P.S.彼女の世界は硬く冷たいのか?   作:へっくすん165e83

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理事会とファイアボルトと私

 

 クリスマス休暇初日。

 私はいつもより少し早めに起きると、大広間で朝食を取り談話室へと戻る。

 そして暖炉の前のソファーで本を読みながら実家に帰る生徒たちを見送った。

 

「おはようサクヤ」

 

 休暇に入ったこともあり、ベッドの上でゆっくりしていたのであろうハーマイオニーが眠そうな目を擦りながら談話室へ下りてくる。

 結局ハーマイオニーとは三本の箒で別れてからろくに会話をしていなかった。

 

「私はもう朝ご飯食べちゃったから、大広間には私抜きで行っていいわよ」

 

「……まあ、ハリーもロンもいつ起きてくるかわからないし、一人で行ってくる」

 

 ハーマイオニーは大きな欠伸を一つし、肖像画を押し開けて談話室から出ていく。

 私はそんなハーマイオニーの背中を見送ると、再び読書に戻った。

 

 結局いつもの四人が談話室に揃ったのは昼食の少し前だった。

 談話室に下りてきたハリーの顔は少々顔色が悪い。

 きっと昨日はあまり眠れなかったのだろう。

 

「ハリー、大丈夫?」

 

 ハーマイオニーがハリーの顔を覗き込む。

 まあ、昨日の夜は考えることが多かったんだろう。

 あんな衝撃的な事実が明らかになったあとだ。

 自分の身の振り方を決めるには、決して短くない時間を要する。

 

「で、結論は出たのかしら」

 

 私がそう言うと、ハーマイオニーは慌てて口を開いた。

 

「ハリー、軽はずみな行動は危険よ。魔法省も吸魂鬼も、ダンブルドアも動いてるわ。貴方がシリウスを探し出す必要なんかないわ」

 

「そうだぜハリー。ブラックのために死ぬ価値なんてないさ」

 

 ロンもハーマイオニーに同調するが、ハリーは深刻な顔で言った。

 

「でも、僕が吸魂鬼に近づくたびに母さんの悲鳴が聞こえてくるんだ。母さんの声なんて覚えてもいないのに。僕の親は親友だと思っていた奴に裏切られたんだ。両親の無念は誰が晴らすんだ?」

 

「でも、貴方にはどうすることもできないでしょう? きっと吸魂鬼がブラックを捕まえるわ」

 

 ハーマイオニーは必死になってハリーに訴える。

 

「でも、ファッジの言ったことを聞いただろう? ブラックはアズカバンでも正気を保っていたって。吸魂鬼が有効な手段だとは思えない」

 

「つまり、貴方はどうするの?」

 

 私がそう聞くと、ハリーは考え込み始めた。

 

「まさか、ブラックを殺しにいきたいなんていわないよな?」

 

「馬鹿言わないで。ハリーが誰かを殺したいだなんて考えるはずがないわ。そうでしょう?」

 

 ハーマイオニーは俯いて考え込むハリーに優しく聞く。

 だが、ハリーは肯定も否定もしなかった。

 

「逃げるの?」

 

 私は短くハリーに問いかける。

 ハリーは顔をあげて私を見た。

 

「サクヤ、どうしたの? 貴方らしくないわ」

 

 ハーマイオニーはそっと私の手を取る。

 私はしばらくハーマイオニーの体温を感じ取ると、大きく深呼吸をした。

 

「……休暇初日にするような話じゃなかったわね。折角だからどこか遊びに行く?」

 

「それならハグリッドの小屋に遊びに行くのはどうだ? もう何百年も会ってないような感覚だよ」

 

 ロンがそう提案すると、ハリーはソファーから立ち上がった。

 

「そうだね。行こう。それに、ハグリッドならブラックの話を何かしてくれるかもしれない」

 

「確かにそうね。敵を知り己を知れば百戦危うからずって言うし、情報収集はしておくことに越したことはないわ」

 

 ハリーと私の言葉に、ロンはしまったという顔をする。

 だが、ロンが他の提案をする前にハリーはローブを取りに男子寮に上がって行ってしまった。

 

「それじゃあ、私たちも準備しますか」

 

