【疾走詩人】ゴブリンスレイヤーRTA 精霊使いチャート 作:神楽風月
「ん……」
どうやら、居眠りをしていたようだ。
貧弱なこの体では長い距離を歩くことは難しいと、なけなしの路銀をはたいて乗った乗合馬車に揺られていたが、これはあまり快適ではないな……そう思っていたのだが。思ったよりも慣れるものなのだな、と。
季節は初春。多くの若人が冒険者となることを決意する季節。
「ふぅー……いてて……」
腰をとんとん、と叩く。真言呪文の発動体を兼ねる
それにしてもおかしな夢を見たものだ。もはやうすぼんやりとしか思いだせないが、冒険者ギルドに登録する夢を見た。そこで可愛らしい
なんというか、おかしな夢を見たものだ。
あるいは精霊使いの第六感か、もしくは
「ようこそ冒険者ギルドへ! 本日はどのようなご用件ですか?」
親の顔より……と言うと、育ててくれた両親に失礼か。初対面なのにどこか見慣れた、三つ編みの受付嬢の前に立つ。
「冒険者登録をしたいのだけど」
銀の髪に紅紫色の瞳を持つ、痩身小柄な
「はい、文字は書けますか?」
「時間ばかりはあったからね。これでも詩を嗜んでるくらいさ」
「では、こちらに記入をお願いします」
夢のおかげか、羽ペンを持つ姿すらさまになる。細い指がしなやかに動いて、冒険記録用紙の空白を埋めていく。
「年齢は400歳、職業は……精霊使いですね」
手に携えるのは月を模した頭と天鵞絨の飾り布のようなものが付いた杖。こんな恰好では、精霊使いには見えはしないだろう。そうしたところで精霊使いだと驚かせてやるのは彼女の趣味の一つである……なのに目の前の受付嬢は、さほど驚いた様子もない。
「うん。でも、あんまり年齢の話はよしてほしいかな? あんまり若すぎるせいで、舐められてしまうかもしれないし」
「あはは……」
ほんの少し生まれた悔しさから、
「では、これがギルドでの身分証になります。なくさないでくださいね?」
「うん」
「依頼はあちらに張り出されていますので、等級に見合ったものを選ぶのが基本ですが……個人的には下水道や溝浚いで慣れていくことをおすすめしますね」
「ふぅん」
直感が告げる。後衛の自分一人じゃ無理だろ、と。
「いかがでしょう?」
「考えておくよ」
「わかりました。それでは今後の活躍をお祈りしています」
「うん、ありがとう」
長く年を重ねた余裕のようなものを見せて、広く取られた待合スペースに腰を落ち着ける。精霊使いとしての第六感が、愛しい人が自分を見ていることを告げた。そちらに視線を投げかけるようにくるりと視線をめぐらせて、ちょっとだけサービスするようにポーズを取ってやる。
自分をたくさん褒めてくれながら、ああ、今、目の前に座った……なんて。
まるでデートのようで、少し顔がニヤけてしまった。
「――依頼はあちらに張り出されていますので、等級に見合ったものを選ぶのが基本ですが……」
聖印を兼ねた手の錫杖に、着替えを含めたいくばくかの荷物。見るからに新米でございといった神官が登録を終えたのが見えた。それは、どこか見覚えのある只人の少女だ。
いや、これはきっと……、
(
きっとそうだ、そうに違いない。彼女の直感がそう告げる。幸いなことに、これが外れたことは数少ない。なにより彼女は幸運でもあった。
だからこそ、彼女の行動は早かった。
「やぁ、ちょっといいかな?」
さきほど冒険者登録を終えた女神官に声をかける。
