P.S.彼女の世界は硬く冷たいのか?   作:へっくすん165e83

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あと一か月ぐらいで賢者の石編は終わるでしょうか。賢者の石だけで二十話近くって、結構やばいのでは?


ニコラス・フラメルと石の守りと私

 ホグワーツに戻ってきた私はグリフィンドールの談話室でハリー、ロン、ハーマイオニーの三人と合流し、ホグワーツ特急で見つけたダンブルドアのカードを三人に見せた。

 ハーマイオニーはカードに書かれていたニコラス・フラメルとダンブルドアの関係にすぐさまピンときたらしく、物凄い勢いで女子寮の螺旋階段を駆け上っていく。

 

「どうしたんだろう?」

 

 ロンは不思議そうな声を出したが、そのことについて何かを考える前にハーマイオニーは談話室に戻ってきた。

 

「この本で探してみようなんて思いつきもしなかったわ」

 

 ハーマイオニーは胸に大きく古めかしい本を抱えている。

 確かその本は少し前にハーマイオニーが図書室から借りてきて、そのまま枕の横に積まれたままになっていた本の一つだったはずだ。

 

「少し前に寝る前の軽い読書用にと思って図書室で借りてきてたの」

 

「軽い?」

 

 ロンは見るからに重そうな本を見ながら言う。

 

「あら、ずっと枕元に積まれたままだったから押し花でも作ってるんだと思ってたわ」

 

「もう、ちょっと黙ってて」

 

 ハーマイオニーはそう言うなりブツブツと呟きながら本を捲り始める。

 私たち三人は調べ物をしているハーマイオニーをじっと待った。

 

「あった! これよ!」

 

「もう喋っていいかい?」

 

 ニコラス・フラメルに関する記述を見つけたハーマイオニーに対し、ロンが不機嫌そうに言う。

 だが、ハーマイオニーはお構いなしに本を私たちの方に突き出し、読み上げた。

 

「ニコラス・フラメルは知られている限りでは賢者の石の創造に成功した唯一の人物である!」

 

 ハリーとロンは顔を見合わせる。

 私は本を手元に引き寄せると、賢者の石に関する記述を読み上げた。

 

「なになに……『賢者の石とは、いかなる金属も黄金に変える力があり、また飲めば不老不死となる『命の水』の源である』 なるほど、錬金術は魔法界で完成していたのね」

 

「あの犬はフラメルの賢者の石を守っているんだわ。きっとフラメルがダンブルドアに石を守って欲しいと頼んだのよ! だって二人は友達みたいだし……フラメルは石が狙われていることを知っていたのね!」

 

 ハーマイオニーが興奮気味に言う。

 

「金を作る石! 不老不死の薬を作る石! スネイプが欲しがるのも無理ないな。誰だって欲しいもの」

 

 ロンが言うことももっともだ。

 そのような効果のある石なら、それこそ死に物狂いで奪いにきてもおかしくはない。

 

「まあ何にしても、ホグワーツの守りが鉄壁であることを願うしかないわね。奪われた瞬間世界が滅亡するようなヤバいものじゃないってことはわかったから、その点においては一安心だけど」

 

 それこそ核弾頭レベルのものだとしたら、闇の魔法使いに奪われた瞬間戦争が勃発してもおかしくない。

 賢者の石はその点を見ればまだ安全なように思えた。

 

「なるほど、『魔法界における最近の進歩に関する研究』に載ってないわけだな。見てよ、六六五歳だって。そんな歳なんだとしたら最近とは言えないもんな」

 

 ロンがハーマイオニーの持ってきた本を指差しながら言う。

 まあ確かに、年齢からして五世紀以上前にニコラス・フラメルは賢者の石を錬成したことになる。

 逆に考えれば、よく今の今まで奪われなかったなと、素直に感心してしまった。

 その日は結局守られている物の正体が分かったところで解散となった。

 私は女子寮に上がると、寝間着代わりの古いTシャツに着替えてベッドに潜り込む。

 

「ねぇ、ハーマイオニー。なんで今更なのかしら」

 

 私は天井を見つめながらハーマイオニーに聞いた。

 

「なんのこと?」

 

「賢者の石よ。なんで、今更狙われているのかしら。少なくとも生み出されてから六百年以上は経っているというのに」

 

 まあ、過去に狙われたこともあるのかもしれない。

 だが、そうだとしたら今回に限って特別な措置は講じないはずだ。

 ハーマイオニーは本を見つめながら考え込む。

 