 私はポケットの中から小さくした鞄を取り出すと、魔法を掛けて元の大きさに戻す。

 そして鞄の中から防寒着とローブを取り出した。

 ハーマイオニーとロンはその様子を見て、諦めたようにそれぞれの寮へと上がっていく。

 十分後、私たちは防寒着を着こんだ状態で談話室を出発した。

 私たちはそのまま人の殆どいない城の中を通り抜け、芝生の凍った校庭を横切ってハグリッドの小屋を目指す。

 昼前の時間にも関わらずズボンやローブの裾が凍り付くほど気温は低かったが、特に問題なくハグリッドの小屋にたどり着くことができた。

 先頭にいたロンが扉をノックするが、ハグリッドからの返事はない。

 

「留守かな?」

 

「いや、でも中から変な音が聞こえるよ?」

 

 ハリーは扉に耳を近づけて言った。

 

「ハグリッド! いないの?」

 

 ハリーはロンに続いて力強く扉をノックする。

 すると、重たい足音が聞こえ、小屋の扉を開けてハグリッドが顔を出した。

 ハグリッドは一晩中泣きはらしたかのように目を充血させている。

 

「もしかして、もう聞きつけたか?」

 

「なんの話?」

 

「……とにかく入れ」

 

 ハグリッドは大きく鼻を啜って私たちを中に招き入れる。

 小屋の中には私を襲ったヒッポグリフがベッドの近くで丸くなっていた。

 

「すまん、何か用だったか?」

 

「それどころじゃないよ。ハグリッド、何かあったの?」

 

 ハグリッドは机の上に置いてあった手紙をハリーに手渡す。

 どうやら学校の理事会からの手紙のようだ。

 私たちは顔を突き合わせて手紙を覗き込んだ。

 

『拝啓、ハグリッド殿。ヒッポグリフが貴殿の授業で生徒を攻撃した件について、当局としては生徒からの起訴も起こっていないため表立った罰則は与えないことに決定しましたことをここにお知らせいたします』

 

「ああ、ようやく結果が出たのね。まあ、あれに関しては完全に事故だったしハグリッドは悪くないわ」

 

 私は肩を竦めて言う。

 私のそんな言葉にロンが同意した。

 

「そうだよハグリッド。当の本人が気にしてないんだ。ハグリッドがいつまでも引きずるべきじゃないよ」

 

「その先だ」

 

 ハグリッドは続きを読むように促す。

 私たちはまた頭を突き合わせた。

 

『しかしながら、我々は今回の惨事を引き起こしたヒッポグリフに対し懸念を表明せざるをえません。従いましてこの件は『危険生物処理委員会』に付託されることになります。事情聴取が行われますので、こちらが指定する日にヒッポグリフを伴いロンドンの当委員会事務所まで出頭願います』

 

 手紙のあとには学校の理事たちの名前が書かれている。

 

「ウーン……でも、バックビークはハリーの時はなんともなかったのに、なんでサクヤの時はダメだったんだろう?」

 

 ロンが手紙を読みながら言う。

 

「でも、事情聴取を受けるだけなんでしょう?」

 

 ハーマイオニーがそう言うと、ハグリッドは声を上げて泣き始めた。

 

「おまえさんは危険生物処理委員会っちゅう連中を知らん。奴らは面白え連中を目の敵にしとる」

 

 襲われた本人である私はこの件に対して強くは出れない。

 私がバックビークの無罪放免を主張するのはあまりにも不自然だろう。

 

「ねえ、もしバックビークが有罪になったら、どうなっちゃうの?」

 

 ハリーが恐る恐るハグリッドに聞く。

 ハグリッドはバックビークを見ながら言った。

 

「……処刑されちまう。そういう例を俺は沢山見てきた」

 

「なら、しっかりした弁護を打ち立てるべきだわ。バックビークが安全であるしっかりとした証拠を集めて、裁判で闘うのよ」

 

 私は手紙をハリーから受け取ると、もう一度上から下まで目を通す。

 

「ん?」

 

 そして、理事たちの名前の一番下の列に、パチュリー・ノーレッジの名前を発見した。

 

「まあ一番手っ取り早いのは、襲われた本人である私がバックビークを煽りましたって証言することだけど……」

 

「それはダメだ。事実に反するどころか、なんも悪くねえサクヤに迷惑が掛かっちまう」

 

「でも、私自身バックビークが無罪になろうが処刑されようが割とどっちでもいいわけで……でも、なんで私は襲われたのかしら」

 

