身体を流れ、ライフが削られる。苦痛に悶える彼女を見ていい気味だと笑う青年はもう一体のギラザウルスに追撃を指示、しかしその時彼女の場のカードが翻った。
「永続罠発動[リビングデッドの呼び声]! 墓地の[一撃必殺侍]を攻撃表示で特殊召喚!」
一撃必殺侍 攻撃力:1200
「性懲りもなく! 叩き潰せギラザウルス!」
再び現れた一撃必殺侍の頭上でコインが回転開始。彩葉がまたも「表!」と宣言してギラザウルスと侍が交差。そして今度倒れたのはギラザウルスの方だった。彼の頭上のコインは表を指している。
「一撃必殺侍の効果成功♪ でもダメージステップ開始時の効果破壊だから戦闘ダメージは受けないよ」
「クソが! メインフェイズ2に入ってワイはモンスターをセット! 召喚出来ないだけならセットは可能なはずや! さらにカードを一枚セットしてターンエンド!」
「わー。召喚とセットの違いが分かってるなんておにーさんすごーい♡」
「じゃかあしい! お前のターンや、さっさとドローせえ!」
モンスターとカードを一枚ずつセットしてターン終了を宣言する青年に、彩葉はパチパチと拍手で賞賛。しかし青年はイライラした様子で彩葉を怒鳴りつけ、彼女は「はいはい」と言ってターン開始を宣言するようにカードをドローした。先ほどのギャンブル成功もあって手札は合計六枚、その状態に青年もチッと舌打ちを叩いていた。
「私は一撃必殺侍を生贄に捧げ、[ブローバック・ドラゴン]を召喚!」
ブローバック・ドラゴン 攻撃力:2300
「攻撃力2300……」
一撃必殺侍を生贄にして現れた上級モンスターの攻撃力は上級モンスターとしてはやや物足りない数値。それに青年はハッタリかと笑い、むしろ最悪戦闘すら行えない侍が消えたことに内心で安堵していた。
「ブローバック・ドラゴンの効果発動だよ。一ターンに一度、相手フィールドのカード一枚を対象とし、コイントスを三回行ってその内二回以上が表だった場合、その相手のカードを破壊する。おにーさんの場の伏せカードを対象にするよ。どうする? 破壊されるかもしれないけど……」
「ちぃ、やったらチェーンしてリバースカード発動[威嚇する咆哮]! これでお前はこのターン攻撃宣言を──」
「させないよ。カウンタートラップ発動[魔宮の賄賂]。魔法・罠カードの発動を無効にして破壊し、代わりに相手はカードを一枚ドローする」
「──なにぃっ!?」
ブローバック・ドラゴンの効果から逃れようとカードを発動するも、それを一枚ドローと引き換えに無効にされる青年。上手くノセられたと歯噛みしつつ、だがドローできたのはよしと立て直す。
その間にブローバック・ドラゴンの効果処理も開始され、三枚のコインのソリッドビジョンが宙を舞う。そして落ちてきたそれは表・裏・裏を示し、ブローバック・ドラゴンの頭部の銃が不発に終わる。効果失敗だった。
「ありゃーざーんねん。ま、いっか。おにーさんのカード無駄打ちさせたって事で♪」
「ぐぬぬ……」
肩をすくめてぺろっと舌を出す彩葉。青年が怒りに腕を震わせていた。
「バトルだよ。ブローバック・ドラゴンで俊足のギラザウルスを攻撃!」
「ぐっ……があぁぁあああぁぁぁっ!?」LP4000→3100
ブローバック・ドラゴンの頭部から放たれた銃弾がギラザウルスを撃ち抜き、粉砕。そのダメージが衝撃増幅装置によって電流として青年の身体に流れ、彼に苦悶の悲鳴を上げさせる。その様を見た観客も歓声を上げていた。
「メインフェイズ2に魔法カード[タイムカプセル]を発動。デッキからカードを一枚除外して、私の二回目のスタンバイフェイズにタイムカプセルを破壊、この効果で除外したカードを手札に加える。なんのカードを入れたのか、二ターン後を楽しみにしててね、おにーさん♡ ターンエンドだよ」
「ちぃ、ワイのターン、ドロー!」
「このスタンバイフェイズに死神の巡遊の効果発動!」
またもコインが宙を舞い、落ちてきたコインが出目を示すと共にフィールドを黒い霧が覆い始める。
「く……」
「ひゃっははは! ざまあみい。たしか裏が出た時はお前は次の自分のターン召喚・反転召喚する事ができないんやったな!」
