P.S.彼女の世界は硬く冷たいのか?   作:へっくすん165e83

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第二の被害者と決闘クラブと私

 スリザリン対グリフィンドールのクィディッチの試合があった次の日、私は個人授業を受けるためにロックハートの私室を訪ねていた。

 ロックハートは私を招き入れると、いつも通り机の上を少し片付けて授業の準備を始める。

 私は私で勝手に水場を使い紅茶を淹れ始めた。

 

「そういえば、昨日のクィディッチの試合でハリーが怪我をしたようですが、大丈夫そうですか?」

 

 昨日の夜ハーマイオニーから簡単にハリーの容態は聞いているが、命に別状はないということ以外はわからなかったらしい。

 ロックハートは箒から落ちたハリーに真っ先に駆けつけて応急処置をしていた。

 ある程度の容態は把握しているだろう。

 

「何箇所か骨が折れていたがマダム・ポンフリーが綺麗に繋いでくれたよ。ただ、怪我もそうだが精神的にも結構きてるみたいでね。一晩医務室で入院することになったみたいだが……」

 

 ロックハートはそう言うとチラリと私の方を見る。

 

「そういえば、昨日の夜は大丈夫だったかい?」

 

「なんのことです?」

 

 私が聞き返すと、ロックハートはなんでもないと話を切り上げた。

 

「さて、今日の授業だが……ちょうど前回の授業で盾の呪文が終わったところだったね。まさかあんなに早くプロテゴ・マキシマまで習得するとは思っても見なかったが……何にしても今日からまた新しい呪文に入ろうと思うが、何か気になる魔法はあるかい?」

 

「そうですね……魔法とは少し違うんですが……」

 

 私は少し前からロックハートに聞きたかったことをここで聞くことにした。

 

「先生はレミリア・スカーレットという占い師をご存知ですか?」

 

「レミリア・スカーレット? ああ、知ってはいるが……占いは専門外だ。君はスカーレット嬢の何を聞きたいんだい?」

 

 どうやらロックハートはレミリア・スカーレットのことを多少なりとも知っているみたいだ。

 私は全て打ち明けるということはせず、この前の休暇中にダイアゴン横丁で彼女を見かけたという話をした。

 

「ほう、なるほどね。確かに彼女は魔法界で最も有名な吸血鬼であり、最も有名な占い師だろう。五百歳近い年齢ということもあり魔法省にも顔が利く。それに、今の時代純血の吸血鬼というのは非常に珍しいんだ。純血の吸血鬼はどのような魔法生物より速く飛び、力が強いらしい。しかも強力な魔力も持っている。少なくとも今の魔法界で彼女が暴れたら対処出来る魔法使いは限られているだろうね」

 

「占い師としてはどうなんです?」

 

「優れた占い師だと聞いているよ。彼女の占いの的中率は三割ほどだと言われているが、これは占い師としては驚異的な的中率だ。それによく魔法省の神秘部に出入りしているという話を聞く。なんでも自分の予言を定期的に神秘部の予言の間の棚に追加しているらしい」

 

「予言……」

 

 予言という言葉を聞いて、あの時の予言が鮮明に脳裏に浮かび上がってくる。

 一九九八年の夏、私は命を落とすという死の予言。

 あの時はあまり深く考えなかったが、六年後の夏に一体何が待ち受けているというのだろうか。

 私がそんなことを考えていると、ロックハートは思い出したかのように言葉を付け足した。

 

「あとそれと、死の予言に関しては確実に当たるそうだ。的中率百パーセントの死の予言。彼女が占い師として有名な理由はそれだね」

 

「え?」

 

 死の予言については確実に当たる?

 

「彼女に死の予言をされたものはほぼ確実に予言通りに死ぬか、もしくは行方不明になるらしい。まあ、誰の死でも見えるというわけじゃなく、偶然見えてしまうものらしいが」

 

 私はそんなロックハートの言葉を聞いて、静かに唾を飲み込んだ。

 つまり私は六年後の夏に確実に命を落とす?