 私はそう言いながらハーマイオニーに手紙を見せ、ノーレッジの名前を指さす。

 ハーマイオニーはしばらく目をパチクリさせていたが、やがて私から手紙を取り上げ、食い入るように見始めた。

 

「あのパチュリー・ノーレッジが学校の理事に!?」

 

「誰それ?」

 

 ロンがぶっきらぼうに聞く。

 だが、ハーマイオニーはロンの声など聞こえてはいなかった。

 

「ハーマイオニーがお熱の魔法使いよ」

 

 私はハーマイオニーの代わりにそう答える。

 

「ルシウス・マルフォイが抜けた穴を埋める形で就任したんでしょうけど……そこまで驚くようなこと?」

 

 私がそう言うと、ハーマイオニーは憤慨し始めた。

 

「パチュリー・ノーレッジがホグワーツを卒業してから今に至るまで、誰も彼女と会ったことがないの。そんなパチュリー・ノーレッジが表の世界に出てくるなんて……信じられないわ」

 

 私自身ノーレッジが書いた本は読んだことがあるが、ノーレッジのことが書かれた本を読んだことはない。

 ハーマイオニーがそう言うなら、彼女が理事に就任したということ自体が驚くべきことなのだろう。

 

「って、まあそれは置いといて。今はバックビークの裁判について調べなきゃ。バックビークがサクヤを襲ったのが事故だってことを証明することができればいいわけよね」

 

 ハーマイオニーは優しくハグリッドの肩に手を置く。

 ハグリッドは小さく鼻を啜ると、顔を伏せながら言った。

 

「いや、本来俺がなんの罰則もないのがおかしいぐらいなんだ。バックビークが処刑になるのは悲しいが、俺ぁ避けられんことだと思っとる。バックビークはサクヤを襲った。その事実はどう弁護しても変えられるもんじゃない。……サクヤには辛い思いをさせちまったし、これ以上迷惑はかけられん……」

 

「……勝手に逃しちゃえば?」

 

 私は小屋の中に繋がれているバックビークを見る。

 バックビークは口の周りを血まみれにしながら鶏を食べていた。

 

「それは出来ん。バックビークを隔離しておくよう理事会から言いつけられとるし、逃したとしてもバックビークが遠くへ逃げてくれる保証はねえ」

 

 私たちはなんて言っていいか分からず、当たり障りのない言葉でハグリッドを慰めることしか出来なかった。

 ハグリッドの小屋からの帰り道、ハーマイオニーが口を開く。

 

「なんとかしてバックビークを助けられないかしら。裁判になったらハグリッドが負けるのは目に見えてるわ」

 

「うーん、難しいとは思うよ。でも人間を襲う危険な生物なんて禁じられた森には沢山いるのに、バックビークだけ処刑されるのはおかしな話だよな。理事会はどうして話を危険生物処理委員会に持ち込んだんだろう?」

 

 ロンの言う通り、この話は学校と学校の理事の間だけで解決出来そうな話だ。

 外部組織に話を持ち込んで、バックビークを処刑させる意図がわからない。

 

「確かにおかしな話よね。ハグリッドが減給だったり停職処分を受けるならまだしも、ハグリッドはお咎めなしでバックビークだけ処刑されてしまうなんて。理事の中に危険な生物を目の敵にしている魔法使いがいるとか?」

 

 ハーマイオニーは首を傾げながら言った。

 まあ、ハグリッドが罰則を受けないことには心当たりがある。

 きっとマルフォイが自分の父親を通じてハグリッドに処分を下さないようにしたのだろう。

 そこまでは私の想定通りだ。

 だが、それ以上の話は理事会が決めたことである。

 

「なんにしても、人間以外の種族を理由なく嫌っている魔法使いって少なくないんだ。理事会にそういう魔法使いがいてもおかしくないよ」

 

 確かにロンの言う通りだ。

 魔法史の授業でも、そういった考えに基づく事件が何度も起こっている。

 

「まあでも、裁判が行われるならそれに向けて準備はしないといけないわ。誰もバックビークの弁護をしないなんて、あまりにも可愛そうだもの。私図書室で魔法史について調べてくる」

 

 ハーマイオニーはそう言うと廊下の途中で曲がり図書室のほうへと歩いていった。

 私たちはそのまま階段を上り、談話室へと入る。

 

「結局ブラックのことを聞きそびれちゃったわね」

 

「聞ける雰囲気でもなかったしね」

 

 ハリーは気まずそうに頬を掻く。

 