コインが示したのは裏。先ほどのターンは青年の展開を封じていた黒い霧が今度は彩葉の場を覆い隠した。今度は自分が自分のカードで苦しめられる番だざまあみろと青年が高笑い。
「この隙を逃すと思うなよ! ワイは手札から[屍を貪る竜]を召喚し、さらにセットモンスター[二頭を持つキングレックス]を反転召喚や!」
屍を貪る竜 攻撃力:1600
二頭を持つキングレックス 攻撃力:1600
「うわ、今時そんな微妙なカードよく使うね……」
「余計なお世話じゃ! ワイは魔法カード[運命のウラドラ]を発動! ライフを1000ポイント払い、自分フィールドの表側表示モンスター一体を対象として相手ターン終了時まで、そのモンスターの攻撃力は1000アップ! さらにそのモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時、自分のデッキの一番下のカードをお互いに確認し、デッキの一番上または一番下に戻す。さらに確認したカードがドラゴン族・恐竜族・海竜族・幻竜族モンスターだった場合、その攻撃力1000につき一枚、自分はデッキからドロー。その後、自分はドローした数×1000LP回復する! ワイは二頭を持つキングレックスの攻撃力をアップする!」LP3100→2100
二頭を持つキングレックス 攻撃力:1600→2600
煽るどころか素で引いている様子の彩葉に怒鳴り返しつつ青年は新たな魔法カードを発動。それと共にどこからともなく鳴り響く銅鑼の音を聞いた二頭を持つキングレックスが咆哮、その攻撃力が一気に上昇してブローバック・ドラゴンを上回る。
「バトルや! 二頭を持つキングレックスでブローバック・ドラゴンを攻撃ィ!」
「くっ、ああぁぁぁっ!!」LP3800→3500
キングレックスの二つの頭がブローバック・ドラゴンを嚙み砕き、破壊。彩葉の身体を黒い電流が流れて彼女を傷つける。
「運命のウラドラの効果! デッキの一番下のカードを確認させてもらうで……」
そして青年はデッキボトムのカードを引き抜き、破顔して見せつける。
「いよっしゃ! デッキの一番下のカードはドラゴン族[タイラント・ドラゴン]! これをデッキの一番下に戻し、さらに確認したタイラント・ドラゴンの攻撃力は2900! よって二枚デッキからドローしてライフを2000回復や!」LP2100→4100
「おぉ、面白くなってきたな」
「これはもしかすると、ヘルキャットが負けるかも……」
「大穴狙った甲斐があったぜ!」
一気に二枚のドローに成功しただけではなく、さらに2000のライフ回復。その光景に観客達が騒ぎ出し、それに何か昔でも思い出したのか青年は上機嫌に笑いだした。
「キッヒヒヒ。ワイのバトルフェイズはまだ終わっとらん! 屍を貪る竜と俊足のギラザウルスでダイレクトアタックや!!」
「っ、ぎゃあああぁぁぁぁぁっ!!!」LP3500→500
青年の場の二体の恐竜族モンスターの総攻撃力は3000。そんな大ダメージが電流としてプレイヤーに直接流し込まれ、流石の彩葉も苦痛の悲鳴を上げていた。
「キヒャヒャヒャヒャ! ざまあみい! ワイはカードを一枚セットしてターンエンドや!」
「っ……私のターン、ドロー」
「無駄や無駄。召喚も出来ん以上、お前に出来るのはカードのセットくらいやろうが」
電流のダメージが効いているのかややよろけつつもカードをドローする彩葉に、青年は無駄だと煽る。たしかに死神の巡遊による黒い霧が彼女の場を覆っており、召喚・反転召喚は出来なくなっている。そう、
しかし彩葉はニヤッと笑みを見せた。
「それならこうするだけだよ♪ 魔法カード[死者転生]を発動、手札を一枚捨てて墓地の[ブローバック・ドラゴン]を手札に加え、魔法カード[融合]を発動! 手札の[リボルバー・ドラゴン]と[ブローバック・ドラゴン]を融合! 現れろ、[ガトリング・ドラゴン]!!」
ガトリング・ドラゴン 攻撃力:2600
「し、しまった……死神の巡遊では特殊召喚は封じられてない……」
彩葉のフィールドに現れる、三つの首の頭部にガトリング砲がついた機械龍。その姿に青年が目を見開いた。