 それは……全くもって良くない。

 平穏で人並みな人生を望んでいる私だが、せめて六十歳までは生きたいと考えていた。

 

「それはまた……不思議な話ですね」

 

 私はなんとか表情を取り繕うと、ロックハートにそう返す。

 ロックハートは私を見て不思議そうに首を傾げたが、咳払いを一つして言葉を続けた。

 

「まあそういうのに興味が出てくる年頃だというのはわかるが、占いは才能が全ての学問であり、最も不確定な学問でもある。今はもっと実用的な魔法について勉強したほうがいい。……そうだね。今日は攻撃呪文の習得と決闘の作法について──」

 

 ロックハートはそのままいつも通り講義を進め始める。

 私はまだ少し放心していたが、考えてどうにかなる問題でもないので今はロックハートの授業に集中することにした。

 

 

 

 

 ロックハートとの個人授業が終わり、大広間で昼食を取った後、私はグリフィンドールの談話室に戻ってきていた。

 昨日スリザリンに負けたショックから回復してきているのか、談話室内に響く生徒の話し声は多くなっている印象を受ける。

 そんな中無駄に暖炉に薪を足して暇を潰していると、後ろから何者かに肩を叩かれた。

 私が後ろを振り返ると、そこには焦った表情のハーマイオニーが立っていた。

 

「マートルのいるトイレに急いで来て」

 

 ハーマイオニーは小声でそう呟くと、談話室の外に走っていってしまう。

 私は無駄に薪置き場から引っ張り出した薪を暖炉に放り込むと、談話室を出て三階の女子トイレに向かった。

 階段を下り廊下をしばらく歩いて私はマートルのいるトイレに到着する。

 中に入るとそこにはハーマイオニーと、女子トイレなのにも関わらずハリーとロンの姿もあった。

 

「ハリー、もう怪我はいいの?」

 

 私が尋ねるとハリーは小さく頷いて言葉を返す。

 

「僕は大丈夫。でもそれどころじゃない。昨日の夜、コリンがやられたんだ」

 

「コリンって、あのカメラの?」

 

 ハリーはもう一度頷き、昨日の夜医務室であった話を私に聞かせてくれた。

 昨日の晩、ハリーのベッドに屋敷しもべ妖精のドビーが姿を現したらしい。

 どうやら昨日のブラッジャーはドビーの仕業だったようで、ドビーはなんとしてでもハリーをホグワーツから遠ざけたいようだ。

 

「その後、医務室の中にダンブルドアとマクゴナガルがやってきたんだ。二人で石になったコリン・クリービーを抱えていた。昨日の夜、スリザリンの怪物に襲われたんだ」

 

 ハリーは少し声のトーンを落として話を続ける。

 

「それにダンブルドアは秘密の部屋が再び開かれたと言ってた。サクヤの言う通り、五十年前に秘密の部屋が開かれたというのは本当の話らしい」

 

「コリンは石になっていたのよね? 死んだんじゃなく」

 

「うん。石になってるってマダム・ポンフリーは言ってたよ」

 

 五十年前に秘密の部屋が開かれた時には死者が出ており、今回は出ていない。

 この五十年でスリザリンの怪物の力が弱まっているのだろうか。

 それとも何か条件のようなものがあるのだろうか。

 

「なんにしても、これ以上被害者が出る前に犯人を捕まえないとまずいわ。サクヤ、マルフォイの方はどう?」

 

「ガードが硬いわ。中々二人きりになれないの。チャンスがあるとすればクリスマス休暇だけど……」

 

 問題はマルフォイがクリスマス休暇をどこで過ごすかだ。

 一番手っ取り早いのは、クリスマスにマルフォイをデートに誘うことだろう。

 流石のマルフォイでもデートにまでクラッブ、ゴイルの二人を同行させるようなことはしないはずだ。

 

「……わかった。マルフォイに関してはサクヤに任せるわ。私たちはもう一度五十年前のことを調べてみる」

 

