メイド共観察記録   作:ナレーショナー:[削除済み]

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[本編でメタると、前書き後書きに書くことなくなるんですよね]
[まあ、これもメタいですけどね]




[パットじゃないんです、パッドなんです。PADなんです]

[この流れで言うのもなんですが、お気に入り登録ありがとうございます!]


13 騙し騙され騙させ

 前回のあらすじ。

 パットがばれた。

 

 走る。超える。走る。避ける。走る。屈む。走る。

 深い夜の中、同じく深い森の中を影たちが駆け抜けていく。

 いや、影と表現するには、いささか静けさが足りなかった。

 

「だからメイド長と呼びなさいと言っているでしょう」

「いやいやローゼちゃん。その前に俺らは双子の姉妹って設定だろ?」

「だとしても、ローゼちゃんはおかしい」

「じゃ、ローゼ姉ぇ」

「――。却下です」

 

 森を騒がせて、二人は木々の間を走り抜けていく。

 

†     †     †

 

 ラングドニ邸には五枚の結界が存在していた。そのうち三枚が壊れているらしい。

 ローゼ、メアの二人は、屋敷にあった小柄なナイフを装備し、音の発生源の調査に向かっていた。

 ニルソニアはこの場にいない。彼女は屋敷の地下室に設置してある、結界を発生させるアーティファクトの様子を見に行っている。

 

 [ここで結界の説明でも入れておきましょうか。ラングドニ領を守る結界は市街地を覆わず、森林を閉じ込めるように張られています。形は楕円形。市街地の中心から反対方向に細長く伸びています。――ま、こんな程度ですかね。あ、あと双子の設定は他人から二人の関係を尋ねられた時に誤魔化すためのものです。ニルソニアさんが考えました]

 

†     †     †

 

「!――止まりなさい」

 

 何かを感じたローゼが足を止め、しゃがみこんだ。

 〚見えそうで、三重ない〛

 [三重への悪質な風評被害は止めてください。それにミニスカじゃないんですから、見えるわけがありませんよ。――ギルティです]

 〚ギルテェ……〛

 [サスケェみたいに言わないでください。ィはどこに行ったのですか]

 

†     †     †

 

 何かを感じたローゼが足を止め、しゃがみこんだ。

 メアは指示には従い、ローゼの横にしゃがみこんだが、何故止まらないといけないのか、納得はしていない様子だった。

 

「どうしたんだ? ローゼ長……ローゼ長ってなに?」

 

 ローゼは素で間違えたメアをジト目で睨んだ。

 

「……ハァ。バカやってる暇はありませんから。――もうローゼでいいです。それ以外で呼んだら、棒人間のあだ名、定着させますから。いいですね」

「じゃ、俺もメアでいいぜ」

 

 ちゃんと話を聞く気はあるのか、メアは、纏う雰囲気を180度変え,真面目な顔でローゼに問いかけた。

 

「で、どうした――トイレか?」

「……違います。あなたを畑の肥やしにしたいとは思ってますが」

「じゃあ、好きなタイプのゴブリンでも見つけたか?」

 

 〚人前に出てこないゴブリンだけがいいゴブリンだ〛

 [あと、途中で邪魔しに入らない我らが父(上司)も、いいゴブリンに追加で。]

 

†     †     †

 

「じゃあ、好きなタイプのゴブリンでも見つけたか?」

「気に食わないゴブリンなら目の前にいますが。――あなたの後ろを見てもゴブリンはいませんから。上にもいませんから。――幻覚でもないので、私をそんな目で見るのは止めてください。本当にゴブリンみたいな顔にしますよ?」

「おっかねぇ、おっかねぇ」

 

 メアは真面目のふりを辞め、オーバーリアクションで肩をすくめた。

 当然すべてわかっていてやったことである。ローゼ長は本当に口が滑っただけだが。

 

