【完結】僕のヒーローアカデミア・アナザー 空我 Another EPISODE AGITΩ&G3   作:たあたん

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先ほどは間違ってAdieu au Heroesの方に投稿してしまいました

思いっきり放送?事故です。読者の皆様、大変申し訳ございませんでした


Chapter:10

 

 休暇を得た心操人使は、とある人物と待ち合わせをしていた。公園のベンチに寄りかかり、スマートフォンを片手にしながらぼうっと一帯を眺める。親子連れやカップルなど様々なグループがのんびりと各々の時間を過ごしている様は、実に牧歌的な風景である。

 そうしたものに少なからず心安らぐようになったのは、自分がその守り手であるという意識があるからだろう。平和というのは実のところ脆いものなのだけれども、無辜の市民にそれを感じさせないことが自分たちの務めなのだと、心操青年は改めて思う。

 

「悪い、待たせたか?」

「!」

 

 その意識は、きっとこの男も共有している──それだけはわかり合えると、どうか、信じたい。

 

『いえ、それほどでも──水城さん』

 

 

──穏便とは言いがたい邂逅でありながらの、待ち合わせ。元はと言えば水城青年の側が持ちかけたことだった。

 

「すまないな、貴重な休日を割いてもらって」

『……いえ、どうせ筋トレしてるか適当な本でも読んでるかですから』

「はは、きみもそういうタイプか」

『水城さんこそ大丈夫なんですか。交友関係に制限とか』

「無いよ、そんなもの。──しかしきみのそれ、本当に凄いな。実際のきみの声がどんなのか知らないが、遜色ないんじゃないか?」

『……ええ。発目──G3ユニット(うち)の開発担当の発明品なんです』

 

 デバイスをそっと撫でる心操に対し、

 

「喉の傷は、未確認生命体との戦いで負ったものだと聞いた」

『ええ、まあ』

「きみは当時、学生だったんだろう。あんな化け物との戦いの矢面に立つ義務はなかったろう。どうして志願してまで、戦場に出た?」

『………』

 

『親友が、戦っていたんです』

 

 瞼を閉じれば、脳裏に浮かぶ。同い年とは思えないくらい幼い顔立ちで、日常においてはいつも柔和で、優しい男だった。ただその大きな翠眼の奥には、意思の強さが秘められていて──彼が未確認生命体に立ち向かう者だと気づくのに、聡い心操に時間は要らなかったのだ。

 

『あいつは誰より優しくて、まっすぐで、強かった。そして、ヒーローに憧れていた。……俺も、あいつの隣で戦いたい。もうヒーローにはなれないけど……あいつと一緒に、人々(みんな)の笑顔を守りたい。そう、思ったんです』

人々(みんな)の笑顔……か」

『水城さんは、どうなんですか?』

 

 コーヒーカップを弄びながら、水城は笑みを浮かべた。

 

「俺だってそうだ。身近な人々を、ふるさとを守りたい。だが真にそれを為すためには、その大きなかたまり……国家が、安らかでなければならない」

『それで、軍に?』

「そうだ。……しかし我々は長年、歯痒い思いをしてきた。特に、未確認生命体のことでは」

 

 未確認生命体関連事件において、その脅威の大きさを鑑み、国家の非常事態と捉えて防衛軍の出動も行うべきではないかという意見が根強く存在していた。ただし与野党の一部からの反対、未確認生命体という未知の存在の解釈の困難さから実現することはなく、一年足らずで事件は終息に至ったのであるが──

 

「しかし我らが日本政府も無能ではない。現在、国防相を中心に、未知の脅威から我が国を守るためのプロジェクトが進められている。──G4は必ず、その根幹をなすものとなる」

『……確かにG4は、強力な武器です。でも、武器は武器でしかない。──人の意志がなければ、何も守れない』

「死を背負うことだって、立派な人の意志だ」

『でも、その先には何もない!……俺たちは生きている。生きているから、戦えるんだ』

 

 これまでの人生を思い起こす。"洗脳"の個性が目覚めて……周囲の人々から忌避され、夢にはたどり着けず、苦しいことばかりだった。──それでも、生きてきたから。だからこそ、親友と呼べる存在を得ることができた。未確認生命体のような奴らから、人々の笑顔を守ることができた。

 

『……俺は生きるために、生かすために戦う。生きることを……素晴らしいと、思いたい』

「………」

 

 水城は、何も応えない。──もとよりわかっていた。生と死、相反する信念。それは深淵に及ぶほどの大いなる溝であって、一朝一夕の応酬で埋まるわけがないことも。心操は、この男のことを怪物とさえ思ったのだから。

 それでも彼は、文字通りの怪物であるグロンギなどとは違う。日本という国を、そこに生きる人々を守ろうという意志がある。ならば肯定はできずとも、知らねばならない。理解しなければならない。言葉をかわすことで、見えるものもあるのだから。

 

