そして吹雪が舞う港町で、新たな作戦が幕を開ける。
世界の情勢は悪化の一途を辿っており、かつて攻略したスリガオ海峡は、今では深海棲艦による攻勢の前に再び奪われかけている。
各国は互いを疑い、上辺だけの協力をしているだけがほとんどだった。
また、人類解放軍と深淵教の協力者は政界内部にもおり、政治家の一部は自身の保身と儲けのため、彼らの手を取っていた。
そしてそれは更なる渾沌と犠牲を生んでしまっている。
何も知らない民間人は犠牲となり、提督達や艦娘達も助けられる人々を助けられずにいた。
しかし1度手にした甘い蜜を手放せるはずもなく、犠牲は増え続けている。
だが甘い蜜を吸う政治家だけではなく、未来のために行動している政治家もいた。
···が、その大半は現状に焦っており、特にレイヴンズ·ネストに対しては今後の処遇を議論することも多かった。
議員A(男性)
「レイヴンズ·ネストを放っておけば、この国の未来に関わります!」
議員B(男性)「例えばどのように?」
議員A「彼らの技術が他国に渡れば、我々は技術力で大きく引き離され、外交や国防で不利になります!」
議員C(女性)
「簡単なことです。奴らを全員逮捕してしまえば良いのです」
議員D(男性)
「あの戦力を相手にどうやって?注意すべきなのはミグラントだけでなく、ラングレーもとい高速軽空母水鬼もいるのだぞ?それに、他に隠し持ってる戦力が他にもあるやもしれん」
日本の軍事会議にて、政府高官は議論を重ねているが、その内容に現首相である創平は頭を悩ませていた。
その様子を見た議員B、『
平二「レイヴンズ·ネストの技術力は確かに魅力的だ。しかし、レイヴンズ·ネストは雇われの身とはいえ我々を何度も助けた。スリガオの時なんか、誰が依頼したわけでもなく来てくれた」
議員C「何が言いたい?」
平二「我々はレイヴンズ·ネストに借りがある。それは民衆から見ても明らかだ。それを仇で返せば、我々もただではすまないだろう」
平二の意見に、議員の多くは唸るか黙り込む。
すると、創平はようやく口を開く。
創平「皆さん···技術を得ようとする前に、まずは借りを返すのが先です。そして、レイヴンズ·ネストの件よりも優先せねばならない課題は山積みでしょう?」
依頼主:ロシア海軍所属:レヴォツィ·ノーマッド大尉
目標:港町『プエロラリア』の奪還
作戦開始時刻:午後3:00
報酬:700000ドル
小島にある港町プエロラリアが深海棲艦に占拠されてしまった。目標の地点より小さな小島と本土を橋で繋いでいたが、その橋も破壊されてしまっている。
この小島は北方棲姫のいるエリアに近いこともあり、防衛線の一角を担っていた。
しかし、先日ヨーロッパ付近から移動してきた姫級を帰艦とする戦力によって部隊は壊滅してしまった。
なお、こちらの戦力は別方向から攻撃し、そちらの艦隊と共に挟撃する作戦になる。
では、良い返事を期待している。
レイヴンズ·ネストへの世間からの印象は割れており、支持者からは資金援助の申し出がよく来ていた。しかし調べたところ、いかがわしい団体などだったため、断っていた。
反対派からは有形無形の嫌がらせや悪質な妨害を受けており、草薙達は呆れ果てていた。
正義感に駆られただけではなく、単にストレス発散を目的として妨害行為を行っている者も多かったのだ。
しかし武龍達は基本的には無視しており、今回も依頼を受けて飛び立った。
吹雪が舞っている作戦エリアに着き、ストークDから投下される。
編成は武龍、赤城、陸奥、五十鈴、大潮、青葉であり、武龍の機甲兵装はレオを選択してきていた。
今回は港町であるが、同時に小島でもある。そのため、狭い場所でも行動しやすいレオにしてきていた。
投下された武龍達は互いをカバーしつつ、岩陰に隠れながら進んでいく。そして深海棲艦を確認すると攻撃を開始した。
