再びの番外編です。今回は修行していた空白の1年の話です。
また、AFとの絡みの番外編は長いので複数に分けます。
AF達からの修行を受けているある時、アンとの修行の際にアンの放つレーザーを、立ち塞がった草薙が艤装の頭部を盾にして防いだ。
草薙「アンさん···今、実弾で撃ちましたね?どういうことですか?」
アンは浮遊しつつ、冷たい目で草薙と武龍を見下ろしている。
アン「別に良いじゃないですか、所詮"人間"なんですし」
草薙「アンさん!」
アンはふわりと演習場から去って行ってしまった···
草薙「まったく···武龍、無事ですか?」
武龍「ああ、まあ···」
とりあえず武龍は念のため医務室で軽い検査をしたが、問題は無かった。
そして武龍が医務室から出ると、有澤が廊下で待っていた。
有澤「先程の件、見ていました。武龍さん、後で私の部屋に来てください」
その日の修行が終わり、武龍が有澤の部屋に行く。ノックをすると、有澤がすぐに返事をする。
有澤「どうぞ、お入りください」
有澤の部屋は和風に特化した作りになっており、落ち着いた雰囲気を醸し出している。
武龍は有澤に奨められて藍色の座布団の上に座ると、有澤は抹茶と煎餅を出してきた。
有澤「では早速本題に入りましょう。アンは根はとても良い子なのですよ···ただ、AFとしての開発工程やその目的が原因で、自分自身と人間を憎んでいるんですよ」
武龍が話を聞くと、まずアンは2つの企業が共同開発した『企業連の答え』であり、『最強のAF』とも呼ばれるはずだったとのこと。しかし未完成のまま出撃させられ、撃破されてしまったとのこと。
有澤「ですが、兵器だった頃からアンは『自然を見てみたい』と願っていたそうです」
武龍「自然って、山や動物とか?」
有澤「はい。しかし私達AFが建造された世界では、既に地上の9割は砂漠化が進行していたのです···
けれど、アンの『兵器としての性能』により、自然を見ることは叶うことはありませんでした」
武龍「···なんで?」
有澤「アンは···『アンサラー』は周囲に極度に高濃度の汚染物質をばらまく性質があるのです。
つまり、アンが出撃すればその周辺一帯は数百年に渡り、いかなる生物も生存不可能な汚染地帯となってしまうのです···それも、開発工程でそれを前提としたものでもあったのです」
武龍「そんな···」
有澤「だから···アンはそんな性能を持つ自分と、開発した人間達を憎んでいるのです」
武龍「で、でも今のアンなら外に出れば自然を見たり触ったりすることだって、できるんじゃないのか?」
有澤「確かに、AFではない"アン"ならできるでしょう···しかし、アンは体にまだあの汚染物質が残っているのではと思っています。
それに、人間を見るだけで憎しみの感情が沸き上がり、自然を見るどころでは無くなってしまう可能性もあります」
武龍「それで、アンは外に出ないのか···」
有澤「また、アンの装備に必要な動力源は未だ不安定でもありますので、それも影響しているでしょう」
その時、突然放送が入る。
リプ《大変なのだ!アンが海上装備を着けて出撃してしまったのだ!》
アンは海上を海上を進むためだけの性能を持つ外骨格『シーウォーク』を装備し、右手には『本来起こり得た未来』の兵器の1つを試作再現した『ハイレーザーライフル』『WH04HL-KRSW』(以下『カラサワ』)を持っている。
瑞希《何をしてるんですかアン!すぐに戻ってきてください!》
アン「私は存在してはならないAFです···ならせめて、消えるのは戦場です」
アンの目の前に、はぐれのイ級が1体見える。アンはすぐにカラサワを構え、トリガーを引く。
するとイ級に青いレーザーが着弾し、青い爆発を起こす。
イ級はその一撃で沈んだものの、近くにいたのであろう軽巡へ級とイ級が1体ずつ向かってくる。アンがカラサワの銃口を向けて発射しようとするが、先程の1発で熱暴走を起こし、撃つことができない。
アン「フフッ···私もこの子も欠陥品···共に沈むのも、悪くありませんね。なのに···なのにどうしてこんなに悲しいのでしょう?···ああ、なるほど···」
ホ級とイ級が砲口を向ける。
アン「私はやはり···自然を見たかったのですね···」
その瞬間、拠点方向から巨大な砲弾がホ級を直撃し、動揺しているイ級にも同じ砲撃が撃ち込まれる。
ベス《危ない所でしたね。今から向かうので、その場から動かないでください》
ベスがアンを連行して帰還すると、武龍が駆け寄る。
武龍「おい!大丈夫か!?」