「はい?」
見れば見るほど、夢で見た少女に似ている。なら決まりだ。きっと
「――そういうわけでさ、せっかく冒険者になったんだし、下水道掃除なんかではなく、冒険に行きたいと僕は思ってね……君も、ひとりじゃ不安だろう? だからといって、僕から男の人に声をかけるのもなにか、はしたないように思えてさ」
そんなときに君がちょうど登録を終えていたんだと、締めくくる。
「っと、名乗ってなかったね。僕の名前は詩人、疾走詩人……気軽に詩人さんと呼んでほしい」
白く細い手を指し伸ばし、握手を求めた。
「これからよろしく」
「あ、はい。よろしくお願いします」
あっというまに言いくるめられた女神官は、気付けば彼女の手を握り返していた。
「なあ、俺たちと一緒に冒険に来てくれないか!」
「ふえっ」
不意に声をかけてきたのは、傷一つない
「おやおや、これが噂に聞く
冗談、愛しい人以外はお断り。なんて心の中で付け加える。
「そんなつもりじゃないよ!」
「冗談さ」
「そっちの君、神官だろ? こっちは魔術師……かな?」
「あ、えと、はい。そう、ですけど」
「見てわからないかな? どこにでもいる精霊使いさ」
「えっ、そうなの?」
受付嬢では失敗したが、狙い通りに騙されてくれたところにちょっとだけ気分が良くなる。少しくらいは話を聞いてあげてもいいかな、と思うくらいには。
「ごめんごめん。でもちょうど良かった。俺の一党、聖職者がいなくって……」
見ればその剣士の向こうには、髪を束ねて
「なるほど。剣士くんに、武闘家ちゃんと、女魔法使いちゃんか……ちょっと悪いんじゃないかな? バランスが」
少なくとも
「そんなこと言わなくたっていいだろ? とにかく急ぎの依頼で、せめてもう一人欲しかったんだ。そっちも一党を組んだみたいだから、二人も増えるだなんて幸運だなって思ってさ。頼めないかな?」
「急ぎ、と言いますと……?」
「ゴブリン退治さ!」
聞けばちょうど良いことに、先輩冒険者たちが持っていかなかった依頼が一枚、掲示板に残っていたという。依頼主の語るところによれば、近くに住んでいることは知って居たが、追い払えもするからと放置していたか。
しかし最近になって凶暴化し、ついには村を襲って種もみを盗まれ、羊を盗まれ、その羊飼いの娘を攫われ……ことここに至れば手段など選んでいられない、と。
「ん、いいんじゃないかな?」
初めての冒険が、ゴブリン退治。よくある話だ。
「僕は引き受けてもいいと思う。君は、どうだい?」
「私は――いえ、私も、いいと思います」
「本当かい! やったな皆! これでもう冒険に出られるぞ!」
「ははは、
腕を上げて喜ぶその姿を見て、楽しそうにけらけら笑う。
「でも、ゴブリンだからって油断をしちゃあいけないね」
「大丈夫だって、ゴブリンだぜ?」
「そうなのかもしれないけれど、本当にそうなのかは分からないものさ。まぁ……ちょっと本で調べていってもいいんじゃないかな?」
「ふぅ……ふぅ……」
「おいおい、大丈夫か?」
「大丈夫じゃない、とまではいかないけれど。長い距離を走れる只人と比べないでくれたまえよ。僕ら森人はね、苦手なんだよ、こういうのは」
詩人は最年長の余裕を見せたかったが、ここまでの道のりはさすがに苦しい。肩で息をしながら、思わず唇を尖らせてしまった。
「まぁたしかに、ちょっと細すぎるよなぁ」
「樽よりはマシだろう?
