メイド共観察記録   作:ナレーショナー:[削除済み]

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[吸血鬼にとっては、いつ日付が変わるのだろうとか考えてたら頭痛くなってきましたよ]
[もう、人間と同じでいいでしょうか?]
[それとも、寝て起きたら次の日、日が登ったら次の日の『夜』でいいでしょうか?]




11 初めましてでしょーが

 ~ニルソニア視点~

 

 まったく。

 ローゼが気絶するなんて誰も思わないじゃない。

 そりゃあ、十年間一緒にいた私の配下なんだから、トラウマぐらい把握しているのが普通なんでしょうけど、初めて会った頃のローゼは何をしてもほとんど反応がなかったから、これほどとは知らなかったのよ! 

 

「ハァー。落ち着きなさい、自分自身に腹を立てても仕方ないじゃない」

 

 察してあげられたかもしれない、なんてすぎた可能性は考えるだけ無駄。

 それより今は、私のベットで横になっているローゼに、看病といったらおかしいけれどそれに近いことをしましょうか。

 といっても、どうすればいいのかしら? 

 私されたことはあっても、したことはないからよく分からないのよね。

 う~ん、図書館に看病についての本、置いてあるかしら。

 この屋敷の本って吸血鬼ぐらいしか読まない内容の本が多いから。

 うまく全身の血を絞り出す方法とか、血料理のアレンジ集とか。

 ま、行ってみれば分かるわね。

 

 

†     †     †

 

 

 まさかこんなに早く見つかるとは、ね。図書館にあるテーブルの上に置いてあるとは驚きだわ。

 ……誰かが置いてくれた? まさかね。……私以外、誰もいないわよね、、、。

 不安になってきたわ。ローゼのこともあるし、戻ろうかしら。

 部屋でも本は読めるし。本当は図書館から本を持ち出してはいけない決まりなんだけどね。

 うん、そうと決まれば、さっさと戻りましょ。

 

 ドサッ! 

 

 あら、立ち上がった拍子に本を一冊、テーブルから落としてしまったわ。

 あれ、この本タイトルが書いてないわね。

 ちょっと見てみようかしら。

 

 ペラ。

 

「~~~~~~~~~~~~~~~ッッッ///」

 

 ナニコレ?! 本当にこれ何?! 

 裸の女の人がいっぱいで、お、お、男の人と~~~~///

 た、(ただ)れているわ! こ、これは私が責任をもって処分するわ! 

 その時まで私が管理するわ! よくって?! 

 

 

†     †     †

 

 [キャラ崩れてますよ? 顔真っ赤にして、早歩きで図書館から出ていくところを見ると、よほど恥ずかしかったんですね]

 [そしてそのBOOKはどこに持っていくんですかね? ]

 [で、本二冊用意した我らが父(上司)はないがしたかったんですかね? ]

『SEX!!』

 [やめないか!! ]

 [あなたが喋ると太文字になるんです! 太文字のS○Xとか書きたくないんですけど! ]

 

†     †     †

 

 

 さて、部屋に帰ってきたわ。

 この本はサイドテーブルにおいて、こ、この本はベットの下にでも入れとけばいいかしら。

 ……ローゼ、うなされてるわね。汗もびっしょり。

 これは、お風呂に入れた方がいいのかしら――……

 

「ハァ」

 

 まったく、何のために図書館まで行ってきたのよ。分からないことを調べるためでしょうが。

 え~と、本にはなんて書いてあるかしら。

 なになに、

『首にネギを巻き、お、お、お尻の穴にネギを差し込む』

 ですって? 

 本当にこれで楽になるのかしら、人間は。

 あ、これ『風邪をひいたときの対処法』だったわ。

 こっちが、『寝込んだ時の対処法』ね。

 えーと、

『服を脱がし、タオル(ぬるま湯に浸けた後、硬く絞ったもの)で汗を拭き、清潔な服に着替えさす』

『着替えさしたなら、汗をかいて体内の水分が減少しているはずなので、飲み物を用意する』

『※注意:寝ているときに飲ませない。死にます』

 

 ……うーん。今、私小さくなっているのよね。具体的には九十cmぐらい。

 体も感覚も違うから、体が思うように動かないのよね。そんな私にやれるかしら。

 ま、なるようにしかならないわね。

 

 えーと、まずは、ぬるま湯とタオルね。

 ぬるま湯は魔法で作って、と。タオルは……脱衣所ね。

 おっと、洗面器を忘れていたわ。

 このままぬるま湯は、フヨフヨ宙に浮かせといて、タオルのついでに取ってきましょ。

 扉を開けて廊下に――さぶっ。冷えるわね。

 靴下はいてからの方がよかったかしら。

 いえ、取りに行っても今のサイズが無いわね。ローゼに頼まないと。

 その配下は気絶しているし。

 ――まったく、もう。世話のかかるメイドだこと。

 

「ハァー」

 

 冷たい廊下をペタペタ歩いていきましょうか! 

