?「結局あんなことになったね。まあ、頑張ってね。君ならできる、幸運を」
武龍が目を覚ますと、小さな小島の砂浜寄りの木陰に寝かされていた。また、武器は左隣に置いてあった。
右隣には空母棲姫改が横たわっており、意識はまだ戻っていないようだ。
武龍「ここは···」
武龍が起き上がると、機甲兵装に着いていた妖精達が集まり、心配そうな顔をしている。しかし一部は周囲を警戒しており、森の奥からあの左頬の抉れた深海棲艦が現れる。
深海棲艦「起きたようだな」
武龍「お前は···」
深海棲艦「礼の1つでも言ったらどうだ?」
謎の深海棲姫は武龍の前に果物の入った網を置き、近くの焚き火を指差す。
焚き火には串に刺した魚が火にかけてあった。
深海棲艦「もうじき焼ける。焼けたら果物と一緒に食べてろ」
そう言うと深海棲艦は森の奥に戻っていってしまう。
武龍「おいっ···はぁ、なんなんだ」
武龍は空母棲姫改を見る。やはりうなされており、「沈ンデイク···皆、皆···」と寝言を言っている。
すると妖精が話しかけてくる。
妖精A「本当に、助けるつもりなんですね···」
武龍「ああ。それと、意識はまだ戻らないか?」
妖精B「頭部にはそんなにダメージ無いし、傷も再生してきてるから多分、あと1時間以内には目が覚めると思う」
武龍「解った、ちょっと見ててくれ」
妖精C「どこへ行くのです?」
武龍「あの深海棲艦に礼を言わなきゃいけない」
武龍は頭部装甲を脱ぎ、謎の深海棲艦を追って森の奥に入っていくと、謎の深海棲艦は小さな滝のある泉の前にある岩に座っていた。
謎の深海棲艦は白いボディースーツを着ており、肘から先と脚の部分の色は黒いが、白い部分は膝の部分まである。しかし太ももの左右はスリットのように黒くなっている。
また、手の甲の骨部分と指の関節と爪は白い装甲となっている。
武龍「あの···」
謎の深海棲艦「なんだ?」
武龍は謎の深海棲艦に頭を下げる。
武龍「助けてくれて、ありがとうございました!」
謎の深海棲艦「フン、敵に対しても礼を言えて、しかも頭を下げられるとは、中々良いじゃないか」
謎の深海棲艦は武龍に近づき、突然武龍を抱き締める。
謎の深海棲艦「(深呼吸)···立派に、ここまで来たな」
謎の深海棲艦は武龍から離れると、自分の名を名乗る。
謎の深海棲艦「私の名は『深海鴉棲姫』。こんなナリだが、鴉の名を持っている」
武龍「えっと、俺は···」
深海鴉棲姫「武龍、だろう?」
武龍「なんで、俺の名を?」
深海鴉棲姫「君の事は知っている。ずっと前からな···詳しいことは別の時に話そう。それより、空母棲姫改はそろそろ目が覚めるんじゃないのか?」
その頃、拠点では会議が行われていた。
ベス「AL海域でも敗退ですか···」
ラン「仕方ねぇよ···まさか後方から『装甲空母姫』と『北方水姫』が来るんだからよ···まあ、あっちはMI海域より順守守ってなかったから、余計にキツかったんだろうけどよ」
ティス「ちくしょう···武龍···」
アン「武龍は生きていると···私はそう信じています」
草薙「今頃は向こうも体制を整えているでしょう···今は待ちましょう···獲物を喰らうのは今ではありません···」
リプ「今すぐにでも行ければ···」
ピス「助けに行く事も可能ですが、間違い無く姿を晒しますし、それに···」
ラビィ「言わないでくださぁい···」
ジュリアス「にしても、中国がなんの声明も発表していないのが気になるな」
空母棲姫改が目を覚ますと、焚き火が焚かれ、串焼きにしている魚と···武龍がいた。
武龍「起きたか···具合はどうだ?」
空母棲姫改はすぐに戦闘態勢に入るが体が痛んで座り込み、攻撃できなかった。
武龍「君を攻撃するつもりはない···ほら、焼けたぞ」
武龍は焼き魚を手渡す。空母棲姫改は匂いを嗅いだ後、物凄い勢いで食べる。
空母棲姫改「ナゼ助ケタ?」
武龍「君はあの時泣いてただろ?それに、あの君を最後に囲んでた艦隊のやり方には頭に来てな···まあ、最後には君の艤装に頼まれたんだがな」
空母棲姫改は小さなため息をつく。
空母棲姫改「ソウカ···ソレニハ感謝スル···ナラバサッサト行ケ。今ナラ手ハ出サナイ」
武龍「そういうわけにもいかない···放っておけない性分だからな」
空母棲姫改「オ前達ハ敵ダ!」