がさがさと藪をかき分け林の中を進んでいくと、洞窟が見えてくる。
「あっ、ゴブリン!!」
「GORURU!?」
剣士が声を上げるのと、ゴブリンがこちらを見て驚くのとは同時だった。そいつは慌てて背中を見せると、洞窟の中へと逃げていった。
「ここで間違いないみたいね……」
「そうだね」
「気をつけて進もう」
「うん」
「……どうかしたの?」
「ん」
考え込むようなしぐさと生返事を返す詩人に、女魔法使いは問いかける。
「ゴブリンが、見張りなんて立てるっけ? って思ってさ」
「そういえば……」
ギルドで確認した怪物図鑑には、そんな話は書いてなかった。
「……女を攫い、巣の中で繁殖する」
ぽつりと詩人が漏らした言葉に、一党の空気が一気に下がった。
「図鑑にはそう書いてあった。逆に見張りを立てるだなんて、一言も書いてない……」
「……気をつけて進もう。みんなは俺の後ろに」
「ああ。頼りにしてるよ、少年」
ひょう、と生温かい風が吹き抜ける。狭い通路の天井からは木の根がぶら下がり、入口はもう見えなくなっていた。松明の頼りない明かりだけでは、なにか大切なものを見落とすかもしれないように思えてしまう。
「まただ……」
「入口にもあったわよねぇ」
不気味なトーテムを見て、不安そうに剣士と魔術師が不思議そうに言葉を交わす。
「なんだろうね、これ……図鑑には乗っていなかった」
「案外、ゴブリンだけじゃないんじゃないの?」
「はは、
「……あんたなんてまだまだ未熟でしょ」
「俺たちなら、
叩き合った軽口も、今はどこか空虚に感じる。
――どこかで、ベーコンを
「今、何か聞こえませんでしたか?」
「うん……聞こえた」
「後ろだっ!」
いち早く気付いたのはよく聞こえる長い耳と、暗視を持つ詩人だった。その声で弾かれるようにして剣士が松明を思い切り投げると、頼りない松明の明かりに、ゴブリンの群れが照らし出される。
「くっそ不意打ちかよ!」
「だが防げた。ならこちらのものさ」
「ちょっと! なんか数多いわよ!?」
「この程度なら楽なものさ」
詩人は杖を構えなおす。
「≪
「【
なんでそんなものを、と女魔法使いが絶叫する。それに対して、詩人はにやりと笑みを浮かべた。
「そうれ、【
詩人のはるか後方……洞窟の奥から、ゴブリンの群れ目がけて魔術の突風が吹く。どう、と風が吹き抜けたかと思えば、ゴブリンどもを見えないハンマーでぶん殴ったような衝撃が襲う。たまらず体をのけぞらせ、くの字に折り曲げ……14匹ものゴブリンがその場に倒れ伏した。
「すっげ……」
ゴブリンの群れから後衛を守るように、武器を構えていた青年剣士が思わずつぶやいた。
「【
「私、【
「それも悪くないさ、一匹だけならね。まぁ、弓でも石でも、同じことができるといえば……そうなんだけどさ」
「頑張って覚えようかしら……?」
「ああ、オススメするよ。僕としては小回りの利く【
「っていうかあなた、精霊使いじゃなかったの?」
「精霊使いだよ? 魔術も使えるし、弓……は性に合わなかったから、投石だね。ま、見ての通り頼りになる綺麗なお姉さんさ」
「それ、決め台詞?」
「そうさ?」
女魔法使いが、くすり、と笑った。
ひとまずゴブリンの群れという危機が去り、緊張を緩めることができる……そう思った矢先だ。詩人の耳に、どすどすどす、と重く鈍い足音が聞こえた。
「って、まぢかよ……!」
おかわりだ、とばかりに剣士の後方を指差す。
「――大きいの、来ます!」
女神官が、ゴブリンとはとうて思えないほどに大きな怪物が、奥からやってきたことを口にしたのは、それと同時だ。
「おい、おいおいおい、おいおいおいおいおい!!」
「こんな狭いところにどうやって入ってきたのよアレ!?」
「たぶんここから出たことないんじゃないかな!?」
「無駄にデカい引きこもりね!?」
