P.S.彼女の世界は硬く冷たいのか? 作:へっくすん165e83
結局スラグホーンの食事会は一、二時間ほどで終了し、私はジニー、ネビルと一緒にロンとハーマイオニーの待つコンパートメントへと戻った。
私はともかくジニーは何故呼ばれたのか疑問に思っていたが、どうやら列車の中でハッフルパフ生にコウモリ鼻糞の呪いを掛けたところをスラグホーンに見られ、気に入られてしまったようだ。
私はロンとハーマイオニーのいるコンパートメントの前でジニー、ネビルと別れると、コンパートメントの中へ戻る。
そして二人に食事会の様子を話しながらお土産に貰ったお菓子の袋の口を開けた。
ホグズミード駅でロン、ハーマイオニーの二人と共にホグワーツ特急を降りた私は、セストラルの牽く馬車に乗り込みホグワーツ城を目指す。
そしてそのまま特にトラブルなく大広間にあるグリフィンドールのテーブルへとたどり着いた。
テーブルの上には綺麗に磨かれた金色の食器が空の状態で所狭しと並べられている。
毎年の恒例だが、ダンブルドアの合図と共に皿が料理で満ちる演出だ。
「これ、私が見よう見まねで合図を出したらどうなるのかしら」
私は皿の端を指で弾き、甲高い金属音を鳴らしながら呟く。
「汽車の中であんなに食べてたじゃないか。僕はてっきり何かの用事でパーティには参加できないんじゃないかと思ってたよ?」
その様子を見ながらロンが呆れた様子で言った。
「別腹とまでは言わないけど、最近無尽蔵に入るのよね。一体どこに格納されていくのか私もわかってないわ」
私は胸やお腹をさする。
いくら食べても太らないというのは女子の夢ではあるが、いくら食べても成長しないとなったら話は別だ。
私はハーマイオニーや同じ学年の生徒と比べてもかなり背が低い。
ロンと比べたら頭一つ分ほど身長に差がある。
「ご馳走は組み分けの後。毎年のお決まりでしょ。ほら、新入生が入場してきたわよ」
ハーマイオニーが大広間の入り口を指し示す。
大広間の入り口からマクゴナガルに引率されて初々しい表情の一年生が大広間に入場してきた。
組み分け帽子の歌を聴いた後、順番に新入生の組み分けが行われていく。
私はその様子を見ながらボソリと呟いた。
「こんなご時世の中、親元を離れてホグワーツに入学するっていうのもどうなのかしらね」
「ホグワーツに入学した方が安全だと思うわ。だってダンブルドアがいるんですもの。あの人が唯一恐れる魔法使いが」
ハーマイオニーは組み分けの様子をじっと見守りながら私の呟きに答える。
まあ、確かにその通りか。
今のイギリス魔法界でホグワーツほど安全な場所もないだろう。
まあ、私がヴォルデモートなら魔法省を陥落させたら次の目標をホグワーツに定めるが。
そうしているうちに組み分けは終わり、ダンブルドアが立ち上がる。
それを見て今までガヤガヤとしていた大広間は一瞬で静かになった。
私も待ってましたと言わんばかりにナイフとフォークを握る。
ダンブルドアは生徒全員が話を聞く用意が出来たと判断したのか、大きな声で話し始めた。
「歓迎会の前に、一言、二言、言っておかねばならんことがある。特に新入生の諸君、心して聞くように」
新入生が息を呑む中、ダンブルドアは大きく息を吸い込む。
きっとまた適当なことを言ってそのまま歓迎会に突入するに違いない。
私はダンブルドアから目を離し、目の前の皿に集中する。
その瞬間だった。
大広間を照らしていた蝋燭の火が一斉に消え、辺りが暗闇に包まれる。
私はナイフとフォークを机に投げ捨てすぐさま杖を抜いた。
だが、どうにも様子が変だ。
異常事態が起こったとしたら、真っ先に動くはずのダンブルドアがその場から一歩も動いていない。
むしろ、何かを待っているようにじっと虚空を見つめていた。
「おい、何か聞こえてこないか?」
隣にいるロンが囁く。
その瞬間、大広間の扉が開け放たれ、何百匹という数のコウモリが大広間に雪崩れ込んできた。
そのコウモリたちは大広間中を飛び回りながら消えていた蝋燭に火をつけていく。
そして大広間が元の明るさを取り戻した瞬間、コウモリたちはダンブルドアの前に一斉に集まり、人型を形成し始める。
