「……合格か」
雄英からの合格通知を簡素な部屋の中で見た後俺は通知をファイルにしまう。
最低限の家具しか置いてない部屋の中でスマホを動かして依頼の情報を確認する。
今回の依頼人は一般人、何でも言われのない罪で嫁が捕まり警察署内で殺されたらしい。嫁が秘密裏に残した遺言書からクロを見つけだしたが自分では殺すことが出来ないため情報屋――【コンセント】に依頼したらしい。
ターゲットは警視総監。表は人当たりの良い好好爺だが裏では売春の斡旋を行っている。その事を嗅ぎ付けた記者を言われない罪を着せて捕まえ警察署内で毒殺を依頼している。
「外道だな」
少なくとも、一般人から見れば、となるが。裏の社会にはこいつ以上の悪人狂人何ていくらでもいる。こいつなんてまだ甘い方だ。
だが、依頼は依頼、何があっても殺させて貰うぞ。
クローゼットに掛けておいた黒いコートを取り出して着るとアパートから出て街を歩く。
歩きながらスマホを動かして【コンセント】と連絡をとる。
『おや、【アルケミスト】。どうかしたのかい?』
「警視総監の住所」
『確か港区の高級マンションの最上階に妻子と共に住んでるよ。いやー記入ミスがあってすまないね』
流石にターゲットの住所を調べていない程ではないか。
電話を切りスマホをポケットに仕舞い港区に向けて人間観察をしながら歩く。
表の人間と裏の人間の区別はつく。匂いと言うのだろうか、裏の人間には独特な雰囲気を持っている。どんなプロでもこの雰囲気だけは隠すことは不可能のため見分けるのは用意だ。
実際、少し歩いただけでも運び屋、空き巣のプロ、詐欺師と言った小物から同業者まで様々な人間が歩いているのが分かる。こういった僅かな観察が暗殺に大きく関わってくることもあるため怠る事はできない。
「おや、アルケ君!!」
「おお、飯田か」
人間観察をしながら歩いていると背後から声をかけられて振り返ると腕を直角に曲げて歩いてくる青年がやってくる。
飯田天哉、俺の学友であり雄英のヒーロー科を受験していた筈だ。
「合格、したか?」
「ああ!アルケ君の方は?」
「合格、メカニックは得意だからな」
家の事情もあるしな。
「おめでとうアルケ君!君も雄英に通えるんだね」
「まあな。尤も、お前とは科が違うがな。……そう言えば、受験の時に面白いヤツがいたな」
確か名前は……発目明だったか。俺が自作で作った腕時計を『ドッ可愛いベイビーですね!』といきなり話しかけてきたのだ。
まあその後は意気投合、発目はサポートアイテムメインの、俺はヒーローコスチュームメインの視点を持っていたから有意義だった。
「そうか。君にもいたんだな」
「飯田にもいたのか?」
「ああ、まあな。それじゃあ俺は教科書を買いに行ってくる」
「おう」
別れを告げて立ち去る飯田を見送りさっさと本来の目的のために歩きだす。
あれがヒーロー科に、ねぇ……。真面目過ぎると言うか、もう少し肩の力を抜いて生きていた方は良いと思うのだがな。
「さて……うん?」
このピリピリとした感じ……まさか。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
「キャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
やっぱり、ヴィランかよ。
大通りを遠吠えと共に四足歩行で走る巨体の男を見た瞬間様々な人たちが悲鳴で混乱状態に陥る。
ヒーローはすぐに来るだろうが……あのラリったような目、個性をブーストさせる麻薬でも射ったのか。
依頼の事もあるし、この道を塞がれると遠回りになってしまう。ヒーローどもを待つ時間も惜しいしここで片付けておくか。
グラサンを作った後、右手にフラッシュバンを作りだしピンを引き抜いて人混みに隠れながら投げつける。
「オッ!?」
男の目線の辺りで爆発と閃光が辺りを包み込み男も両手を目に当てて大きく地面を転がる。
十個の手榴弾を作りだしピンを抜いた状態で男の口に投げ込んで後ろを振り返る。
その瞬間男の子口の中で手榴弾が爆発、男の頭を吹き飛ばす程の大爆発が引き起こされ辺りを衝撃が撒き散らされる。
始末しておけば薬物の検出とこの男が誰なのかの判明が遅くなる。他のヴィランの肩を持つつもりはないが万が一もある、俺の方に来る可能性は少しでも減らしておかないとな。
尤も、ここが防犯カメラのないエリアだと知っているから対処しただけであって防犯カメラと人の壁がなければやらなかった。運が悪かったな。
十字路の別の方を歩きながら俺はコートのポケットに手を入れて歩く。
さて、こっちはこっちの仕事をやらせて貰いますか。