 私たちはお互いの役割を再確認すると、廊下に誰もいないことを確認してバラバラの方向に歩き出す。

 クリスマス休暇にマルフォイと二人きりになってスリザリンの継承者のことを聞き出すのなら、それまでにマルフォイからの信頼を揺らぎないものにしておかなければならない。

 またしばらくはマルフォイと行動を共にすることが増えるだろう。

 

 

 

 

 十二月も二週目に入り、去年と同じようにマクゴナガルがクリスマス休暇中に学校に残る生徒の名前を調べ始めた。

 マルフォイにクリスマスは家に帰るのかと聞くと、なんと今年はホグワーツに残るらしい。

 それならばと私もホグワーツに残るほうに名前を書き入れる。

 名簿を見る限りでは、今のところグリフィンドールでホグワーツに残るのはハリー、ハーマイオニーにウィーズリー兄弟ぐらいのようだった。

 

「そういえば、決闘クラブというのが始まるらしい。放課後の時間を使って先生が生徒に決闘の作法を教えるそうだ」

 

 マルフォイはどこからそのような情報を仕入れてきたのか、得意げに話し始める。

 

「決闘の作法も親に教えてもらえなかった穢れた血向けのおままごとだとは思うが、合法的に穢れた血連中を蹴散らすチャンスだとは思わないか?」

 

「確かに面白そうね」

 

 私は図書室でマルフォイの宿題を見ながら相槌を打った。

 その横ではクラッブとゴイルが額を突き合わせて魔法史の問題に頭を悩ませている。

 暗記科目なのだからいくら考えたところで答えが出るとは思えなかったが、まあ放っておくことにしよう。

 

「いつ開催されるの?」

 

「一回目が来週の夜八時だ。……もしよかったら一緒に行くかい?」

 

 マルフォイは恐る恐る私に聞いてくる。

 

「そうね……行こうかしら」

 

 私がそう言うと、マルフォイは目を輝かせた。

 

「僕は父上から決闘の作法については厳しく教わっているんだ。何かわからないことがあったら何でも聞いて」

 

「あら、頼もしいわね」

 

 私がクスクス笑うと、マルフォイは恥ずかしそうに頬を染める。

 そして照れ隠しなのか、急にクラッブ、ゴイルの二人の勉強を見始めた。

 

 それから一週間後、私はマルフォイたちと一緒に大広間に来ていた。

 いつもは大きな机が並んでいる大広間だが、今は机は取り払われ中央に大きな舞台が用意されている。

 そしてその舞台を取り囲むように物凄い数の生徒が集まっていた。

 私が周囲を見回すと、ハリーたち三人の姿も確認することが出来た。

 マルフォイは生徒を押しのけるようにして舞台の方へと進んでいく。

 私はその後ろをついていき、最終的に舞台に一番近い位置まで近づいた。

 

「誰が教えるのかしら」

 

 舞台の上にはまだ誰もおらず、他の生徒もそわそわと周囲を見回している。

 

「さあね。フリットウィックかロックハートあたりじゃないか?」

 

「ロックハートは……ないわね。そういうキャラじゃないわ」

 

 確かに決闘の技術を教えるのだとしたらロックハート以上の適任はいないだろう。

 だが、ここ数ヶ月の印象から察するに、こういう目立つ場に立ちたがる人物ではない。

 だが私の予想に反して大広間横の小部屋から出てきたのはロックハートとフリットウィックだった。

 

「あら、ドラコの予想大当たりね」

 

「まあね」

 

 マルフォイは得意げに鼻を鳴らす。

 舞台の上のフリットウィックは生徒たちを見回すと杖を喉元に当てて喋り始めた。

 

「皆さんよくお集まり頂きました。この教室では、魔法使い同士による決闘の作法を、私と助手を引き受けてくださったロックハート先生の二人で教えていくものであります」

 

 フリットウィックの甲高い声が拡声魔法により何倍にも大きくなって大広間に響き渡る。

 