「確かに……今までグリンゴッツで守っていたものを、わざわざホグワーツに移した。それも杞憂じゃなく、実際にグリンゴッツは破られている……」

 

 つまりは、グリンゴッツを破れるほどの魔法使いが賢者の石を狙っている。

 いや、そもそもグリンゴッツに盗みに入られる前にそれを察知して賢者の石を移動させた。

 ニコラス・フラメルは、いや、ダンブルドアはどうしてグリンゴッツが破られる前にそれを察知することができたのだろうか。

 一つの疑問が解決すると、新たな疑問が浮上してくる。

 そんな答えの出ない問題を考えているうちに、私は自然とまどろみ、眠りについていた。

 

 

 

 

 新学期が始まると、ハリーはクィディッチの練習で忙しくなった。

 グリフィンドール対ハッフルパフの試合が近づいてきているためだったが、なんと次の試合ではスネイプが審判をするらしい。

 ウッドはそのこともあって普段よりも相当苛烈な練習を行っていた。

 ウッドはスネイプがグリフィンドールに不利な判定をするのではないかと心配していたが、ハリーはそれ以上に不安を持っていた。

 前回の試合でハリーを箒から振り落とそうとしたのはスネイプなのではないかという疑いを持っている。

 ハリーは試合中にスネイプに危害を加えられるんじゃないかと心配しているようだったが、私はそれは逆だと思った。

 

「だってハリー。観客席ならまだしも、審判としてスタジアムを飛び回るんでしょう? 流石にそんな状況でハリーに手は出せないわ。だってあまりにも人目に付きすぎるもの」

 

 私は試合当日の朝に談話室のソファーに座って具合を悪そうにしているハリーに対して言う。

 

「もし本当にスネイプがハリーに危害を加えようとしているのなら、審判は辞退するはず。私はダンブルドアあたりがスネイプを審判にしたのではないかと思っているわ」

 

「ダンブルドアが?」

 

 ハリーは私の推測を聞いて顔を上げる。

 

「ええ。そうじゃなかったらスネイプがクィディッチの審判をするなんて話にはならないはずよ。つまり、スネイプがスタジアムでホイッスルを咥えている間は、貴方は安心して試合に臨むことができるってわけ。勿論、プレイに難癖つけられるかもしれないけど、そこはスネイプが文句のつけようがないプレイをすればいいだけだわ。貴方ほどの選手なら、そんなことは魔法薬の鍋をかき混ぜるより簡単でしょう?」

 

 ハリーは両手で頬をパチンと叩き気合を入れると、ソファーから立ち上がる。

 

「サクヤの言う通りかもしれない。スネイプとマンツーマンで個人授業を受けるわけじゃないんだ。スネイプを恐れていても始まらないよな」

 

 ハリーは元気を取り戻し、談話室を出ていく。

 私はそんなハリーの様子を見て、小さくため息をついた。

 

「ほんと、単純なんだから」

 

 先程ハリーに言ったことは全て私の憶測であり、根拠もへったくれもない。

 だが、少なくとも試合中にスネイプがハリーに危害を加えることはないだろう。

 スネイプが本当に賢者の石を狙っているとしたら、目立つ行動は避けるはずだ。

 今のところハリーと賢者の石には何の関係性もない。

 ハリーを殺したところで、賢者の石が手に入るわけではないのだ。

 

 

 

 

 

 結局のところ、クィディッチの試合は何事もなく終わった。

 ハリーはあらゆるプレッシャーを跳ね除けて、過去類を見ないほどの早さでスニッチをキャッチしたのだ。

 それこそスネイプが試合結果にケチをつける隙すらなかった。

 なんにしても、これで一気に寮対抗杯に近づいた。

 過去、寮対抗杯は七年連続でスリザリンに取られっぱなしらしい。

 今年こそはグリフィンドールが優勝できるのではないかと、クィディッチの試合が終わってからもグリフィンドールの談話室はお祭り騒ぎだった。

 私は談話室でロンの双子の兄であるフレッドとジョージが持ってきたお菓子をつまみながらハリーを待つ。

 選手だから着替えや片付けで時間が掛かっているのだろうと思っていたが、それにしては遅すぎる。

 ユニホームのまま談話室に帰ってきたフレッド、ジョージはまだしも、ユニホームを着替えシャワーまで浴びてきたアンジェリーナが暖炉の前で興奮しながら試合の感想を語っているぐらいだ。

 私は少し心配になり、肖像画を押し開けて談話室の外に出た。

 

「待ってサクヤ。私たちも行くわ」

 

