今回も頑張って書いたので是非楽しんで貰えたらなと思います!
それではどうぞ!
「これでいいですかー?」
「うん!バッチリ!」
ハシゴに乗り、高い所に付ける照明の調整をする。
「渡さーん!そこ終わったら次はこっちの荷物お願いしていいですかー?」
「了解です!すぐ行きますねー!」
外はまだ沢山の雨が降り続いている。
それでも俺は信じ続ける。この雨が止み、あいつらがまた笑顔でライブを出来ることを。
しずくとかすみと別れた後、突然コッペパン同好会の人達に呼び出された。
『天気が良くなり次第、最後のライブを虹ヶ咲学園の正門の近くでやるから準備を手伝って欲しいの!』
このままじゃ終われない。そう思っていたのは俺だけじゃないよな。
それを快く受け入れ、今準備を進めている。
準備を開始して早くも2時間近く経っていた。
時刻は間もなく7時。本来なら全体でステージを借りられるのは7時までだったが、副会長が交渉して学園の近くのステージを借りることが出来たのだ。
ようやくライブが出来るステージが整った。
準備を終えると、雨が弱くなってくる。それに伴い徐々に会場に人が集まってくる。
後はあいつらがここに来て、準備出来次第いつでもライブが出来る。
「男の人がいて助かったわ。福澤さん、本当にありがとうございました。」
舞台袖で観客の様子を見ていた所、副会長がそう話しかけてきた。
「いえ、こっちだって役に立てて嬉しいっすよ。」
「ライブ中の調整は私たちでやるので、福澤さんは客席からライブを見ていても大丈夫ですよ。」
「なら、お言葉に甘えてそうさせてもらいますね。」
そんな話しをしているうちに、ステージ裏が騒がしくなってきた。きっとあいつらが揃ったんだろうな。
直ぐに開始出来るだろうし、そろそろ客席へと向かうか。
客席に着くと、既に多くの人たちがライブをそわそわしながら待ちわびていた。
天気の方はすっかり良くなっており、夜の為太陽は出ていないものの会場の人達の熱気で暑いように感じた。
空いている後ろの方からライブを見守ることにした。
するとすぐ近くに俺と同じTシャツを着ている、見覚えのある女性がいた。
確か、あの人って...
「高咲 侑さん...?」
思わず声に出てしまい、すぐ近くだったので直ぐに気づかれた。
「あれ、渡くんじゃん!覚えててくれたんだー!」
「あ... いえ、こちらこそ覚えててくれてたんですね。」
「もちろんだよ!」
「えーと、侑さんは今回は客席からなんですね。」
「うん、みんなから今回は客席から見ていて欲しいって言われたから。今日はチラシ配りや色んな会場の様子とか見回ってたから、あんまりみんなのステージ見れてなかったしね。」
「大変ですね...」
「そうかな?夢を追いかけてる人たちの方がもっと大変だと思うけどなぁ。私はそんな人たちを応援することしか出来ないから...」
「夢... ですか...」
そんな話しをしているうちに、ステージに明かりが付いた。観客はものすごい盛り上がり、隣の侑さんの声も聞こえないくらいだった。
9人がステージに並び、一人一人スポットライトを浴びて一言ずつ言葉を話していく。
1番最初に前に出てきたのはかすみだった。
『最後のステージに集まっていただいた皆さん、そして、モニター越しに見てくれている皆さん、今日は私たちと一緒に楽しんでくれて本当にありがとうございます!』
かすみの出番が終わると、次に金髪のギャル風な人が出てくる。確か宮下愛さんだったっけ?この祭りの準備をしているうちにみんなの名前覚えちゃったわ。こんな感じで全員回すのか。
『ちょっとアクシデントもあったけど、みんなのお陰でこのステージに立つことが出来ました!』
次は璃奈にライトが当たる。
『今日は、色んなステージを回って皆と繋がることが出来て、とっても大切な1日になりました!』
そして、しずくへとバトンが渡された。
『スクールアイドルフェスティバルは、みんなの夢を叶える場所!私たち同好会は、グループとしてでは無く一人一人がやりたい夢を叶えるスクールアイドルとして、歩き始めました!』
一人一人の夢か。しずくには大女優になるっていう昔からの夢があったんだったよな。
俺にも... 何か夢は...
『1人で夢を追うことは簡単ではなくて、それぞれが、それぞれの壁にぶつかったけど。』
『その度に誰かが誰かを支え合って、今日、遂に大きな夢を叶えることが出来ました!』
『私たちは1人だけど、1人じゃない!』
『今まで沢山支えてもらった分、次は私たちがみんなの夢を応援します!』
『これからも、躓きそうなことはあると思うけど... あなたが私を支えてくれたように、あなたには私がいる!この思いはひとつ!だから、全員で歌います!』
『あなたのための歌を!』
そんな彼女たちのメッセージに心を打たれた。俺も何か大きな夢を追いかけたい。父さんや母さん、そして昔の俺のようにまた何かに夢中になりたい。
俺が夢中になれること...
ふと横を見ると、侑さんが涙をこぼしてライブを見ているのがわかった。
この人って確か同好会のサポートしてるんだったっけ。"支えてくれたあなたへの歌"っていうのはそういうことか。俺の中で色んなことが繋がりひどく納得がいった。
歌の力って本当に凄いものだ。自分の伝えたいこと、思っていることを人の心に響かせることが出来る。
歌の力で俺もしずくも変わることが出来た。
そんなすごいものを俺は作ることが出来るんだ。
歌うのはそこまで得意じゃないから自分自身で伝えるのは難しいけど、俺が作ったのもを誰かに伝えて貰う、それならば出来るんじゃないか。
俺の気持ちを、世界中に届けたい...!