正面は陸奥と青葉が、五十鈴と大潮は両側面から攻撃していく。赤城は陸奥と青葉の後方から艦載機を発艦させ、武龍は屋根伝いに上から奇襲をかける。
深海棲艦はプエロラリア内に分散して巡回しており、武龍達の戦闘音に気づいた深海棲艦達は武龍達のいる方向へ向かう。
そして、それと共にレヴォツィの艦隊も攻撃を開始し、深海棲艦の戦力はより分散される。
武龍のショットガンから放たれた散弾が駆逐イ級の頭部を穴だらけにし、陸奥の砲撃が2体の重巡リ級を纏めて吹き飛ばし、青葉の砲撃で破壊された建物の瓦礫が駆逐イ級に降り注ぎ、動けなくなったところに武龍のバトルライフルでトドメを刺す。
側面からは五十鈴と大潮の砲撃により、撤退しようとした重巡リ級eliteが撃破される。
赤城は爆撃しつつ深海棲艦の旗艦を探していると、姫級を確認する。
その姫級は欧州水姫であり、武龍達が戦っている様子を山頂から俯瞰していた。
赤城「皆さん!欧州水姫が島の山頂で確認されました!」
レヴォツィ《島の頂上···プエロラリア公園か!》
瑞希《皆さん、山頂に向かってください!》
レヴォツィ《よし、ならお前達は他の深海棲艦を山頂に近づけるな!》
しかし欧州水姫は山頂から飛び降り、武龍達のいる広場に着地した。
欧州水姫「貴様達ハ···ココデ沈ムノッ!ココデェッ!」
武龍達が構えると、周囲に大量の爆撃が行われる。
欧州水姫の後方には『欧州装甲空母棲姫』がおり、振り向いた欧州水姫に対して頷き、欧州水姫もそれに応えて頷く。
すると欧州装甲空母棲姫は随伴艦を連れて去っていき、それと共に海中から大量の深海棲艦が現れ、青葉達は行く手を阻まれる。
しかしそれにより、武龍と欧州水姫は1対1の状況になる。
武龍「なるほど、タイマンってことか。上等だ!」
武龍はバトルライフルとショットガンを構え、欧州水姫も主砲を構える。
武龍と欧州水姫は同時に動き出し、欧州水姫は武龍の撃ったバトルライフルの砲弾を主砲の一撃で相殺し、武龍はタイミングをずらしてショットガンを撃ち、欧州水姫は怯む。
欧州水姫「ウッ!」
怯んだ欧州水姫に武龍はQBで接近し、バトルライフルを構える。しかし欧州水姫はバトルライフルを左手で外側に弾き、右腕と一体化した副砲を武龍の左の二の腕に撃ち込む。
そのまま欧州水姫は距離をとる。
武龍(あの両腕···!)
よく見ると、欧州水姫の両腕は二の腕から先が義手になっており、欧州水姫は主砲を構える。
武龍は主砲の発射直線に左へQBして回避し、欧州水姫の右側の主砲にバトルライフルを撃ち込む。
欧州水姫は旋回しつつ距離を離し、主砲を別々に撃つことで連射してくる。
武龍は左右に連続でQBすることで回避しようとするが、欧州水姫は主砲の砲撃に副砲の砲撃を混ぜていたため、副砲の砲弾は武龍の左足のシールドに命中する。
武龍「危ねっ!」
武龍はジャンプしてから建物の壁を蹴り、上方からすれ違い様にバトルライフルとショットガンを左側の主砲に同時に撃ち込む。
更に、振り向いた欧州水姫に武龍はショットガンを撃ち込む。
欧州水姫「アハハハハハ!ヤルジャナイノォ!」
ショットガンを撃った距離が悪く、欧州水姫の頭部装甲を破壊し、胴体にはあまりダメージは与えられなかった。
そして欧州水姫の頭部装甲は地面に落ち、素顔が露になる。
欧州水姫「デモネェ···マダマダ足リナイ!足リナインダラカァ!」
その頃青葉達は他の深海棲艦と交戦しており、青葉に接近しようとした重巡リ級eliteの懐に五十鈴が潜り込み、至近距離から両手の主砲を同時に撃ち込む。
陸奥は2人の背後を守り、周囲に同時砲撃を行う。
青葉「ありがとうございます!」
五十鈴「まだ残ってるわ!」
陸奥「後ろは任せて!」
