雄英高校ヒーロー科、そこは多くのトップヒーローを排出してきた超名門。トップヒーローであるオールマイトの母校でもあり、毎年その入試倍率は300を超える難関校。そんな雄英高校の入試日、俺は仰反るほど巨大な校門前で佇んでいた。
「でかい…」
そんな普通なことしか言えない程、俺は雄英高校に圧倒されていた。普段見るだけならここまで感じないが、入試となればそれは異なる。才能ある一握りの者以外は振り落とす入試試験。それを乗り越えるべく様々な学校の受験生が絶対受かってやるという凄まじい剣幕のせいでもあるだろう。
「あ、」
目の前で1人の少年が躓き顔面から地面に接吻する。すぐさま助けに動こうとしたが杞憂だったようだ。少年は地面にぶつからず宙へ浮く。近くの少女が話しかけていたことから彼女の個性なのだろう。安堵した俺はそのまま話しかける事なく試験会場へと足を運んだ。
▽▽▽
『今日は俺のライブにようこそー!エヴィバディセイヘイ!』
雄英高校の教員の1人、ボイスヒーロー・プレゼントマイクが高テンションで受験生に語りかける。しかし数千人を超える受験生は何も返さない。それでもテンションはそのままに試験の説明に移る。ルールは単純、より多くの仮想敵を倒せばいいらしい。ただしその中に0Pのお邪魔敵がいるのだとか。
『俺からは以上だ!最後にリスナーへ我が校『校訓』をプレゼントしよう。かの英雄ナポレオン・ボナパルトは言った!「真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者」と!“Plus Ultra”!それでは皆、良い受難を!』
プレゼントマイクの説明が終わり、受験生の俺たちはそれぞれ割り振られた試験会場へと移動し、スタート地点で各々ウォーミングアップを始める。
俺も軽くすぐに動けるようにストレッチを始めていると、横から声をかけられる。
「今の内に変身するんだなも」
声のした方を見ると、そこには狸の妖精が退屈そうにあぐらをかきながら宙へ浮かんでいた。こいつの名前はタヌべえ。不本意ながら俺の個性の一部だ。
「うるさい…わかってる…けど今やらなきゃだめか?」
「ダメだなも。ヒーローになりたいのなら羞恥心に勝てないと話にならないだなも」
「ッ…まぁ言いたい事は分かるけども…」
「男ならつべこべ言わずさっさと変身するだなも!」
タヌべえに急かされ、嫌々ながら天使の羽のような装飾がついたステッキを右手に取り出す。先端は赤いハート型になっており、女児がこんな玩具を持って遊んでいそうだ。
「 change プリキュアッ!!」
意を決して叫ぶ。次の瞬間、俺は赤いハート型の光に包まれる。そこから頭を突き出す。まるでその姿は風船人間のようだ。そこから覗く俺の髪は、黒髪から真紅に染まり髪が伸びる。しかしすぐにそれは炎が焦がし元の髪型へ。
そしてハートは規模を縮め身体のボディラインピチピチになり、光る衣を身に纏う。輝きは次第に収まっていき、白と赤のリボンやフリルがふんだんにあしらわれた女性向けのドレスに姿を変え、俺がステッキのハート部分を手首、足首、そして髪に触れさせる事で装飾が飾り付けられる。
「燃えるハートは勇気の証!キュアフレイムッ!!」
決めポーズを取りながら叫ぶ俺は若干内股になっており、筋骨隆々な俺の見た目も相まって凄まじく奇妙に見えるだろう。スタート地点の空気が死んだ。皆が俺を見ている。は、恥ずかしいし気まずい…!!