「父さん、母さん、見つけたよ... 俺の夢...!」
大歓声の客席の中、1人でそう呟いた。
ステージの片付けを全て終え、今回のイベントの準備に携わった人達で集まり最後の挨拶をしてきた。
「皆様のご協力が無かったら、このイベントは成功させることは出来ませんでした。本当にありがとうございました!」
副会長の挨拶が終わると既に時刻は8時半を過ぎていた為、今日の所は解散となった。
家に帰ろうと少し歩いた先に、道の脇にあるベンチに座っている1人の女性の姿があった。
暗くて様子はよく見えないけど、まああいつだろうな。
「なんでそんなとこにいんだよ。」
「なんでって、渡くんを待ってたんだよ?」
「はぁ... まじで連絡無しで待ってるの好きだよな。俺がここ通んなかったらどうしてんだよ。」
「うふっ、いいじゃない何でも。さ、帰りましょ。」
その女性はやっぱりしずくだった。
全く、女の子をこんな暗い所に待たせてたっていう変な罪悪感が湧いてくるから連絡のひとつくらいして欲しいわ。
「今日はほんとにありがとうね。」
「ん?あー、大したことしてないけどな。」
「そんなこと無いよ。聞いたよ、最後のステージの準備やってくれてたんでしょ?」
「まあな、そこまでこのイベントに思入れない俺でもあのまま終わりなのは嫌だったからな。お前らはもっとそう思ってるだろうなって思って準備してたわ。」
「でも、本当に助かったよ。私たちが最後までやり切れたのは渡くんたちのおかげ。ほんとうにありがとね!」
「まあ役に立てて良かったよ。それよりしずくは打ち上げとかないのか?」
「うん、今日は疲れてるし時間も時間だから解散になったんだ。」
「じゃあ腹減ってるだろ?飯でも食わねぇか?」
「え?いいの?」
「今から家帰ってから晩御飯の準備するのも面倒だから、せっかくだし一緒に食べようと思ってさ。」
「行きたい行きたい!私も渡くんと久しぶりにご飯食べたい!」
想像以上に食いついてきてちょっとビビったけど誘った方からすればこれ以上ないってくらい嬉しいもんだな。
「何か食べたいもんあるか?俺は何でもいいんだけど...」
「私も特にこれといったものは無いから、ファミレスでも行こっか。」
「それが1番いいな。じゃあそうするか!」
こうして俺たちは帰り道にファミレスに寄ることにした。
ファミレスに着くと店内はそこまで混んでなかった為、すぐに席に座れた。
「どれにしよっかなぁ。渡くんは何にするの?」
「うーん、今日はパスタの気分かな。カルボナーラで。」
「じゃあ私も同じのにしよー!」
「なんでだよ...」
店員さんを呼びカルボナーラ2つを頼む。
「渡くん、昔はこういう外食に来ると大盛りの品を3つくらい頼んでたのに1つだけで足りるの?」
「あぁ... 今あんな量食ったら、運動してないしただのデブになるわ。あの頃は体でっかくするために沢山食ってけど、今はそんなことする必要が無いからな。」
今の俺の身の回りだとしずくだけが知っている昔の俺。何かに熱中したが故に色々な努力をしていた俺。それは今の俺とは大違いだった。
「やっぱり、昔の俺の方が良かったか...?」
つい聞いてしまった。昔の俺はもういない。今は今できることを精一杯頑張ろうって決めはしたが、過去を知っている人間からするときっと物足りないよな...
もうこの事ではクヨクヨしない。そう決めたはずなのにな...
今にも目から涙が溢れ出そうになってきた。
「そんなことないよ。」
「え?」
しかし、彼女から帰ってきた言葉は俺の予想外のものだった。
「ごめんね、昔の話掘り返しちゃって。渡くんからすれば昔の方が充実して楽しかったかもしれないけど、私からすれば渡くんは変わってないよ。困っている人がいたら助けたくなってしまう所や、ちょっぴり素直になれなくてかわいい所とかも。」
褒めてるんだか貶されてるんだか分かんねぇな。
「今と昔で生活は変わってるかもしれないけど、私の中の渡くんは渡くんで変わってないから。」
そう彼女は笑顔で言った。そっか... しずくはこんなにも落ちこぼれた俺なんかにも昔のように見てくれていたんだな...
「そんな暗い顔しないでよ、渡くんと一緒で私も渡くんの悲しむ顔は見たくないの。はい、これ。」
彼女が渡してきたのは、雫の形をしたキーホルダーだった。
「これは...?」
「演劇祭のお礼だよ。かすみさんにはそう言ってあの髪飾りをあげたんだ。あの時は本当に2人には助けられたから... でも、男の子ってどういうのが欲しいとかわかんないから、気に入らなかったらごめんね...?」
「そんなことねぇよ...」
しずくから貰ったキーホルダーをギュッと握りしめる。
ほんと、何度もこいつには助けられてるよ。
もし、あのまましずくに出会うことがなかったら今頃俺はどうなっていた事だろうか。
誰の役にも立てず、何の生きがいも夢も無く、ただ平凡な日々を過ごしていただろうな。
「ありがとう... しずく... 」
それは言葉じゃ足りないくらいの感謝の気持ちでいっぱいだった。
また夢を追いかけられる。また楽しい日常を送れる。しずくのおかげでそう確信が出来た。
しずくに... 出会えてよかった...
ありがとうございました!
次回もよろしくお願いします!