「魔法使いの決闘というものは厳格に作法が決められており、通常は実際に魔法を撃ち合う決闘者と、その者が倒された時に後を請け負う介添人の二人一組で行うものであります。ですが今回は初回ということもあり介添人は付けておりません」

 

 そう言うとフリットウィックとロックハートは舞台の真ん中で向かい合うように立つ。

 

「まず初めに、魔法使いの決闘は礼から始まります。互いに頭を下げ、相手に礼を尽す。その後、相手に対して杖を構えます」

 

 フリットウィックとロックハートは互いに礼をすると、素早く杖を取り出し相手に対して真っ直ぐ向ける。

 

「両者が杖を構え終わってから三秒数え、最初の術を掛けます。今回はあくまで展示ですので、どちらも武装解除の呪文と盾の呪文以外使用しません」

 

 フリットウィックはロックハートの方をじっと見たままゆっくり数を数え始める。

 

「三……二……一……」

 

 フリットウィックはロックハートを鋭く睨むと目にも止まらぬ速さで武装解除の呪文をロックハートにかける。

 ロックハートは少し遅れて杖を振り上げるが、ロックハートの盾の呪文は間に合わず武装解除の呪文はロックハートの眼前へと迫る。

 そのまま呪文が顔に直撃すると誰もが思ったが、ロックハートは大きく体を捻りフリットウィックの武装解除の呪文を回避した。

 

「お、お見事。全く反応出来ませんでしたよ」

 

 ロックハートはぐいっと体を起こし、杖を構え直す。

 

「いやはやこちらこそ。まさか避けられるとは」

 

 フリットウィックは油断なく杖を構え続けていたが、大きく深呼吸をして杖を下ろした。

 

「一旦切ります。と、このように互いに早撃ちで呪文を掛け合います。先ほどは私が武装解除の呪文をロックハート先生に飛ばし、ロックハート先生はそれに対処した。盾の呪文は間に合わなかったようですが、かわりに体を捻ることで呪文を回避しました」

 

 フリットウィックは大広間にいる生徒たちに先程の決闘の解説を始める。

 その様子を見てロックハートは一度杖をローブに仕舞った。

 

 その後も二人は盾の呪文で魔法を弾いたパターンと、武装解除の呪文で杖が飛ばされたパターンの展示を行う。

 一通りの展示と説明が終わると、ついに実習の時間になった。

 

「それでは私が一人、ロックハート先生が一人指定して中央の舞台で決闘をしてもらいましょう! 数試合やってここにいる皆さんが決闘の流れを概ね掴むことができたら自由に組んで練習していいことにします」

 

 フリットウィックはそう言うと、舞台の上から生徒たちを見回す。

 

「それでは……ミス・ホワイト! 舞台の上へ!」

 

 フリットウィックは都合がいいと言わんばかりに私を指名する。

 私は周囲から拍手を浴びながら舞台に上った。

 ロックハートは私の方を見て少し悩むように顎に手を当てると、ハーマイオニーを指名した。

 ハーマイオニーは大きくガッツポーズをすると、軽い足取りで舞台に上がる。

 そしてロックハートと握手すると、嬉しそうにこちらを向いた。

 

「二年の学年一位と学年二位だ! 面白いものが見られるぞ!」

 

 誰かがそんなふうに囃し立てるのが聞こえてくる。

 意識していなかったが、そういうことになるのか。

 

「ミス・ホワイト。準備はいいですか? 手順は大丈夫ですね?」

 

 フリットウィックの言葉に私は静かに頷く。

 ロックハートはハーマイオニーに同じようなことを確認し、背中を押して送り出した。

 私は少し先に立つハーマイオニーをじっと見る。

 ハーマイオニーはロックハートに指名されたのがよほど嬉しかったのか浮かれ顔で私の方を見ていた。

 

「では、お互いに礼!」

 

 フリットウィックの合図で私は優雅にお辞儀をする。

 ハーマイオニーも私の真似をしてぎこちなくお辞儀をした。

 