 私がスタジアムの方に向けて歩き出そうとすると、パッと肖像画が開きハーマイオニーとロンが這い出てくる。

 どうやら二人とも考えていることは私と同じようだった。

 私たち三人はスタジアムの方へと歩き出す。

 しばらくハリーが居そうな場所を探していると、校庭に出る少し手前で顔を真っ青にしているハリーと出くわした。

 

「ハリー! いったいどこにいたのさ!」

 

 ロンがハリーに駆け寄って背中をバンと叩く。

 

「僕らの勝ちだよハリー! みんな談話室で君を待ってるんだ! パーティーをやってるんだよ。フレッドとジョージが厨房から色々失敬してきたんだ。ケーキやジュースや──」

 

「それどころじゃない」

 

 ハリーはロンの話を遮る。

 

「誰もいない部屋を探そう。重要な話があるんだ」

 

 私たちはハリーの物凄い真剣な表情に圧倒され、理由も聞かずに空き教室の中に入る。

 ハリーは部屋の中に誰もいないことを確かめると、声を潜めて言った。

 

「僕らは正しかった。やっぱり賢者の石を狙っているのはスネイプだったんだ。さっき箒を返しに行く最中に、禁じられた森の近くでスネイプがクィレルを脅しているのを見た。スネイプはクィレルにフラッフィーの出し抜き方を知っているかって問いただしてたんだ。その他にも、不思議なまやかしがどうとかって話をしてた。きっとクィレルが仕掛けた闇の魔術に対する魔法の解き方を聞いていたに違いない」

 

「クィレルは、もうスネイプに話してしまったの?」

 

 ハーマイオニーが聞くと、ハリーは首を振った。

 

「いや、抵抗していた。でも、スネイプは諦めていない様子だ。近々また話をしようと言っていた。あの様子じゃ長くは持たないんじゃないかと思う」

 

「それじゃ、三日と持たないよ。生徒のクシャミにも飛び上がって驚くぐらいだ」

 

 いや、本当にそうだろうか。

 石の守りを担当しているのがクィレルだけとは思えない。

 たとえクィレルが口を割ったとしても、その他の守りが石を守るはずだ。

 それに、本当に深刻な様子なのだとしたら、クィレルはダンブルドアに相談するはずである。

 そうしないのは、何か理由があるのだろうか。

 なんにしても、スネイプが賢者の石を狙っている可能性は以前と比べて俄然高くなった。

 クィレルが石の守りの全てを受け持っているとは思えないが、重要な一部を担っているのは確かだろう。

 クィレルが口を割らないことを祈りながら、私たちは談話室に戻った。

 

 

 

 

 

 あれから数週間が経過していたが、クィレルは私たちの予想に反する粘りを見せていた。

 クィレルは時間が経つごとにさらに青白く、やつれていったが、口を割った様子はない。

 それに、四階の廊下にある扉に耳をそばだてれば、今もフラッフィーの唸り声が聞こえてくる。

 もし石が奪われてしまったのだとしたら、フラッフィーは用済みになるはずだ。

 今のところはまだ、石は無事なのだろう。

 ハリーとロンは今にも石がスネイプに盗まれてしまうのではないかと心配していたが、ハーマイオニーだけは三か月ほど先の期末試験の心配をし始めていた。

 

「ハーマイオニー、試験は十週も先だよ?」

 

 ハリーとロンにも勉強をするように勧めるハーマイオニーにロンは呆れたように言った。

 だが、ロンのその認識は甘いと言わざるを得ない。

 

「何言ってるのよ。もう十週間しかないのよ!」

 

 ハーマイオニーの厳しい言葉に、ロンは肩を竦める。

 そして助けを求めるように私の方を見てきた。

 

「まあ、ハーマイオニーの言う通りね。賢者の石を気にしたところで貴方の成績が上がるわけじゃないわ。現状私たちにできることはないんだし、ここは試験の準備ができるうちに準備しておいた方がいいわよ」

 

 まあ、筆記試験に関しては私は全くと言っていいほど心配していない。

 答えがわからなかったら時間を止めて教科書を読みに行けばいいのだ。

 そうでなかったら、ハーマイオニーの答案用紙を丸写しするのもいいかもしれない。

 今までハーマイオニーの隣で勉強していて分かったが、彼女はまるで生き字引のようだった。

 つまり、私は試験に出そうな呪文の練習さえしていればいいのである。

 幸い、私には魔法の素質は少しはあるらしい。

 しっかりと呪文の意味を理解して使えば、大抵の魔法は扱うことができた。

 ロンはそれでも勉強するのが嫌そうにモゴモゴとしていたが、ホグワーツの教師たちも私たちと同意見らしい。

 どの教科も山のように宿題が出るため、勉強をしたくなくても必然的に勉強することになる。

 そのようなこともあり、私たちはニコラス・フラメルの正体を見つけたあとも自由時間は図書室にいることが多かった。

 

