そこから始まる、新たな物語。
武龍は笑顔で砂浜で深呼吸をし、潮の匂いを胸一杯に吸い込む。艦娘や深海棲艦達にとっては嗅ぎ慣れた匂いだが、武龍にとっては過去から解放されたことで、まるで初めてのような感覚になっていた。
そして、その笑顔は晴々としていて清々しかった。
その笑顔を見た青葉達は安心して微笑む。
青葉「やっと、本当に笑えてますね」
ミッドウェー「ああ。とても良い笑顔だ」
今の武龍にとって、話す、走る、考える、遊ぶ、食べる、戦う···全てが新鮮であり、光輝いて見えている。
誰かともっと話したい、走る時の爽快感、考えることの楽しさ、遊びの楽しさ、食べ物の美味しさ、戦いの緊迫感···これまでほとんど感じられなかったことが、ハッキリと感じることができている。
それは武龍にとって、嬉しくて仕方がなかった。
マザーウィル
「フフッ、まるで無邪気な子供ね」
ジェット「幼い頃から、子供らしい事はさせてもらえなかったんだ。はしゃぐのも当然だろう」
そして武龍の心には、あるものが芽生え始めていた。輝いて見えるものの中に、艦娘や深海棲艦、AFやACも含まれていたのだ。
武龍は初めて人に対し"綺麗"、"かわいい"、"かっこいい"といった感情を感じていた。
武龍「なんだか、皆も輝いて見えるな」
武龍は機械や本が好きだった。反対に人は苦手だった。
機械は扱いを間違えなければ守ってくれる。
本は自分を傷つける事無く、知識や希望を与えてくれる。
反対に、人は自分を徹底的に傷つけてくる。過去に出会った男はおそらく傷つける事はしないだろう。しかしそれ以降は永遠と傷つけられるだけだった。
しかし兵器に魂が宿り、人の肉体を得た艦娘が現れた。艦娘は兵器か人間か、学者やマスコミなどは議論を重ねていったが、武龍はどちらでも良かった。
ただただ、助けてほしかった。あの地獄から助け出し、壊してほしかった。
あの日、武龍のいた地獄を爆撃して破壊したのは深海棲艦だった。
あの日、武龍を守ってくれたのは艦娘だった。
その日から、武龍の心にびっしりとできた錆びにヒビが入った。
今では、その錆びは消え去っている。
武龍の心が晴れやかになり、深海鴉棲姫も嬉しく思っていた。深海鴉棲姫な自身の左隣にいたコアを見る。
コア「なんだ?」
深海鴉棲姫
「素晴らしいとは思わないか?深海棲艦は負の感情から生まれた。私は元から負の感情の塊だった。艦娘は兵器でも人でもない存在として生まれた···」
走り回って疲れた武龍はベンチに座り、ミッドウェーと共におにぎりを食べている。
深海鴉棲姫
「しかしそれが今では人々を繋ぎ、それに導かれた少年は艦娘と深海棲艦と共に戦争を止め、過去に苦しめられていた少年を救った···これはとても素晴らしい事だとは思わないか?」
コア「確かにそうだな···」
武龍はミッドウェーを見て礼を言う。
武龍「ありがとう···俺があいつらと再会した時に、青葉とアンと一緒に助けてくれて」
ミッドウェーは何も言わず、ただ武龍の頭をわしわしと撫でる。そして2人は水平線を眺める。その景色は清み渡り、波も静かだった。
武龍はもう、過去には苦しめられない。
まるで時が止まったような心は、新しい風と海によって背を押された。
武龍は進み始めた。
その道はもう1人ではないと、武龍はハッキリと認識できたのだから。
読んでくださり、ありがとうございます!
今回は武龍の心境の変化を描いてみましたが、どうだったでしょうか?