【完結】僕のヒーローアカデミア・アナザー 空我 Another EPISODE AGITΩ&G3   作:たあたん

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クウガ46話配信を観ていて、エンデヴァーや冷さんに必要だったのはこれだったんだなぁと思いました




Chapter:12

 

 駐屯地内での死闘。二体がかり、それも猛烈な殺傷能力と人間離れした回復力をもつ怪物たち相手では、警察の切札とでも言うべきG3-Xも歯が立たない──心操自身、そう覚悟もしていたのだが。

 

『ッ!』

 

 それは、勝利をあきらめることと同義ではない。武装の数々を駆使し、彼は全身全霊でその場に踏みとどまり続けていた。

 

「つ、強ぇ……!強ぇよコイツ!」

「何故だ……!警察の機械人形が、ここまで……!」

 

 廻も姜一郎も、その強さに恐怖すら覚えはじめていた。圧倒的な破壊力があるわけでもない相手、戦力は間違いなくこちらが勝っているというのに。

 

「なんだ……なんなんだ、おまえはァ!!?」

 

 その問いに対する心操の答は、決まりきっていた。

 

『──ただの、人間だ!!』

 

 それ以上でも、それ以下でもない。

 

 

──その叫びを聞いたのは、敵である者たちばかりではなかった。

 

(ただの……人間)

 

 装着を完了し、戻ってきたG4──水城史郎。心操の放った言葉に少なからず、心を動かされていた。

 ただの人間──生きることを希求し、その中にきらきらしたものを多かれ少なかれ見出している。そういう平凡な、何処にでもいる存在。

 

 しかしそのありふれたものが、二体の化け物相手を慄かせるほどのエネルギーを発していた。

 

「それが、きみの強さなのか……心操くん」

 

 自分の背負う"死"と、果たしてどちらが強力な意志なのか。決して揺らぐことはないと思っていた信条が徐に軌道を変え、心操のそれと交錯しようとしている。

 

「ッ、」

 

 心の動揺を鎮めて、水城は走り出した。己の信ずるものは、戦いの中で証明するしかない。

 

 漆黒のボディーは、薄暗い廻廊の中で不意打ちを仕掛けるのにひと役買った。まして怪物となった少年たちは、G3-Xに釘付けになっていて。

 

「──ガアァッ!?」

 

 200キロ近い総重量のタックルをまともに浴び、姜一郎は吹き飛ばされた。

 

「これよりこの戦闘は俺が引き継ぐ。きみは援護にまわってくれ」

『!、水城さん……』

 

 G4という兵器に対する一抹の不安はあった。しかしここまでの戦いで、G3-Xが少なくない損傷を受けていることも事実で。

 

『……わかりました』

 

 三年前だって、自分は仲間の援護に回ることが多かった。自ら前に出ていくことだけが戦いではない、的確なサポートが勝利の鍵を握ることは身に沁みて理解している。

 

「このッ、機械人形どもがぁアアアアアッ!!」

 

 少年の声と野獣の咆哮が混じりあったような叫びとともに、廻がG4に飛びかかる。腕の回転が勢いを増し、もとより鉄板さえ穿けるほど鋭い爪は、もはやあらゆる生き物を殺すための兵器と化していた。

 

「………」

 

 対する機械兵器を纏った水城は、たじろぐことなく静かに格闘の構えをとった。持ち上げられた拳に、力がこもる。

 そして、

 

「────ッ!」

 

 凄まじい衝突音が、戦場に響き渡る。思わず息を呑んだ心操だが、そのあとの光景は予想だにしないものだった。

 ドリルの回転が弱い部分を、G4は左手で受け止めていたのだ。

 

「……!?」

「──ふんっ、」

 

 唖然とする廻の顔面を、右の拳が強かに殴りつける。一瞬、音すらも置き去りにして、彼は紙のように吹っ飛んでいく。先ほどのタックル以上の威力だった。

 

(G4の性能が、上がってる……?)