 

 

†     †     †

 

 [翼で飛べばいいのに、吸血鬼らしく。飛ばないとは、内心動揺しているんですね。わかります]

 

†     †     †

 

 

 うぅー寒っ。足の裏が痛いわよ、まったく。

 で、洗面器とタオルを持ってきたから、次は服を脱がすわね。

 おっと、その前にぬるま湯を洗面器に着水させなきゃ。よいしょ。

 それじゃあ、まずはベットの上に乗って、のって、の、って。

 ……届かない! こういう時、空が飛べたらいいのに――翼あるじゃない! 

 

「ハァ」

 

 何で気づかなかったのかしら。

 まあいいわ。思い出したなら、存分に使いましょ。さいわい、翼は小さくなっていないようだし。

 よいしょっと。

 ――まだ、うなされてるわね、ローゼは。

 今拭いてやるわね。

 あれ、どうやってこの服脱がすのかしら。

 この子、時々変なとこにこだわるから、この子以外には理解できないことがあったりするのよね。

 私しかこの家いないけど。

 ほんとにどうやって脱がすのかしら。

 ――この。――この! 

 無理ね。こうなったら力ずくで! ――やぁ! 

 

 これでも、彼女は吸血鬼。

 その腕力で衣装を力一杯引っ張ったなら

 

 ビリビリ! バツッ! ブチンッ! 

 

 当然、破ける。

 

 ――あ、やっちゃったわ。ま、まぁ? あとで作り直してもらいましょ。そろそろ衣替えの季節だしね。

 ――うーわ。私の噛んだ後、乳房にまだ残ってる。あれが気持ち良かったの? 

 何で私これとお母様を間違えたのかしら。全然似てないわ。

 ま、うなされてるし、さっさと終わらせましょ。

 

 

†     †     †

 

 

 まったく、なんで私が給仕の真似事までしなくちゃならないのかしら。

 そういうのは、『ア〇チャーの仕事でしょ』

 [赤い悪魔はさっさと聖〇戦争にお帰りください]

 

 そういうのは、ローゼの仕事じゃない。

 おかげで、まいごになったわよ。傑作ね。三歳児が自宅で迷子。

 この屋敷、二人で住むには広すぎるわ。

 掃除できていない部屋もあったし、メイド増やそうかしら。

 いえ、文句も、愚痴も、相談も、ローゼが起きてからね。覚悟しときなさいよ! 

 ――っと! おっとっと! 危ないこける! 

 

「――ふう」

 

 危なかったわ。何もないところでこけるなんて。

 この体じゃ、激しい運動は出来ないわね。

 両手で紅茶が載ってるトレーを持っていることも原因だと思うけどね。

 さて、バランス感覚もつかめてきたし、進みま――

 

 ――ガアアァァァンンンッ!!! 

 

 

 突如、空間が揺れた。

 

 歩き出すために、一歩を踏み出そうとしていたニルソニアは、顔面からこけた。それはもう、盛大に。

 バラエティーなら、3カメ分の映像は流れていただろう。それほど見事なこけっぷりだった。

 なお、ティーセットは頭の上に掲げ、死守していた。

 

 

 いったぁーっ! 何よ今の! ローゼは大丈夫かしら?! 地震じゃないし、魔法攻撃? いえ、今のは()()()()()()()()()()に近かった。だったら――ゆかちべた! 

 寝っ転がってないで、立ち上がりましょ! 寒い! 

 むぅ。三歳児の体の体からか、うまく立てないわ。

 ティーセットを置いて、ゆっくりと立ち上がりましょ。

 ほら、ゆっくり、ゆっくり、

 

「キャアアァァアァァアアァァアア――――――――ッ!!」

 

 ゆっくりしてられないわ! 飛ぶわよ! 翼を広げて離陸! 

 私の部屋までは、たしかこのまま一直線! 

 見えた! 扉ジャマッ! ええい、

 

「館の主が命ず。≪開きなさい≫!」

 

 よし! 開いた! 

 飛び込んで着地! 

 

「ローゼ!! 大丈――――――――夫………?」

 

 私疲れているのかしら。うん、疲れているのよ。

 慣れないことを、慣れていない体でしたから、疲れているのよ。

 

 ああ、だから、

 ()()()()()()()()()()()()

 

 

 

†     †     †

 

 

 

 ローゼは棒人間から『もうすぐ産まれそう』などとほざかれながら、目覚めた。

 これで悪夢は終わったはずだった。

 しかし、まだ悪夢は終わってなどいなかった。

 ここからがローゼにとって地獄(悪夢)の始まりだった。

 

 なぜなら、

  () () ()

 白くきめ細かい柔肌、

  () () () () () ()

 深い海を思わせる蒼い虹彩、

  () () () () () () () () ()

 所々はねている艶やかなくせ毛、

  () () () () () () () () () () () ()

 緩やかな曲線を描き、腰まで伸びた銀髪、

  () () () () () () () () () () () () () () ()

 人並み より少しだけ小ぶりな胸のふくらみ、

  () () () () () () () () () () () () () () () () () ()

 カモシカを想起させるすらりと引き締まった肢體(したい)

  () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () ()

 シャープな印象をあたえ、それでいて丸みを帯びた女らしい顔の輪郭(りんかく)

 ect...ect...