「ガトリング・ドラゴンの効果発動だよ。一ターンに一度、自分のメインフェイズにコイントスを三回行う。そして表が出た数だけ、フィールド上のモンスターを破壊する」
「な、なんやてぇっ!?」
つまりノーコストで最大三体破壊。今青年の場にいる三体の恐竜族モンスター、その全てが一掃される可能性がある。そんなとんでもない効果に青年が驚いている間に、またも三つのコインのソリッドビジョンが宙を舞い、落っこちる。それは表・裏・表を示していた。
「よし、二体破壊の権利を得た。私が破壊するのは二頭を持つキングレックスと屍を貪る竜!!」
彩葉の宣言と共にガトリング・ドラゴンの三つの頭部に装備されているガトリングが急激に回転を開始、そしてガガガガガッと連続した銃声と共にガトリングから放たれる弾丸が青年の場を襲い、二つの爆発が彼の場を覆う。
そしてその爆発によって生じた煙が消えた時、青年の場から彩葉の宣言した二体の恐竜族モンスターが消えていた。
「バトル、ガトリング・ドラゴンで俊足のギラザウルスを攻撃だよ! ガトリング・ラッシュ!」
「っ、ぐああぁぁぁっ!!」LP4100→2900
その攻撃宣言と共に再びガトリングが回転をし始めた。キャリリリリという回転音と共にズカカカカカッという銃声が響き、それを浴びたギラザウルスが破壊。さらにその余波は青年にまで届き、黒い電流が流れて彼に苦悶の顔を浮かばせる。
「カードを一枚セットしてターンエンドだよ♪」
そして彩葉は最後の手札をセットしてターンエンドを宣言した。
「ワイのターン、ドロー!」
「スタンバイフェイズに死神の巡遊の効果発動!」
青年があと一息と気合いを入れてカードをドローするとまたも死神の巡遊の効果が発動、コインのソリッドビジョンが宙を舞う。それが裏を示し、彩葉の場が黒い霧に包まれる。
「ヒャッハハハ! 本当に運に見捨てられたようやのぉ。やけど容赦はせんで! 魔法カード[闇の量産工場]を発動! 墓地の通常モンスター二体、[二頭を持つキングレックス]と[屍を貪る竜]を手札に加え、魔法カード[融合]発動! さっき手札に加えた二体を融合し、[ブラキオレイドス]を融合召喚!!
さらに手札から魔法カード[究極進化薬]を発動! 自分の手札・墓地から、恐竜族モンスターと恐竜族以外のモンスターを一体ずつ除外して発動でき、手札・デッキからレベル7以上の恐竜族モンスター一体を召喚条件を無視して特殊召喚する! ワイは手札から爬虫類族の[バルーン・リザード]を、墓地から恐竜族の[俊足のギラザウルス]を除外して、デッキからレベル7の[
ブラキオレイドス 攻撃力:2200
暗黒恐獣 攻撃力:2600
青年の場に現れる二体の恐竜族。特に暗黒恐獣の攻撃力はガトリング・ドラゴンと並んでおり、暗黒恐獣とガトリング・ドラゴンの相討ちでフィールドを開けたところにブラキオレイドスのダイレクトアタックが決まれば勝利。観客がそう思った時、青年の場のカードが翻る。
「トラップカード[生存競争]発動や! このカードは自分フィールドの恐竜族モンスター一体を対象とし、攻撃力1000アップの装備カード扱いとして、その自分の恐竜族モンスターに装備する! さらに生存競争にはこのカードの効果でこのカードを装備したモンスターが攻撃で相手モンスターを破壊し墓地へ送った時に発動でき、装備モンスターは相手モンスターにもう一度だけ続けて攻撃できる効果があるが……どうせお前の場にモンスターは一体。それに追撃するまでもない……」
暗黒恐獣 攻撃力:2600→3600
青年がやれやれと頭を振り、にやぁッと笑う。彩葉は顔を青くしてぷるぷると震えていた。
「や、やだ……やめて……」
「残念やったのう。ワイが相手だった不運を嘆くんやな! この攻撃で終わりや! バトル! 暗黒恐獣でガトリング・ドラゴンを攻撃!!」
完全に恐怖している彩葉を見て自慢気に笑いながら青年が攻撃を指示。暗黒恐獣がガトリング・ドラゴンに襲い掛かり、その強靭な牙で噛み砕く。耐えきれなくなったガトリング・ドラゴンが爆発し、その爆風が彩葉を包み込む。
「あああああぁぁぁぁぁっ!!!」
「これでワイの借金はチャラじゃあっ!!」