タヌべえを隣で顔を赤らめ悶絶している。こいつは女装した男でしか興奮できない異常性癖者だ。あとで殺す。今日は狸鍋だ。
変身は勝手に動き勝手に口を動かす。本当に厄介極まりない。早く制御出来るようにしないと俺が社会的に死んでしまう…もう手遅れか
『はいスタート』
そんな空気を破ったのはプレゼントマイクだった。これ幸いとすぐさま会場を駆け抜ける。
『どうしたぁ!?実戦じゃカウントなんざねえんだよ!走れ走れぇ!!賽は投げられているぞ!!』
ありがとうございます!あの最悪な雰囲気をぶち壊してくれたプレゼントマイクに心の中で礼を言いながら走る。少し走ると仮想敵が姿を表した。
「ブッ殺ス!!」
仮想敵が俺に腕を振り落とすが、それを足場に上空に跳躍、きりもみ回転し、仮想敵の首に蹴りをたたみ込む。仮想敵はそのまま吹き飛び動かなくなる。
「まずは一体…!!」
今ので複数の仮想敵の中心に入り込んだ俺は、その場全ての仮想敵にロックオンされ標的にされたが怯まない。笑ってみせる。オールマイトのように、どんな窮地でも笑顔を忘れないのだ。
「「「ブッ殺ス!!」」」
「やれるものならやってみろッ!!」
あれからやられそうな受験生を救助しながら仮想敵を倒してきたが、大体ポイントは40いったかいってないか辺りだ。俺が救助した奴らは全員顔を青ざめていたがそれほど仮想敵がこわかったのだろうか、いやそうじゃない。きっと…というか確実に俺の姿のせいだ。元々はピッチリスーツだったためかなり良くした方なのだが、まだダメみたいだ。タヌべえを早く支配下に置かねば俺がヤバい。
そんなことを考えながら仮想敵を探していると、地響きからの轟音。ビルの隙間から超巨大仮想敵が出現した。ビルよりも巨大な仮想敵に皆が恐れ逃げ出していく。それ以前に奴は0P。あれを倒す暇があるのなら他の敵を倒す方が効率がいいだろう。しかしそれはヒーローとしてどうなのだ?
オールマイトは決して逃げない。諦めない。ならば俺は…奴を止めるッ!!ヒーローになるためにッ!!
巨大仮想敵に向かって駆ける。俺の存在に気づいた巨大仮想敵は、俺を踏み潰さんと足を踏み下ろす。
「ぬぐぉぉおおお…!!」
余りの重さに苦悶の声をあげてしまうがなんとか潰されずに持ち堪えた俺は一気にそのまま跳び上がる。余りの重さに完全に持ち上げることは叶わなかったが、バランスを崩す事はできた。
「オラッ!!」
そのまま巨大仮想敵を蹴飛ばし、一度地面に着地する。今の蹴りで背中から倒れたのを確認した俺はステッキを取り出す。
「フレイム…standby!!」
ステッキから大きな火球が出現、空高く、上空に撃ち出される。俺はそれを高速回転しながら追いかける。
「オォォォオオオオッ!!!」
高速回転しながら火球を肉眼で捉える。
「フレイムトルネードッ!!」
高速回転しながら火球を蹴り放つ。そして追撃にステッキから炎を噴出させ、火球を押し出す。
超高速で放たれた火球は巨大仮想敵に接触した次の瞬間肥大化、そして炎はハートに姿を変え、仮想敵はハートに包み込まれ爆散、その場には残骸すらも残らなかった。
『終了〜〜!!』
プレゼントマイクの声が会場に響き渡る。どうやら今日はこれでお終いのようだ。変身を解こうとするとタヌべえがプルプルと震え始めた。
「ぁぁああッ!!巨大な敵と戦うシーンッ!!そしてパンチラッ!!興奮するだなもぉおお!!で、でる、でるだなもぉおお!!!」
タヌべえの大きな場所が光り、キラキラ光るコインが現れた。これはたぬたぬコイン。タヌべえの興奮が一定以上溜まると出来る非常に気持ち悪い物体だ。しかしタヌべえが言うにはこれを500集めれば強力な力を得られるという。半信半疑だが一応集めるようにはしている。
「はぁ…なんだが疲れたなぁ…」
体をビクビクと痙攣させるタヌべえを放置し俺は帰路に着いた。
タヌべえは某ゲームのキャラとは一切関係ありません。