「まあ、せっかくの休暇なんだ。今は楽しもうぜハリー」

 

 ロンはハリーの背中を叩くと、チェスでもしないかとハリーに提案した。

 私は小さくため息をついて朝座っていた暖炉前のソファーに座る。

 そして鞄から読みかけの本を取り出すと、暖炉に火をくべて続きを読み始めた。

 

 

 

 

 

 一九九三年のクリスマス。

 私は朝目を覚ますと、身支度を済ませて談話室へと下りた。

 談話室の暖炉にはすでに火が入っており、談話室全体がポカポカと暖かくなっている。

 これは厨房にいる屋敷しもべ妖精から聞いた話だが、ホグワーツでは生徒たちが不自由なく生活できるように屋敷しもべ妖精が陰ながら働いているらしい。

 この暖炉もその苦労の賜物というわけだ。

 

「ありがたい限りよねほんと」

 

 私はもはや特等席となりつつある暖炉前のソファーに座り込むと、厨房から失敬したトーストと紅茶を鞄の中から取り出して食べ始める。

 朝食を取るためだけに八階にある談話室から大広間へと下りるのは些か面倒だ。

 

「おはようサクヤ……相変わらず朝早いわね」

 

 私が五枚目のトーストに手を伸ばしたところでハーマイオニーが女子寮から下りてきた。

 まだ寝ぼけているようで、ぼんやりとした表情でぬいぐるみのようにクルックシャンクスを抱いている。

 

「貴方はまだ眠そうね。折角の休暇なんだからもう少し寝てたら?」

 

「そういうわけにも行かないわ……クリスマス休暇の宿題がわんさか出てるんですもの」

 

 ハーマイオニーは大きな欠伸をすると、私の横のソファーに座り込み半分目を閉じながらクルックシャンクスを撫で始める。

 

「一枚食べる?」

 

「食べるぅ」

 

 私はそんなハーマイオニーの口にトーストを一枚咥えさせた。

 

 私が談話室に下りてきてから一時間ほど経過しただろうか。

 ハリーとロンが箒を片手に男子寮から下りてくる。

 私は十三枚目のトーストのカケラを口の中に放り込むと、ハリーとロンに挨拶した。

 

「メリークリスマス。ハリー、ロン」

 

「メリークリスマス!」

 

 ハリーとロンは上機嫌で私たちの近くに来ると、暖炉の近くにソファーを寄せて腰を下ろす。

 そして手に持っていた箒をまるで宝石かのような手つきで調べ始めた。

 

「ねえハリー、その箒どうしたの?」

 

 私はハリーの持っている箒を覗き込む。

 箒にはあまり詳しくない私だが、ハリーの持っている箒には見覚えがあった。

 ダイアゴン横丁の高級クィディッチ用具店に売られていたファイアボルトという最高級の箒だ。

 ハリーと一緒にダイアゴン横丁を見て回った時、ショーウィンドウからハリーを引き剥がすのに苦労したためとても印象に残っている。

 確か一本で何百ガリオンもする最高級の箒だった筈だ。

 

「それって確かフェラーリみたいな箒よね?」

 

「うん、クリスマスプレゼントとして送られてきたんだ」

 

 それはまた、随分と金持ちな知り合いがいるものである。

 まあ私なら箒よりもガリオン金貨をそのままもらったほうが嬉しいが。

 

「何にしても、これで次のグリフィンドール対レイブンクロー戦はもらったも同然だな。あいつら全員クリーンスイープ七号に乗ってるんだ」

 

 ロンは羨望の眼差しでハリーの箒を見つめる。

 まあ確かにハリーのニンバスが折れてしまったため代わりの箒が必要だということはわかる。

 問題はこの箒を誰が送ってきたかということだ。

 

「ハリー、その箒の贈り主は誰?」

 

 私がそう聞くと、ハリーは首を横に振った。

 

「書かれてないんだ。メッセージカードも入ってなかった」

 

「でも、ハリーの箒が折れたことを知っているということは学校関係者よね」

 

「うん。でも、僕のために何百ガリオンもする箒を贈ってくれる人って誰だろう?」

 

 ハリーはそう言って首を傾げる。

 

「もし心当たりがあるなら紹介してもらいたいわ。私ダイヤで装飾されたブレゲのグランドコンプリケーションが欲しいの」

 