 

 それは心操だけでなく、G3-Xのデュアルアイを通して戦況を見守る玉川や発目も感じたことだった。

 

「この短期間で、どうやって……?」

「………」

 

 

 その"魔法"を成し遂げた女は、安全な後方の指令室で笑みを浮かべていた。

 

「G4はもっと強くなる。貴方たち、"化け物"のおかげでね……」

 

 囚われたまま気を失っている累少年を、深海理沙は母親のような目つきで見つめた。

 

 

 理沙の言う"化け物"たちは、強化されたG4に恐怖しながらも退却の意志は見せずにいた。

 

「累を……ッ、絶対救けンだあぁッ!!」

 

 血を吐くような少年の叫び。それと同時に彼の手から放たれたのは、花粉を纏った毒々しい花葉の群れだった。

 

「ッ!」

 

 花粉が付着した途端、G4のボディから火花が散る。その衝撃を身体に感じながら、水城は声を張り上げた。

 

「心操くん、奴の個性は"毒草"だ!その花粉に触れただけでダメージを受ける……!」

「!」

 

 ならばと、G3−Xは後退しながらもスコーピオンを構えた。舞い散る葉に狙いを定め、引き金を引く。果たして装着者自身の腕前とAIの補正機能により、豆粒のような弾丸は凄まじい勢いで毒の塊を撃ち落としていく。

 そしてあらかた排除したところで、その銃口を個性の主に向けた。

 

「グガッ!?」

 

 銃弾に穿たれ、苦悶の声を発する姜一郎。胴体に開いた風穴から血が噴き出すが、それでもなお彼は前進を試みんとしていて。

 

「救、ケル……!」

(ッ、こいつら……)

 

──まるで、ヒーローのようだ。

 

「──ご苦労、心操くん」

「!」

 

 水城に声をかけられ、心操は我に返った。強敵を今、追い込むことができている。ここで一気に畳みかけなければ、さらに犠牲を増やすことに繋がりかねない。

 

「"ギガント"、使用許可を願います」

 

 許可は即座に降りた。付近に待機している人員が本体及び本体とコードで繋がったエネルギータンクを持って駆けつける。G3-Xの装備と異なり、この巨大なウェポンは単独での運用は困難。そのぶんG4ユニットの人員は、警察のそれより遥かに充実しているのだった。

 

「グゥッ、ク、ソォ……!」

「ッ、ここまでか……!──キョウ!」

「なん、だよ?」

「おまえ、だけでも……逃げろ……!」

「……!?」

 

 何を言っているんだと、抗議の目を向ける姜一郎。それでも廻の意志は固かったが……いずれにせよ、すべてが遅かった。

 

「逃がさん……!」

「!」

 

 ギガントは既に、彼らを標的として捉えていた。這々の体で逃げ出そうとしたところに、計四基もの巨大ミサイルが一斉発射される。

 

「────、」

 

 一瞬の突風。そして、

 

「ガァアアアアア──ッ!!?」

 

 かろうじて直撃を避けつつも、爆炎に呑まれては同じことだった。火だるまになった彼らは壁に叩きつけられた。絶大な回復力をもつ"怪物"であっても、ここまでのダメージを受ければ追いつかない。

 そのまま地面に倒れ落ちると同時に身体が縮み、もとの少年たちの姿が露になる。襤褸切れのようになったふたりは、ともに意識を失っていた。

 

「………」

 

 良い気分は、しなかった。彼らは取り返しのつかない罪を犯したかもしれないが、その本質は仲間を救け出すことに必死だったのだから。

 むろん、冷静に対処している水城が内心ではどう思っているのか……そこにまで立ち入るつもりはないが。

 

 ただ、捕獲に移ろうとしていた彼に対し、"司令部"より通信が入った。

 

『水城少尉。外にまだエネミーがいます』

「……何?」

『当基地より東に約300メートルに二匹、"アギト"及び女性ヒーローが戦闘中です。二匹のうち一匹は……"本丸"と思われるわ』

「!、了解。直ちに向かいます」

 

