「た、頼む!殺さないでく」
パァン!!
「……依頼完了」
最高級ホテルの豪華な部屋、その中で一発の銃声が鳴り響く。
脳天から血を流しずるずると壁に凭れながら崩れ落ちていく男から銃口を下ろし俺はスマホで繋がった依頼人に告げる。
俺の名はアルケ=パラケル。この超人社会において暗殺者の仕事を行っている。今夜もまた一人、命を奪ったな。
スマホを操作し別の電話番号を入力する。
『はいはーい、【アルケミスト】ちゃんだね?』
相手はすぐに応答した。
「そうだ、【清掃屋】。死体の処理は頼んだぞ」
『了解でーす』
そういうと電話の相手――【清掃屋】は電話を切る。
それにしても……下らない相手だったな。表の顔は政府与党の議員、裏の顔は人身売買のリクルートを行っているクズ、少しは殺しがいがありそうだったが護衛を含め脆弱すぎる。
戦闘に長けたヒーローを護衛にしておけば別だっただろうが……まぁ、そこはどうでも良いか。
ガチャリと重厚なドアを開け、護衛の死体が転がる廊下を歩いていく。
「死ね!!」
おや、生き残りがいたか。
背後から発砲、だが弾丸は当たることなく空中で霧散する。
「生憎と、俺の個性の前で機械文明は無意味に等しい」
決死の攻撃が届くことなかったことに愕然する護衛の眉間に三発、俺のリボルバーライフルから放たれた弾丸が撃ち抜く。
男がずるずると落ちていったのを確認した後、エレベーターのホールに向かい革靴に付着した血液を水で洗い落とす。
俺の個性は【錬金】。物質を作り替え形を変える個性。言うなればそこら辺の空気から武器を取り出せる個性だ。この個性の応用で空気から銃や銃弾を、弾丸を霧(水)に変える事ができる。作り替える速度はコンマ一秒にも満たない。
無論、欠点はある。まず周りに物質がなければ使えない。【錬金】する際に具体的なイメージがなければ使えず、釘一本も見落としてはならない。
一つ目は兎も角二つ目は厄介だ。何せ戦闘時でも一切のミスが許されない。だからこそ反復練習で常に寸分違わない銃や弾丸を作れるようになっているのだがな。
エレベーターが来るまでスマホを弄り、表の友人たちの会話を見る。
どいつもこいつも、下らない世間話やゲームの話ばかり、一つ壁を挟んだ部屋で何が起きているのか何て誰も考えない。……考えないからこそ、俺らのような個性犯罪者が存在できるのだろうがな。
「暗殺業を辞める……何てことは無理だな」
俺はそれしか生き方を知らないし平凡で退屈な生活何て興味がない。ある意味、この裏社会を気に入っているのだろう。
「それにしても……また髪が白くなってるな」
ホールに備え付けられた鏡に映る自分の姿を見ながら髪の毛を人差し指で弄くる。
何故か分からないが、俺は生まれつき髪が白く目が赤い。所謂アルビノだ。この超人社会でも白髪は目立つため何時もは黒染めに黒のカラコンをしているが……また抜け落ちてきているのか。とりあえず理髪店で黒染めして貰わないとな。
「それと……そろそろ進路を決めないとな」
俺の表の顔は私立聡明中学の三年生。聡明中は進学校でその中でも常に上の中くらいの成績を納めているから大体の学校には行けるが……親を納得させれる程度には良い学校を選ばないといけないというのは面倒でしかない。
親の稼業は姉貴や兄貴が継ぐだろうしだからこそ俺は日本で独り暮らしできる。それなのに親父らの顔を立たせないといけない……死んだ事にして自由に動いた方が得策か?
「雄英……か」
スマホを弄り集めている資料の一番上にある高校の名前を呟く。
国立雄英高等学校。国内でも高い偏差値を必要とする名門だがそれ以上に有名にしているのはプロヒーロー養成カリキュラムが履修できるヒーロー科だろう。
何せ、この学校で出たヒーローはNo.1ヒーロー『オールマイト』や事件解決率No.1『エンデヴァー』等の有名なトップヒーローがいる。そのためヒーロー科の倍率は……確か300だったか。とんでもないことになっている。
まあヒーロー何て顔が知られやすい職業何て面倒な事この上ないから普通科かサポート科、経営科辺りか。
……親父らの顔を立てるため、親父らの仕事がヒーロー関連のコスチュームやサポートアイテムの仕事だしサポート科にすれば問題ないか。サポートアイテムはそこまでだがコスチュームに関してはその道のプロである姉貴に教わっているしな。
「そういえば、飯田の野郎が雄英に向かうとか言っていた気がするな」
やってきたエレベーターに乗り下に降りるボタンを押したところでふと学友の事を呟く。
あいつの家は代々ヒーロー稼業だし確かあいつの兄はプロヒーロー、納得できると言えばできるな。
とりあえず、親父と先生を説得するか。本当に面倒だ。