爆風によって現れた煙の中から彩葉の悲鳴が響き渡る。その意味を悟った青年がガッツポーズを取り、煙が少しずつ晴れていく。その中には無様に倒れている彩葉の姿が……
「なぁーんちゃって♡」LP2500
なかった。彼女は先ほどまでの青い顔はどこへやら、むしろ全て予想通りですと言わんばかりにニヤニヤと笑いながら立っており、そのライフはむしろ先ほどより増えている。
「なっ……なんでや!? お前のライフは残り500、生存競争で強化した暗黒恐獣で攻撃すればライフは削り切れるはず……」
「リバースカードを発動したんだよ。速攻魔法[非常食]♪ これによって私は無意味にフィールドに残っていたリビングデッドの呼び声、死神の巡遊、そして伏せカードの三枚の魔法・罠カードを墓地に送り、ライフを3000回復したんだよ♪」
つまり攻撃直前の彩葉のライフは3500。その状態から攻撃力3600の暗黒恐獣で攻撃力2600のガトリング・ドラゴンを攻撃した結果の1000ポイントの戦闘ダメージを受けてもライフはたしかに2500残る計算になる。
「くっ、だったらブラキオレイドス! ダイレクトアタックや!!」
「きゃあああぁぁぁぁっ!!」LP2500→300
だが続いての2200のダイレクトダメージは防ぐことは出来ず、というかさっきの1000ポイントのダメージも受けている事は受けているため合計3200のダメージが衝撃増幅装置によって彼女の身体に送られる。
「しぶといやっちゃなぁ。だがこれでお前の場にモンスターはなく、魔法・罠も使い切った。手札は次のドロー一枚や、大人しくサレンダーするんならまあ許してやらんでもないで? ターンエンドや」
「……魔法・罠を使い切った?」
青年はせめてもの情けだというように彩葉に言うが、それに対して彩葉はきょとんとしながらカードをドロー。その瞬間彼女の場の床がひび割れ、そこから棺型タイムカプセルが出現、それを見た青年の目が見開かれる。
「し、しまった!?」
「タイムカプセル発動後、二回目のスタンバイフェイズ。私はタイムカプセルを破壊し、棺に入れたカードを手札に加えるよ♪」
彼女の場に密かに残っていたカード──タイムカプセル。それが破壊され、棺の中に封印されていたカードが彩葉の手に渡った。彩葉のニヤリとした笑みが深くなる。
「魔法カード[
「そんなモンスターが今更何に……」
まず発動したのはタイムカプセルに入っていたカードではなく、このターンドローしたカード。これで彼女の手札に融合とその素材として使用できる可能性のあるモンスターが渡る。
ぼやきつつももしやまたガトリング・ドラゴンかと身構えている青年に対し、彩葉は「融合を発動!」と宣言する。
「私はタイムカプセルに眠っていた[時の魔術師]と、効果モンスターである[リボルバー・ドラゴン]を融合!!」
「と、時の魔術師やとぉ!?」
タイムカプセルに眠っていたと言われたカード──時の魔術師。そのカード名を聞いた青年が仰天し、その間に二体のモンスターが神秘の渦に巻き込まれて融合。
「現れろ、[時の魔導士]!!」
時の魔導士 攻撃力:2000
「時の魔導士……この姿、融合素材……まさかッ……」
彩葉の場に出現するのは時計の姿をした魔法使いというべきだろう存在。だがその姿を見た青年は歯ぎしりをしており、彩葉はニヤニヤしながら口を開く。
「さあ、ラストギャンブルの時間だよ。おにーさん♡ 時の魔導士の効果発動、一ターンに一度、このカードが融合召喚されている場合に発動でき、時の魔導士の杖の先のルーレットを回し、成功すればフィールドのモンスターを全て破壊し、相手は表側表示で破壊されたモンスターの元々の攻撃力を合計した数値の半分のダメージを受ける。
失敗すればフィールドのモンスターを全て破壊し、自分は表側表示で破壊されたモンスターの元々の攻撃力を合計した数値の半分のダメージを受ける」
「な……つまりっ……」
今フィールドのモンスターの元々の総攻撃力は
つまりこれから行われるギャンブルに勝った方がこのデュエルの勝者になる。という事だ。
「さあ、時の魔導士。タイム・ルーレットスタート!」
[タイム・ルーレット!]