レヴォツィの艦隊も負けておらず、『ガングート』が戦艦タ級に向けて主砲を発射した直後、ヴェールヌイがガングートの主砲を踏み台にして大きく飛び上がり、大破した戦艦タ級の顔面に砲撃して撃破する。
レヴォツィ《よし、ここは突破した!進め!》
ガングート(レヴォツィ艦隊所属)
「よし、良いぞ!畳み込め!」
赤城の方では、接近してきた深海棲艦は大潮が抑え込んでおり、赤城は空母ヲ級flagship2体との航空戦を行っている。
先程まで航空戦は赤城単独だったのだが、軽空母ヌ級flagshipを撃破したレヴォツィ艦隊所属の『龍鳳』も航空戦に加わっている。
欧州水姫と武龍の戦闘は激しさを増し、互いの攻撃で2人は同時に仰け反る。
武龍「ガハッ!」
欧州水姫「イッタァ···アッハハハッ!ヤル···ナァ!デモ、ココマデ···ナンダカラァッ!」
しかしその時、プエロラリアは大量の量産型に包囲される。包囲した量産型には人類解放軍のエンブレムがペイントされていた。
人類解放軍幹部
《我々はこれより、プエロラリアを占拠する深海棲艦と人類の進歩を阻む艦娘を撃滅する!行けぇ!》
大量の量産型が同時に攻撃してきたため、既に消耗していた深海棲艦は次々に撃破されていき、青葉達やレヴォツィの艦隊にも被害が出てしまう。
レヴォツィ《貴様らっ···!》
レヴォツィは拳を机に叩きつけ、レヴォツィの艦隊は守勢に回らざるを得なくなる。
青葉達も互いを援護する事を優先せざるを得なかった。
吹雪がより一層強くなる仲、人類解放軍の乱入に気づいた武龍と欧州水姫は互いを見合わせる。そして同時に背を向け、互いの背後を守り合う。
推奨BGM『Sand Blues』(AC4より)
武龍「一時休戦と行くか」
そう言う武龍は左足のシールドが破壊されており、他の部位の損傷も大きいため、機甲兵装は中破していた。
欧州水姫「エエソウネ。コンナノ···認メナイ!」
対する欧州水姫も中破しており、艤装上部の主砲は破壊されており、右腕も肘から先が破壊されている。
周囲からは量産型が押し寄せ、その中にはJ型も混じっている。そして2人は同時に攻撃を開始した。
武龍のショットガンで刀を振りかぶったS2型が穴だらけにされ、欧州水姫の主砲で2体のL1型が薙ぎ払われる。
更に、欧州水姫の死角から現れたS2型に武龍はバトルライフルを向けて引き金を引く。
大通りからS1型2機とS2型2機が現れるが、武龍は正面のS2型2機に小型ミサイルをロックオンして発射する。
撃破されたS2型の両側からS1型が攻撃しようとするが、欧州水姫の砲撃により撃破される。
すると今度は、武龍と欧州水姫を囲みつつ旋回するようにJ型が4機現れる。
武龍はバトルライフルとショットガンを同時に撃ち、右側のJ型に損傷を与え、左側のJ型にはQBを利用したタックルをする。
欧州水姫は左右の主砲をJ型の足元に撃ち、2機のJ型の体勢を同時に崩す。
そして左側のJ型に接近し、艤装で噛み砕こうとする。しかし反対側のJ型の砲撃を右側の艤装に受けてしまう。
武龍は小型ミサイルをJ型に1発ずつ発射し、民家の壁を蹴ってJ型の上を取る。
そして近い位置にいるJ型にショットガンを撃とうとするが、別方向から左腕を撃たれてしまい、ショットガンを手放してしまう。
L1型とS1型が複数、青葉達のいる場所を突破してきていた。
しかし武龍はバトルライフルをJ型の顔面に向け、欧州水姫は両側の主砲を仁王立ちしてJ型に向け···
武龍「沈めぇぇぇぇぇ!」
欧州水姫「沈メェェェェェ!」
同時に轟音を響かせた。
激戦の末に全ての量産型を撃破すると、武龍と欧州水姫は向かい合う。
互いに満身創痍であり、互いに武装を全て失っていた。しかし欧州水姫は格闘戦の構えを取る。
欧州水姫「決着ヨ···」
武龍「···ああ」
