メイド共観察記録   作:ナレーショナー:[削除済み]

7 / 19
前回のあらすじ。
ローゼが悪夢から覚める→棒人間にイラつく→マクラタコ殴り→スッキリ→棒人間のセリフが気になる→確かめにニルソニアの業務室に行く→開かない扉と格闘する→あかないことに気づく→つかれる


6 日記

 ローゼは気を取り直し、彼女の主――ニルソニアの部屋へと向かった。

 

 

 

 

 

 図らずとも、昨日(あるじ)――ニルソニアお嬢様を起こしに来たときと同じ体勢で固まるローゼ。

 ただひとつ、ローゼが不安げだという事を除いては。

 

「罠だったらどうしましょうか……いえ、どうせあいつの戯言です。さっさと確認して(お嬢さまの)ベットに入りましょう」

 

 神妙な顔つきで、ドアノブに手をかけた。

 ドアノブは音もなく回った。

 

 

 部屋に入ると、当然ながら天蓋付きのベットでニルソニアが寝ていた。

 床には、脱ぎ捨てられ散らかったお嬢様服。

 普段から身の回りを任せきりのお嬢様。生活力は皆無だった。

 

 普段通り、無意識に服を回収していくローゼ。

 そして、普段と同じく気配を殺している。

 気配を殺しているため、ニルソニアが起きそうな様子はない。

 

 

 後で本人から聞いた話だが、『お嬢さまに悪戯するために、努力しました』とのこと。

 さすがは、駄メイド。いや、もはやメイドですらないかもしれない。

 

 

 回収した洗濯物(お嬢様の服)を部屋の隅にポイッと投げ捨てる。

 

「これで足の踏み場が出来ましたね。―――おっと、お嬢さまは寝ていました。静かに……静かに……

 

 忍び足で、業務室へつながるドアへ歩いていく。

 普段通りに、ニルソニアが起きる事もなく、そして何事もなく、ドアの前に着いた。

 今回もドアノブは滑らかに回った。

 

 

 

 静かな業務室は相変わらず散らかっていた。主に書類が。

 ただ、ドアから業務用両袖机(りょうそでづくえ)までは、動線が確保されていた。

 

 ローゼは、周囲を紙に埋め尽くされた道を進む。

 積み上げられた白い塔に当たらないように慎重に進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく、お嬢さまを起こさないことよりも、書類の山を崩さない方が難しいとは」

 

 愚痴りながら、たどり着いた両袖机の()()、下から二段目の引き出しを開く。

 

 

 

 

 そこには―――――――

「――――――ん?――――――」

 ――――――――何も入っていなかった。

 

 

 

 

「やはりからかわれた、いえただの夢だったようですね。ならばさっさとニルソニア様と共にベットで寝―――」

 

 

 ガチャリ

 

 

 

 棒人間は何と言っていた。

 『願い事は吸血鬼が眠る部屋―――その隣の仕事部屋にある両袖机。()()下から二段目の中から始まる』

 そう言っていた。

 

 

 音がした。()()の引き出しから音がした。

 

 

 業務机の備え付け引き出し、左側、下から二段目、その引き出しが、

 

 ローゼには、何故だか鎖で縛られているような気がした。

 

 つばを飲み込み、だが静寂(せいじゃく)に飲み込まれないように、

 腕に力を()め、だが期待は()めないように、

 引き出しを開ける。

 

 

 ―――――どこかでナニカが哂った―――――

 

 

 そこにあったのは、

 一冊の古ぼけた黒革の手帳と薇発条(ぜんまいばね)の切れたオルゴールだった。

 手帳の表紙には何かが刻まれた跡と、大きくついている二つの『〆』(×)

 

 望んだものと告げられたそれを覗き込んだ。

 

 それは―――――――――

 

 

 

 

 

     

†     †     †

 

 

 

 

 

 

 手帳――日記を丁重に閉じる。元あった場所に戻すと、ローゼは泣きそうな、それでいて決意したような顔でオルゴールの発条(ぜんまい)を巻き、机の上に置く。

 

 流れてくるは、美しく気高い、だけどどこか寂し気な旋律。

 その旋律は、この場に動くものがいない夜であることも()わさって、高らかに鳴り響く。

 

 今にも消えそうな音は、屋敷中に響き渡る。

 壁一枚(へだ)てた部屋にも流れ出る。

 

 

 

 バンッ!!!

 

 

 ローゼが顔を上げると、

 メイドが見たことない表情で、日記の持ち主――ニルソニアが扉を蹴り開けて、迫ってきていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。