彩葉の掛け声に合わせて時の魔導士が杖を掲げて宣言。同時に杖の先のルーレットが回転し始めた。大きく四つに分けられているルーレットは内二つが成功を意味する「当」、内二つは失敗を意味するドクロマークになっている。その成否判定を行う時計の矢印が勢いよく回転し、徐々にその回転が遅くなっていく。
彩葉はさあどうなるのかと期待を込めた様子で、青年がどこか怯えた様子で、観客達も固唾を飲んでルーレットの行く先を見守る。
そしてついに針が停止した時、金網の外でこの戦いを見物していた観客達が『うおおおぉぉぉぉっ!!!』と歓声を上げる。
「な、あ、え、え、あ……」
青年の顔が青くなる。それもそうだろう、針が指し示しているのは「当」。それはこの勝負、青年の敗北を意味することでもあった。
「時の魔導士の効果により、フィールドの全てのモンスターを破壊。その元々の攻撃力分のダメージを受けてもらうよ、おにーさん♡」
「あ、あ、あ、あ、あ……」
「タイム・ソーサリー!!」
顔を青くする青年に彩葉は無邪気に笑いながら宣言。同時に時の魔導士の魔法によって時空が歪み、その狭間へと全てのモンスターが消え去っていく。そしてその際に溜まったエネルギーの全てが青年へと降り注ぐ。
「うぎゃああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!」LP2900→0
その一撃によってライフが尽きたことを示すブザー音と青年の悲鳴がこのデュエルの終了を示すのであった。
「そ、そんな……ありえへん……ワイはプロデュエリストなんや……昔は全国大会で準優勝もしたことがある……そのワイが、こんなガキに負けるなんて、そんな、そんなわけ……」
「んふ♪ けっこー楽しかったよ、おにーさん♡ また遊んでね♡ ま、次があればだけど」
「ひぃ!?」
青年は自らの敗北が信じられないとばかりに呆然とした表情をしていたが、彩葉が満面の笑みを浮かべながら手を振って声をかけると我に返ったようにか細い悲鳴を上げる。そして金網の扉部分が開かれたかと思うとそこから黒服グラサンのお約束な格好をしたガタイのいい男達がぞろぞろと入ってくると青年を拘束する。
彩葉がにぱっと無邪気な微笑みを青年に向けた。まるでその笑顔が彼の人生最後に送られる笑顔だというように。
「じゃ、おにーさん。今回の負け分含めて、借金の支払い頑張ってね♡」
「ま、負け分!? なんのことや!?」
「あれ、聞いてないの? このデュエル、おにーさんは今までの借金を返せる分のお金を稼げるだけの金額を自分の勝利に賭けてデュエルしてたんだよ?」
「な……」
「でも結果はおにーさんの負け。その負け分、また借金が増えちゃったね。ごしゅーしょーさま♡」
青年が訳が分からないという様子で彩葉に叫ぶが、彼女はニヤニヤ笑いながら事も無げに説明。彼女の言葉を聞いて崩れ落ちた青年の元に歩き寄ると、崩れ落ちたことで立っている自分よりも下に顔のある彼を見下ろすようにして嘲笑を浮かべた。
「ざぁこ♡ ざぁこ♡ 借金まみれで一発逆転狙って地下デュエル♡ こんなガキなら余裕だと捕まえて大勝負♡ 勝ち確だと思ってたとこコイン一枚でひっくり返されて逆転負け♡ こぉんな中学生に人生終わらされちゃって、今どんな気持ちぃ?」
「ぐ、ぐぅ……うわあああああっ!!」
彩葉の言葉責めに青年は泣き叫びながら暴れるが屈強な男達に押さえつけられてしまいどうすることも出来ない。そんな彼を彼女はクスクスと笑いながら見下ろしていた。
「さーて、それじゃぁ本日のホントのメインイベントを始めよっかぁ♪」
そう言って彩葉はいつの間にか自分の隣に控えていた一人の黒服から渡された一枚の紙を、青年の目の前に見せびらかすように向ける。それには「借用書」と書かれていた。
「あなたは多額の負債を抱えました♡ よってこれより、あなたの身柄をとある組織に引き渡すことに決定しました♡ そ・し・てぇ~♡ ここに書かれている通り、これからおにーさんには楽しい楽しい地獄巡りの旅をしてもらいまぁす♡」
「いやだああぁぁぁ!! ワイは、ワイは──死にたくないいぃぃぃっ!!」