 私がそんな冗談を言うと、ハーマイオニーがわかりやすく怪訝な顔をした。

 

「ちょっと待って。その箒、本当に大丈夫?」

 

「この箒が大丈夫じゃなかったら、世界中の箒がその辺のデッキブラシと同じになっちゃうよ」

 

 ロンはそう言って肩を竦めるが、ハーマイオニーはお構いなしに続ける。

 

「私箒にはあまり詳しくないんだけど、その箒物凄く高いのよね?」

 

「うん、スリザリンの箒を全部足した金額よりも全然高い」

 

「そんな箒を送りつけておいて、名乗りもしない人なんているのかしら」

 

「誰だっていいだろ? ハリー、早速飛ばしに行こうよ」

 

 ロンはそう言ってソファーから立ち上がる。

 だが、そんなロンをハーマイオニーが止めた。

 

「よくないわ! その箒で飛ぶのは危険よ!」

 

 ハーマイオニーが急に立ち上がったため、クルックシャンクスが膝の上から落ち地面に着地する。

 クルックシャンクスはそのまま男子寮の方へと行こうとしたので、私はクルックシャンクスを抱き上げてソファーへと戻った。

 

「危険? 何がどう危険なんだ?」

 

 ロンはわかりやすく不機嫌になるとハーマイオニーに怒鳴る。

 

「このタイミングでハリーに箒を贈るなんて都合が良すぎると思わない? 私の予想が正しければ……その箒はシリウス・ブラックから送り付けられたものだわ……」

 

 私たち四人の間に沈黙が走る。

 数秒の沈黙の後、私は思わず吹き出した。

 

「ふふっ、ハーマイオニー、流石に飛躍しすぎよ。それにシリウス・ブラックはハリーの箒が折れたことを知るはずがないわ。それこそ、あの時スタジアムで試合でも見てない限りね」

 

「そうだよ。それに逃亡中のブラックがどうやってファイアボルトを入手するって言うんだい? のこのこ箒屋に出向いて楽しくショッピングをするとでも?」

 

 ロンも一緒になってハーマイオニーに言う。

 ハーマイオニーは「確かにそうだけど……」と言葉を濁した。

 

「まあでもハリー、たとえ贈り主がブラックじゃなくても、だからといって安心できるわけではないわ。試合で使う以上隠すことはできないんだし、さっさとマクゴナガル先生に報告した方がいいわ」

 

 私がそう言うと、ハリーは手に持っている箒に目を落とす。

 

「隠していたら酷いことになるわよ。たとえその箒になんの異常も呪いもなかったとしても、罰則としてグリフィンドールのチームでプレイできなくなる可能性すらあるわ」

 

「……それはわかってるんだけど」

 

「わかってないわ。その箒を試合で使うには、マクゴナガル先生に報告して調べてもらうしかないって言ってるの。それ以外の選択肢はないわ。まあ、その箒で床を掃くだけなら報告しなくてもいいけどね」

 

「わかった、わかったよ。ちゃんとマクゴナガルに言うよ。それでいいだろう?」

 

 ハリーは勘弁してくれと言わんばかりに両手を挙げる。

 

「でも、その前に一回だけ……」

 

「「ダメよ」」

 

 ロンの言葉を遮るように私とハーマイオニーの声が重なった。

 私はハーマイオニーにクルックシャンクスを押し付けると、ソファーから立ち上がりハリーの肩に手を置く。

 

「ハリー、折角クリスマスプレゼントでもらった最高級の箒を少しの間でも手放したくないのは理解できるわ。でも、必要なことなの。わかってくれるわよね?」

 

「……うん。サクヤは僕のために言ってくれてるんだもんね。大丈夫、ちゃんと調べてもらうよ」

 

 私はソファーへと戻ると十四枚目のトーストを手に取る。

 マクゴナガルはきっとハリーの箒を預かって呪いがかけられていないか徹底的に調べるだろう。

 だが、マクゴナガルもかなりのクィディッチ狂いだ。

 レイブンクロー戦までには間に合うようにしてくれるはずである。




設定や用語解説

ホグワーツ理事会
 ホグワーツの運営や学習方針を決める人たち。本編では影が薄い。

ファイアボルト
 クィディッチ用の最高級の箒。五百ガリオン。

Twitter始めました。
https://twitter.com/hexen165e83
活動報告や裏設定など、作品に関することや、興味のある事柄を適当に呟きます。
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