 

 

 ローゼと瓜二つな全裸の美少女が、否、()()()()()が目の前にいた。

 ただ、ニヒルにゆがんだ唇だけがその顔に似合わなかった。

 

 そんな奴がベットで寝ていたローゼを覆いかぶさるようにして存在していた。

 

†     †     †

 [混乱しないように、ローゼさんをローゼ壱、覆いかぶさっている方をローゼ弐とします]

†     †     †

 

 ローゼ弐がゆがんでいる唇を開ける。そこから飛び出してきたのは、

 

「キャアアァァアァァアアァァアア――――――――ッ!!」

 

 甲高い悲鳴だった。

 尤も、悲鳴を上げたいことになっているのはローゼ壱だが。

 

 よく分からないが、このままではされるがままだ、と思い、

 取り敢えずローゼ弐の下から抜け出そうとするローゼ壱。

 

 だが、ローゼ弐に力を絶妙にそらされ、ローゼ壱弐共々(ともども)、半回転。

 ローゼ壱がローゼ弐を押し倒したような格好になった。

 

 その時、部屋の扉が開いて、文字通りニルソニアが飛び込んできた。

 

「ローゼ!! 大丈――――――――夫………?」

 

 と、言ったきり、自身の目頭をほぐすニルソニア。

 

†     †     †

 [え? 『余計に分かりにくくなった』ですか? う~ん、どうしましょう。……じゃ、ローゼ壱、即ちローゼさんはローゼ、ローゼ弐、即ちどこぞの馬の骨は存在X、とでも呼びましょうか。ローゼがゲシュタルト崩壊寸前ですね]

†     †     †

 

 未だ、現実を受け止められていないニルソニアに向かって、ローゼと存在Xは異口同音に

 

「「私が本物のローゼです! 信じてくださいお嬢さま!」」

 

 と、叫んだ。

 ローゼは内心焦りながら、存在Xは内心面白がりながら。。

 どちらも思う事は同じ、即ち、ニルソニアは見分けることはできるのか。

 

 ニルソニアはそれを受け、ようやく目の前の光景が現実だと分かり、分かり、

 

「今度は幻聴? 誕生日に慣れないことはするもんじゃないわね……誕生日、昨日だったぁ……」

 

†     †     †

 [分かってなかった! 全然分かってなかった! これにはさすがの私も苦笑い! ]

『貴様のことはどうでもいい。話を進めろ』

 [ハーイ。う~んと、少しばかり書き方変えますね]

†     †     †

 

「「本当のローゼはこの私です!」」

 と、ここまでは意図せず……たぶん意図せず二人とも同じ台詞を発した。

 だが、続く言葉が分かれた。

 ローゼは「ニルソニア様!」と。

 存在Xは「御主人様!」と。

 

 ニルソニアの眉間をほぐしていた手が止まった。

 顔を上げ、二人のローゼが重なり合っているベットに近づく。

 その足が踏みしめるは地から(ちゅう)へと移り変わりゆく。

 吸血鬼が翼をはためかせ、(くう)を歩いてくる。

 二人の前までくると、上に乗っていたローゼを足で転がし。

「ニルソニア様?!」

 下に挟まっていた存在Xを引きずり上げ。

「御主人様!」

 にこやかに笑いかけた。

 その笑みはローゼにとって見覚えのあるもので、つい先日自分に向けられたものだった。

 ローゼは複雑に絡まった感情をため息として吐き出した。

 ニルソニアは引きずり上げた存在Xをベットの上に立たせ、

 自身はそのまま一歩、二歩と後ろに進み、ベットの外に立った。

 

「さて、何か言うことがあるんじゃないかしら」

 

 ニルソニアは腕組みをして、()()()()()

 

「信じてくれてありがとうございます! 御主人様!」

 

 ニルソニアを見上げる存在Xの目はうるんでいた。

 

 だが、

「違うでしょ」

「え?」

 

 翼を大きく一打ち。急降下。

 

「初めましてでしょーが」

 

 存在Xの土手っ腹にドロップキックが炸裂した。

 プキュッ、と可愛らしい音を立て存在Xは吹き飛んだあと、壁にぶつかった。

 

 前から後ろに髪を払い、ニルソニアが一言。

 

「発言を撤回するわ。全然お母様に似てないって言ったけれど、あのローゼ、いいえ、ローゼの形を借りたナニカに比べたら、まだ似てるわ」

 

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