アン「なぜあなたが心配するのです?人間に心配される謂れはありません」
武龍「仲間だから心配すんの当たり前だろ!それにお前、自然を見たいんだろ!?なのに諦めてんじゃねぇよ!」
アンは呆れて目をそらす。
アン「どうして、こうも人間は愚かなのですかね···」
武龍「俺は···俺は自分がバカだって解ってるから!」
アンは答える事無く、ベスに連れられていく。
後日、武龍は有澤に連れられて道場へと向かう。道場にはアンがおり、2人は驚く。
アン「なぜ、人間をここに?」
有澤「一度、2人で語り合ってはどうでしょう?拳で」
武龍「えっと···」
有澤「ふふっ、ただの手合わせですよ。ただし、アン···あなたは武龍という人間に、色々吐き出してみてはどうでしょう?」
そう言うと有澤は道場を出ていく。残された2人は向かい合う。
アン「まあ、溜まってるストレスを発散するには良いでしょうね」
武龍「···」
アンは間髪入れずに飛び上がり、武龍に拳を振り上げる。
アン「人間は···いつも!」
武龍はクロスさせた掌でアンの拳を防ぎ、左からの追撃の蹴りを右腕でギリギリのところで防ぐ。
アン「自分達の欲のために、自然と他者を食い物にして!」
アンの掌底は武龍の腹部に命中し、武龍は倒れこむ。
アン「何も大切にしない!誰も大切にしない!」
アンは武龍の頭部を踏みつけようとするも、武龍は右横に転がる事で回避し、立ち上がる。
アン「最後には、地上を完全に捨てて···何もかも全部壊そうとして!」
アンの右フックを、武龍は歯を食い縛って顔で受け止める。
アン「全部汚染して、壊すためだけに私を作って!」
アンはよろけた武龍の腹部に左手で拳を撃ち込む。
アン「私なんて···私なんて!」
アンは武龍の脳天に拳を振り下ろす。アンの目には、涙が浮かんでいた。
アン「ハァ、ハァ···なのにあなたは···諦めるなって、勝手なことを言って···」
アンは膝立ちになった武龍の肩を掴み、揺さぶる。
アン「あなたも···同じ人間なら答えてください!どうしてあそこまで愚かに!卑怯に!残酷になれるんですか!?」
武龍はアンの手をそっと掴むと、アンの目を見て答える。
武龍「俺は···そいつらとは違う方向で愚かだよ。力が無いのに助けようとして、結局できなくて···けど、俺はそいつらとは違うから、そいつらの心は解らない」
アンは武龍の顔面を殴り飛ばし、武龍は仰向けに倒れる。
武龍「俺は···俺で、アンは···アンだ···本人じゃないから互いの心は解らないし、見てるものも違うと思う。けど、そいつらみたいな奴を···止めれるようにしたりは···できる···」
アンは武龍に馬乗りになる。
武龍「ごめんな···俺、伝えるの下手でさ···」
アンは右手の拳をゆっくりと振り上げる。
武龍「ただ、アンは···アンだ。もう、"兵器"じゃない···それに、アンの体にその汚染物質があるなら···俺はもう、汚染されてるだろ?」
アンは拳を武龍顔の横に打ち込む。
アン「あなたに何が···何が解るんですか?」
武龍「大丈夫だ···もう、大丈夫なんだよ···ここには、草薙や瑞希達がいるし、愚かだけど俺もいる···もう誰にも、兵器になんて、させない···から···」
そう言うと、武龍は意識を失い、アンは武龍に頬に手を当てる。
アン「暖かい···あなたの言葉が本当なのか、確かめさせてもらいますよ?」
そして現在(第10話時点)···
アン「武龍様、ティータイムにしませんか?」
武龍「良いけど、なんでいつも様付け?」
アン「なんとなくですよ。ではこちらに」
アンは、武龍に対しては笑顔(といっても微笑みだが)を見せるようになっていた。
読んでくださり、ありがとうございます!
いくつか番外編が続きますがご容赦ください!
●シーウォーク
海上を進むためだけの性能を持つ外骨格。艦娘のように海上に浮くことができるが、装甲は無いに等しい。
●ハイレーザーライフル
通常のレーザーライフルよりも火力を高めたもの。
しかしその代わりに、重量やエネルギー消費などの負荷が高くなっている。
●レーザーライフル
レーザーを発射するライフル。
単発の威力はライフルより高いものの、連射力はライフルより低い。
また、一部のレーザーライフルはチャージを行うことで威力を上げることが可能となっている。
●WH04HL-KRSW
別名『初期カラサワ』。この時点ではまだ完全な再現には至っていないため、見た目と火力、重量は同じなものの、1発撃つ度に液体窒素での冷却が必要となる。