巨大なそれが唸り声をあげ、粗末とはいえ痛そうな棍棒を振り上げて走ってくるのだ。原始的な恐怖が新米冒険者たちを支配する。
「ちょ、どうするのよアイツは!」
「少年! ちょっと踏ん張ってくれたまえよ!」
「まじかよ! 頼れる綺麗なお姉さんじゃなかったのか!?」
「僕のこの貧弱な体を見てみなよ! いや後ろは向くなよ!? 前だけ見て想像するんだ!!」
「してる場合!?」
「ああもう! 撃つわ! 撃つわよ!?」
「お、お願いしますっ!」
「頼むから早くしてくれよ!? 俺が死んじまう!!」
「少年なら一発くらいなら死なないさ!」
「それ本気!?」
「冗談に決まってるだろ!! ――避けろぉおおお!!」
巨大な怪物が振り上げた金棒を、剣士がすんのところで回避する。
「さ、≪
女魔法使いの杖から、【火矢】がほとばしる。それは狙い過たず、巨大な怪物の肩を貫いた。
「やった!」
「やってないだろ!」
「まだ生きてますよ!」
「フラグなんか立てないでよね!」
「そ、そんなに言うことないでしょ!?」
四方から突っ込まれ、女魔法使いは顔を真っ赤にする。
「いいから、早く倒さないと少年が死ぬぜ?」
「俺死ぬの!?」
「ごめん死なないと思う。生きている限りいずれは死ぬけどね!」
「どっち!?」
「賽子の目が知ってるさ!」
適当に軽口を交わして勇気づけながら、詩人は
「ああもうぜってぇー生き延びてやる――!!」
両手で握った長剣をぶんぶんと振り回す。当たらずとも牽制にはなる、攻撃を受けないという意味では、一つの正解だ。
だがそれだけでは、いつ敵の金棒が当たるか分からない。当たればただでは済まないだろう……手札をもう一つ、切るかどうか、詩人が思考をめぐらせていた時だ
ホブゴブリンが唐突に動きを止める。金棒を振り上げた恰好のまま、急に全身の力が抜けて、どう、と膝から崩れ落ちた。
前のめりに倒れるのをかろうじて避けた剣士は、そいつの後頭部に、深々と剣が突き刺さっているのを目撃する。
その剣は一体、どこから飛んできた、と……もと来た道を見れば、頼りない松明の明かりに照らされた闖入者がそこに立っていた。
「――……元気なのは構わないが、あまり騒ぐと奴らが集まってくるぞ」
そいつは、冷たい声音でそう言った。
薄汚れた鉄兜と革鎧、鎖帷子を纏った前身は、怪物の血潮で赤黒く染まっている。使い込まれて傷だらけの小盾と、中途半端な長さの剣……新人の自分たちのほうがよっぽどいい装備をしていると思ってしまうような、装備に身を固めている。しかし首にぶら下がった小板は、銀。
「……ッ、あの、あなたは……?」
女神官が意を決して誰何した。
「
――竜や吸血鬼ではなく、最弱の怪物である小鬼を殺すもの。
平素に聞いたら笑ってしまうほど滑稽な名前でも、ゴブリンと初めて戦った彼らにとって、まったく笑えるようなものではなかった。
「ええと……なんで銀の冒険者が、こんなところにいるんだい?」
「ゴブリンを殺しに来た」
「なんで?」
「ゴブリンがいたからだ」
「なるほど」
話が通じない人なんだね? と詩人は諦める。
「トーテムがあった」
「うん」
「シャーマンがいる」
「そうかい」
「襲ってきたゴブリンはこれで全部か?」
「そうだよ」
「そうか」
「うん」
詩人は笑顔を張りつけて、女神官のほうへと向き直る。
「僕には無理」
「えっ、ええっ?」
「これは僕の直感なんだけどね。きっと君なら波長が合うと思う」
「えぇ……?」
「それに君も、いずれは神殿の司教として働く、かもしれない。人見知りじゃ神官は務まらないだろう? いろんな人が懺悔に来るんだぜ? そんな君のためを思って、僕は心を鬼にするわけさ」
失礼だとは承知の上だが、妙な詭弁を弄するあたりが白粉を塗った
「私もまだ未熟な身なんですけど……」
「そうは言うけど、獅子は我が子を千尋の谷に落っことした、って言うだろう?」
「落っことしちゃだめですよ?」