 ローゼは大きく溜息をついた。

 そうでもしないと、やってられなかったのだ。

 あの女神様が太鼓判を押したから、調査に連れてきたというのに、邪魔しかしない、

 と、連れてきたことを後悔し始めるローゼ。

 どうにかならない者かと考えていると、再度気配をとらえた。しかも二か所。うち一つは……。

 ローゼの脳裏で閃いた。もともと考えていた計画を大胆に変えるのだ。

 

「二つ気配をとらえました。メア、あなたはそちらの方角をお願いします。私はこちらを担当します」

 

 ローぜは気配があった方角を指さした。具体的には、順に十二時の方向と十一時の方向だ。

 

「両方俺がやっていいんだ――が?!」

 

 指示された方向へ歩き始めたメア。

 進行方向にやぶがあったため、ジャンプして避けたが、何秒経っても着地しなかった。

 

 その姿を見てローゼは、

 

「ああ、言い忘れていました。あなたに指示を出した方の気配は不在蜘蛛(インビジブルステップ)と思わしきものでした。しかしながら、何者かが成りすまして私たちをやり過ごそうとしている可能性がありましたので、指示を出させていただきましたが。その心配は要らないようですね」

 

 と、労い+αの成分が含まれる笑顔を作った。

 

 そして、自分の担当の方へゆっくり歩きだしながら、メアへ追い打ちをかけ始めた。

 

「インビジブルステップとは、不可視の足音という意味で、漢字で書くと不在蜘蛛(ふざいぐも)になります。性質はその名の通り、目に映りません。その八本脚、胴体、蜘蛛の糸に到るまで見えません。蜘蛛の口に入ったものも見えなくなります。ただし八個の紅複眼だけは不可視ではありません。生態は雑食系肉食。特に人の肉、女性の肉を好みます。特定の棲み処――巣はなく、複数の蜘蛛の巣を張り、それを巡回しています。」

 

 メアの横を通りすぎても、ローゼの説明(脅迫)は続く。

 

「不可視、巣をグルグル回っている、この二点からインビジブルステップ、つまり、どこにいるのか、いつ忍び寄ってきたのかさえ、分からない、という異名が付きました。まあでも、気配を感じたので、近くにいるはずですが。」

 

「!?」

 

 嫌がらせでしかないローゼの詳しい説明に、さすがのメアも危機を感じたのか、

 救助を要請しようとするが、

 

「ん~ん~ッ?!」

 

 口から飛び出てくるのはくぐもった呻き声。

 

 それもそのはず、メアの口は蜘蛛の糸でしっかり()じられていた。

 これではローゼへの救助要請も意味をなさない。

 

「ん~ん~!」

 

 自力で脱出しようにも、蜘蛛の巣が取れる様子は、一切なかった。

 

「|ん~~~~~~~~~~!  ん~~~~~~~~~ん~~~~~~~!!《助けてください! お願いします、メイド長!! 》」

 恥もキャラもかなぐり捨てて、恥を忍んで嫌々、本っっっっっ当に厭々、だけど本気でローゼに助けを求めるメア。

 

 その必死さが伝わったのか、ローゼの視線がメアを捉える。が、それも一瞬だけのこと。直ぐに前を向いた。

 

 

「?! ん~ん~!」

 どこに行くのか、とメアは切羽詰まった声を上げた。

 やっぱりメアも死にたくはないのだ。アイツについて説明されるまで。メア自身も忘れていたが。

 

†     †     †

 [私自身、書き忘れていましたし。時空の強制力でも働いたんですかね]

 〚お前の不注意だ。そんなもの働かない〛

†     †     †

 

 ローゼは歩みを止めず、振り向きもせず、

「助けてくださいローゼ様も何も、その蜘蛛の巣、オリハルコンかアダマンタイト製の刃物じゃないと切れませんし」

 

 珍しく、メアが固まった。

†     †     †

 [助けてくださいローゼ様も何も、その蜘蛛の巣、オリハルコンかアダマンタイト製の刃物じゃないと切れませんよ!]

 [オリハルコンにアダマンタイト。ファンタジー世界ではよくあるものですが、この場にはないんですよね。残念!]