「では、私が三つ数えたら相手に武装解除の呪文を掛けてください。いいですか? 武装解除の呪文だけですからね」

 

 私は左腕で真紅の杖を引き抜き、ハーマイオニーに向ける。

 ハーマイオニーも自信満々に杖を引き抜いた。

 その瞬間、ロックハートと目が合う。

 まるで特訓の成果を見せてみろとでも言いたげな視線をこちらに投げかけてくるが、私は小さく肩を竦めて見せた。

 ここで本気を出すつもりはない。

 なんならここはハーマイオニーに花を持たせるものアリだとすら考えている。

 

「それでは! 三……二……一……」

 

 ハーマイオニーはお手本のような動作で杖を振るうと、大きな声で呪文を叫んだ。

 

「エクスペリアームス!」

 

 ハーマイオニーの杖から放たれた呪文は真っ直ぐ私に向かって直進してくる。

 

「プロテゴ」

 

 私はいつも通り盾の呪文を発動させると、ハーマイオニーの呪文を弾いた。

 

「二人ともお見事! さあ、まだ油断してはいけませんよ?」

 

 フリットウィックのそんな声援が聞こえてくる。

 負けてもいいとは思っているが、流石にあんな見え見えな武装解除の呪文を喰らうのは恥ずかしい。

 ハーマイオニーは少し驚いたような表情を浮かべたが、すぐさま杖を振るい武装解除の呪文を放ってきた。

 私はその武装解除の呪文を全て弾くと、こちらからも武装解除の呪文を放つ。

 私が放った武装解除の呪文の赤い閃光はハーマイオニーの杖に吸い込まれるように飛んでいき、ハーマイオニーの杖を弾き飛ばした。

 ハーマイオニーの杖はゆっくりと宙を舞い、やけにゆっくり地面に落ちていく。

 杖が地面に落ちた瞬間、大きな拍手が私たちを包み込んだ。

 

「お見事ですミス・ホワイト! ミス・グレンジャーも大健闘でした! 二人ともとても筋がいいですよ!」

 

 フリットウィックは誰よりも大きな拍手を私たち二人に送っている。

 私はハーマイオニーの杖を拾い上げると、ハーマイオニーに差し出した。

 

「やっぱり実技のほうは貴方の方が上のようね」

 

 ハーマイオニーは杖を受け取りながら少し悔しそうに言う。

 私は小声でハーマイオニーに囁いた。

 

「久しぶりに冷や汗掻いたわ」

 

 嘘である。

 だが、良好な友人関係を維持するためならこの程度の嘘は許されるだろう。

 私は皆に見えないようにハーマイオニーに微笑むと、鼻を鳴らして踵を返す。

 喧嘩している設定なので、あまり仲良くするわけにもいかないだろう。

 私は舞台から下りると、マルフォイたちとハイタッチする。

 舞台の上ではフリットウィックとロックハートが次の生徒を選んでいた。

 

「見たかあの穢れた血の顔。自分の杖がどこに行ったか一瞬わかってなかったぞ」

 

 マルフォイはそう言ってクラッブ、ゴイルの二人とゲラゲラと笑っている。

 

「それでは……ミスター・マルフォイ! 舞台の上へ!」

 

 だがフリットウィックに突然指名され、驚きと不安が入り混じった表情で舞台上のフリットウィックを見た。

 

「あら、大抜擢ね。期待してるわ」

 

 私はにこやかに笑うとマルフォイの背中を押す。

 マルフォイは少々不安そうだったが、私が背中を押すと意気揚々と舞台に上がった。

 舞台の反対側にはハリーの姿が見える。

 どうやらマルフォイの決闘の相手はハリーらしい。

 二人は舞台の上で向かい合うと、互いに相手を殺すような勢いで睨み合い始めた。

 

「いいですか? 武装解除だけですからね?」

 

 フリットウィックはマルフォイにそう言うが、マルフォイはハリーを睨んだまま動かない。

 

「それでは、互いに礼」

 

 マルフォイとハリーはほんの少しだけ頭を下げると、すぐさま杖を取り出して相手に突きつけ合う。

 