 時間にして十秒ほど。通信を終えると、水城は共闘した"友人"を振り返る。

 

「心操くん、来てくれ。まだきみの援護が必要だ」

『……わかりました。Gトレーラー、オペレーション続行します』

 

 玉川から承認の旨返答があった。エネルギー残量が残り半分程度なので、十分注意するようにとの注釈付きであるが。

 

 いずれにせよ、すぐそこにある次なる戦場に向け走り出そうとするふたり。──しかしその直後、黒衣の水城に異変が訪れた。

 

「!?、ぐぁ、あああ……ッ」

 

 突然苦痛にまみれたうめき声をあげ、その場に膝から崩れ落ちる。全身が小刻みに痙攣している……尋常な状態ではない。

 

『水城さん!?どうしたんです、水城さんっ!』

「が、ああ……う、く……っ、はあ、はあ……問題、ない……ッ」

『問題ないって……』

 

 これほど苦しんでいて、そんな言葉を鵜呑みにできるわけがない。介抱しようとする心操の手を払いのけて、水城は立ち上がった。

 

「……行くぞ。"未確認生命体"は、一匹残らず掃討しなければ……」

『………』

 

 G4の副作用が、いよいよ肉体を蝕みはじめている──そんな確信があったけれども、今この場で彼を止めるすべを心操は思いつかなかった。彼は防衛軍の人間であり、上官の指示を絶対のものとして動いている。そして心操もまた、組織の人間ということに違いはなかった。

 

 

 *

 

 

 

 駐屯地の外郭では、血風吹きすさぶ激しい戦いが続いていた。

 

「あははははっ、ははははっ!!」

「ッ!」

 

 唯一少女の面影残る高笑いとともに仕掛けられる攻撃を、八百万百は己の個性を駆使して懸命に防いでいた。とはいえ、敵の身体能力は小細工など簡単に突破してしまうほど卓越しており、少しでもこちらが鈍れば一気に形勢が傾くことは考えるまでもない。片時も気の抜けない緊張感に、百は脂汗を流していた。

 

「すばしこいわね、流石ヒーローってとこかしら?でも、いつまで続くでしょうねええ!!?」

 

 勝気な少女の声はそのまま、野獣の咆哮へと変わる。目まぐるしく入れ替わる人と獣は、果たしてどちらが彼女の本性なのか。あるいは既にぐちゃぐちゃに混ざりあい、もはや彼女自身ですらわからなくなっているのかもしれない。その可能性に思い至って、百は戦慄した。

 だが、勝ち目がないわけではない。今はまだそれを悟らせてはならないと、今しばらく防戦に努めざるをえないのだった。

 

 

 一方で、超人たちは純粋な力のぶつかりあいを延々と続けていた。

 

「ふ──ッ!!」

 

 右腕に氷結、左腕に烈火を纏い接近戦を仕掛けようとするアギトに対し、ギルスは蒼炎と先端の尖った触手で一歩も近づかせない。どちらも──高温あるいは内包した猛毒により──触れただけで敗北に繋がると本能で理解しているアギトは、この兄に対し決定打を放てずにいた。

 

「ははははっ、どうしたよ焦凍ォ?パワーもスピードも鈍ってんじゃねえかぁ!?」

「……黙れ!」

 

 確かに、単純なそれらの比較なら目の前の敵──ギルスに軍配が上がっている。個性の、火力も。

 

「わかってんだろ、焦凍?弟は結局、兄には勝てない……!」

「ッ、」

 

 ふざけるな、と反射的に叫ぼうとして……躊躇が生まれた。彼は両親の体質を上手く受け継ぐことのできなかった絶望と劣等感に苛まれ、その心を大きく歪めてしまった。その一因は、自分が生まれてきたことそのものにもある。ならば自分のすべきことは、ひとりのヒーローとして彼を止めることだけ。そこに、正義感以上の感情を介在させてはならない──

 

「ふ……っ!」

 

 拳を手刀に変えて触手をいなすと、アギトは素早く飛び退いた。黄金の角が輝きを放ち……彼の足下に、アギトの紋章が現れる。

 

「………」

 

 ギルスは身構えるでもなく、所作を茫洋と眺めている。その態度に得体の知れないものを感じ取りながらも、もはや引くわけにはいかなかった。

 

「ふ──!」

 

 大地の紋章を吸い込むと同時に跳躍し、

 

「はぁ────ッ!!」

 

 炎熱と氷結、それぞれを纏った両足キックを──ギルスめがけて放つ!