「……俺ときみの道は、やはり交わるものではないんだろうな」

『………』

「だが、目指す場所は同じなのかもしれない」

「!」

 

「ともに戦おう、この国を守るために」――そう言って、水城は右手を差し出してきた。心操のものよりひと回り大きく、分厚い手。死とは最も遠いところにある掌の体温を、心操は感じとった。

 

──わかりあえるよ、だって同じ人間なんだから。

 

(ああ、おまえの言う通りだ──緑谷)

 

 親友はそうして自分や、大勢の人々と絆を結んだ。いつか彼が帰ってきたその日、おまえの足跡はこうして残っているのだと、言葉にせずとも明示できたら良い。

 

 今も根強く在り続けている友情、そしてこれより生まれ出でようとしている友情。その両方を心操が噛みしめていると、不意に水城の携帯が鳴った。

 

「水城です。──了解、」

 

 軍人らしく落ち着いた声音。しかし他人の機微に敏い心操にはその心情の揺らぎが容易に伝わった。

 

『何があったんですか?』

 

 通話が終わったところで、すかさず訊く。部外者に話すべきか否か一瞬躊躇した様子の水城だったが、

 

「……八王子が襲撃を受けているそうだ」

『!、まさか……この間の?』

「ああ。失礼する」

 

 去りかけた水城を、心操は咄嗟に呼び止めた。

 

『待ってください!駐屯地が襲われているなら、生身でそこに入るなんて危険だ』

「……危険だろうと、奴らに対抗するにはG4の力が必要だ」

『………』

 

『……なら、G3-X()が護衛します』

「……何?」

 

 G4の使用を止められるのだと思っていた水城は、その言葉に驚いたようだった。

 

『相手は未確認生命体と推定される怪物です。現場責任者の承認があれば、G3ユニットは駐屯地に入って戦える』

「心操くん……」

『目指す場所は同じ……そうでしょう?』

 

 目を丸くし、言葉を失う水城。そういう素の表情は……年長者とはいえ、彼もまだ青年なのだと心操に感じさせる。失礼ながらとも、思いつつ。

 

──数秒後、ふたりはともに走り出していた。

 

 

 *

 

 

 

 同じ頃、轟焦凍は八百万百とともに街に出、地道な捜索を続けていた。それだけで得られる情報が少ないことは、もとよりわかっている。

 

「……そうか、わかった。ありがとな、飯田」

 

 協力を依頼した親友からの連絡を受け、礼を述べる焦凍。その傍らでは、百も別の同級生との通話を終えたところだった。

 

「耳郎さんと上鳴さんが、所属なさっている事務所のパトロール体制を強化するよう動いてくださるそうですわ」

「そうか。飯田は警察から目撃情報を貰って、そこを起点に捜索を行ってくれるって」

 

 彼らは今、東京周辺にいるかつての同級生たちに"未確認生命体"捕捉のための協力を要請しているところだった。荼毘のことは当然、三年間苦楽をともにした仲間たちも知っている。皆、それぞれの職務もあるので全面的にとはいかないが、可能な範囲での協力を約束してくれていた。

 

「あとは……」

 

 リストからその名を探し出したところで……ああそうだったと思い出す。彼も今、日本にはいないのだ。

 

「爆豪さんがいてくだされば、とりわけ力になってくださったかもしれませんわね」

「!」

 

 自分の気持ちを透視したかのような百の言葉に、焦凍は目を丸くした。──まあ、自分は意外と感情が表に出やすく、わかりやすい性質なのだ。自覚したのはここ最近だが。

 

「そうだな。……でもあいつは今、日本にいねえ」

 

 爆豪勝己──雄英高校出身の面々の中でもとりわけ、望むと望まざるとにかかわらず焦凍の心に鮮烈な光を残している青年。未確認生命体関連事件においては父や飯田天哉らとともに合同捜査本部に招聘され、常に第一線で戦い続けていた。

 そんな彼だが、先日、国際テロリズム対策部隊の一員に選抜されて日本を離れたばかりだった。これ以上ない頼りがいのある存在であることは言うまでもないが、任務を放り出してまで助けてほしいとは思わない。日本には友人たちや現No.1をはじめ、力量のあるプロヒーローが大勢いる。何より自分もその端くれとして、彼に追いつき追い越したいという欲求があった。

 

 ともあれ、爆豪と同じ事務所に所属している彼の親友──切島鋭児郎には、他の友人たち同様話を通しておこう。そう考えて再びスマートフォンに目を向けた矢先、

 

「──!!」

 

 突如として脳裏に走る、稲妻のような感覚。焦凍は突き動かされるようにバイクに飛び乗った。

 

「轟さん?」

「奴らだ……!八百万、行くぞ!」

「はい!」

 

 超人となった焦凍の能力について理解している百は、多くを訊くことなくその言葉に従った。すぐさま後部に跨り、ヘルメットを被る。

 それを待って、焦凍は愛馬のエンジンを唸らせたのだった。

 

 

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