コウモリたちは互いに融け合うようにくっついていき、やがて薄いピンク色のドレスを身に纏った吸血鬼の少女がダンブルドアの前に現れた。
そう、レミリア・スカーレットその人だ。
「ダンブルドア、私の席はそこでいいの?」
レミリアはダンブルドアの右隣、空席になっている席を指差す。
「パーティーには参加しないものだと思っておったが……ようこそおいでなすったスカーレット先生。どうぞこちらへ」
ダンブルドアはレミリアを教員用のテーブルへと案内する。
レミリアは案内された椅子に座ると、続きをどうぞと言わんばかりにダンブルドアの方を見た。
「良い機会じゃ。ご馳走で皆の頭がぼんやりとしてしまう前に、今年から新しく入った先生方を紹介しよう」
ダンブルドアは自分の左隣に座っているホラス・スラグホーンを見る。
それを受けてスラグホーンはのっそりと椅子から立ち上がった。
「ホラス・スラグホーン先生じゃ。スラグホーン先生はかつてわしと共にホグワーツで魔法を教えておった同輩の方じゃが、この度昔教えておられた魔法薬学の先生として復帰することに同意なされた」
スラグホーンは紹介を受けて小さく礼をする。
そして少し不満ありげな表情でレミリアの方をチラリと見た。
きっとレミリアがホグワーツに来ることを知らされていなかったのだろう。
彼女が来るなら絶対に引き受けなかったと言わんばかりの表情をしている。
「魔法薬? 魔法薬学だって?」
横にいるロンが眉を顰めながら呟く。
「それじゃあ、闇の魔術に対する防衛術は一体誰が……」
私もスラグホーンは闇の魔術に対する防衛術を教えるものかと思っていたが、まさか魔法薬学の教授に就任するとは。
だとしたら闇の魔術に対する防衛術はレミリアが教えるのだろうか。
ダンブルドアはスラグホーンの紹介を終えると、今度はレミリアの方を見る。
レミリアはその視線を受けて優雅に椅子から立ち上がった。
「そして、今年はもう一人。一昨年審査員としてホグワーツにお越しになられたこともあって、知っておる生徒も多いじゃろう。レミリア・スカーレット先生じゃ。先生はNEWTレベルの占い学を担任なされる。一年生から五年生は今まで通りトレローニー先生、六年生からはスカーレット先生じゃ」
レミリアは軽く頭を下げると椅子に座り直す。
何にしても、占い学に教員二人体制というのは異例の人事だ。
魔法省や理事会が占い学を重視しているとは考えにくい。
きっとダンブルドアが無理矢理ホグワーツにレミリアの居場所を作ったに違いない。
トレローニーは仕事を奪われる形となるが、まあ彼女なら手を叩いて喜ぶ事態だろう。
何を隠そう、トレローニーはレミリアの大ファンだ。
事実、珍しく歓迎会に出席していたトレローニーは、両目から涙を流して喜んでいる。
「占い学に先生二人だなんておかしいわよね?」
横にいるハーマイオニーがヒソヒソ声で言う。
「それに闇の魔術に対する防衛術じゃないってことは、必然的に……」
嫌な予感がすると言わんばかりの表情でロンがスネイプの顔を見る。
そこには勝ち誇った顔をしているスネイプの姿があった。
「そして空席となった闇の魔術に対する防衛術はスネイプ先生が担当なされる」
その発表を受けて、大広間中がガヤガヤと騒がしくなる。
それも当然だ。
スネイプが闇の魔術に対する防衛術を教えたがっているというのは有名な話だ。
ついにスネイプは長年の悲願を果たした結果となる。
ダンブルドアは大広間を見回すと、軽く咳払いして話を再開した。
「さて、残りの話はご馳走の後にしようかの。皆、大いに食い、大いに飲み、語らうのじゃ」
ダンブルドアが大きな動作で両手のひらを打ち合わせる。
その瞬間、目の前の皿が料理で一杯になった。
私は机に投げ捨てたナイフとフォークを手に取ると、真っ先にローストビーフの塊を自分の前に確保する。
そしてステーキのような大きさにローストビーフを切り取ると、ソースをたっぷりつけて口の中に押し込んだ。
「スカーレットさんがホグワーツにやってきたのは、きっとあの人が騎士団のメンバーになったからよね」