 

「………」

 

 対するギルスは両手を大きく広げ、同時に触手すべてを蠢かせる。そこに、勢いを増したアギトが吶喊し──

 

──ひときわ大きな爆発が起きるとともに、ギルスの身体が後方へ大きく吹き飛ばされた。

 

「──ッ、ごは……っ」

 

 地に伏したその身体が縮み、荼毘の姿に戻る。口から血の塊を吐き出すと、彼はそれきりぴくりとも動かなくなった。

 

「……燈矢、兄」

 

 これは、勝利なのか。様々な想いから焦凍は、拳をほどくことができずにいた。

 そのとき、

 

「ああ──ッ!」

「!!」

 

 百の悲鳴が響き、彼は慌てて振り返った。──彼女の肩口が、ギルスに似た怪物によって切り裂かれる。その瞬間を、目の当たりにしてしまった。

 

「八百万ッ!?」

 

 百が、やられる……!頭が真っ白になりかけた焦凍は即座に駆けつけようとするが、

 

「わたくしは、大丈夫ですわ……っ!」

「!」

 

 息を荒ぶらせながらも、百は声を張り上げた。幸いにして、傷は浅いらしい。

 それでも、怪物相手に手負いでは──そう訴えようとする焦凍に、彼女はさらにひと言。

 

「わたくしに、お任せください!」

 

 その表情は、彼女らしい絶大な自信に満ちあふれていて。──何か策があるのだと、長年連れ添っている焦凍にはすぐわかった。

 

「アハハハハッ、強がり言っちゃって。今、とどめを刺してあげるわぁッ!!」

 

 哄笑とともに、最後の突撃を仕掛ける麻衣。鋭い爪、牙。拳で打ち砕いてもいいし、並みはずれた握力で縊ってもいい。如何なる方法によっても自分はこの女を殺せるのだと、彼女は確信していた。

 百は傷のダメージか、その場から動けない。それでも焦凍は彼女を信じ、跳ぶのを堪えた。そうしている間にも怪物は、百に迫っていく。あと20メートル、15、10──

 

「……!?」

 

 踏みしめた地面に硬質な感触があって、麻衣は立ち止まった。

 恐る恐る足元を見下ろした彼女が見たのは──鈍色に光る、円形状のオブジェクト。

 

「なんだ……これは?」

「──引っ掛かりましたわね」

「!!」

 

 勝利を確信した笑みを浮かべる百。──そう、既に勝負は決していた。

 

「地雷?……はっ、こんなもの!」

 

 素早く飛び退き、爆破から逃げようとする麻衣。ただの地雷ならば確かに、それでダメージを最小限に抑えることができただろう。

 しかし本気になった百の個性は、ただの地雷という平凡なオブジェクトを生み出すにはとどまらない。

 

──刹那、麻衣の周囲を複数の球体が取り囲んだ。

 

「な……っ!?」

「──"爆ぜろ"」

 

 百の命令により、"それら"は一斉に作動した。

 麻衣の視界は白に染まり──そして、そこで意識が途絶えた。

 

 

「"フラッシュマイン"……実戦投入は、初めてですのよ」

 

 威力についてはまだまだ調整が必要か──生身の人間相手にこれを直撃させれば、命をも奪ってしまいかねない。

 実際、爆炎に巻かれた麻衣は変身も解け、完全にのびてしまっていた。

 