既に吹雪は止み、ちらほらと雪が降っているだけだった。武龍は左腕の装甲を破壊されているため、互いに片腕と脚だけで戦う。
武龍が欧州水姫の顔を殴りつけ、欧州水姫は反動を活かして裏拳で武龍の顔面を殴りつける。
武龍の頭部装甲は失われてはいないものの、衝撃は入っている。
武龍は欧州水姫の顔面に再び殴りかかるが、欧州水姫はそれを避けて腹部の大きくヒビの入っている部位へ、抉り込むように殴りつける。
武龍「グフォッ!」
武龍は吐血するが、拳を欧州水姫の脳天に叩き込む。
顔を上げ、拳を振りかぶった欧州水姫の目には、涙が浮かんでいた。
欧州水姫には、武龍が輝いて見えている。
欧州水姫「私ダッテネェ···本当ハ、輝キタカッタ!」
欧州水姫の拳が武龍の頭部装甲のメインカメラの無い右側に打ち込まれ、大きく損傷する。
再び欧州水姫は武龍を殴ろうとするが、武龍は右腕で防ぐ。しかしそれにより、右腕の装甲は破壊されてしまった。
欧州水姫には、消えることの無い武龍の輝きが眩しく、焼けただれるように思えた。
欧州水姫「イツマデモ···コノ海、駆ケ巡ッテ!」
欧州水姫の拳を武龍が受け止める。武龍の右腕の装甲は破壊されているものの、駆動系のパーツと手の装甲は残っていた。
欧州水姫は膝蹴りで武龍の腹部の装甲にダメージを与え、破壊された装甲がボロボロと剥がれ落ちる。
欧州水姫「期待通リ二、私ハァッ!」
武龍と欧州水姫は同時に拳を振りかぶり、同時に互いの顔に拳が打ち込まれる。
そして互いに仰向けに倒れ、ぐったりとする。
欧州水姫と武龍は空を見上げている。
いつの間にか雪は止み、綺麗な青空が視界に映っていた。欧州水姫の目から涙が先程より多く流れ、欧州水姫の体は光の粒となっていく。
欧州水姫「コれハ···光?そうカ···そうね···」
欧州水姫の声は穏やかで、武龍は無言で空へ登っていく光の粒を眺めている。
欧州水姫「·····ありがとう」
欧州水姫の体は完全に光の粒となり、空へ消えていった。
武龍「···またな」
意識を失った武龍を陸奥が抱き抱え、ストークDのコンテナに連れていく。
レヴォツィ《レイヴンズ·ネストの諸君、感謝する》
瑞希《こちらこそ、あの決闘に手を出さないでもらってありがとうございます》
レヴォツィ《戦士の決闘に、手は出せんさ···それに、安らかに逝けたのなら、それだけで嬉しいさ》
そう言うレヴォツィの表情は安堵していた。
その後、今回乱入してきた人類解放軍の構成員はどうにか逮捕できたものの、ここまでの数の量産型を入手できた経緯については不明のままであった。
読んでくださり、ありがとうございます!
今回、スリガオ攻略戦の際に撤退していた欧州水姫と決着が着きましたが、どうだったでしょうか?
●秋山 平二
白髪混じりの黒い短髪で身長167cm、62歳で7月24日生まれ。男性。
いつも冷静な防衛大臣であり、主に国防の観点から意見を言っている。しかし多くの意見とは違う意見を言うことが多いため、彼を嫌う政治家が一定数いる。
ちなみに、レイヴンズ·ネストに関しては敵とも味方とも思っていないが、敵対するつもりもない。
●レヴォツィ·ノーマッド
髪型はブロンドのオールバックで身長180cm、45歳で7月10日生まれ。男性。
ロシア海軍の大尉であり、周囲の情勢や敵にも味方にも真剣に向き合い、どうにかして互いに被害が少ないように戦争を終わらせられるか考えている。
艦娘や部下達からの信頼は厚く、重要な作戦を任せられることも多い。
余談だが、人知れずとある深海棲艦をドロップさせた人間でもある。
●プエロラリア
ロシアの架空の港町。
本土→小島→プエロラリアと2つの橋か船を用いて行くことのできる小島にあり、深海棲艦が現れてからは防衛線の一角を担っていた。
元は近海から良質な魚が獲れたりしており、漁業が盛んで評判だった。