ハーマイオニーがサラダの皿をフォークでつつきながら言う。
私はローストビーフの塊を胃の中に落とし込んでから言った。
「きっとそうだと思うわ。スラグホーンも同様ね。あの人は団員じゃないけど、何かに協力させるためにホグワーツに招き入れたのは確か」
私は同じようにローストビーフを贅沢に切り取り、口の中に押し込む。
そして口一杯のローストビーフをカボチャジュースで胃の中に流し込んだ。
ダンブルドアはスラグホーンの勧誘に私を同行させた。
結果としてはそれが功を奏しスラグホーンを引き込むことができたわけだが、未だに少し納得がいかない。
確かに客観的に見れば私は優秀な魔法使いと言えるだろう。
だが、私の人生に関わりたいという些細な動機であれほどの隠居生活を送っていた人物が表に出てくるだろうか。
私を同行させたということは、ダンブルドアは自分だけでは勧誘が成功しないと考えたのだろう。
私は教員用のテーブルでレミリアと何かを話しているダンブルドアを見る。
ダンブルドアはトム・リドル……学生時代のヴォルデモートについて聞くためにスラグホーンをホグワーツに呼んだのだろう。
分霊箱の秘密を暴くにはスラグホーンの協力が不可欠だ。
真実薬でも胃袋の中に流し込んでしまえば話は早いのだが、そういうわけにもいかない理由がきっとあるのだろう。
私はローストビーフの最後の塊を口の中に突っ込むと、新しくポテトサラダの皿を近くに引き寄せた。
新入生の歓迎会から一晩明けた次の日。
私はマクゴナガルから配られた時間割に目を通していた。
私が学期末に選択した授業は呪文学、変身術、薬草学、魔法薬学、闇の魔術に対する防衛術の五科目だ。
だが、私の時間割にはその五科目のほかに占い学の文字が入っている。
「あの、マクゴナガル先生? 私占い学は選択してないんですけど……」
私はそう言って時間割を見せる。
マクゴナガルは時間割に目を通すと、少し眉を顰めながら言った。
「占い学を担任なされるスカーレット先生が是非履修してほしいと仰っていました。もし本当に履修したくないのなら時間割から占い学を外しますが。……スカーレット先生には私から説明しましょう」
「あ、いえ。そういうことなら別に……」
私は時間割を引っ込める。
レミリアと懇意にすることは決して無駄にはならないだろう。
それにマクゴナガルの態度を見ても、レミリアとのトラブルは可能な限り避けたいという内心がありありと見てとれた。
何にしても、これで今学期の時間割は決まった。
ひとまず今日は闇の魔術に対する防衛術と占い学、魔法薬学の授業があるようだ。
「それじゃあ私はルーン文字の授業に行ってくるわ」
ハーマイオニーは大広間にある時計を確認すると、時間割を鞄の中に突っ込みそそくさとその場を後にする。
私は先ほどまでハーマイオニーが座っていた椅子に座り直し、ロンの時間割を覗き込んだ。
「あなたも私の時間割と似たり寄ったりね。この後自由時間でしょ?」
「ああ、六年生さまさまだよ。下級生から没収した噛みつきフリスビーがあるんだけど中庭で遊ばないか?」
「遊ぶなんてとんでもないわ。持ち込み禁止されている魔法製品の危険性を検証しに行くんでしょ」
私がそう言うと、ロンがニヤリとする。
私とロンは机の上に広げていた書類を手早く片付けると、中庭へと足を運んだ。
設定や用語解説
占い学の先生レミリア
今年のnewtレベルの占い学を担当する。レミリアは魔法界随一の占いの腕の持ち主であり、言ってしまえば占い学の権威と言っても差し支えない。なんならnewt試験の内容を決める側の存在。
勝手に時間割に捩じ込まれる占い学
レミリアの指名。サクヤは占い学など取る気はさらさらなかったが、レミリアが無理矢理時間割に捩じ込んだ。当初マクゴナガルは猛反発したが、ダンブルドアからの頼みもあり渋々了承することに。
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活動報告や裏設定など、作品に関することや、興味のある事柄を適当に呟きます。