「おまえの狙いは、これだったか」

「ええ。いちかばちかでしたけれど」

「……ありがとな。おかげで助かった」

「いえ──」

 

 歩み寄ろうとするふたり。戦いが勝利で終わり、彼らの心は互いに対する労いで占められていて。──俯せに倒れた荼毘の指がぴくりと動いたことに、そんな彼らが気づけるはずもなかった。

 

 ゆえに次の瞬間、弾丸のように飛来した真紅の触手が、百の身体に巻きついた。

 

「きゃあああっ!!?」

「な……八百万!?」

 

 それ自体が生き物のように蠢く二本の触手が百を絡めとり、軽々と持ち上げてしまう。

 

「油断したなァ……焦凍」

「ッ!」

 

 弾かれたように振り向けば……勝ち誇ったような笑みを浮かべた、兄の姿。その袖口から飛び出した触手が、百を締め上げていく。

 

「うっ、う゛あ゛ああ……ッ!」

「八百万ッ!──やめろ燈矢兄!!もう勝負はついただろう!?」

 

 懇願の多分に含まれた制止の声。末弟のそれは……荼毘の耳には、届いていなかった。

 

「ヤオヨロズだっけか?恨むなら、焦凍と親しくなっちまったことを恨め……!」

「……ッ、」

「わかってるよなァ、焦凍?おまえさえ生まれてこなければ……!忌み子のおまえが、幸せになろうなんて許さねえ……!」

 

 その碧眼は、憎悪の果てにある狂気を帯びていた。そしてそれがぐにゃりと歪み、真紅に染まりながら肥大化していく。

 変身を遂げながら、彼は跳躍していた。右足を振り上げ、百の肩口めがけて振り下ろす。──生え出でた巨大な棘が彼女の心臓を貫く瞬間を、焦凍は幻視した。

 

「──やめろぉおおおおおお!!!」

 

 走り出す、焦凍。放つ炎も氷も、荼毘の勢いを削ぐには至らない。あと、放り出せるものは──

 

(もう、これしか──)

 

 

 刹那……ぐちゃりと、肉が裂ける音が響いた。

 

「………?」

 

 恐怖から目を瞑っていた百だが、生々しいその音に反して衝撃も痛みも襲ってはこない。

 恐る恐る目を開けて──次の瞬間には、言葉を失っていた。

 

「……ッ、が……あ……!」

「はははっ……!やっぱりそうするか、ヒーローだもんなァ?」

 

 嘲うギルスの足首──腱の変形した棘は、アギトの背中を穿っていた。深々と突き刺さったそれは背骨をすり抜け、心臓を貫通している。もはやアギトは、声も出せない。

 そのままギルスは、勢いよく棘を引き抜いた。背中から鮮血が噴き出し、地面に膝から崩れ落ちるアギト。オルタリングは一瞬にして光を失い、もとの焦凍の姿を露にする。断続的に血を吐き出しながら、彼は身体を痙攣させていた。

 

「とどろき……さん……」

「………」

 

 狩り終えた獲物に興味をなくした獣は、次いでその傍らにへたり込む女を捉える。──しかし行動に移るより先に、彼は背後から弾丸の襲撃を受けた。

 

「ッ!」

 

 最初の数発を浴びつつも、そうとは感じさせぬ機敏な動作で飛び退く。目を向けた先には果たして、二体の機械人形──廻たちに言わせれば──の姿があった。

 

「……チッ、邪魔が入ったか。まァいい」吐き捨てつつ、「そこで寝てるゴミは返してやるよ。じゃあな」

 

 言うが早いか、蒼炎が彼らに襲いかかる。咄嗟にかわして反撃しようとするも、炎のあとにはもうギルスの姿はなかった。

 

「……ッ、」

 

 本丸を、取り逃がしてしまった。──いやそれより、今は。

 

「轟さん……轟さん……!」

 

──いやああああああっ!!

 

 もはや戦場でなくなった荒野に、愛する男を引き裂かれた女の悲鳴がこだましていた。

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