「では、私の合図で始めてください。三……二……一……」

 

 マルフォイが不意打ちするのではないかと思ったが、意外にもマルフォイはじっとフリットウィックのカウントが終わるのを待ってから杖を振るう。

 

「「エクスペリアームス!」」

 

 同時に放たれた武装解除の呪文はマルフォイとハリーのちょうど中間地点で衝突すると、赤い閃光とともに大きな爆風を巻き起こした。

 

「サーペンソーティア! ヘビよ出よ!」

 

 マルフォイはいち早く体勢を立て直すと、杖の先からかなり食べ応えのありそうなヘビを出現させる。

 大きな長いヘビはマルフォイとハリーの間にドスンと落ちると、ハリーに対して攻撃体勢を取った。

 

「いけません! 武装解除の呪文だけですよ!」

 

 フリットウィックはキーキー声でマルフォイを注意する。

 マルフォイは悪びれる様子もなくハリーに対して勝ち誇った顔をした。

 

「どうした? 怖かったら降参してもいいんだぞ?」

 

 マルフォイのニヤケ顔に挑発されるように、ハリーはヘビに向かって一歩近づく。

 ハリーはそのまま床を這うヘビをじっと見つめると、小さく口を開いた。

 

「s──」

 

「ハリーッ!」

 

 ハリーはヘビに対し何かしようとしていたみたいだが、ロックハートの大声によってピタリと動きを止める。

 ロックハートはそのままヘビに近づくと、慣れた手つきで頭を掴みそのまま窓の外に投げ捨てた。

 

「やめ! そこまで。マルフォイ君、実に見事なヘビ召喚呪文だが、ここでは武装解除の呪文だけだ。でも二人とも最初の武装解除の呪文は速度、威力ともに大したものだ。みんな二人に拍手!」

 

 ロックハートがそう言うと、二人の決闘を見ていた生徒たちが二人に対して拍手を送る。

 マルフォイは納得していない顔をしていたが、ハリーをひと睨みして渋々私のもとに帰ってきた。

 

「カッコよかったわよドラコ。邪魔が入らなかったらきっと貴方が勝ってたわ」

 

「ふん。当たり前さ。僕があんな傷物に負けるもんか。ロックハートの妨害さえなけりゃ今頃シャンデリアから吊るしてやってたのに」

 

 マルフォイはそう言ってロックハートを睨む。

 

「まあまあ。でも、ハリーは何をしようとしていたのかしら」

 

「知るもんか。まあ決闘クラブなんて所詮こんなもんさ。これなら図書室で魔法史の宿題を片付けている方がまだ有意義だ。今からでも図書室に行かないかい?」

 

 マルフォイは早々に決闘クラブに見切りをつけたらしく、そのような提案をしてくる。

 私としてもここで学べることは少なそうなので、その提案には賛成だった。

 

「ええ、いいわよ。いきましょうか」

 

 マルフォイは私からの返事を聞くと、クラッブ、ゴイル二人に声をかけて大広間の外へと歩いていく。

 私はもう一度ロックハートの方をチラリと見ると、マルフォイの後について大広間を後にした。




設定や用語解説

マダム・ポンフリーが一瞬で繋いでくれました
 原作ではロックハートに文字通りに骨抜きにされてしまったハリーだが、ここでは普通の骨折だったのですぐに治してもらえた。だがマルフォイにシーカー勝負で負けたショックと談話室へ帰りたくなさ過ぎて一晩入院。

レミリアを対処できる魔法使い
 単独だったらダンブルドア。複数人で当たるなら闇祓いのエリート部隊。また、噂ではニコラス・フラメルでも対処できるとかなんとか。実際のところレミリアが魔法界で暴れたことはないのであくまで暇人のもしも話。

決闘クラブ
 原作ではロックハートが企画した決闘クラブだが、今作ではフリットウィックがダンブルドアからの要請を受けて企画。助手をロックハートに指定したのもダンブルドア。

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