武龍「敵だろうと関係無い!俺は放っておけないし、何より戦争が嫌いだから···終わらせたいから俺は余計に放っておけないんだよ!」
空母棲姫改「コノ偽善者ガ···」
武龍「偽善でも構わない!俺は相手を助けられるならそれで良い!」
空母棲姫改「モウイイ···モウイイ出テ行ケ!コノ海カラ出テ行ケ!オ前ノ助ケナンカ イラナイ!人間ニ助ケラレル クライナラ、アソコデ 沈ンダホウガ マシダ!」
空母棲姫改は無理矢理艦載機を発艦させる。しかしその攻撃は武龍の頭ではなく胴体に命中した···というより武龍は避けなかった。武龍は無言で近づいて空母棲姫改を抱き締めた。
武龍のその行動は、不思議と自然に体が動いていた。
武龍「だったらなんであの時泣いてたんだよ!なんで苦しんでたんだよ!寝てる時になんでうなされてんだよ!」
一瞬、空母棲姫改は暖かさを感じた。
空母棲姫改「ハなせ···コノ!」
武龍「俺は誰かに苦しんで欲しくないんだ!誰かが泣いて欲しくもないんだ!」
空母棲姫改「離せト イッテいるだろウ!」
武龍「誰も信じられないのなら俺が信じる!苦しみを溜め込むなら、俺に吐き出せ!沈みそうな時はまた俺が助ける!苦しくて、泣くなら俺が守ってやる!」
しばらくすると空母棲姫改は抵抗を止め、静かになる。
それから空母棲姫改はポツリポツリと話し始めた···
自分が深海棲艦として産まれた時の事···
この海で沈んだ4隻の空母の集合体であること···
そして沈んだ時の事を未だに夢に見る事を···
そして話す度に右側頭部の角と手の赤い爪にヒビが入り、ボロボロと崩れ落ちていく···
全て話終える頃には角と赤い爪はすっかり無くなっていた···
空母棲姫改「私の事は···『ミッドウェー』と呼んでくれ···それで、お前はこの戦争を終わらせたいのだろう?」
武龍「ああ···まあ、傭兵っていう微妙な立場だけどな」
ミッドウェーは顔を上げ、武龍の顔を見る。
ミッドウェー「···なら腹を括れ。お前を拠点まで案内する」
武龍「良いのか?」
ミッドウェー「もう吹っ切れた···で、行くのか?行かないのか?」
武龍「もちろん行くさ」
2人が立ち上がると、木の陰から深海鴉棲姫が現れる。
深海鴉棲姫「話しは纏まったようだな」
ミッドウェー「お前はっ!」
ミッドウェーは構えるが、深海鴉棲姫は飄々とした様子である。
深海鴉棲姫「おいおい、私はお前達2人をここまで運んだんだぞ?」
ミッドウェー「お前が?」
深海鴉棲姫は砂浜へ出つつ果物を丸かじりする。
深海鴉棲姫「私は無駄な殺しはせんよ。それに、武龍が行くなら私も行くまでだ」
ミッドウェー「···お前にとって、武龍はなんなんだ?」
深海鴉棲姫「さぁな、また今度話すさ···さぁ、行こう。時間はあまり無いぞ」
そして3人は海へ出て、赤い海を航行していく···しかしその海は少しだけ、青みを取り戻しているようにも見えた···
妖精A(武龍···あなたなら、成し遂げられるしれませんね···私達の願いを···)
読んでくださり、ありがとうございます!
今回から新しいオリジナルの深海棲艦が参戦しますが、よろしくお願いします。
●オリジナルとノーマル
深海棲艦の全ての種類にオリジナルが存在しており、他の同種とは比べ物にならない実力を持ち、特にオリジナルの鬼級姫級と戦うということは『その海域そのもの』と戦うに等しい。
ちなみに現在オリジナルは2人を除いて全て生存しており、そのほとんどはある海域に集っている。
また、そのオリジナルの1人は今はラングレーとなっている高速軽空母水鬼である。
●ミッドウェー(空母棲姫改)
空母棲鬼、空母棲姫のオリジナルであり、戦いを繰り返して自らを進化させた。
MI海域で沈んだ4隻の空母の集合体であり、その分の実力もある。
しかし、今回は武龍のバルバロイと同じオリジナルであるラングレーなどの様々な要因により、本領を発揮できなかった。
●深海鴉棲姫
白い3つ編みのツインテールで身長160cm、肉体年齢は17歳。
白いボディースーツを着ており、肘から先と脚は黒いが、白い部分は膝まである。しかし太ももの左右はスリットのように黒くなっている。
また、手の甲の骨部分と指の関節と爪は白い装甲をとなっている。
同じ深海棲艦からも危険視されている深海棲艦であり、艤装は刀1本のみだが、極めて高い戦闘能力を持っている。
しかし、なぜ武龍事を知っているかは現時点では不明である。