「こんなに覚えきれないよ」

 

 ロンは図書室の机の上に突っ伏す。

 私は魔法薬学の宿題を終わらせると、魔法史の宿題に取り掛かった。

 ハリーはハリーで『薬草ときのこ千種』という本をペラペラと捲っている。

 するとその時、ハグリッドが本棚の間からぬっと顔を出した。

 どうも機嫌があまりよくないのか、顔を顰めながら本棚の本を眺めている。

 その様子はあまりにも場違いだったが、ハグリッド自身は気が付いていないようだった。

 

「ハグリッド! 図書室で何をしてるんだい?」

 

 あまり機嫌が良さそうではなかったので、私は声を掛けるのをためらったが、ロンはそんなことはお構いなしにハグリッドに声を掛ける。

 ハグリッドは急に声を掛けられて少々驚いた顔をしたが、私たちの姿を見つけると途端に笑顔になった。

 

「いや、なんでもない。ちーっと見てただけだ。お前さんらは何をやっとるんだ? まだニコラス・フラメルについて調べとるんじゃないだろうな」

 

「いや、そんなのとっくの昔にわかったさ」

 

 ロンが特に隠すこともなく意気揚々という。

 

「それだけじゃない。フラッフィーが何を守っているかも知ってるよ。賢者の──」

 

「シーッ!!」

 

 ハグリッドは慌てて周りを見回す。

 

「あのな、そのことは大声で言いふらしちゃいかん」

 

 あたふたするハグリッドにハリーが畳みかける。

 

「ちょうどよかった。ハグリッドに聞きたいことがあったんだ。フラッフィー以外にあの石を守っているのは何なの?」

 

「シーッ! いいか、あとで小屋に来てくれや。ここでそのことを捲し立てられると困る。ただし、勘違いしちゃなんねぇぞ。教えるなんて約束はしねぇからな」

 

「わかった。じゃあ後で行くよ」

 

 ハグリッドは図書室を出ていく。

 私たちはハグリッドの大きな背中を見送ると、顔を見合わせた。

 

「ハグリッドは図書室に何をしに来たのかしら。読書をするようにも見えないし」

 

 私がそう言うと、勉強にうんざりしていたロンが先程までハグリッドが見ていた棚を覗きに行った。

 少ししてロンは山のように本を抱えて戻ってくる。

 

「ドラゴンだ!」

 

 ロンは声を潜めて言った。

 

「きっとハグリッドはドラゴンの本を探していたに違いないよ」

 

 確かにロンが持ってきた本は殆どがドラゴンに関する本だ。

 

「そういえば、ハグリッドに初めて会ったとき、ずっと前からドラゴンを飼いたいって言ってた」

 

 ドラゴンを飼いたい。

 まあわからなくもないが、ペットにするには少々危険なのではないかと思う。

 

「でも、ドラゴンを飼うのは法律違反なんだ。それに、ドラゴンは人間には絶対に懐かない。凄い狂暴なんだよ。チャーリーがルーマニアでドラゴンの研究をしているけど、いつも生傷だらけさ」

 

 確かに、ロンが言うようにドラゴンの飼育はワーロック法により禁止されている。

 ハグリッドがどれだけドラゴンを飼いたいとしても、飼うことは叶わないだろう。

 何にしても、ハグリッドの小屋に向かう前にまずは目の前の宿題を片づけなければ。

 私はロンの持ってきたドラゴンに関する本を本棚に戻すと、宿題の続きに手をつけ始めた。

 




設定や用語解説

賢者の石
 卑金属を黄金に変え、命の水を作り出す錬金術の最終到達点。だが、この貴重な石をただの魔力タンクとして無造作に使う魔女がいるらしい

禁じられた森
 ホグワーツの敷地内にある森。危険な魔法生物が多く住み着いており、生徒は基本立ち入り禁止。ハグリッドが管理をしている

ドラゴン
 魔法界のドラゴンは神龍タイプではなくリオレウスタイプ

Twitter始めました。
https://twitter.com/hexen165e83
活動報告や裏設定など、作品に関することや、興味のある事柄を適当に呟きます。
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