†     †     †

 

 いっそう、ん~ん~言いながら、手足をジタバタさせるメア。そのせいで、蜘蛛の巣は背中まで覆い始めた。

 もはや、自力ではバタつくことさえ難しくなってしまったメアは、ついに涙目になった。

 

 その時、本当にゆっくり歩いていたローゼが後ろを振り向き、

 

  怨恨、厭忌、唾棄、ありとあらゆる憎悪の感情を含む嬉しさに満ちた笑顔で、メア(自分の顔)

「さようなら」

 と言ったきり、二度と振り返らなかった。

 

 その十分後か、三十分後か、はたまた五秒後か。

 

 メアは、視界の端に八つの紅い灯火(ともしび)を見た。

 

†     †     †

 

 森の少し開けた場所に気配の主は、三メートルはある石の上へ腰かけていた。

 体格はがっしりしている。服装は灰色をベースにした軍服。顔つきはハードボイルドな印象を与える渋いものだ。

 表情は覚悟を決めたようにも、愁いに満ちているようにも見えた。

 

 と、そこにメイド服を着た銀髪碧眼の少女が、森の奥から現れた。

 いうまでもなく、ローゼだ。

 

「失礼ながらお尋ねしますが、もしかしなくても、結界を破壊されたのはあなた様でしょうか」

 

 軍服を纏う男は答える。

「フン。答える義理はない。それに、人にものを尋ねる時は、先に名乗りを上げるのが礼儀だと習わなかったのか?」

 

「あいにく奴隷の身でしてね。そんな学は持ちあわせていませんし、あなたに払う必要があるとも思えません。――ああ、申し遅れました。この地を収めるニルソニア=A=ラングドニのメイド、ローゼ・キュリエードでございます。以後お見知りおきを。尤も、その必要はないかと存じますが」

 

「……やはり、ここはニルソニアの治める地であったか」

 

 ピクリ。

 

「それはどういう意味――」

「ああ、こちらも申し遅れた。魔王軍二番隊隊長、ジオネスト=フリーバラムである。裏切り者を処刑しにこの地に参った」

「……何に対しての裏切りで?」

「決まっている。魔族に対してだ」

「…………裏切り者とは、我が主のことで?」

「そうだと言ったら?」

「別にどうも。ただ己の職務を果たすだけです」

 

 

 

 ローゼは、右手で腰につけた鞘からナイフを抜き、逆手に構えた。

 ジオネストは左手を前にして構えを取った。

 沈黙が()ちる。

 周囲が静かになっていく。

 静けさと反比例するように二人の気迫が跳ね上がっていく。

 両者の圧にやられたのか、常緑樹なのに木の葉が一枚ひらりと舞い落ちていく。

 木の葉が地に落ちるのを合図に二人は飛び出した。

 

 先に仕掛けたのはローゼだ。

 駆け寄ると同時にナイフを右から左へ振り上げた。

 対してジオネストはすかさず足を止め、バックステップで避けた。

 だがローゼの攻撃は終わらなかった。

 腕を振り上げた勢いも利用して開いた距離を一瞬で詰めたローゼは、振り上げたままであったナイフを初めと逆に振り下ろした。

 しかし、そのナイフは当たらない。

 ジオネストは振り下ろしとは逆方向に避けた後、がら空きの左側頭部めがけて鋭い拳を放った。

 ローゼは左腕を使い、流れるような動作で拳をガードし、押されるまま少し回転。

 ハイキックへとつなげた。

 それはジオネストにとって予想外だったらしく、頭にくらい、五メートルほど押し下げられた。

 

「まさか受け止め反撃してくるとは」

 

「まさか受け止める事すらできないと思われていたとは。その程度ではお嬢さまどころか、ましては私さえ殺せませんよ?」

 

「そうか。時間がない……――(あお)ってしまったことを後悔するなよ」

 

 そう言うと、ジオネストの姿が掻き消えた。




14に行け
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