「難しくてさ、只人の言葉」
「あんた都合悪いと森人の真似するのね」
女魔法使いは思わずため息をつく。
「森人なんだけどな、僕」
「闇人かと」
「なんだとーぅ!?」
「静かにしろ、奴らに気付かれる」
ゴブリンスレイヤーを名乗る男が、いつのまにか
「おおう!? びっくりし……た……?」
詩人は気付いた。
ゴブリンスレイヤーと名乗る男が、血まみれになったボロ雑巾のようなものを片手にもっていることを。
詩人は気付いてしまった。
そして――ゴブリンの返り血を浴びた程度では、そうはならないだろうというくらいに汚れてしまった二人の姿を。
「それ、なぁに?」
笑顔を張りつけて、問う。
「慣れておけ」
「ここで【
「はい……」
「お前は【突風】だ」
「分かってるよ……」
ついさっきまで、頼りないが信頼できると思った仲間たちが、みな光を失った目をしている。頼りになるはずの銀等級は、ゴブリンを殺すためなら仲間を血に塗れさせることも厭わない男だった。
「……奴らはにおいに敏感だ。特に女や子供、森人はな」
「俺、完全にとばっちりじゃん……」
「装備の金臭さを消すためだ」
「……そこまでするかよ」
「そこまでしなければ奴らは殺せん」
まだ経験の浅い白磁の彼らにも、ゴブリンのためなら容赦のない男であることは理解できた。ゴブリンの巣穴であれば、これ以上頼りになる銀等級もいないだろうが……。
「やれ、【聖光】だ」
「≪いと慈悲深き地母神よ、闇に迷えるわたしどもに、聖なる光をお恵みください≫……!」
ゴブリンスレイヤーが地面を蹴って駆け出す。同時に女神官が突きだした錫杖から、太陽のごとく燦然と煌く光が闇を切り裂いて、その巣穴に潜むゴブリンたちの目を焼いた。
「十二、シャーマン一、残り十二」
ゴブリンスレイヤーの、投擲を得意とする只人の腕から
「よし、やれ」
「まったく人付き合いが悪いと思えば、人使いも粗いなぁ!」
「早くしろ!」
「分かってるっての! ≪
どう、と魔力の突風が吹く。それは広間のゴブリンの頭をガツンと一発ぶん殴ったかのような衝撃を与え、速やかに断末魔を上げさせた。
「上位種は無駄にしぶとい」
死んだふりをしていたゴブリンシャーマンの頭を叩き割ると、ゴブリンスレイヤーはひとりごちる。
「君はゴブリンしか頭にないんだね」
「ああ」
シャーマンが作らせたのだろう、人骨の玉座を蹴り砕く。バラバラになったその椅子の影に、腐った戸板があった。
「へぇ、ゴブリンの宝物殿か」
「いやただの倉庫でしょ……」
「はは、物は言いようだよ」
「興味ない」
只人ならばかがまねば入れない小ささの、そこの扉を蹴破った。
そこには、小鬼の子供が4匹、身を寄せて縮こまっていた。
「――……子供」
「ゴブリンだ」
大きさなど関係ないとばかりに、彼は棍棒を振り上げた。
「子供も……殺すんですか……!」
「当たり前だ」
「マジかい……」
僕には信じられないよ、と眉をひそめる。
「奴らは恨みを一生忘れん。生き残れば、学習し、知恵をつける。そして巣をつくり、村を襲う。生かしておく理由がない」
「ふむ……」
そう言われると、なるほど、と。彼の行動が腑に落ちるような気がした。
「つまり――君はゴブリンと戦争しているんだね」
「違う」
「違うんかい」
「俺はゴブリンを殺すだけだ」
「まったく、わけがわからないよ……」
ため息とともに、ゴブリンスレイヤーの隣に立つ。
「別に、お前がやる必要はない」
「やるに決まってるだろ。つまるところこれは、僕らが生きるためなんだ」
「そうか」
納得したように、ゴブリンスレイヤーは棍棒を振り上げる。詩人も、両手でしっかりと握った投石杖を振り上げた。
「善良なゴブリンが、いたとしても……?」
「探せばいるかもしれん……だが、人前に出てこないゴブリンだけが、良いゴブリンだ」
振り下ろしたふたつの棍棒が、ゴブリンの頭を砕き、脳漿をまき散らした。