青年の言葉など無視して彩葉はこれまた黒服から渡されたスイッチを押す。すると二人を囲んでいた檻の一部が、まるで巨大な獣が獲物を喰らおうと口を開いたかのように開き始め、青年はそれに恐怖したのか必死に逃げようとし始める。しかしそんなことは許されず、彼は黒服の男達の手によって強制的に歩かせられるとそのまま開かれた檻から連れ出される。
「いやだいやだいやだっ! 助けてくれえぇぇっ!!」
青年はそんな風に喚きながら抵抗するが誰も耳を貸さない。そして彼は自分が入ってきた扉とは別の扉へと運ばれていく、彼が今からどこに行くのか、彼女は知らないし興味もない。
彼女はにまにまと笑いながらその光景を見送ると、何事もなかったかのように自分もその牢獄スタジアムを後にする。この勝負の結果によって片や熱狂、片や悲鳴を上げる観客達、自分達の勝負で大金が動くレベルの賭けをしていた富豪達の声を背中で聞きながら。
「いやー、今日も楽しかったなー♪」
牢獄スタジアムを出て行き、廊下を歩きながらそんなことを呟く彩葉は無邪気な笑みを浮かべている。
今更ながらここはぶっちゃけ違法な地下デュエル場。そこで彩葉は運営側のデュエリストとして雇われての地下デュエルを行っていた。彼女の担当は主に借金を背負ったデュエリストの相手で、その代わり彩葉自身も「彩葉の勝利」限定だが賭けに参加することが許されており、もちろん負ければ運営側だろうと関係なく金を奪われ負債を背負わされるが、逆に勝利すれば大金が手に入る。
さらに彩葉はまだ子供だと自分を侮って「こいつなら勝てるし勝てば借金チャラだ」と思って勝負を仕掛けてきた相手に対してわざと追い詰められ、そこで逆転する。つまり相手に勝てるという希望を味わわせた上で一瞬で逆転勝利、逆転負けという絶望に突き落とされる借金クズ達を見るのにいつしか快感を覚えていた。
そして今回もまたそうだった。相手の男は最後の最後まで自分に勝機があると信じて疑わなかっただろうが、それが全て覆された時のあの表情がたまらなくて仕方ないのだ。その上に大量のお金まで貰えるとなれば彩葉にここを出て行く選択肢など存在しなかった。
「んふ、また次のデュエルが楽しみだなぁ♡」
そんなことを考えつつ、彩葉は上機嫌で鼻歌を歌いながら地下デュエル場の中を歩いていくのだった。
《後書き》
最近「AIのべりすと」という小説AIを発見、色々試している中でふざけてサイバー流メスガキinデュエルアカデミアの「猫シンクロGX23話Another:IF DUEL」の中の
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負けたショックで尻もちをつきながらも~頭を抱えて発狂したかのように叫び声を上げる。
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の辺りを、彩葉以外の個人名を消して(例:才盾→青年)、デュエルアカデミアとかのデュエルモンスターズ系の用語も上手い具合に書き換えて(例:デュエルアカデミア→大学)AIに続きを書かせてみたところ「彩葉が中学生ながら無敗の天才ギャンブラー」という設定で続きが書かれまして、面白かったのでギャンブルデッキ使いの彩葉という設定で、さらにギャンブルって事でアウトローなイメージで、原作ではヘルカイザーが誕生した地下デュエル場でデュエルしているという設定で今回書いてみました。
アニメの孔雀舞みたく「カジノでディーラーやってる」という設定も考えたけど、流石に中学生がディーラーは法的にアカンやろという事で、そういう法を気にしないアウトローな方向に振りました。こっちならギャンブルに負けた(デュエルに負けた)敗者の末路も容赦なく書けますし。
そして今までの使用デッキの設定上、サイバー・ダーク除いた彼女の使用デッキってガトリング・ドラゴンを使うデッキって事になるからそういう方向性に特化したコイントス系デッキですね。
流石にこれは今回のみの一発ネタになります。これで続き書けとか無理です。ワンパターンにしかならないと思う。
では今回はこの辺で。ご意見ご指摘ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。
PS)
え、今回彩葉ちゃんが戦った相手?いえいえ、「時の魔術師系列のモンスターに敗北した経験があって昔全国大会で準優勝した実績がある関西弁で喋る恐竜族使いのニット帽の青年」というだけですよ?(超すっとぼけ)